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第1章 セーラム
第1章5幕 鳴き声<ribbit >
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エルマにひとしきり笑われたあと別れ、私はホームに≪テレポート≫で帰ってきました。
そろそろ部屋ができてる頃かな?
コンコンコンとラビの部屋をノックします。
「どうぞ!」
「おじゃまするね」
部屋を開けると壁が全面ピンク色になっており、中心に天蓋付きの白いベッド、奥の窓際には白いテーブルが置かれています。
オレンジ色のソファーが部屋の一点で存在を主張しています。
「かわいい」
「ありがとうございます!」
「よくがんばったね」
「おもかったー!」
「フランもお疲れ様」
「たのしかった! あっそういえばお昼くらいに【高位調薬師】と【上級鍛冶職人】の方が面接に来るそうです」
「わかった」
「では部屋に戻って寝ますね! おやすみなさい!」
「おやすみ」
「私も疲れちゃったので寝ます。これからよろしくおねがいします」
「こちらこそ。おやすみ」
ラビの部屋から出て1階の商品スペースに下ります。
まだ眠気度は溜まっていませんし、あれだけ動いたにも関わらずキャラクターに疲労度がたまっていないのでもう少しだけ活動することにします。
一通り商品の在庫を確認し、市場に出せるものは出しておきます。
フランが普段やっておいてくれるのですが、今日は面接やらプチリフォームやらでやる時間なかったでしょうししかたありません。
確認を終え、売上のチェックも行います。
店舗自体での売り上げはさほど多くありませんが、市場ではそこそこ売り上げていたみたいですね。ユニーク装備はお店でしか売っていないのであまりプラスにはなっていませんが。
よく売れるポーション系を作れる【高位調薬師】が来てくれるのはありがたいです。
ちゃんと起きれたら、面接には立ち会いますか。
自分で素材化するのが面倒なので、適当な商店にもっていき売却します。
「これなら19万金だね」
「わかりました」
代金を受け取り、素材を渡します。
やはり素材化して売ったほうが高くなりますね。
先ほど全部出してしまい、お腹がすいてきたのでさっと食べられるものでも探しましょうか。
うろうろと通りを歩き、串焼きを見つけたので頬張ります。
うん。おいしい。
「チェリー!」
後ろから声をかけられたので振り返ります。
「これはまりりすさんにレーナンさん。VRでは初めまして」
「あっはじめまして」
「はじめましてー」
「こんな時間にお散歩?」
「これからクエストに行くところ」
「クエストかー」
「うん。NPCの護衛クエストがあってこれから待ち合わせ場所にいくんだ」
「どこまで護衛するの?」
「『海上都市 ブラルタ』までだよ」
あっ嫌な記憶が……
「あそこにいる〔アンゴラ・キング・フィッシュ〕には気を付けて」
「えっどうして?」
どうして? ってそりゃ……
「マズイから」
「〔アンゴラ・フィッシュ〕っておいしいんじゃないっけ? キング、王様っていうくらいなんだから死ぬほどおいしいのかと思ってた」
「私もそう思ったよ。でも実際食べてみたらやばかった。吐いた」
「「えっ?」」
「一口食べてみる?」
「私は遠慮します」
「僕はちょっと興味あるかも……」
「じゃぁいこっか。『飯処 廁』にまだ残ってると思う」
「私どうなってもしらないからね」
「さすがにそこまでじゃないでしょー?」
甘い。
「こんばんわー」
「チェリー……二度目の来店ありがとう……して、どうしたのかな?」
「こちらのレーナンさんが例のブツを欲してるみたいですので」
「例のブツ?」
「例のブツです」
ニタァと笑うとそれで察したようで「すぐもってくるからまってて!」といって厨房の奥に消えていきました。
「うわーめっちゃおいしいそうな匂いがする」
「ちょっとおなかすいたかも」
「じゃぁ刺身でも食べよっか。すいません、〔アンゴラ・フィッシュの刺身〕を2皿ください」
「かしこまりましたー」
例の頬肉が到着するまで、先ほども食べた刺身をつまんでまっています。
「おまたせー! これが例のブツだよ!」
そう言って机の上に悪魔の食い物をおきました。
「ごゆっくりー」
とニヤニヤしながらカウンターに引っ込んでいきました。
こっそりこっち見てますね。
他のお客さんも見てますね。
仕方ないです、みんな気になるんですよ。
「ふつーにおいしそう。いただきます!」
そういってレーナンが箸を頬肉に突っ込みます。
「うん。匂いもいいしこれは期待しちゃうな」
