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 朝、スッキリと目覚めた。緊張から解き放たれてぐっすり眠れたせいだろう。
 
 昨日は、夜まで実家で過ごした。すっかり駿さん一家と打ち解けた両親が、せっかくだから夕食も一緒にと、お寿司やオードブルの出前を取り、剛にお酒や飲み物を買いに行かせた。食事やお酒が進むとさらに場が明るくなり、剛と駿さんもまるで実の兄弟のようにじゃれ合って、笑い声が絶えない夜になった。
 そして、近いうちに今度は隣の市にある駿さんの実家にお邪魔することが決まり、今からとても楽しみだ。
 
 今朝、職場のメンバーが揃うと、内田君のことはもう解決したことと心配や迷惑をかけたことを謝罪した後、ついでのように「実は来月結婚します」と言うと、みんな一瞬キョトンとした後に一斉に、えぇぇぇっー!? という驚愕の声がバックヤード中に轟いた。そこへちょうど入ってきた館長が何事か尋ねたので、涼子さんが私の結婚のことを伝えると、みんな以上に目をまん丸にして驚いた顔をしたので、おかしくて笑ってしまった。改めて館長にも内田君のことと入籍日と仕事はこのまま続けたいことを伝えると、嬉しそうに「解決してよかった、あと結婚おめでとう、お幸せに! 仕事も引き続きよろしく頼むよ!」と祝福してくれた。みんなからも次々に「おめでとう~!」と言われ、結婚相手のことを矢継ぎ早に聞かれたが、タイミングよく開館時間になったので急いでカウンターに向かい質問から逃げることができた。
 
 昼休憩が始まる前に、内田君が緊張の面持ちで図書館にやって来た。話したいことがあるので少し時間をくれないかと言うので、じゃあ、お昼を一緒に食べようと学食に行った。
 「昨日の夜、駿兄から連絡があったんです。結婚が決まったって。おめでとうございます」
 「ありがとう。それを言うためにわざわざ来てくれたの?」
 「あと…昨日、結城さんの実家で家族の顔合わせをした時に駿兄が俺のしたことをみんなに話すと、もう終わったことだから内田君の両親には伝えないでほしいと、結城さんが敏明おじさんと真里おばさんに必死にお願いしてくれたって聞いて…。どうしてもお礼が言いたくて。本当にどうもありがとうございました」
 内田君が頭を下げた。
 「本当にもういいから、頭を上げて」
 私はニッコリと笑った。
 「私たちってこれから親戚になるのよね! あ、正樹君って呼んでもいい? 私のこともプライベートでは名前で呼んで。それから、また図書館をどんどん利用してね。何か調べ物や相談とかあれば手助けするから気軽に声をかけて。正樹君、これからもどうぞよろしくお願いします」
 正樹君がやっと笑顔を見せた。
 「はい! こちらこそどうぞよろしくお願いします! 美沙絵さん」
 笑い合った後、お昼を食べながら、お互いのことを話したり、正樹君から駿さんの話を聞かせてもらったりして、楽しいひと時を過ごした。 
 
 終業後、涼子さんが「時間があったらご飯食べに行かない?」と誘ってくれたので、大学近くのレストランに行った。
 
 「みんなのあの驚きようはすごかったね、特にあの館長の顔っていったらもう! 私も昨日聞いた時はびっくりしたけど」
 昨日実家から帰ってきた後、涼子さんにメッセージで知らせるとすぐに電話がきたので、正樹君のことがきっかけで入籍が決まったことや双方の家族と実家で顔合わせをしたことなどを話したのだ。キャーッという歓声と共に、何はともあれ、おめでとう! よかったねー! 私もすごく嬉しい! と心から喜んで祝福してくれたのだ。
 「涼子さんや皆さんが祝福してくれて嬉しかったです。ありがとうございます。あ、昨日みんなで写真撮ったんですよ。駿さんとも初めて一緒に」
 スマホから写真を見せると、涼子さんが目を大きく見開いて口をあんぐりとさせた。
 「…うわぁ……ホントにイケメンで背高い…! 美沙絵ちゃんから聞いてはいたけど、ここまでだとは…。ねえ、先生ってホントにモデルとかやってないの!?」
 「もう、涼子さんも私のお母さんと同じこと言ってます! 駿さんはただの小学校の教師ですよ」
 「そう言われても、信じられない…。こんなイケメンの上に、すごく優しくて性格もいいんでしょ? よく今まで独身でいられたわよね…奇跡だわ…。それにご両親も美男美女なのね~! 何かもう、すごいとしか言えない…」
 「私も昨日初めてお会いした時はビックリして言葉が出ませんでした。ご両親も本当にとても優しくて明るくて素敵な方達なんですよ。私の両親ともすぐに打ち解けて、お義母様は私をもうちゃん付けで呼んでくれて本当の娘ができたようで嬉しいって言ってくださって」
 「よかったわね! それなら可愛がってもらえるわね」  
 「ご両親もいい方達だし、何より、こんなにカッコよくて素敵で優しくて私のことを大事にしてくれている駿さんと結婚できて本当に幸せです…」
 写真を見つめながら思わず呟くと、
 「ハイハイ、もう、ご馳走様! 美沙絵ちゃんの口からこんな惚気け発言が飛び出すなんて…。でも心からよかったと思ってる。先生と末永くお幸せにね」
 「はい! ありがとうございます」
 「そうそう、結婚祝いは何がいい?」
 「いえ、そんな、どうぞお気遣いなく」
 「何言ってるのよ、それくらいさせてよ。欲しいものを考えといてね。入籍して落ち着いたら、お祝いも兼ねて今度こそ4人で食事しましょう」 
 「分かりました。ありがとうございます。駿さんにも伝えておきますね」
 
 帰宅後、ゆっくりとお風呂に入りながら今日あったことを思い出して笑みが零れてしまった。今日は1日中とても賑やかだったな…みんなから祝福されて私は本当に幸せ者だ…。これから忙しくなるけど、仕事も結婚の準備も頑張ろう、と気合を入れ直した。
 
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