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しおりを挟む先生にメールをしてから3日経った。つい何度もスマホを確認してしまう。アドレスを間違えた…それなら戻ってくるよね。メールを読む時間がないくらい忙しい…その可能性はあるかも。それとも…ただの社交辞令で連絡先を教えただけなのに本当に連絡してくるなんてって迷惑に思っている…? 返信がないのでどうしても悪い方向に考えてしまう。でもお礼だけはきちんとしたい。もし家が分かれば、直接行ってプレゼントを渡せるんだけどな…。その方が迷惑か…。
昼、学食で定食を食べながらスマホを見るが、変わりなし。はぁぁ…と深いため息が出る。
気分を変えようと涼子さんと月曜の夜にやり取りしたメッセージを読み返す。
『やっと着いたよ~! 今こっちは13時過ぎ。
メチャクチャ眠いけど、時差ボケ対策のためガマンガマン!
これからとりあえずホテルに向かいます』
『長時間のフライト、お疲れさまでした!
夜ゆっくり寝て英気を養ってください。
そちらでいっぱい楽しんできてくださいね!』
『ありがとう~! お土産楽しみに待っててね! また連絡するね!』
涼子さんは今週いっぱいお休みを取っていて、旦那さんとドイツにいる。実は、涼子さんの旦那さんはうちの大学のドイツ文学科の橘哲哉教授だ。橘教授が現在執筆中の論文の関係でドイツに出張することになったので、旅行も兼ねて涼子さんも一緒に付いて行ったのだ。いいなあ、うらやましい…夫婦水入らずで楽しんでいるんだろうな…まだ結婚して3年だしラブラブだもんね。
2人の馴れ初めはこうだ。涼子さんもうちの大学出身で専攻はドイツ文学。2年生の時に担当教授が病気のため急遽退職することになり、後任として担当することになったのが、当時准教授の橘先生だった。涼子さんより14歳年上。鼻筋が通ったキリっとした顔立ちの先生に涼子さんは一目惚れをし、この人しかいない! と猛アタックした。最初は全く相手にされなかったという。「迷惑だ」とハッキリ言われたことも数知れず。それでもめげずに諦めなかった。講義も休まず、レポートや試験も完璧なら文句ないだろうと、とにかく死に物狂いで頑張った。そんな涼子さんに橘先生も徐々に心を動かされていったのだが、年齢差や立場の違いなどを考えてかなり思い悩んだらしい。でも、最終的には自分の気持ちに正直になろうと決め、卒業間近にやっと涼子さんの想いが実った。その3年後、橘先生が教授に就任した時にめでたく結婚した。美男美女の素敵なご夫婦で、一緒にいる姿はとても絵になる。
そんな自分の経験から、私の恋を他人事とは思えないと、親身になって話を聞いてくれ、応援してくれている。橘教授への想いをとことん貫いた涼子さんは本当にすごい。私だったら1回でも「迷惑だ」なんて言われたら、すごすごと退場してしまうだろう。でも、それではちっとも前に進まない。怖がってばかりいないで私も当たって砕けろの精神で頑張らなければ。今夜、もう一度先生に連絡してみよう。
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