地球怨念化

あさくやスバル

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決意の代償

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村長の屋敷を後にしたカムイだったが、


屋敷を出ると外には多くの村人が集まっていた。


皆、顔見知りだった。


幼き頃からずっとカムイを助けてくれた恩人達だ。


カムイの姿を見ると各々、


何かを言おうとした。


しかし、カムイは無言で歩きだした。


なぜなら、ここは既に自分が居ることが


許された場所ではないからだ。


自分は今夜この場にいる人達を


結果的に裏切ってしまったのだ。


彼らに話しかけられる資格など


自分にはないのだ。


そんなカムイの様子を見て、


周囲の村人達も皆黙って


道を譲る。


本心では、今すぐにでもカムイ


に声をかけたいだろうか、


そうすれば、カムイはもっと


自分に罪悪感を抱いてしまうだろう。


彼らは、ただ黙ってカムイを


見送ることしか出来なかった。


しばらくすると、村の入口に辿り着いた。


門番には既に村長から


連絡がきているのか、


カムイが門の前に立つと


静かに門が開き始めた。


そして、門をくぐろうとした時だった。


「カムイっつ」 


後ろからカムイを呼ぶ声がした。


声がした方向を振り向くと
 

そこにはひとりの少女が立っていた。


彼女はカムイの帰りを


祈って待っていた、あの少女だった。


彼女は亡くなった母親譲りの


美しい赤毛と紅の目をしており、


その姿は深夜の暗闇に映えて


とても美しかった。


彼女はカムイの前に立つと口を開いた。


「私も行く。」


「それは駄目だ。」


「どうして?」


「俺は掟を破った者だ、君とは一緒にいられない。」


「そんなの関係ない。」


「分かってくれ、アカリ。」


カムイは彼女の紅の目を見て、優しく告げた。


その目は涙で溢れていた。


「君には幸せになってほしい。」


それは、カムイの偽りのない本心だった。


幼き頃に家族を失う苦しみを体験した  


彼女にはこれからはたくさんの幸せを


感じてもらいたかった。


そして、カムイはアカリに背を向け、


門の外へと歩きだした。


アカリはカムイの背中に呼びかける。


「あなたのことが好きだったの」


しかし、カムイは歩み止めなかった。


同時に門は役目を果たし、静かに閉じていく。


そして、門は完全に閉ざされた。


門の外でカムイは


静かに呟く。


「俺もさ」


しかし、その声は少女のもとには


届かなかった。
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