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第4章 精霊駆動
第4章57幕 二輪車<motorcycle>
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「こんなんでどうよ?」
ふふん、と自信あり気に両手を腰に当てエルマが私に聞いてきます。
「正直驚いた」
エルマが施した塗装は、私のホーム、『セーラム』の絵でした。
「これなら寂しくないっしょ。まぁ転移ですぐなんだけどね」
「そうだけどね。ありがとう凄いうれしい」
「ちんまい嬢ちゃんはすんげー絵が上手いんだな」
こっち見んなよ。
「それで完成なら上から塗装が剥げないようにコーティングしておくぜ?」
「じゃぁお願いします」
「ちんまい嬢ちゃんの方はもうコーティングも終わってる頃だな。ちょっと乗ってくるか?」
「んにゃ。チェリーのが完成してから一緒に試そうかなってね」
「仲がいいんだな。そう言うことなら乾くまでどうだ?」
デュレアルが手をコップを持つような形に握りくいくいやっています。
つまり飲みに行かないか? ということですね。
「どうするチェリー?」
「お世話になっちゃったし行こうか」
「だね。一緒にいこー!」
「へっへ。ちょっと待ってな。アインのコーティングが終わり次第出発だ」
少しアインの背中がビクっとして先ほどまでの倍くらいの速度で仕上げを始めます。
ものの数分程度で仕上げを終えたようで、こちらにアインが戻ってきます。
「仕上げ終わりだ。あとは乾燥させれば完成だな。嬢ちゃん楽しみにしてろよ」
「はい」
「んじゃぁ行くか!」
デュレアルの声に続き、アインとリベラルも「おぅ」と声を出し工房から出て行ったので私とエルマも続きます。
「ここだ」
デュレアル達が店の前で立ち止まります。
「『大衆酒場 手のひら返し』……」
酷い名前ですね。
「このゲームそう言う名前多いよね」
エルマの言う通りですよね。
「好きなもん頼んでくれ」
「いえ。こちらの支払いは私が持ちますので、好きなように頼んでください」
「いいのか? 見りゃわかると思うが俺ら三人は食うぞ?」
少し心配そうな顔でデュレアルがそう言うとアインとリベラルもうんうんと頷きます。
「大変な仕事を持ち込んでしまったのでそのお返しです」
「チェリーあたしも半分だすよん」
「ありがとう。ということで好きなだけ食べてください」
私とエルマのお財布を合わせたのならたぶん耐えられるでしょう。
私はいま驚愕しています。
この世の者とは思えない食事の量です。
「いや。すまねぇな嬢ちゃん達。昨日の夜からがっつり食べていなくてよ」
はははと笑いながら、デュレアルは唐揚げのようなものを20人前くらい食べています。
「徹夜の後は食欲がやばいな」
そういうアインも10人前以上と推測される、ラーメンどんぶりのようなものにしこたま盛られた白米をもぐもぐ口にいれています。
「こいつら二人は例外だと思うぞ?」
リベラルがそう言いながら5人前位の焼きそば風の麺類を啜っています。
「あんだけ食べた後にそれは説得力が無いと思うよ?」
エルマがそう言いながら枝豆のようなものをちびちび食べながらビールを飲んでいます。
この三人衆、いま食べてるものを食べ始める前に各自10人前位の焼き魚食べてるんですよ。どんな胃袋してるんですかね。
「食っとけよ。力になるぞ」
20人前の唐揚げのようなものを食べきったデュレアルが追加で10人前の唐揚げと10人前の白米を頼んでいました。
もう机の上が地獄のような光景です。
漫画かアニメでした見たことありませんよこの量。
「嬢ちゃん達会計の時びびんなよ?」
リベラルにそう言われ、私とエルマはさらに不安になります。
「は、話を変えよう。たくさん食べる人を見てるとこっちもお腹いっぱいになるよね」
エルマが私にそう言ってきます。
「わかる。ステイシーとか見てるとかなりね。でもステイシーでもこんな量食べれないと思う」
「たぶん食べれるのはファンダンだけじゃないかな? あいつ【大食らい】の【称号】持ってるし」
「そうなのか。知らなかった」
「んあ? 【大食らい】か。懐かしいな」
「だな」
デュレアルとアインが会話に参加してきます。
「持ってるんですか?」
「いや。俺らは持ってねぇ。昔持っていたがな」
「どういうことです?」
