夏の行方。

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プロローグ

無気力な3人

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眩い黄金色が純白のカーテンの僅かな隙間から差し込む。日中の熱を冷ますかのように涼しげなヒグラシの鳴き声が新緑の木々の中響き渡り、時折吹く優しげな風がゆっくりとカーテンを揺らす。金管楽器の音色は廊下に鳴り響き、校庭からは勇ましい掛け声。静寂の校内とは真逆な活気で生徒たちは今日も思いを馳せている。

しかし高校という場所は生徒全員がそうであるとは限らず、中には将来の夢どころか明日の目標すらも見れずにいる生徒もいるのだ。

1年4組。この教室にはいつも決まって3人の男子生徒が残っている。何をするでも無く、どこへ行くでも無く、ただただ机に座り談笑をしている。
そして毎日のように見回りの教師に帰るように促されているのだ。この日も普段と同様に薄っぺらいスクールバッグを肩に掛ける。中身のないスクールバッグの様はまるで明日の希望が詰まっていないように見える。

校門を出ると3人は気怠い表情で歩き出す。この田舎町では学校帰りの選択肢が少なく、ゲームセンターへ行くか、コンビニへ行くか、歴史を感じる商店街。これらが地元の学生達の退屈ながらも唯一楽しめる施設である。

「海斗(かいと)晴雄(はるお)。俺、寄り道するからじゃあな」

無気力な表情でそう言うと一人ダラダラと歩く。

「おい!月也(つきや)ゲーセン行こーぜー!」

海斗と晴雄は月也の背中に声を張ったが、月也は反応もせずに歩いて行った。

早瀬月也(はやせつきや)整った顔立ちでビジュアル面では学校で人気だが、コミュニケーション能力が乏しく、周りからは接しにくいと思われているため友達は幼馴染の海斗と晴雄だけであり、また月也自身もそれ以外の生徒とは接しようとしない。

渡辺海斗(わたなべかいと)茶髪で背が高く痩せ型。お調子者な性格もあり友達こそいるが、海斗もまた月也と晴雄としか行動しようとしない。

内藤晴雄(ないとうはるお)小柄で肉付きが良くふくよかな体型で3人の中ではマスコットキャラクターのような存在。度の強い眼鏡がトレードマークだ。

海斗「はぁ...じゃあ俺らも今日は解散だな」
晴雄「そうだね」

こうして3人は散り散りになっていった。
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