パクッっと口に入れてモグモグと食べています。
さぁそろそろ来る頃ですね。
心なしかびすけっとの目もらんらんとしています。
ごくっっと飲み込む音が聞こえて、レーナンが言いました。
「うわー! これめっちゃおいしい!」
「え?」
「は?」
「「「「えっ?」」」」
この空間にいるまりりす以外の全員から疑問の声が漏れます。
いかにも悪役といった鎧を着た大男がレーナンに話しかけます。
あれ?こいつどっかで見たことあるような……まぁ思い出せないのからいいです。
「おい坊主ゥ……それがうまいわけねぇだろぉ?」
「いえ? 普通においしいですよこれ」
「そんなわけあるかよ!あっちょっとまてお前の食ってる部分があたりなんじゃねぇか?」
「あたりはずれもないと思いますけど」
「ツベコベ言ってんじゃねぇ!一口よこせや!」
「一口だけですよ……?」
「お、おうよ!」
大男はそう言って自分の席から箸と取り皿を持ってきて、箸をひっくり返し、取り皿に移します。
あれこいつもしかして普通にいいやつなんじゃ……?
「わりぃな。いただきます」
やっぱこいつ絶対いいやつだ!
一口食べ数秒後地面でのたうってます。
「うおおおおおおおおえええ!!」
「「「アニキィ!」」」
取り巻きズがアニキさんのもとへ集まっていますね。
「何度食っても死ぬほどまずうぅい!」
でしょうね。
「そうですかねー?」
と言いながらむしゃむしゃと食べてるレーナンはたぶん大物なんだと思います。
あとたぶん味覚音痴。
結局レーナンが一人でペロっと平らげ満足そうにしていました。
余談ですが「ちょっとだけ……」食べたまりりすはいまログアウトして歯を磨きにいっています。
まりりすが戻ってきたのでお店を出ることにします。
「ごちそうさまでしたー! また入荷したらおしえてください!」
「まいどー! またきてねー」
「何度もごめなさい、びすけっとさん。今度はちゃんと食べに来ます」
「まってるよー」
「何度歯を磨いても気持ち悪さがのこって……うえっ……」
これが普通の反応です。
「じゃぁ二人ともクエストがんばってね」
そう言って二人を送り出します。
クエストかぁ……。
最近自分でクエストうけてないんですよね。
久々に私も何か受けましょうか。
しばらく歩き、案内所に到着します。
あっあとついでに職場募集の張り紙でも見てこようかな。
職場募集の掲示板のところに来て【料理人】やらなんやら探しますがめぼしいのはありませんでした。
ついでに従業員募集の掲示板を見てみます。
みんなどんな書き方なんだろう……とチェックしていると一際目を引く募集がありました。
『急募』
『【鍛冶職人】、【魔具職人】、【素材職人】、【錬金術師】、【調薬師】、【料理人】、【菓子職人】、【女給】、【黒服】』
『美人の女店主の下で働きませんか?』
『この度、従業員の大量雇用を検討しています。』
『優しい先輩と美人な店主が一から教えます。』
『お給料は全額先払い!』
『【女給】【黒服】は未経験でも大丈夫です!』
『興味のある方は『セーラム』従業員フランまでご連絡ください。』
あれ? これうちのか!
こんな文章だったっけ?
まぁいいや。
クエストカウンターまで行き面白そうなクエストを物色します。
『火山活動の調査:10万金』
『山岳調査隊の護衛:8万金』
『『氷山都市 ダイエト』までの運搬:22万金』
山しかねぇ。
通常クエストは山ばっかりだったので緊急クエストを探すことにしました。
『緊急:〔ユニークモンスター〕討伐』
『内容:『海上都市 ブラルタ』までの交易路に出現した〔スカウト・アンゲーロ〕の討伐』
『報酬:800万金』
そういえばまりりすとレーナンが護衛受けていましたね。
では私はこれを受けて安全の確保でもしておきましょうか。
「このクエストお願いします」
「はい。かしこまりました」
「クエストの内容を確認します。『海上都市 ブラルタ』までの交易路に出現した〔スカウト・アンゲーロ〕の討伐でよろしいですか?」
「はい」
「でしたらこちらに署名をお願いします」
わーなんかリアルっぽい。
「ありがとうございます。ご武運を」
さて準備していきましょうか。
いつものスライド移動で交易路まで向かいます。
掲示板に妖怪スライド女とかかいたやつは殺します。たぶんハリリンなので。
街をでて交易路を延々と西へ進んでいきます。
途中湧いたの雑魚は【猪突猛進】の【称号】を装備して轢き殺しておきます。この使い方は便利。
ある程度の敵をなぎ倒し進むと、目の前に貿易馬車が走っているのが見えました。
横を素通りしようとすると声を掛けられます。
「チェリー! どうしたのー?」
おっとこの声は!
