VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑

文字の大きさ
39 / 259
第2章 猫姫王国

第2章2幕 射撃<shooting>

しおりを挟む
 静かに怒りを爆発させているステイシーとその辺の木に八つ当たりをしている私達のもとへ伝令がやってきました。
 「またせたっすーってなんすかこの惨状!」
 一帯の木が圧し折れ、見晴らしの良くなった山中にハリリンが現れます。
 「なるほどっす」
 エルマがいないこと、私がそこかしこに魔法を放っている様子をみて納得したようです。
 「チェリー達のおかげで魔法を遮断していた結界がとけたっす」
 犠牲は大きかったですけどね。
 「そこで連合軍から大魔法の発動許可が出たっす」
 「捕虜のNPCは?」
 「大方回収できたっす。何人か残っているみたいっすけど」
 「僕はもうぷんぷんだからすぐにでもぶっ放したいけどー?」
 そういってステイシーが私を見ます。
 もちろん私の答えは決まっています。
 「全員の無事が確認できないなら撃てない」
 「チェリーならそう言うと思ったっす。これをどうぞっす」
 ハリリンが封筒を手渡してきたので受け取り、読みます。

 『チェリー殿』
 『貴殿のパーティーメンバーとともに『猫姫王国』に突入し、敵首領『愛猫姫』を討て。騎士団長ダローンより』

 「…………」
 読み終わった私はそれをステイシーに渡し、ハリリンに言います。
 「つまり国ごと殲滅じゃなくて主犯の愛猫姫を殺せってこと?」
 「そうっす。捕虜の救出が終わったらすぐに詠唱魔法で国ごと消滅させていいそうっす」
 国ごと消していいなんてずいぶん物騒だこと。解放さえされれば復興は意外とスムーズなのかもしれませんね。
 「僕も了解したよー。クソオンナに直接魔法を当てるほうがすっきりするしね」
 「ステイシーなんか恨みでもあるの? エルマのこと以外で」
 「うーん。ちょっとねー」
 あっ……これ過去になんかあったぞ!
 「じゃぁお願いするっす。俺は諜報にもどるっす」
 「がんばれ」
 ハリリンを送り出し、ステイシーと二人で今後の方針を決めます。
 「侵入してお城に攻め込んだとして、敵の防衛を二人でぬけれるかな?」
 「きびしいだろうねー」
 「詠唱魔法が連発できればいいんだけど」
 「僕は連続で2回撃ったらもうしばらく何もできなくなるかなー」
 「私は……3回だね」
 生贄を消費するもの、HPを消費するもの、MPを消費するものの3つです。
 「なるべく使わないようにしないとねー」
 「そうだね。とりあえず主戦力と合流する?」
 「そうしよっかー」
 
 主戦力が敵戦力を打ち破りつつ、侵攻するのについていくという形で話がまとまり、実行します。
 門の少し先で足止めをくらっているようであまり侵攻できてるとは言えないですね。
 先頭で戦闘しているジュンヤを見つけたので声を掛けます。
 「がんばってるね」
 「チェリーにステイシー、お前らは別行動じゃなかったのか?」
 「いろいろあって二人で愛猫姫を殺ることになった」
 「深くは聞かねぇ。ってことは城の内部までいくんだよな?」
 「そうなる」
 「ファンダン! チェリー達のガード頼めるか?」
 「任せろ」
 ファンダンがスッと現れ了承してくれました。
 「カウント5で強スキルを撃つ。一時的に敵に隙間が出るだろうからそこからいけ」
 「了解」
 「いくぞ! 5!」
 よっこいせと私とステイシーをファンダンが担ぎます。
 「なになになに!?」
 「舌噛むぞ。黙ってろ」
 「4!」
 何が何だかわからず、俵担ぎされる私とステイシーをよそに、カウントは進みます。
 「3!」 
 ピョンピョンと飛び跳ねて足の筋肉の動きを確認するファンダンとその背後に並ぶ屈強な男たちが確認できました。
 「2!」
 屈強な男たちがファンダンの背中を掴みます。
 「1!」
 私達を担いだファンダンを屈強な男たちが持ち上げます。
 「【大爆水龍衝】」
 正面に水でできた龍を飛ばすジュンヤを見ることができました。
 道があいた! そう思った瞬間、屈強な男たちに投げられました。

