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8 虹色アンモナイト①
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ゆらりと上体が傾いだなと思うと同時に、今度が反対側に大きく揺れる。
このままずっとこうしていたい、と大河はまどろむが、そのたびにルゥの冷たくて小さな手が首筋に伸びてくる。
「……冷たいんだけど」
「だってこうしないと大河は眠っちゃうんだもん」
新しい小瓶を選び、鉱物テラリウムを作り直した。拾ってきた破片をつぎはぎし、コケカエルの手を修復するのには、かなりの時間が必要だった。
陶器の上に小さな包帯を巻き終えると、ルゥが熱いコーヒーを運んできてくれた。
開け放したままの扉からは、踊り場が良く見える。
ルーレットの目は開いているが、ひとみには生気がない。こうして静かに文字盤に収まっているさまは、まるで普通の剥製のようだ。
ルゥに言わせると、これは眠っている状態らしい。
「じゃあなーんで、おれは寝ちゃいけないの?」
ルゥは少し考えて、「出られなくなる」と言い切った。
「伽藍堂で人間が眠ると、この建物から出ることができなくなるの」
まさか、と大河は否定しようとした。だが、剥製が当たり前に『生きている』世界では、一般の常識など通用しないのだろう。
「それじゃあルゥはどこで寝ているの、いつも」
「判子屋」
そこは大河が最初にルゥを見かけた、あの場所だ。さらに詳しく話を聞こうとするのを遮るように、屋敷のどこかで歯車のきしむような音が響いた。
腹の底が震えるような、重低音だ。音が鳴りやんでから改めて尋ねたが、ルゥはあいまいにことばを濁すだけでもう答えようとしなかった。
残った包帯を箱に戻しながら、大河は椅子から立ち上がる。片眼鏡を外して木机に置くと、ルーレットの柱時計がちょうど八つ、鳴り響いた。
「うっわ、もう八時? ……夜じゃないよね? 朝?」
ポケットからスマホを取り出し、まじまじと顔に近づける。今まで考えたことがなかったが、なんだか今日はその四角いフォルムが奇妙に映る。
背丈よりも高い天体望遠鏡に手を触れながら、きっとここの古い品に囲まれているからだろうな、と大河は苦笑する。
このままずっとこうしていたい、と大河はまどろむが、そのたびにルゥの冷たくて小さな手が首筋に伸びてくる。
「……冷たいんだけど」
「だってこうしないと大河は眠っちゃうんだもん」
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陶器の上に小さな包帯を巻き終えると、ルゥが熱いコーヒーを運んできてくれた。
開け放したままの扉からは、踊り場が良く見える。
ルーレットの目は開いているが、ひとみには生気がない。こうして静かに文字盤に収まっているさまは、まるで普通の剥製のようだ。
ルゥに言わせると、これは眠っている状態らしい。
「じゃあなーんで、おれは寝ちゃいけないの?」
ルゥは少し考えて、「出られなくなる」と言い切った。
「伽藍堂で人間が眠ると、この建物から出ることができなくなるの」
まさか、と大河は否定しようとした。だが、剥製が当たり前に『生きている』世界では、一般の常識など通用しないのだろう。
「それじゃあルゥはどこで寝ているの、いつも」
「判子屋」
そこは大河が最初にルゥを見かけた、あの場所だ。さらに詳しく話を聞こうとするのを遮るように、屋敷のどこかで歯車のきしむような音が響いた。
腹の底が震えるような、重低音だ。音が鳴りやんでから改めて尋ねたが、ルゥはあいまいにことばを濁すだけでもう答えようとしなかった。
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「うっわ、もう八時? ……夜じゃないよね? 朝?」
ポケットからスマホを取り出し、まじまじと顔に近づける。今まで考えたことがなかったが、なんだか今日はその四角いフォルムが奇妙に映る。
背丈よりも高い天体望遠鏡に手を触れながら、きっとここの古い品に囲まれているからだろうな、と大河は苦笑する。
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