減速して馬車と並走します。直立の姿勢で。
「まりりすさんとレーナンさんが受けたクエストの通り道に〔ユニーク〕が出たらしいので狩りに」
「そうなんですかー?」
「少し恨みがあるから即殺す。欠片も残さず」
「えっどんなうらみ?」
「こいつがいなければちゃんと廁に魚が卸されて、キング食わなくてよかったから」
「八つ当たり……」
「違うよ。とりあえず先にいってるね」
「がんばってー!」
サムズアップし速度をあげます。
数十分ほど進むと大きなモンスターらしき物体がありました。
おそらくはあれが〔スカウト・アンゲーロ〕でしょう。
遠距離から一発魔法でもぶちかましてあげましょう。
あっそうだせっかくなので……
「≪召喚〔GGB〕≫」
『グルオオオオオォン』
「よしゴリラ。練習の成果をみせて。≪フレイム・アロー≫」
20本ほど生成し、ゴリラに持たせます。
「やっちゃって」
『グルオオオオォォオ』
ドスドスドスと何発も〔スカウト・アンゲーロ〕に当たっていますがびくともしません。
「≪シャドウ・サンダー・ヘリックス≫」
絶級魔法に存在するヘリックスというドリルのような形状の魔法は貫通力が高く、殺傷力が高いので堅い敵には有効です。
〔スカウト・アンゲーロ〕の胴体に直撃し、悲鳴が聞こえます。
『グエェグェェェエェグェ』
こちらに気付き向きを変えます。
ゴリラがぶんぶん矢を投げてるのに苛立ち、ピョンピョン跳ねて向かってきます。
1歩1歩地震のように揺れていますが、浮いてる私には関係ありません。
恐ろしく大きいカエルですね。
10階建てのビルはあります。
高威力かつ高貫通力の魔法をたくさん撃って倒すか、弱点属性を見つけて、一気に削るか悩むところですね。
カエルって焼いたら食べれましたよね?
ちょっと炙ってみますか。
「≪グランド・フレイム≫」
一定範囲をキャンプファイヤーにする魔法を試しに撃ってみました。
『グエェーグエッグエー』
ん?
こいつ喜んでない?
火の中で気持ちよさそうな声をあげる巨大カエルに鳥肌が立ちます。
ドMなのか火が好きなのかは知りませんがとりあえず別の属性を使ってみます。
「≪アイス・ブロック≫」
指定した範囲を凍らせる魔法ですね。
左足の辺りを凍らせてみます。
いま装備の関係で闇属性魔法以外、中級止まりなのでこの辺が限界なのです。
『グエェーグエッゲッゲーイ』
すぅ……。
こいつただのマゾだ。
「おい、ゴリラ。あのマゾの前でちょっと踊れ」
『グルッルオオオッォオン?』
「いいから」
ゴリラを餌に見立てて口を開かせます。
狙い通り〔スカウト・アンゲーロ〕が口を開きます。
「≪ダーク・バースト≫」
バースト形態は任意の時間で爆発する爆弾になります。
口にひょいっと爆弾を投げ入れしばらく待ちます。
『ゴキュゥツ』
あっ飲み込みましたね。
「≪エクスプロード≫」
ぼんっと〔スカウト・アンゲーロ〕の身体が膨れ上がります。
流石に体内で爆弾はやりすぎでしたかね?
