ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド

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第二部 悪魔とダンス

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「センサー? 何かの監視役になれという意味ですか。それとも密告者?」
「いいえ、そういう例えではありません。そのままの意味です」

 マザーは説明した。あゆみの体内に機器を取り付け、様々な外界の刺激に対する反応を収集したいと言う。無期限で。
「収集する情報は多岐にわたります。とくに化学物質の分泌や増減についてです。ホルモンや神経伝達物質などですね」
「目的は?」
「人間に関する知識をもっと豊かなものにしたいのです。外界への関わり方です。わたしはあまりにも無知でした」
「断れますか」
「もちろんです」
「利益は?」
「協力金が支払われます。月ごとです」金額はそこそこだった。最低限の食事と寝床なら働かなくてもいいくらいだ。「もちろん、物価上昇は考慮されます」
「何か害があったりとかは?」
「現在の医学的見地からは無害といえます。ただし有害な影響が見られた場合は即座に中止しますし、その後の医療は無償で提供されます」

「なぜわたしなのでしょう?」
「あなただけではありません。サンプル数は多いほうがいいですから」
「協力者はすでにいるんですか」
「はい。います」
「そんな話、聞いた事ない」
「最近始めたのでそのせいでしょう。それに話したがる者もいないでしょうし」
「化学物質を観察し、人間の知識を深めるといいましたが、わたしやこの島の人間は生殖能力やそういった意志を欠いていますよ。それで人間を知るサンプルになりますかね」
「するどいですね。そこはこの計画の穴です。しかし本土の人間はわたしにはどうこうできません。提案すらだめです。それに、生殖関連の機能を不活性化したのはわたしのマシンです。仕様はすべてわかっているので補正は可能です」

 あゆみはだまって考えた。断りたいが、それがほんとうに不利にはたらかないか、それまでの会話をもとに考えた。
 囚人を使った医学実験は本土でもあるし、建前上は断っても損はしないと説明される。
 でも現実はそうではない。あゆみは実験参加どころか提案もされた事はないが、断った者の噂は聞いていた。評点を下げられ、色々と損をすると言う。

「どんな処置です?」
「注射を二本打ちます。一本目を打った時点から報酬の計算が始まります。二十四時間後に二本目を打って、一週間ほどしたらデータ収集が始まります」

 シラミか。注射二本が処置というのはシラミ注入に決まってる。くそっ、断りたい。むしろ断ったら不利になるといってくれた方が良かった。どう不利になるかわかったなら天秤にかけられる。

「時間をください。相談してもいいですか」
「驚きました。あなたに相談相手がいるのですか」

 そうか。そこまでチェックしているのか。これはとりあえずだれにでも声をかけてるんじゃない。ずっと観察し、適格者を選んでたんだ。そしてそれを言外に匂わせやがった。

 これで決まった。断るのは最低の悪手になる。

「わかった。データ収集に協力する」
「ありがとうございます。すぐにオートマトンが向かいます。その指示に従ってください」

「よろこんで」
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