星屑のメロウディーヴァ

ベアりんぐ

文字の大きさ
27 / 43
episode"3"

episode3.3

しおりを挟む



         ◎◎◎












 事件終息から一ヶ月が経とうとしていた、適度に雲がかかった初夏の晴れの日——。ルミナ達は、集落を後にしようとしていた。

そのことを聞きつけた集落の人々は、総出でルミナ達を見送ろうとしていた。



そして、別れの時——。



「お世話になりました」

「お世話になったのはこちらの方だ。……もっとゆっくりしていっても構いませんぞ」

「……嬉しいですが、私達も、そろそろ行かなければならないので」

「……そうですか。是非、またうちの集落に立ち寄った時は、全力で歓迎させてください」

「ありがとうございます」

「ルミナー!こっちの準備は終わったよ。……クラウドさん、いつまでも拗ねないでよ……」

「フン!言われるまでもないさ!……せっかくアタシが武器作ってやるってのに……」

「子供に武器持たせちゃ駄目だよそりゃ……」

「あーはいはい!アンタもガキだよ!」

「全く懲りない人だなぁ~……ルミナ、もう行ける?」

「はい、大丈夫です。……では行きます。今までありがとうございました」



 ルミナに向けて、声が飛び交う。



「またな嬢ちゃん!アンタのお陰で仕事が捗ったよ~!またいつでも来な!」

「ルミナちゃん!バイバイ~!遊んでくれてありがとー!」



 止めどなく溢れる感謝の言葉に、ただ頭を下げて答え、背にする。

段々と遠くなっていく声に、ルミナは少し、寂しさを感じていた。しかし、歩くのは止めない。振り返ることも、しない——。



「……良い集落だったね、ルミナ」

「……はい」

「ケッ!アタシの提案を蔑ろにする集落の何処が良いんだか——」

「もう拗ねないでよ~。いい歳して」

「歳なんか関係あるもんか!全く……」

「はぁ~、クラウドも懲りないなぁ——って、ルミナ、どうしたの?」

「?なんでしょう?」





「なんで泣いてるの?」





 その言葉に、ルミナは平然と答えていたが、体の奥底からやって来る知らない感情に、突如襲われる。



「なんで、でしょう……目の辺りがっ……熱く、なってっ……これはっ、なん、でしょうっ……」

「それは涙だよ。……嬉しい時、悲しい時、寂しい時に、止めどなく溢れちゃう気持ちが、こうやって物質に変わって出てきちゃうものだよ」



 溢れだした涙は止めどなく、ルミナの頬を伝って落ち続ける。



「これがっ……なみ、だ……」

「……アンドロイドにも、涙ってのはあるんだねぇ……」



 ルミナは泣き続ける。それでも、歩き続ける。他の二人も、止まることはない。



「ハァハァ……!おーい!……ハァ……ちょっと、待ってくれ!」



 そこに、ある男が走って登場した——。



「ん?どっかで見た顔だね」

「あれ、おじさん!どうしたの?」

「……っ、クレ、ス?」

「ハァハァ……やっと追いついた……!——って、なんで泣いてんだ?」

「っ!……見ないで、ください……!」

「おじさん、どうしたの?……ははーんさては、ルミ——んぐっ!!」

「タウリーお前は黙ってろ!……その、ええっと……」



 そこに、落ち着いたルミナが登場した。



「どう、したんですか?」

「い、いやっ……その!……えっと……」



 言葉に詰まるクレス。しばしの沈黙の後、三人が予想もしなかった言葉が出る。



「お、俺も……俺も!旅に連れていってくれないか!?」

「なんだいアンタ。おかしな奴だね」

「それ、クラウドが言う……?」

「お黙りガキんちょ!……アンタには集落があるじゃないか?何が目的だい?」

「俺には……集落はあっても、帰る場所がないんだ。……それに……」

「それに~?」

「っ!茶化すなタウリー!……それに、俺はアンタらに興味が湧いた。理由なんて、それで十分だろ……」

「クレス……」

「……フン!アタシゃ気に食わないけど、勝手にしな。……アタシはアタシのやりたいことさえ出来りゃ、誰が来たって構わないからね」

「!じゃあ!」

「行くよ、おじさん!あんまりトボトボ歩いてると、僕とルミナは置いてっちゃうからね!」



 クラウドとタウリーがクレスに背を向け歩き出す。

立ち止まったクレスに、ルミナが手を差し伸べる。



「行きましょう、クレス」

「……あぁ!勿論だ!」



 二人を追いかけるように、二人、歩き出す。それぞれの目的、目標を果たすために——。












——ルミナ達がレグリウスの集落を出る、ほんの少し前。タウリーの育った小さき集落、"ウェヌス"にて——














 のどかな集落であるウェヌスでは、集落の中でもさらに人の少ない場所であった。少人数だが人当たりも良く、他人を排除しない、優しくて、落ち着いた集落——であったはず、だったのだ。



「老人はこちらに並べ!若い女はこっちだ!その横に子供を並ばせろ!男もその横だ!」

「オメェら逆らおうなんてこたぁ考えるなよ?命が炭になるなんて御免だろ?」



 ウェヌスの集落は、アンドロイド達によって占拠されていた。



「ねぇサダル。これからアタシ達は何をするの?拘束ごっこなんて、欠伸が出ちゃうわ」

「勿論、これで終わりなわけないよね?サダル」

「ルーノ、テレス、そんなに慌てなくても大丈夫だ。もう私達を縛っている者など誰一人として生きているわけじゃないんだ。ゆっくり、やっていこうじゃないか」

「サダル、集落全員の整列終わったぜ。後は模倣品に任せて大丈夫だよな?」

「ああ、ありがとうアルデス。人間にあの力……どうすることも出来はしないさ。最も、クラウドのような人間以外は……だがな」

「前に話していた、"箱"と一緒にいる技術者の老婆、だったか?お前がそこまで気にするような相手なのか?」

「クラウドはただの老婆ではない。アイツは恐らく、前時代の兵器や技術を長年研究している。ましてや、"あの技術"がヤツの手に渡ったら……私達もタダでは済まなくなるだろう」

「ははっ、そんなこと、あるわけないじゃない。あの技術は私達で葬ったはずでしょう、違う?」

「ああ。しかしもし、データが文献として残っていたら……」

「ありえない。僕がこの手で消した」

「だってよ、サダル。とりあえずここを拠点にとっとと制圧しちまおうぜ」

「……分かっている。そしてルミナを捕獲し、ニュイ・エトワレを実行する。みんな、期待しているよ」

「へっ、お前に言われなくてもな!」

「アタシ達なら、手こずる未来が見えないわ」

「……余裕」



 アンドロイド、METSIS達の計画が、動き出す——。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】

naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。 舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。 結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。 失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。 やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。 男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。 これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。 静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。 全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...