『グエェグエグググェ』
ケロっとしてますね。カエルだけに。
手詰まりですね。
結構高威力のをお見舞いしたはずなんですが……。
流石に詠唱魔法を使うのはまずいので手の打ちようがありません。
威力でだめなら属性で勝負したいのですが、中級までとなると期待できませんね。
うーん……とりあえず残りの属性も使ってみますか。
「≪ウィンド・ショット≫」
『グエェエエエ』
「≪アース・ボール≫」
『グッグエ』
「≪ホーリー・スピア≫」
『グエェグエェエエグ』
「≪ウォーター・シャワー≫」
『ピギャアアアアアアアアァ』
ん?
「≪ウォーター・シャワー≫」
『ピギャアァァアアアアア』
こいつ……カエルの癖に水が苦手みたいですね。
「≪ウォーター・ストーム≫」
『ピギャッギャッギャアア』
あっ……。
『〔スカウト・アンゲーロ〕の討伐を確認しました。ユニーク防具【アンゲーロ・ボトムス】をインベントリに獲得しました。』
【アンゲーロ・ボトムス】
装備効果:属性魔法の被ダメージ50%減少
水属性魔法の被ダメージ300%増加
防具固有スキル:≪フレイム・ヒーリング≫
水属性魔法の被ダメージ4倍になるそうですが魔法ダメージ軽減は強力なので装備することにします。
≪フレイム・ヒーリング≫は火属性魔法で受けるダメージを0にし、その数値分を回復するみたいですね。
早速装備するとヌルッっとしますが慣れれば大丈夫そうです。
歩くとペチャペチャ音がします。
「チェリー! 倒せたのー?」
まりりす達が追い付いてきたようですね。
「倒せたよ」
「おめでとうございます」
「たぶん誰でも倒せたんじゃないのかな?」
「そうなの?」
「うん。実は……」
馬車に一緒に乗せてもらい、〔スカウト・アンゲーロ〕の話をしながら『海上都市 ブラルタ』まで一緒に行くことにしました。
モンスターでもプレイヤーでも変態は許してはいけないと思います。
『海上都市 ブラルタ』に到着し、まりりす達は完了の報告に行き、少し観光してから帰るそうです。
私は一足先にホームのある『花の都 ヴァンヘイデン』に帰り、謎の疲れをリアルの睡眠でごまかしたいと思います。
あっあとお風呂入って足洗いたい。
「≪テレポート≫」
to be continued...
そろそろ部屋ができてる頃かな?
コンコンコンとラビの部屋をノックします。
「どうぞ!」
「おじゃまするね」
部屋を開けると壁が全面ピンク色になっており、中心に天蓋付きの白いベッド、奥の窓際には白いテーブルが置かれています。
オレンジ色のソファーが部屋の一点で存在を主張しています。
「かわいい」
「ありがとうございます!」
「よくがんばったね」
「おもかったー!」
「フランもお疲れ様」
「たのしかった! あっそういえばお昼くらいに【高位調薬師】と【上級鍛冶職人】の方が面接に来るそうです」
「わかった」
「では部屋に戻って寝ますね! おやすみなさい!」
「おやすみ」
「私も疲れちゃったので寝ます。これからよろしくおねがいします」
「こちらこそ。おやすみ」
ラビの部屋から出て1階の商品スペースに下ります。
まだ眠気度は溜まっていませんし、あれだけ動いたにも関わらずキャラクターに疲労度がたまっていないのでもう少しだけ活動することにします。
一通り商品の在庫を確認し、市場に出せるものは出しておきます。
フランが普段やっておいてくれるのですが、今日は面接やらプチリフォームやらでやる時間なかったでしょうししかたありません。
確認を終え、売上のチェックも行います。
店舗自体での売り上げはさほど多くありませんが、市場ではそこそこ売り上げていたみたいですね。ユニーク装備はお店でしか売っていないのであまりプラスにはなっていませんが。
よく売れるポーション系を作れる【高位調薬師】が来てくれるのはありがたいです。