「【大食らい】の次段階まで進んでるからな。【店殺し】だな」
「「…………」」
「驚くことはねぇ。頑張ればだれでも取れる【称号】だぞ。大食いメニューを出す店で賞金を10万金くらい稼げばすぐだ」
これほどどうでもいい情報はないですね。
「あとでファンダンにチャットしてみよっと」
あぁ。【大食らい】持ってるならその次段階の情報はあっても困りませんね。
「そう言えばチェリー【暴食】もってなかった?」
「うん。持ってるよ」
「髭の三人衆くらい食べれないの?」
「【暴食】は体型が変わらないっていう効果しかないよ」
ちなみにそのような効果を持たない状態で食べまくっていると、≪肥満≫という状態異常にかかり、AGIやDEXが著しく低下します。
私達はこの一時間、髭の三人衆のこの世の者とは思えない食べっぷりを嫌というほど眺めていました。その彼らは、食後の一杯と称し、大ジョッキのビールを4.5杯飲んでいます。
一杯じゃないじゃん。
「ぷっぱー。いや。満足だ」
「腹が満たされるほど幸せなことはねぇ」
「言えてるな」
三人とも満足したようで工房に帰ると言ったのでエルマとお会計をしに行きます。
「お会計2600金です」
「はい?」
不自然なほどに安いお会計に私は素っ頓狂な声をあげてしまいます。
「お会計2600金です」
「えっと……私達あれだけ食べたんですけど……」
「どれもチャレンジメニューですよ? 時間内に食べきれば無料です。ちなみに一品につき大ジョッキのビールがサービスで付きます」
ビビるなってそういうことですか。
確かにお会計を詳しく見ると、私とエルマが頼んだ飲み物と食事の分しか記載されていません。
「お店大丈夫なのですか?」
「駄目ですね。店主が一週間赤字だと泣いていました」
「なんかすいません」
「いえ。私は特に被害を受けていないので。メニューを作った店主が悪いので気にしないでください」
「大変なんですね」
「それはもう。ちょうど頂きました。またお越しください」
「ええ。あの人たちには食いすぎないように釘をさしておきます」
「いえ。もっと食べてお店を潰してあげてください。店主もその方が踏ん切りがつくと思うので」
あっ。このNPCはポテトと同じタイプだ。
「度が過ぎないようには注意しておきます。ごちそうさまでした」
「はい」
私が会話を終え、エルマと店の外に出ると、待っていた三人衆がにやにやとこちらを見てきます。
「な? びびったろ?」
「あの、あまりお店を困らせないでください」
「と言ってもなぁ。出入り禁止にされないからまた行っちまうんだよ」
「だな」
「旨いしな」
いえ。味しませんでした。
お腹を擦りながら歩く三人衆の後について工房まで戻ってきました。
「ちょっと様子を見てくるわ」
そう言ってアインが私の二輪車のコーティングを確認しに行きました。
しゃがみこんだアインが「飯がでそうだぜ」とか言っていたのは聞かなかったことにします。
「これで今回の依頼は完了になるな。完成品試しにいくか?」
「えっ? 駄目ですよ。お酒飲んで運転しちゃ」
私は驚いてそう返してしまいます。
逆に私の返答にデュレアルは驚いた用でぽっかり口を開けてこちらを眺めてきます。
「どういうことだ? 酒を飲んでいても運転に支障はないだろ?」
あっ。この世界ではいいんですね。
「すいません。故郷ではそうだったもので」
「変わった所もあるもんだな」
「完成だ」
奥からアインの声が聞こえ、デュレアルとリベラルが走っていき、私とエルマもそちらに走っていきます。
「俺たちが作った過去最高の作品だ。メンテナンスとかもいつでもやるから持ってきてくれ。ちんまい嬢ちゃんの方はこまめに燃料を補充してな。動物の脂とかオイルでいい。とりあえず具合を確かめてくれ」
そう言われたので私とエルマは自分の二輪車へと向かい、跨ります。
【双精二輪 ツインエモート】と銘打たれたこの機体はしっかりと私の手に、身体に馴染みます。
「嬢ちゃんスピードを出すときは前傾になるんだが、ここを弾いてくれ」
デュレアルが操縦桿……ハンドルの少し下についている突起を指さします。
「こうですか?」
私がその突起を弾くとカチリという音とともに、ハンドルが埋まり、少し前に出ます。
「おお。やはりうまくいったか。前傾姿勢の時、より二輪車と一体化できると思ってな。組み込んで正解だったぜ。ちんまい嬢ちゃんの方もいいみたいだな。よし少し教えてやる。転がしてついてこい」
