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1 鉱物テラリウム①
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すっかり冷えきった手で確認したスマホは、午後五時を示していた。
大河が急に立ち止まったせいで、オレンジ色に染まったアーケード街を行き交う人の波が、わずかに割れる。
忘れてた、と深いため息を取り落とし、大河は制服の内ポケットにスマホをしまった。ここ何日か、指定された時間に家に連絡を入れることができていない。
「また叔母さんにドヤされるなー」
小さく首を振ると、古い判子屋から背の低い女がにょきりと顔を出したのが見えた。
本格的な冬を目前に控えた、肌寒いこの季節。コートを羽織っている人間なんてほかにも大勢いるというのに、彼女の着込んだものは、そのどれとも違って見えた。
「コートが……燃えてる?」
チョコレート色の襟もとからは、時おり白い煙のようなモヤが立ち上っている。
「いやいやいや。ばかか、おれは」
よくよく見ようと目を凝らすが、大河の無遠慮な視線に気づいた女は、足早に路地へと姿を消した。モヤが、ふわりとそのあとを漂う。
考えるよりも先に、足が動いた。
電飾に彩られた看板を軸に勢い込んで角を曲がると、何かに視界を遮られる。
「なんだ、これ。霧?」
速度を緩めてもなお前進すると、やがて広い場所に出た。
敷き詰められた玉砂利は、まるで大河を導くかのように、古びた洋館まで続いている。ほかに建物は見当たらない。
呼吸を整え前に進むと、じゃりり、と足元が鳴った。
「石が……」
大地が振動し、空気が震えた。
その高い位置にひとつきりある窓から、勢い良く煙がはき出される。それはまるで、眠りから覚めた洋館が、深呼吸したかのような光景だった。
背を押す空気の流れをはっきりと感じ取り、大河の胸は高鳴っていく。
吸い込まれるようにして、玄関アーチをくぐった。
「こんにちは。あの、おれ、大河っていいます。あのー、だれかいませんか?」
玄関ホールは吹き抜け。左右から階段が対になって二階の回廊まで続いているが、そのどちらも天井がやけに高い。
大河が急に立ち止まったせいで、オレンジ色に染まったアーケード街を行き交う人の波が、わずかに割れる。
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「また叔母さんにドヤされるなー」
小さく首を振ると、古い判子屋から背の低い女がにょきりと顔を出したのが見えた。
本格的な冬を目前に控えた、肌寒いこの季節。コートを羽織っている人間なんてほかにも大勢いるというのに、彼女の着込んだものは、そのどれとも違って見えた。
「コートが……燃えてる?」
チョコレート色の襟もとからは、時おり白い煙のようなモヤが立ち上っている。
「いやいやいや。ばかか、おれは」
よくよく見ようと目を凝らすが、大河の無遠慮な視線に気づいた女は、足早に路地へと姿を消した。モヤが、ふわりとそのあとを漂う。
考えるよりも先に、足が動いた。
電飾に彩られた看板を軸に勢い込んで角を曲がると、何かに視界を遮られる。
「なんだ、これ。霧?」
速度を緩めてもなお前進すると、やがて広い場所に出た。
敷き詰められた玉砂利は、まるで大河を導くかのように、古びた洋館まで続いている。ほかに建物は見当たらない。
呼吸を整え前に進むと、じゃりり、と足元が鳴った。
「石が……」
大地が振動し、空気が震えた。
その高い位置にひとつきりある窓から、勢い良く煙がはき出される。それはまるで、眠りから覚めた洋館が、深呼吸したかのような光景だった。
背を押す空気の流れをはっきりと感じ取り、大河の胸は高鳴っていく。
吸い込まれるようにして、玄関アーチをくぐった。
「こんにちは。あの、おれ、大河っていいます。あのー、だれかいませんか?」
玄関ホールは吹き抜け。左右から階段が対になって二階の回廊まで続いているが、そのどちらも天井がやけに高い。
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