3 / 5
3)忍び寄る流行り病の影
しおりを挟む「レモン、その病気が聖女様でも治せないことを、どこで調べた?」
第二王子のラルフが、女性文官のレモンを疑っています。
「隣国から私の実家に来たお客様です。内緒の話ですが、隣国でも同じ病気が流行しており、聖女様でも治せなかったそうです」
「そうか、その人物と会わせてくれないか」
第二王子が興味を示しました。私も気になるので、その人物から話を聞きたいです。
「分かりました。そのお客様は、これから王宮を見学に来る予定ですけど、どうします?」
「貴賓室が空いているだろうから、そこで会おう」
第二王子に、考えがあるようです。
「貴賓室ですか? まぁ今日は空いていますが、平民服を着た、ただの旅行者ですよ」
彼女は、相手が貴賓室に案内するような人物ではないと、困っています。
「頼むよ」
第二王子の頼みです。
レモンは、急ぎ足で部屋を出ていきました。
「ラルフ、貴賓室とは良い場所を思いつきましたね」
貴賓室なら、ここから王族しか知らない隠し通路で行けます。
「だろ? たぶん、アイツだから」
私も、隣国からのお客様は、アイツだと思います。
◇
「平民服の僕を貴賓室に案内するなんて、レモン嬢は何者なんだい? ただの女性文官ではないのだろ?」
隣国からのお客様が、誰もいない貴賓室で話し始めました。
平民服ですが、仕立てが上級貴族用です。金髪碧眼のイケメン男性です。
「いるんだろ? 出て来いよ」
彼が、挑発してきましたので、第二王子と私が姿を見せます。
「驚いたな、ラルフ王子とピーチ姫じゃないか」
「久しぶりだな、カーク王子」
彼は、隣国の第三王子です。国の行事の際、何度か挨拶し、顔なじみです。
「二人並んで、結婚でもしたかと驚いたぜ」
いつものチャラ男に戻っています。
でも、国民の幸せを第一に考える彼ならば、信頼できます。
現状を話します。
「なるほど、災難だったな」
「で、僕に何を期待している?」
カークは、普段はチャラ男を演じていますが、実は切れ者です。
「聖女様でも治せない病気、どうなっている?」
第二王子が訊ねます。
「レモン嬢から聞いたところでは、この王国でも流行り出したようだな」
「色々と調べたが、残念ながら、治療法はない」
カークが天を仰ぎます。嘘ではないようです。
「と、いうことは?」
私は、残酷なことを聞きます。
「楽に、いかせてあげるだけさ」
彼は胸の前で両手を組みます。
彼は、国民のために、自分の危険を顧みず、治療法を求めてこの国に潜入して来たのです。
沈黙が貴賓室を包みます。
「ところで、僕の国が、この王国に戦争を宣言した話は、知っているかい?」
カークが、事も無げに言います。
「国境に兵を集結させていることは、知っているだろう」
ラルフも、事も無げに言います。
戦争が始まれば、何人もの兵が犠牲になるのに……
「止めたいのだろう、カーク?」
「止めてみせるよ、ラルフ」
熱い思いが、ぶつかり合います。
「隣国の王族も、流行り病に苦しんでいるのだろう?」
「戦争を始めるにも、先頭に立つ王族がいないって所か」
ラルフが語ります。
また、沈黙が貴賓室を包みます。
「じれったいわね、二人とも、何を望んでいるの!」
私は、キレてしまいました。これは、お父様の血ですね。
「ピーチ姫には負ける」
カークは大笑いします。
「僕に、この王国の令嬢を差し出せ。結婚して、戦争を止めて、国交を回復してみせる」
驚きの提案です。
「人質? いや、まさか!」
第二王子の考えが、何かにたどり着いたようです。
「そうだ、国王も、二人の兄も、流行り病で先が短い」
カーク! そんなこと言っていいの?
