秘められた願い~もしも10年後にまた会えたなら~

宮里澄玲

文字の大きさ
11 / 54

11

しおりを挟む
 
 先生にメールをしてから3日経った。つい何度もスマホを確認してしまう。アドレスを間違えた…それなら戻ってくるよね。メールを読む時間がないくらい忙しい…その可能性はあるかも。それとも…ただの社交辞令で連絡先を教えただけなのに本当に連絡してくるなんてって迷惑に思っている…? 返信がないのでどうしても悪い方向に考えてしまう。でもお礼だけはきちんとしたい。もし家が分かれば、直接行ってプレゼントを渡せるんだけどな…。その方が迷惑か…。
 
 昼、学食で定食を食べながらスマホを見るが、変わりなし。はぁぁ…と深いため息が出る。
 気分を変えようと涼子さんと月曜の夜にやり取りしたメッセージを読み返す。
 
 『やっと着いたよ~! 今こっちは13時過ぎ。
  メチャクチャ眠いけど、時差ボケ対策のためガマンガマン!
  これからとりあえずホテルに向かいます』
 
 『長時間のフライト、お疲れさまでした! 
  夜ゆっくり寝て英気を養ってください。
  そちらでいっぱい楽しんできてくださいね!』
 
 『ありがとう~! お土産楽しみに待っててね! また連絡するね!』
 
 涼子さんは今週いっぱいお休みを取っていて、旦那さんとドイツにいる。実は、涼子さんの旦那さんはうちの大学のドイツ文学科の橘哲哉教授だ。橘教授が現在執筆中の論文の関係でドイツに出張することになったので、旅行も兼ねて涼子さんも一緒に付いて行ったのだ。いいなあ、うらやましい…夫婦水入らずで楽しんでいるんだろうな…まだ結婚して3年だしラブラブだもんね。
 
 2人の馴れ初めはこうだ。涼子さんもうちの大学出身で専攻はドイツ文学。2年生の時に担当教授が病気のため急遽退職することになり、後任として担当することになったのが、当時准教授の橘先生だった。涼子さんより14歳年上。鼻筋が通ったキリっとした顔立ちの先生に涼子さんは一目惚れをし、この人しかいない! と猛アタックした。最初は全く相手にされなかったという。「迷惑だ」とハッキリ言われたことも数知れず。それでもめげずに諦めなかった。講義も休まず、レポートや試験も完璧なら文句ないだろうと、とにかく死に物狂いで頑張った。そんな涼子さんに橘先生も徐々に心を動かされていったのだが、年齢差や立場の違いなどを考えてかなり思い悩んだらしい。でも、最終的には自分の気持ちに正直になろうと決め、卒業間近にやっと涼子さんの想いが実った。その3年後、橘先生が教授に就任した時にめでたく結婚した。美男美女の素敵なご夫婦で、一緒にいる姿はとても絵になる。
 
 そんな自分の経験から、私の恋を他人事とは思えないと、親身になって話を聞いてくれ、応援してくれている。橘教授への想いをとことん貫いた涼子さんは本当にすごい。私だったら1回でも「迷惑だ」なんて言われたら、すごすごと退場してしまうだろう。でも、それではちっとも前に進まない。怖がってばかりいないで私も当たって砕けろの精神で頑張らなければ。今夜、もう一度先生に連絡してみよう。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

神楽坂gimmick

涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。 侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり…… 若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛

春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

ひとつ屋根の下

瑞原唯子
恋愛
橘財閥の御曹司である遥は、両親のせいで孤児となった少女を引き取った。 純粋に責任を感じてのことだったが、いつしか彼女に惹かれていき――。

処理中です...