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circus man
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「なぁ。冰澄。」
俺の問いかけに、彼は顔をこちらに向けた。「なぁに?」と問いかけるその声も。その目も。その背筋さえ、俺を取り込んでしまうのだ。
やはり、君は俺の肺だったようであるのだ。
_circus man_
何年物か、何百何千万するかなど興味の程もない、ワインは新しいものに限る。純粋無垢で、なんの渋りもない彼女彼らを飲み干すのはなんとも言い難い快楽だ。
「なんだかね。すごっく気分が悪い。」
「と言うと?」
「知ってるくせに。俺は気分が悪いよ。あいつ。邪魔しかしない」
「今回は彼の思惑と勘に敗北だな、克巳」
俺の目の前で、大天使が微笑んだ。
口元に悪魔を飼う大天使さまがゆっくりと、揉まれきったワインを口に含んだ。
「大変そうじゃないか。」
「…すごいうざいな。」
「こらこら父親に向けての言葉じゃないぞ」
「うるさいなぁ、麗しの大天使様は。天国に帰ってよ。」
父、ルカ・アンジェリコはやはり飄々と穏やかに笑みを浮かべるだけであった。真夜中の当議会も進むことなく時間だけが過ぎていくのである。「あぁ、そうだ」、当議会もこれにて閉会とする。彼はそう言うように笑みを一層深めた。
「そうそう。一ヶ月後に冰澄を迎えに行こうと思ってね。久しぶりに日本に行ってくるよ。」
一ヶ月後の初夏。彼はゆっくりと思い腰を上げたのである。
「またそんな急に」
「波津真也も死んだことだ。…日本の夏は蒸し暑いと聞くんだが」
「たしかに日本の夏は暑苦しい以外のなにものでもない。」
「そんな所にかわいい冰澄をずっと置いていては」
干からびてしまうだろう。
俺はその言葉に静かに微笑んだ。
干からびてしまうだろうね、お前の喉が。
俺の問いかけに、彼は顔をこちらに向けた。「なぁに?」と問いかけるその声も。その目も。その背筋さえ、俺を取り込んでしまうのだ。
やはり、君は俺の肺だったようであるのだ。
_circus man_
何年物か、何百何千万するかなど興味の程もない、ワインは新しいものに限る。純粋無垢で、なんの渋りもない彼女彼らを飲み干すのはなんとも言い難い快楽だ。
「なんだかね。すごっく気分が悪い。」
「と言うと?」
「知ってるくせに。俺は気分が悪いよ。あいつ。邪魔しかしない」
「今回は彼の思惑と勘に敗北だな、克巳」
俺の目の前で、大天使が微笑んだ。
口元に悪魔を飼う大天使さまがゆっくりと、揉まれきったワインを口に含んだ。
「大変そうじゃないか。」
「…すごいうざいな。」
「こらこら父親に向けての言葉じゃないぞ」
「うるさいなぁ、麗しの大天使様は。天国に帰ってよ。」
父、ルカ・アンジェリコはやはり飄々と穏やかに笑みを浮かべるだけであった。真夜中の当議会も進むことなく時間だけが過ぎていくのである。「あぁ、そうだ」、当議会もこれにて閉会とする。彼はそう言うように笑みを一層深めた。
「そうそう。一ヶ月後に冰澄を迎えに行こうと思ってね。久しぶりに日本に行ってくるよ。」
一ヶ月後の初夏。彼はゆっくりと思い腰を上げたのである。
「またそんな急に」
「波津真也も死んだことだ。…日本の夏は蒸し暑いと聞くんだが」
「たしかに日本の夏は暑苦しい以外のなにものでもない。」
「そんな所にかわいい冰澄をずっと置いていては」
干からびてしまうだろう。
俺はその言葉に静かに微笑んだ。
干からびてしまうだろうね、お前の喉が。
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