そう言ったデュレアルが一度も開けていなかったシャッターのようなものを開けました。
そこには三台の二輪車がおいてあり、三人衆がそちらに向かって歩いていきます。
「相棒」
デュレアルがそう言いながら自分の二輪車をなでなでしています。他の2人も似たようなものでした。
「んじゃぁついてきてくれ」
二輪車を転がしながら行った場所は昨日魔法刀の試し切りをした場所でした。
「ここは乗り物のテストもできるんだぜ」
リベラルがそう言い、草むらに隠れた地下への扉をこじ開けます。
扉をくぐり地下の空間へとやってきた私達二人にアインが場所の説明をしてくれます。
「さっきも言ったがここは乗り物をテストしたりする場所だ。ここで練習するぞ。跨ってくれ」
アインの説明が終わったのに合わせデュレアルがそう言います。
「跨ったな。嬢ちゃんは魔力を両手に集めてくれ。ちんまい嬢ちゃんは右手だ」
身体の表面を覆うオーラのようなものをイメージし、それを両手に集めるイメージをします。
すると私が跨っている【双精二輪 ツインエモート】の精霊駆動が動き始めます。
「二人とも筋がいいな。そしたら嬢ちゃんは真ん中にあるスイッチをまず右に倒してくれ。それで右側の駆動のみを使用する。俺らの技術不足ですまないんだが、どうしても起動時には両方から魔力を流さなきゃ駄目だった」
「いえ十分です」
「ちんまい嬢ちゃんはそのまま右手をこう引くんだ」
デュレアルが現実世界でバイクのアクセルを回す動作をします。
「こうだね!」
そう言ったエルマが右手を捻るとびゅんと加速した二輪車から放り出されていました。
「いったーい!」
「一気に捻りすぎだ。もう少しゆっくり捻る」
デュレアルからそう言われたエルマがうんうんと唸りながら練習を始めました。
「悪いなリベラル。ちんまい嬢ちゃんをよく見てやってくれ」
「おぅ」
「嬢ちゃんは割と様になってるな」
まぁ。ゲームセンターにあるバイクのゲーム結構遊びましたからね。
「基本の操作は同じだが、スイッチを変えると左の駆動、両方と切り替えられる」
「このスイッチでやるんですね」
「あぁ。じゃぁ早速走ってみるか」
「はい」
私は右手を捻り、二輪車を走らせます。
次の瞬間私の目は天井を捉え、そしてかなり減ったHPを確認しました。
to be continued...
ふふん、と自信あり気に両手を腰に当てエルマが私に聞いてきます。
「正直驚いた」
エルマが施した塗装は、私のホーム、『セーラム』の絵でした。
「これなら寂しくないっしょ。まぁ転移ですぐなんだけどね」
「そうだけどね。ありがとう凄いうれしい」
「ちんまい嬢ちゃんはすんげー絵が上手いんだな」
こっち見んなよ。
「それで完成なら上から塗装が剥げないようにコーティングしておくぜ?」
「じゃぁお願いします」
「ちんまい嬢ちゃんの方はもうコーティングも終わってる頃だな。ちょっと乗ってくるか?」
「んにゃ。チェリーのが完成してから一緒に試そうかなってね」
「仲がいいんだな。そう言うことなら乾くまでどうだ?」
デュレアルが手をコップを持つような形に握りくいくいやっています。
つまり飲みに行かないか? ということですね。
「どうするチェリー?」
「お世話になっちゃったし行こうか」
「だね。一緒にいこー!」
「へっへ。ちょっと待ってな。アインのコーティングが終わり次第出発だ」
少しアインの背中がビクっとして先ほどまでの倍くらいの速度で仕上げを始めます。
ものの数分程度で仕上げを終えたようで、こちらにアインが戻ってきます。
「仕上げ終わりだ。あとは乾燥させれば完成だな。嬢ちゃん楽しみにしてろよ」
「はい」
「んじゃぁ行くか!」
デュレアルの声に続き、アインとリベラルも「おぅ」と声を出し工房から出て行ったので私とエルマも続きます。
「ここだ」
デュレアル達が店の前で立ち止まります。
「『大衆酒場 手のひら返し』……」
酷い名前ですね。
「このゲームそう言う名前多いよね」
エルマの言う通りですよね。
「好きなもん頼んでくれ」
「いえ。こちらの支払いは私が持ちますので、好きなように頼んでください」
「いいのか? 見りゃわかると思うが俺ら三人は食うぞ?」
少し心配そうな顔でデュレアルがそう言うとアインとリベラルもうんうんと頷きます。
「大変な仕事を持ち込んでしまったのでそのお返しです」
