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暴かれし藪蘭

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  とりあえず俺は、さっき起こった出来事を無かったことにしようとした。多分なにかの見間違いだろう。

 心を落ち着かせるべく、まずは持ってきた緑茶を飲むことにした。うん、うまい。

 別館1階にあったこの教室は、恐らく昔に用務員さんがいた教室だろう。教室のすみにはバケツなどの用具があった。

 そして松宮と彩芽は机を六つくっつけた状態で向かい合って座っていた。そして彩芽の横に空いた椅子が一つ。
 
 「真也、早く座りなよ」

 「あ、あぁ悪い」

 「君、どれだけ待ったと思ってるの?今度からは気をつけてね」

 「ほんとにすまん」

 どうやら相当待ったようだ。……でもこんなところにあると思わなかった。ほ、方向音痴なわけじゃないからな?



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 「それで、今日から本格的に部活動をやっていくんだけど」

 「そもそもどうやって部活やる気だよ。提供者でもいるのか?」

 実際そうだ。噂程度のことを提供してくれる人物を見つけてくる、もしくは来てくれなければどうにもならない。

 それに脅されてこの部活に入ったは良いものの、人の噂や秘密を暴いてしまって本当に良いのだろうか?

 「そこに関しては心配しなくても大丈夫だよ。実は提供者がいる」

 「……マジか。それって一体誰n」「それよりも誰の秘密を追うの?」

 彩芽の質問に遮られてしまった。オイオイ、少しは待ってろ。まだ人が話してる途中でしょうが!

 ここらで一杯ラーメン食べてえなあ、なんて思っていたが、次の松宮の一言で俺の胃袋は一気に縮まった。

 「最初に追うのは、吉田くんだね」



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