不可思議∞伽藍堂

みっち~6画

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4 鉱物テラリウム④

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 ルゥの置いていった片眼鏡を見つめ、ほおに手を当てる。蒸気のせいか、やけに熱い。
「大河君。もうひとつお願いがあるのですが」
 ルーレットの穏やかな声に、大河はあわてて部屋を出た。
「そのできたばかりのテラリウムを、小さなルゥといっしょに届けて欲しいのです。残念なことに、わしはこの場を動くことが許されていないので」
 いいですよ、と大河は早口で言った。ルーレットは、すばやくルゥに目線を移す。
「届け先は……どうだね」
「うん」
 テラリウムに耳を当てていたルゥが、ひとつうなずく。コートの襟を立てると、勢いよく蒸気が噴き上がった。
 振り返りもせずに先に歩き出したルゥの背を、大河はあわてて追う。
 伽藍堂を出ると、ルゥはまず霧に包まれた路地を早足に駆け抜けた。
 どこに行くのかと大河がたずねるたび、ルゥはテラリウムに耳を当て、それから指で方向を示した。
 高架を越え、坂をいくつか上ってから、広い川沿いを歩く。
 やがて、さびたフェンスと植樹された外壁が見えてくると、大河はまゆ根を寄せた。
「待ってくれ。そこ、T大のキャンパスだよな? おれ、そこには行けないんだ」
 小さな肩越しに、不思議そうなルゥと目が合う。
「でもここが届け先だって言ってるの。だから、行かなきゃ」
「言ってるって、だれがだよ」
「カエルだよ。大河の選んだコケカエルが」
 小瓶に耳を当てたルゥは、大河の足が完全に止まってしまったのを一瞥すると、ひとり歩き出す。
 まばゆい明りの元、構内にはまだ大勢の人が居残っているようだ。ルゥの行き先を確認しながら、大河はさりげなく辺りをうかがった。
「は? カエル? なんでオレが、カエルの瓶なんか受け取らなきゃならねえのよ」
 その耳障りな大声で、我に返る。見ると、つま先立ちのルゥが窓の向こう側にいる男にテラリウムを差し出しているところだった。
 相手は、茶色の短髪をきれいに整えた男だ。
 ――あいつ、は。
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