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第三部 アップルパイ、閉回路ソースを添えて
八
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結局、アルゴスの提供はやめにした。『カクブンレツ』だけで使う。学習対象を変えればオートマトンやパレットなどの分布も推定できるようになっていた。ただし、これについては公開された情報があるので、今のところ役に立つと言うものではない。
そして、島内どこでも情報閲覧できるように仮想じゃないプライベートネットワークの設置を行った。作業には一か月ほどかかった。ほとんどが無線で一部有線だった。
カネとモノ、蓄えを吐き出すのは爽快だった。心がどんどん軽くなる。食事が単調になるくらいかまうものか。
「アルゴスに比較ルーチンを追加したよ」ファーリーが説明する。公開された情報と推定結果を比較し、差異があればアラートを出すというだけの機能だった。今はすべて一致していて緑だった。
「ありがと」
そう言ったとたん、赤くなった。
「何、これ?」ファーリーが調整するが赤いままだった。
「でもこれじゃ、海面上空にいる事になる」ウォーデが画面を流れるデータをたたき、概算ではなく生データに切り替えた。「わからん、見に行くか」
ウォーデとビクタが確認しに出た。
二人を見送ってからデータを地図上に表示させるようにした。
「やっぱり空だ」おどろいた。
「新型かな」ファーリーもとまどっている。
「じゃ、飛行タイプ?」
「まさか、合意を反故にするつもりじゃ」
アルゴスの推定機関を再確認したが正常だった。公開情報には何もあらわれていない。
しばらくするとウォーデから通信が入った。
「飛行タイプでまちがいない。一機。ラグビーボールみたいだ。長さ一メートルくらいかな。百メートルほど沖の高度三十メートルくらいで直径十から二十メートルの水平および垂直の円を描いてる。速度は一定しないがトップスピードはかなりありそう。テストしてるみたいな飛びかただな」
映像が送られてきた。舌打ちする。
「目視でもこんなにぼやけてるのか」
「いや、撮るとそんなになる。『制服』と違ってこっちでははっきり見える」
ファーリーと顔を見合わせた。
「たぶん、撮像素子に妨害かけてる。効果範囲外から望遠で撮るかシールドがいる」
「ミューチュアル・アグリーメントは?」ぼやけた映像の中でビクタが首を振っている。高速飛行タイプはオートマトン合意に反すると言いたいのだろう。
「飛行タイプを作ったからには殴りあう気なんだろ。マザーは」声だけでも沈んでいるのがわかった。
「勝てんのかよ」とファーリー。
「いや、勝つのが目的かわからない」
ぼくはアルゴスのデータを見つめる。
そして、島内どこでも情報閲覧できるように仮想じゃないプライベートネットワークの設置を行った。作業には一か月ほどかかった。ほとんどが無線で一部有線だった。
カネとモノ、蓄えを吐き出すのは爽快だった。心がどんどん軽くなる。食事が単調になるくらいかまうものか。
「アルゴスに比較ルーチンを追加したよ」ファーリーが説明する。公開された情報と推定結果を比較し、差異があればアラートを出すというだけの機能だった。今はすべて一致していて緑だった。
「ありがと」
そう言ったとたん、赤くなった。
「何、これ?」ファーリーが調整するが赤いままだった。
「でもこれじゃ、海面上空にいる事になる」ウォーデが画面を流れるデータをたたき、概算ではなく生データに切り替えた。「わからん、見に行くか」
ウォーデとビクタが確認しに出た。
二人を見送ってからデータを地図上に表示させるようにした。
「やっぱり空だ」おどろいた。
「新型かな」ファーリーもとまどっている。
「じゃ、飛行タイプ?」
「まさか、合意を反故にするつもりじゃ」
アルゴスの推定機関を再確認したが正常だった。公開情報には何もあらわれていない。
しばらくするとウォーデから通信が入った。
「飛行タイプでまちがいない。一機。ラグビーボールみたいだ。長さ一メートルくらいかな。百メートルほど沖の高度三十メートルくらいで直径十から二十メートルの水平および垂直の円を描いてる。速度は一定しないがトップスピードはかなりありそう。テストしてるみたいな飛びかただな」
映像が送られてきた。舌打ちする。
「目視でもこんなにぼやけてるのか」
「いや、撮るとそんなになる。『制服』と違ってこっちでははっきり見える」
ファーリーと顔を見合わせた。
「たぶん、撮像素子に妨害かけてる。効果範囲外から望遠で撮るかシールドがいる」
「ミューチュアル・アグリーメントは?」ぼやけた映像の中でビクタが首を振っている。高速飛行タイプはオートマトン合意に反すると言いたいのだろう。
「飛行タイプを作ったからには殴りあう気なんだろ。マザーは」声だけでも沈んでいるのがわかった。
「勝てんのかよ」とファーリー。
「いや、勝つのが目的かわからない」
ぼくはアルゴスのデータを見つめる。
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