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しおりを挟む部屋に1人残された俺は、所在なげに立っていた。あんなに慌てて飛び出して事故にでも遭わなければいいが、と心配になったが、ここの部屋の鍵を持っていないので追いかけることもできない。仕方がないので大人しく待つことにした。わざわざまたスーパーに買いに戻ってまで俺の為に…。申し訳ないと思いながらも結城の健気さに胸が熱くなる。
待っている間、ちょっと本でも見させてもらおうか、と大きな本棚の方に行った。さすがにこれだけは大きいな…。図書館学などの専門書の他にもさまざまなジャンルの本がたくさん収まっている。司書だから当たり前といえばそうなのだが、結城の読書範囲の広さに俺は心から脱帽した。後でお勧めの本でも聞いてみよう。
本棚を眺めていると、何かキラキラしたものが視界に入ってきた。それは、ピンクのガラスペンだった。うわぁ…これも見事な細工で綺麗だな…と見入っていたが、あれ? もしかして俺が貰ったのと全く同じデザインか? 急いで自分のを箱から出して比べてみると、やはりそうだった。あいつとお揃いのものだと知って、何だかとても嬉しくなった。
それにしても、今日の結城には驚いた。駅であいつを見た瞬間、あまりの美しさに見惚れて声が出なかった。これまで髪を後ろで1つに縛った姿しか見たことなかったが、今日は下ろして軽く巻いていた。ワインレッドのタイトスカートがとてもよく似合っていたし、メイクもいつもよりも大人っぽく綺麗だった。それに、俺と一緒に店に行けて嬉しいとはにかんだり、俺が綺麗だと言った瞬間、真っ赤になって俯く姿が、可愛くてたまらなかった…。
俺が一番感銘を受けたのは、あいつが教師の仕事をちゃんと理解し、俺のしてきたことを評価してくれ尊敬してくれていたことだった。あの言葉はかなり効いた…。あいつの表情や話ぶりから口先ではなく本心からそう思っているのが伝わってきて心が震えた。結城となら一緒にやっていける、こいつだけは絶対に失いたくないと思った。タイミングを見計らって、必ず告白しようと改めて決意した。
ふと、青い冊子に目が留まる。そして、背表紙に記された『藤崎小学校』という文字に心が躍った。卒業アルバムか…! 懐かしさのあまり、結城に無断で本棚から抜き出してしまった。
アルバムを開くと、何か封筒のようなものが下に落ちた。拾うと、そこには「海堂駿先生へ」と書かれていた。驚いて目を見張る。何だこれ、俺への手紙…? 文字の感じや年月を経たせいか少し色あせた封筒から考えると、これは6年生の結城が書いたものか…?
俺は、こんなことをしてはいけないと分かっていたが、何が書いてあるのかどうしても気になってしまい、逡巡ののち、勝手に申し訳ない、と心の中で結城に詫びながら、手紙を開いてしまった…。
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