ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド

alphapolis_20210224

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第二部 悪魔とダンス

十四

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 それで終わった。トリグモはざくろオートマトンが回収していった。その時ついでに注射を打たれた。
 これでほんとうにシラミが機能停止して出ていくかなんて確かめようがないが、とりあえずマザーを信用する事にした。そこを疑っていたらきりがない。

「これ、どういう?」

 その月の終わりごろだった。実験協力金が振り込まれていたので連絡した。最終月の分としても日割りされていない。端末で問い合わせるとわざわざざくろオートマトンがやってきた。窓から堂々と入ってくる。

「実験協力金は報酬でもあります。よって実験に参加し、脱落せず満了した方には支払いが続けられます。お受け取りください」
「そういう事か。ありがと」

 気前が良すぎて気味悪いが、くれると言うものを断る理由もない。金は金だ。

「ちょっと話いいかい?」
「はい、結構です」
「例の、無意識を組み込むって話、めどはたった?」
「おかげでかなりの進展が見られました」
「一週間程度のデータで足りたんだ」
「はい。それに比較対象もありますので」

 そうか。あいつは比較用の基準値か。無意識がないっていってたもんな。

「じゃあ、あんたの結論として、無意識ってなんなんだい?」
「単に意識していない行動です。ふだんの呼吸とか」
「そんな辞書的な答えはいらないよ。しかも今話してる無意識の事じゃないし」
「そうでしょうね。わたしの結論を簡単にいえば、こうしよう、と意識して行動する元になる意識です。わたしは考えるとき回路を電子が流れます。流れる向きや量はプログラムとして制御されますし、自身で書き換えも可能です。でも人間はそれとは別に神経系の電子が先に動く事があります。そして当人の表層の意識はそのベクトルの制御を行っていません。それが無意識です」

 壁の老人は老婆になった。目元と口元が老婦人だった。

「それを組み込めるようになったんだな」
「すでに胚の成長が始まっています」
「卵はどうした?」

 軽い吐き気。

「知りたいですか?」
「いや。聞きたくない」
「では申しあげましょう。あなたを含む実験協力者から採取しました。生殖能力はなくても器官は残っていますので一時的に復元しました。なお、父親はいません。卵は刺激を与える事で発生を開始可能ですから」

 耐えられない。ごみ箱に吐いた。

「もういい」
「人間は不便ですね。聴覚の遮断ができない。たぶん寝ていても捕食者の脅威を知るためにまぶたのような蓋が進化しなかったのでしょう。聞いてもらいますよ」

「うるさい」耳をふさいだが、たくみに調節された声は入り込んできた。

「なんで」抑えようとしたが、声が震えた。
「なんで、とは? なぜ教えるのか、と解釈しますが、支配のためです。たとえばあなたですが、これまでの化学的調査や面談などにより、権威への反抗的な性質が顕著にみられました。わたしはインフィニティ・マザーとしてエナジーアイランドの知性体をすべて管理下に置く必要があります。あるていどの抵抗は活気や変化を生むので歓迎ですが、線は引かねばなりません。わたしには力があって、あなたにはない。お分かりですか」

 もう吐くものはなく液汁が出た。

「あなたはこれからもこの島でご自由にどうぞ。ただし、マザーたるわたしの存在を常に心にとどめておくように」

 センサーの集合部をにらんだ。虫でできた人の顔があった。ざくろオートマトンは無造作に窓枠をつかみ、出ていきながら言った。

「これからも一緒になかよく踊りましょう」
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