「チェリーあたしも半分だすよん」
「ありがとう。ということで好きなだけ食べてください」
私とエルマのお財布を合わせたのならたぶん耐えられるでしょう。
私はいま驚愕しています。
この世の者とは思えない食事の量です。
「いや。すまねぇな嬢ちゃん達。昨日の夜からがっつり食べていなくてよ」
はははと笑いながら、デュレアルは唐揚げのようなものを20人前くらい食べています。
「徹夜の後は食欲がやばいな」
そういうアインも10人前以上と推測される、ラーメンどんぶりのようなものにしこたま盛られた白米をもぐもぐ口にいれています。
「こいつら二人は例外だと思うぞ?」
リベラルがそう言いながら5人前位の焼きそば風の麺類を啜っています。
「あんだけ食べた後にそれは説得力が無いと思うよ?」
エルマがそう言いながら枝豆のようなものをちびちび食べながらビールを飲んでいます。
この三人衆、いま食べてるものを食べ始める前に各自10人前位の焼き魚食べてるんですよ。どんな胃袋してるんですかね。
「食っとけよ。力になるぞ」
20人前の唐揚げのようなものを食べきったデュレアルが追加で10人前の唐揚げと10人前の白米を頼んでいました。
もう机の上が地獄のような光景です。
漫画かアニメでした見たことありませんよこの量。
「嬢ちゃん達会計の時びびんなよ?」
リベラルにそう言われ、私とエルマはさらに不安になります。
「は、話を変えよう。たくさん食べる人を見てるとこっちもお腹いっぱいになるよね」
エルマが私にそう言ってきます。
「わかる。ステイシーとか見てるとかなりね。でもステイシーでもこんな量食べれないと思う」
「たぶん食べれるのはファンダンだけじゃないかな? あいつ【大食らい】の【称号】持ってるし」
「そうなのか。知らなかった」
「んあ? 【大食らい】か。懐かしいな」
「だな」
デュレアルとアインが会話に参加してきます。
「持ってるんですか?」
「いや。俺らは持ってねぇ。昔持っていたがな」
「どういうことです?」
「【大食らい】の次段階まで進んでるからな。【店殺し】だな」
「「…………」」
「驚くことはねぇ。頑張ればだれでも取れる【称号】だぞ。大食いメニューを出す店で賞金を10万金くらい稼げばすぐだ」
これほどどうでもいい情報はないですね。
「あとでファンダンにチャットしてみよっと」
あぁ。【大食らい】持ってるならその次段階の情報はあっても困りませんね。
「そう言えばチェリー【暴食】もってなかった?」
「うん。持ってるよ」
「髭の三人衆くらい食べれないの?」
「【暴食】は体型が変わらないっていう効果しかないよ」
ちなみにそのような効果を持たない状態で食べまくっていると、≪肥満≫という状態異常にかかり、AGIやDEXが著しく低下します。
私達はこの一時間、髭の三人衆のこの世の者とは思えない食べっぷりを嫌というほど眺めていました。その彼らは、食後の一杯と称し、大ジョッキのビールを4.5杯飲んでいます。
一杯じゃないじゃん。
「ぷっぱー。いや。満足だ」
「腹が満たされるほど幸せなことはねぇ」
「言えてるな」
三人とも満足したようで工房に帰ると言ったのでエルマとお会計をしに行きます。
「お会計2600金です」
「はい?」
不自然なほどに安いお会計に私は素っ頓狂な声をあげてしまいます。
「お会計2600金です」
「えっと……私達あれだけ食べたんですけど……」
「どれもチャレンジメニューですよ? 時間内に食べきれば無料です。ちなみに一品につき大ジョッキのビールがサービスで付きます」
ビビるなってそういうことですか。
確かにお会計を詳しく見ると、私とエルマが頼んだ飲み物と食事の分しか記載されていません。
「お店大丈夫なのですか?」
「駄目ですね。店主が一週間赤字だと泣いていました」
「なんかすいません」
「いえ。私は特に被害を受けていないので。メニューを作った店主が悪いので気にしないでください」
「大変なんですね」
「それはもう。ちょうど頂きました。またお越しください」
「ええ。あの人たちには食いすぎないように釘をさしておきます」
「いえ。もっと食べてお店を潰してあげてください。店主もその方が踏ん切りがつくと思うので」
あっ。このNPCはポテトと同じタイプだ。
「度が過ぎないようには注意しておきます。ごちそうさまでした」
「はい」
私が会話を終え、エルマと店の外に出ると、待っていた三人衆がにやにやとこちらを見てきます。
