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出会った小さな命
あれから——どれくらい経っただろう。
数度、目を覚ますたびに心の中で両親を呼ぶが、何かが返ってくる気配はない。
暗闇の中で意識を保つのは難しくて、いつもより覚醒していられない気がする。
ほとんど眠ったまま、もう何日が過ぎたのかも分からない。
父や母は無事だろうか。
また会えるのだろうか。
あまりにも無力な自分が、むなしくてたまらない。
状況は少しずつ、確実に悪化していた。
巣にいた頃は毎日のように与えられていた魔力がもらえなくなって、腹の底が空っぽになっていく。
物理的な空腹とは違う——身体の芯から、活力がじわじわと削られていくような感覚だ。
だが、迫る危機に対して、自分には何もできない。
意識を手放していたとき、不意に衝撃が走った。
痛みは無いが、落とされたような嫌な浮遊感と衝撃で無理やり覚醒させられた。
驚いて周囲を探ってみる。
まず感じたのはドロドロとした嫌な魔力だった。
淀んだヘドロみたいな魔力が寄せ集まった、吹き溜まりみたいな場所だ。
よくその輪郭を探ってみると、鋭く大きな牙?のような物。何かの頭骨、剥き出しの手足の骨。
奇妙な形の瓶や、くたびれた布切れや紙のようなもの。
それらが雑多に積み上がっていて、俺はその山の一角に転がされているらしい。
(……なんだここ、物置か……?)
けれど、ただの物置じゃない。
漂う魔力の重さと濁りは、息をするだけで胸を圧迫してくる。
魔力に匂いがあるのかは知らないが、鼻があったらもげてると思う。
(絶対に長居しちゃだめだろここ……)
逃げたいのに、逃げられない。
意識を手放したら、もう次は起きられないかもしれない、もう本当の本当に終わりかもしれない。
なんとか気を張って起きていようとしてみるけど、もうどこにも力が入らない……。
ふと、遠くから音が聞こえた。
ガチャリ、と重たい金属の音。それに混じって複数の足音が近づいてくる。
硬い靴底で地を踏みしめるような重い音。
扉が開いて、その気配の主が中に入ってきたみたいようだ。
「……チッ、手間を掛けさせやがって!」
乱暴な声のあと、何かが引きずられるような衣擦れの音。
「っ……!」
ガチャンッと鈍い音を立てて、俺がいる近くに、重い物が投げ込まれた。
積まれていたガラクタが崩れたようで、そこに溜まっていた重苦しい魔力が埃のように立つ気配が伝わってくる。
小さく、呻く声がする。
意識を向けてみると、驚くほど輪郭のはっきりした子供の姿が見えた。姿は分からないけど、内面に渦巻く魔力が、その形をはっきり見せている。
「せいぜいここで反省でもしてろ」
苛立ちを隠そうともしない吐き捨てるような声色と嘲るような鈍い声と共に、扉が勢いよく閉じられた。
再び訪れる暗闇。
小さな咳き込みが聞こえた。
そして、微かに震える呼吸音。
(生きてる……)
弱々しくはあるけど、小さな体に満たされた魔力は血液のように脈打っていた。
そのとき、俺の中で何かがざわめいた。
そうだ——魔力だ。
その子どもが吐息をつくたび、香り立つ淡い魔力が放たれていく。
荒れた物置の闇の中で、俺の理性は獣のように吹っ飛んで、目の前に転がる魔力を渇望した。
数度、目を覚ますたびに心の中で両親を呼ぶが、何かが返ってくる気配はない。
暗闇の中で意識を保つのは難しくて、いつもより覚醒していられない気がする。
ほとんど眠ったまま、もう何日が過ぎたのかも分からない。
父や母は無事だろうか。
また会えるのだろうか。
あまりにも無力な自分が、むなしくてたまらない。
状況は少しずつ、確実に悪化していた。
巣にいた頃は毎日のように与えられていた魔力がもらえなくなって、腹の底が空っぽになっていく。
物理的な空腹とは違う——身体の芯から、活力がじわじわと削られていくような感覚だ。
だが、迫る危機に対して、自分には何もできない。
意識を手放していたとき、不意に衝撃が走った。
痛みは無いが、落とされたような嫌な浮遊感と衝撃で無理やり覚醒させられた。
驚いて周囲を探ってみる。
まず感じたのはドロドロとした嫌な魔力だった。
淀んだヘドロみたいな魔力が寄せ集まった、吹き溜まりみたいな場所だ。
よくその輪郭を探ってみると、鋭く大きな牙?のような物。何かの頭骨、剥き出しの手足の骨。
奇妙な形の瓶や、くたびれた布切れや紙のようなもの。
それらが雑多に積み上がっていて、俺はその山の一角に転がされているらしい。
(……なんだここ、物置か……?)
けれど、ただの物置じゃない。
漂う魔力の重さと濁りは、息をするだけで胸を圧迫してくる。
魔力に匂いがあるのかは知らないが、鼻があったらもげてると思う。
(絶対に長居しちゃだめだろここ……)
逃げたいのに、逃げられない。
意識を手放したら、もう次は起きられないかもしれない、もう本当の本当に終わりかもしれない。
なんとか気を張って起きていようとしてみるけど、もうどこにも力が入らない……。
ふと、遠くから音が聞こえた。
ガチャリ、と重たい金属の音。それに混じって複数の足音が近づいてくる。
硬い靴底で地を踏みしめるような重い音。
扉が開いて、その気配の主が中に入ってきたみたいようだ。
「……チッ、手間を掛けさせやがって!」
乱暴な声のあと、何かが引きずられるような衣擦れの音。
「っ……!」
ガチャンッと鈍い音を立てて、俺がいる近くに、重い物が投げ込まれた。
積まれていたガラクタが崩れたようで、そこに溜まっていた重苦しい魔力が埃のように立つ気配が伝わってくる。
小さく、呻く声がする。
意識を向けてみると、驚くほど輪郭のはっきりした子供の姿が見えた。姿は分からないけど、内面に渦巻く魔力が、その形をはっきり見せている。
「せいぜいここで反省でもしてろ」
苛立ちを隠そうともしない吐き捨てるような声色と嘲るような鈍い声と共に、扉が勢いよく閉じられた。
再び訪れる暗闇。
小さな咳き込みが聞こえた。
そして、微かに震える呼吸音。
(生きてる……)
弱々しくはあるけど、小さな体に満たされた魔力は血液のように脈打っていた。
そのとき、俺の中で何かがざわめいた。
そうだ——魔力だ。
その子どもが吐息をつくたび、香り立つ淡い魔力が放たれていく。
荒れた物置の闇の中で、俺の理性は獣のように吹っ飛んで、目の前に転がる魔力を渇望した。
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