ちゃんと起きれたら、面接には立ち会いますか。
自分で素材化するのが面倒なので、適当な商店にもっていき売却します。
「これなら19万金だね」
「わかりました」
代金を受け取り、素材を渡します。
やはり素材化して売ったほうが高くなりますね。
先ほど全部出してしまい、お腹がすいてきたのでさっと食べられるものでも探しましょうか。
うろうろと通りを歩き、串焼きを見つけたので頬張ります。
うん。おいしい。
「チェリー!」
後ろから声をかけられたので振り返ります。
「これはまりりすさんにレーナンさん。VRでは初めまして」
「あっはじめまして」
「はじめましてー」
「こんな時間にお散歩?」
「これからクエストに行くところ」
「クエストかー」
「うん。NPCの護衛クエストがあってこれから待ち合わせ場所にいくんだ」
「どこまで護衛するの?」
「『海上都市 ブラルタ』までだよ」
あっ嫌な記憶が……
「あそこにいる〔アンゴラ・キング・フィッシュ〕には気を付けて」
「えっどうして?」
どうして? ってそりゃ……
「マズイから」
「〔アンゴラ・フィッシュ〕っておいしいんじゃないっけ? キング、王様っていうくらいなんだから死ぬほどおいしいのかと思ってた」
「私もそう思ったよ。でも実際食べてみたらやばかった。吐いた」
「「えっ?」」
「一口食べてみる?」
「私は遠慮します」
「僕はちょっと興味あるかも……」
「じゃぁいこっか。『飯処 廁』にまだ残ってると思う」
「私どうなってもしらないからね」
「さすがにそこまでじゃないでしょー?」
甘い。
「こんばんわー」
「チェリー……二度目の来店ありがとう……して、どうしたのかな?」
「こちらのレーナンさんが例のブツを欲してるみたいですので」
「例のブツ?」
「例のブツです」
ニタァと笑うとそれで察したようで「すぐもってくるからまってて!」といって厨房の奥に消えていきました。
「うわーめっちゃおいしいそうな匂いがする」
「ちょっとおなかすいたかも」
「じゃぁ刺身でも食べよっか。すいません、〔アンゴラ・フィッシュの刺身〕を2皿ください」
「かしこまりましたー」
例の頬肉が到着するまで、先ほども食べた刺身をつまんでまっています。
「おまたせー! これが例のブツだよ!」
そう言って机の上に悪魔の食い物をおきました。
「ごゆっくりー」
とニヤニヤしながらカウンターに引っ込んでいきました。
こっそりこっち見てますね。
他のお客さんも見てますね。
仕方ないです、みんな気になるんですよ。
「ふつーにおいしそう。いただきます!」
そういってレーナンが箸を頬肉に突っ込みます。
「うん。匂いもいいしこれは期待しちゃうな」
パクッっと口に入れてモグモグと食べています。
さぁそろそろ来る頃ですね。
心なしかびすけっとの目もらんらんとしています。
ごくっっと飲み込む音が聞こえて、レーナンが言いました。
「うわー! これめっちゃおいしい!」
「え?」
「は?」
「「「「えっ?」」」」
この空間にいるまりりす以外の全員から疑問の声が漏れます。
いかにも悪役といった鎧を着た大男がレーナンに話しかけます。
あれ?こいつどっかで見たことあるような……まぁ思い出せないのからいいです。
「おい坊主ゥ……それがうまいわけねぇだろぉ?」
「いえ? 普通においしいですよこれ」
「そんなわけあるかよ!あっちょっとまてお前の食ってる部分があたりなんじゃねぇか?」
「あたりはずれもないと思いますけど」
「ツベコベ言ってんじゃねぇ!一口よこせや!」
「一口だけですよ……?」
「お、おうよ!」
大男はそう言って自分の席から箸と取り皿を持ってきて、箸をひっくり返し、取り皿に移します。
あれこいつもしかして普通にいいやつなんじゃ……?
「わりぃな。いただきます」
やっぱこいつ絶対いいやつだ!