「な? びびったろ?」
「あの、あまりお店を困らせないでください」
「と言ってもなぁ。出入り禁止にされないからまた行っちまうんだよ」
「だな」
「旨いしな」
いえ。味しませんでした。
お腹を擦りながら歩く三人衆の後について工房まで戻ってきました。
「ちょっと様子を見てくるわ」
そう言ってアインが私の二輪車のコーティングを確認しに行きました。
しゃがみこんだアインが「飯がでそうだぜ」とか言っていたのは聞かなかったことにします。
「これで今回の依頼は完了になるな。完成品試しにいくか?」
「えっ? 駄目ですよ。お酒飲んで運転しちゃ」
私は驚いてそう返してしまいます。
逆に私の返答にデュレアルは驚いた用でぽっかり口を開けてこちらを眺めてきます。
「どういうことだ? 酒を飲んでいても運転に支障はないだろ?」
あっ。この世界ではいいんですね。
「すいません。故郷ではそうだったもので」
「変わった所もあるもんだな」
「完成だ」
奥からアインの声が聞こえ、デュレアルとリベラルが走っていき、私とエルマもそちらに走っていきます。
「俺たちが作った過去最高の作品だ。メンテナンスとかもいつでもやるから持ってきてくれ。ちんまい嬢ちゃんの方はこまめに燃料を補充してな。動物の脂とかオイルでいい。とりあえず具合を確かめてくれ」
そう言われたので私とエルマは自分の二輪車へと向かい、跨ります。
【双精二輪 ツインエモート】と銘打たれたこの機体はしっかりと私の手に、身体に馴染みます。
「嬢ちゃんスピードを出すときは前傾になるんだが、ここを弾いてくれ」
デュレアルが操縦桿……ハンドルの少し下についている突起を指さします。
「こうですか?」
私がその突起を弾くとカチリという音とともに、ハンドルが埋まり、少し前に出ます。
「おお。やはりうまくいったか。前傾姿勢の時、より二輪車と一体化できると思ってな。組み込んで正解だったぜ。ちんまい嬢ちゃんの方もいいみたいだな。よし少し教えてやる。転がしてついてこい」
そう言ったデュレアルが一度も開けていなかったシャッターのようなものを開けました。
そこには三台の二輪車がおいてあり、三人衆がそちらに向かって歩いていきます。
「相棒」
デュレアルがそう言いながら自分の二輪車をなでなでしています。他の2人も似たようなものでした。
「んじゃぁついてきてくれ」
二輪車を転がしながら行った場所は昨日魔法刀の試し切りをした場所でした。
「ここは乗り物のテストもできるんだぜ」
リベラルがそう言い、草むらに隠れた地下への扉をこじ開けます。
扉をくぐり地下の空間へとやってきた私達二人にアインが場所の説明をしてくれます。
「さっきも言ったがここは乗り物をテストしたりする場所だ。ここで練習するぞ。跨ってくれ」
アインの説明が終わったのに合わせデュレアルがそう言います。
「跨ったな。嬢ちゃんは魔力を両手に集めてくれ。ちんまい嬢ちゃんは右手だ」
身体の表面を覆うオーラのようなものをイメージし、それを両手に集めるイメージをします。
すると私が跨っている【双精二輪 ツインエモート】の精霊駆動が動き始めます。
「二人とも筋がいいな。そしたら嬢ちゃんは真ん中にあるスイッチをまず右に倒してくれ。それで右側の駆動のみを使用する。俺らの技術不足ですまないんだが、どうしても起動時には両方から魔力を流さなきゃ駄目だった」
「いえ十分です」
「ちんまい嬢ちゃんはそのまま右手をこう引くんだ」
デュレアルが現実世界でバイクのアクセルを回す動作をします。
「こうだね!」
そう言ったエルマが右手を捻るとびゅんと加速した二輪車から放り出されていました。
「いったーい!」
「一気に捻りすぎだ。もう少しゆっくり捻る」
デュレアルからそう言われたエルマがうんうんと唸りながら練習を始めました。
「悪いなリベラル。ちんまい嬢ちゃんをよく見てやってくれ」
「おぅ」
「嬢ちゃんは割と様になってるな」
まぁ。ゲームセンターにあるバイクのゲーム結構遊びましたからね。
「基本の操作は同じだが、スイッチを変えると左の駆動、両方と切り替えられる」
「このスイッチでやるんですね」
「あぁ。じゃぁ早速走ってみるか」
「はい」
私は右手を捻り、二輪車を走らせます。
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