 ファンダンwithチェリー&ステイシーは中央通りをものすごい速度で飛んでいます。
 「うあああああああああ!」
 「ああああああー」
 「ぬうううううううう」
 私、ステイシー、ファンダン、みな声をあげていますね。
 それもそうですよ、あんだけ屈強な男たちに投げられれば宇宙ステーションだって行けますよ。
 
 その飛翔体験も長くはなく、ガッガガッと音を立てファンダンが地面に顔から着地してクッションになってくれました。
 鼻血を出しながらファンダンが起こしてくれたので、お礼に回復をかけてあげました。
 「すまんな。まぁ俺としては褒美はもうもらっているから別にいいんだが」
 「何貰ったの?」
 「いや何でもない。さて第一の肉壁は壁通過したわけだが……そう簡単にはいかせてもらえねぇわな」
 わらわらと『猫姫王国』の構成員が集まってきます。
 「カモがきたぜぇ! やっぞ!」
 「おっ! 女じゃねぇか! あいつは最後にすっぞ!」
 あれ? 聞いてた話と違う。
 みんな愛猫姫のファンで親衛隊みたいな感じって聞いてたんだけど。
 「俺たちは傭兵だからなぁ」
 こいつ……読心術か!
 「わかっているな?」
 ファンダンがそう問いかけてきます。
 もちろん私もステイシーもわかっています。ここはファンダンを肉盾にして、後方から魔法で殲滅ですよね。
 「野郎共! かかれー!」
 ダーっと走り出した傭兵たちへシューティングゲームのような感じて魔法を当てていきます。
 「≪ダーク・ピアス≫」
 「≪サンダー・ピアス≫」
 「これちょっと楽しいかも。≪ダーク・スパーク≫」
 「奇遇だねー。僕もそう思ってた。≪サンダー・スプレッド≫」
 「ぎゃぁー」という悲鳴をBGMにしつつ、スコアを稼いでいきます。
 たまにファンダンの盾にコーンとぶつかる音がしますが、この程度なら耐えれるでしょう。

 辺り一帯の傭兵を倒し終え、スコアのチェックに移ります。
 「私33人」
 「僕は39人」
 「あーまけたー」
 「かったー」
 「ちなみに俺は4人だ」
 「やーい。ザーコ」
 「バカ野郎。盾持ってなければもうちょっと行けたぞ」
 ひとしきり、ファンダンをからかったあと、ステイシーが口を開きます。
 「ちょっと意外だったねー」
 「ん? なにが?」
 「傭兵のことか?」
 「うんー」
 「何が意外なの?」
 「連中、傭兵を集めるほど戦力が足りないってことだろ?」
 「あっなるほど」
 「【最速】と【天罰神】に削られた分の穴埋めかなー? でもそれにしては練度が低いよねー」
 「まぁ考えて答えが出ることじゃない。いまは先に進むぞ」
 「はーい」
 「うんー」

 中央通りを北へ延々と進んでいきます。
 途中途中でギルドの構成員らしき人物や、傭兵が出てきますが、ステイシーにかかれば蚊を殺すも同然なので無視します。

 「城の門が見えてきたぞ」
 「めっちゃ可愛い門だ」
 「もう僕限界ー。≪シーボール・ヘリックス≫」
 ドガーンと爆音を立て門が崩れていきます。
 「えええええ!」
 「暴発しちゃったー」
 悪気がないようで絶対あるステイシーの顔を見つつ敵を警戒します。
 あらかた瓦礫の下敷きですがそれでも死んでいない猛者がこちらにとびかかってきます。
 「≪ダーク・ファランクス≫」
 新たに制作しておいたファランクスという形態を用いて敵を殲滅しておきます。
 ファランクスは複数のランスシェイプの魔法を展開、保持して敵をブスブス刺すものなので楽でいいです。良く思いついた私えらい。

 崩れた門の跡を通り抜け、城へ侵入しました。
 ここからが本当の戦闘が始まるところです。
 親衛隊の中でもトップクラス……Lv.300超えがちらほらいるかもしれませんね。
 改めて……。
 「お前ら、首を洗って待ってろよ? 親友の敵、絶対取ってやるからな!」
 そう大声で叫びます。
                                      to be continued...
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無表情ドールマスター

けんはる
ファンタジー
無表情少女香月 ゆずが姉に誘われて始めたVRMMO〈Only Fantasy〉で十天聖の一人に選ばれてしまうが そんなことは関係なく自由に行動していく物語 良ければ 誤字・脱字があれば指摘してください 感想もあれば嬉しいです 小説を書こうでも書いてます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...