一口食べ数秒後地面でのたうってます。
「うおおおおおおおおえええ!!」
「「「アニキィ!」」」
取り巻きズがアニキさんのもとへ集まっていますね。
「何度食っても死ぬほどまずうぅい!」
でしょうね。
「そうですかねー?」
と言いながらむしゃむしゃと食べてるレーナンはたぶん大物なんだと思います。
あとたぶん味覚音痴。
結局レーナンが一人でペロっと平らげ満足そうにしていました。
余談ですが「ちょっとだけ……」食べたまりりすはいまログアウトして歯を磨きにいっています。
まりりすが戻ってきたのでお店を出ることにします。
「ごちそうさまでしたー! また入荷したらおしえてください!」
「まいどー! またきてねー」
「何度もごめなさい、びすけっとさん。今度はちゃんと食べに来ます」
「まってるよー」
「何度歯を磨いても気持ち悪さがのこって……うえっ……」
これが普通の反応です。
「じゃぁ二人ともクエストがんばってね」
そう言って二人を送り出します。
クエストかぁ……。
最近自分でクエストうけてないんですよね。
久々に私も何か受けましょうか。
しばらく歩き、案内所に到着します。
あっあとついでに職場募集の張り紙でも見てこようかな。
職場募集の掲示板のところに来て【料理人】やらなんやら探しますがめぼしいのはありませんでした。
ついでに従業員募集の掲示板を見てみます。
みんなどんな書き方なんだろう……とチェックしていると一際目を引く募集がありました。
『急募』
『【鍛冶職人】、【魔具職人】、【素材職人】、【錬金術師】、【調薬師】、【料理人】、【菓子職人】、【女給】、【黒服】』
『美人の女店主の下で働きませんか?』
『この度、従業員の大量雇用を検討しています。』
『優しい先輩と美人な店主が一から教えます。』
『お給料は全額先払い!』
『【女給】【黒服】は未経験でも大丈夫です!』
『興味のある方は『セーラム』従業員フランまでご連絡ください。』
あれ? これうちのか!
こんな文章だったっけ?
まぁいいや。
クエストカウンターまで行き面白そうなクエストを物色します。
『火山活動の調査:10万金』
『山岳調査隊の護衛:8万金』
『『氷山都市 ダイエト』までの運搬:22万金』
山しかねぇ。
通常クエストは山ばっかりだったので緊急クエストを探すことにしました。
『緊急:〔ユニークモンスター〕討伐』
『内容:『海上都市 ブラルタ』までの交易路に出現した〔スカウト・アンゲーロ〕の討伐』
『報酬:800万金』
そういえばまりりすとレーナンが護衛受けていましたね。
では私はこれを受けて安全の確保でもしておきましょうか。
「このクエストお願いします」
「はい。かしこまりました」
「クエストの内容を確認します。『海上都市 ブラルタ』までの交易路に出現した〔スカウト・アンゲーロ〕の討伐でよろしいですか?」
「はい」
「でしたらこちらに署名をお願いします」
わーなんかリアルっぽい。
「ありがとうございます。ご武運を」
さて準備していきましょうか。
いつものスライド移動で交易路まで向かいます。
掲示板に妖怪スライド女とかかいたやつは殺します。たぶんハリリンなので。
街をでて交易路を延々と西へ進んでいきます。
途中湧いたの雑魚は【猪突猛進】の【称号】を装備して轢き殺しておきます。この使い方は便利。
ある程度の敵をなぎ倒し進むと、目の前に貿易馬車が走っているのが見えました。
横を素通りしようとすると声を掛けられます。
「チェリー! どうしたのー?」
おっとこの声は!
減速して馬車と並走します。直立の姿勢で。
「まりりすさんとレーナンさんが受けたクエストの通り道に〔ユニーク〕が出たらしいので狩りに」
「そうなんですかー?」
「少し恨みがあるから即殺す。欠片も残さず」
「えっどんなうらみ?」
「こいつがいなければちゃんと廁に魚が卸されて、キング食わなくてよかったから」
「八つ当たり……」
「違うよ。とりあえず先にいってるね」
「がんばってー!」
サムズアップし速度をあげます。
数十分ほど進むと大きなモンスターらしき物体がありました。
おそらくはあれが〔スカウト・アンゲーロ〕でしょう。
遠距離から一発魔法でもぶちかましてあげましょう。
あっそうだせっかくなので……
「≪召喚〔GGB〕≫」
『グルオオオオオォン』
「よしゴリラ。練習の成果をみせて。≪フレイム・アロー≫」
20本ほど生成し、ゴリラに持たせます。
「やっちゃって」
『グルオオオオォォオ』
ドスドスドスと何発も〔スカウト・アンゲーロ〕に当たっていますがびくともしません。
「≪シャドウ・サンダー・ヘリックス≫」
絶級魔法に存在するヘリックスというドリルのような形状の魔法は貫通力が高く、殺傷力が高いので堅い敵には有効です。
〔スカウト・アンゲーロ〕の胴体に直撃し、悲鳴が聞こえます。
『グエェグェェェエェグェ』
こちらに気付き向きを変えます。
ゴリラがぶんぶん矢を投げてるのに苛立ち、ピョンピョン跳ねて向かってきます。
1歩1歩地震のように揺れていますが、浮いてる私には関係ありません。
恐ろしく大きいカエルですね。
10階建てのビルはあります。
高威力かつ高貫通力の魔法をたくさん撃って倒すか、弱点属性を見つけて、一気に削るか悩むところですね。
カエルって焼いたら食べれましたよね?
ちょっと炙ってみますか。
「≪グランド・フレイム≫」
一定範囲をキャンプファイヤーにする魔法を試しに撃ってみました。
『グエェーグエッグエー』
ん?
こいつ喜んでない?
火の中で気持ちよさそうな声をあげる巨大カエルに鳥肌が立ちます。
ドMなのか火が好きなのかは知りませんがとりあえず別の属性を使ってみます。
「≪アイス・ブロック≫」
指定した範囲を凍らせる魔法ですね。
左足の辺りを凍らせてみます。
いま装備の関係で闇属性魔法以外、中級止まりなのでこの辺が限界なのです。
『グエェーグエッゲッゲーイ』
すぅ……。
こいつただのマゾだ。
「おい、ゴリラ。あのマゾの前でちょっと踊れ」
『グルッルオオオッォオン?』
「いいから」
ゴリラを餌に見立てて口を開かせます。
狙い通り〔スカウト・アンゲーロ〕が口を開きます。
「≪ダーク・バースト≫」
バースト形態は任意の時間で爆発する爆弾になります。
口にひょいっと爆弾を投げ入れしばらく待ちます。
『ゴキュゥツ』
あっ飲み込みましたね。
「≪エクスプロード≫」
ぼんっと〔スカウト・アンゲーロ〕の身体が膨れ上がります。
流石に体内で爆弾はやりすぎでしたかね?
『グエェグエグググェ』
ケロっとしてますね。カエルだけに。
手詰まりですね。
結構高威力のをお見舞いしたはずなんですが……。
流石に詠唱魔法を使うのはまずいので手の打ちようがありません。
威力でだめなら属性で勝負したいのですが、中級までとなると期待できませんね。
うーん……とりあえず残りの属性も使ってみますか。
「≪ウィンド・ショット≫」
『グエェエエエ』
「≪アース・ボール≫」
『グッグエ』
「≪ホーリー・スピア≫」
『グエェグエェエエグ』
「≪ウォーター・シャワー≫」
『ピギャアアアアアアアアァ』
ん?
「≪ウォーター・シャワー≫」
『ピギャアァァアアアアア』
こいつ……カエルの癖に水が苦手みたいですね。
「≪ウォーター・ストーム≫」
『ピギャッギャッギャアア』
あっ……。
『〔スカウト・アンゲーロ〕の討伐を確認しました。ユニーク防具【アンゲーロ・ボトムス】をインベントリに獲得しました。』
【アンゲーロ・ボトムス】
装備効果:属性魔法の被ダメージ50%減少
水属性魔法の被ダメージ300%増加
防具固有スキル:≪フレイム・ヒーリング≫
水属性魔法の被ダメージ4倍になるそうですが魔法ダメージ軽減は強力なので装備することにします。
≪フレイム・ヒーリング≫は火属性魔法で受けるダメージを0にし、その数値分を回復するみたいですね。
早速装備するとヌルッっとしますが慣れれば大丈夫そうです。
歩くとペチャペチャ音がします。
「チェリー! 倒せたのー?」
まりりす達が追い付いてきたようですね。
「倒せたよ」
「おめでとうございます」
「たぶん誰でも倒せたんじゃないのかな?」
「そうなの?」
「うん。実は……」
馬車に一緒に乗せてもらい、〔スカウト・アンゲーロ〕の話をしながら『海上都市 ブラルタ』まで一緒に行くことにしました。
モンスターでもプレイヤーでも変態は許してはいけないと思います。
『海上都市 ブラルタ』に到着し、まりりす達は完了の報告に行き、少し観光してから帰るそうです。
私は一足先にホームのある『花の都 ヴァンヘイデン』に帰り、謎の疲れをリアルの睡眠でごまかしたいと思います。
あっあとお風呂入って足洗いたい。
「≪テレポート≫」
to be continued...
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鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
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自筆です。
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
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これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
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branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
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現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
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癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
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親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
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ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
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誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
老聖女の政略結婚
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エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
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相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
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