「じゃ、将来の国王の二人が、ここにそろったわけね」
沈んだ空気を、入れ替えます。
「さぁ、二人とも、手を出して、握手よ」
二人の腕を引っ張り、強制的に握手させます。
「決まりだな」
「決まりだ」
「ところで、カーク、気になる令嬢は、いるのか?」
第二王子が訊ねます。その令嬢が、今後、平和のカギとなります。
「僕が気になる令嬢は、、、できたよ」
彼は、私に微笑みます。
「ピーチはダメだぞ!」
ラルクがムキになります。ちょっと可愛いです。
「僕が欲しい令嬢は…」
「「え~!」」
カークの口から、意外な名前が出ました。
(次回予告)
隣国のカーク王子というカードを得たピーチ。
次回は、第一王子の様子を探って、秘密が判るかも。
20
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
愛に代えて鮮やかな花を
ono
恋愛
公爵令嬢エリシア・グローヴナーは、舞踏会の場で王太子アリステアより婚約破棄を言い渡される。
彼の隣には無垢な平民の娘、エヴァンジェリンがいた。
王太子の真実の愛を前にしてエリシアの苦い復讐が叶うまで。
※ハッピーエンドですが、スカッとはしません。
婚約破棄された私と侯爵子息様〜刺繍も私も、貴方が離さない〜
ナナミ
恋愛
「ディアナ!お前との婚約を破棄する!」
ディアナ・コヴァー伯爵令嬢は、婚約者である伯爵子息に断罪され、婚約破棄されてしまった。
ある子爵令嬢に嫌がらせをしていたと言うことである。彼女には身に覚えのない冤罪であった。
自分は、やっていない、と言っても、婚約者は信じない。
途方に暮れるディアナ。そんな時、美形の侯爵子息であるフレット・ファンエスがやって来て……。
伯爵令嬢×美形侯爵子息の恋愛ファンタジー。
婚約破棄されましたが、今さら後悔されても困ります
阿里
恋愛
復讐なんて興味ありません。でも、因果応報って本当にあるんですね。あなたのおかげで、私の幸せが始まりました。
・・・
政略結婚の駒として扱われ、冷酷非道な婚約者クラウスに一方的に婚約破棄を突きつけられた令嬢エマ・セルディ。
名誉も財産も地に堕とされ、愛も希望も奪われたはずの彼女だったが、その胸には消せない復讐と誇りが燃えていた。
そんな折、誠実で正義感あふれる高位貴族ディーン・グラスフィットと運命的に出会い、新たな愛と絆を育む。
ディーンの支えを受け、エマはクラウスの汚職の証拠を暴き、公の場で彼を徹底的に追い詰める──。
婚約破棄は了承済みですので、慰謝料だけ置いていってください
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢アナスタシア・オルステッドは、第三王子アレンの婚約者だった。
しかし、アレンは没落貴族の令嬢カリーナと密かに関係を持っていたことが発覚し、彼女を愛していると宣言。アナスタシアとの婚約破棄を告げるが──
「わかりました。でも、それには及びません。すでに婚約は破棄されております」
なんとアナスタシアは、事前に国王へ婚約破棄を申し出ており、すでに了承されていたのだ。
さらに、慰謝料もしっかりと請求済み。
「どうぞご自由に、カリーナ様とご婚約なさってください。でも、慰謝料のお支払いはお忘れなく」
驚愕するアレンを後にし、悠々と去るアナスタシア。
ところが数カ月後、生活に困窮したアレンが、再び彼女のもとへ婚約のやり直しを申し出る。
「呆れたお方ですね。そんな都合のいい話、お受けするわけがないでしょう?」
かつての婚約者の末路に興味もなく、アナスタシアは公爵家の跡取りとして堂々と日々を過ごす。
しかし、王国には彼女を取り巻く新たな陰謀の影が忍び寄っていた。
暗躍する謎の勢力、消える手紙、そして不審な襲撃──。
そんな中、王国軍の若きエリート将校ガブリエルと出会い、アナスタシアは自らの運命に立ち向かう決意を固める。
「私はもう、誰かに振り回されるつもりはありません。この王国の未来も、私自身の未来も、私の手で切り拓きます」
婚約破棄を経て、さらに強く、賢くなった公爵令嬢の痛快ざまぁストーリー!
自らの誇りを貫き、王国を揺るがす陰謀を暴く彼女の華麗なる活躍をお楽しみください。
さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~
阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」
婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。
けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。
セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。
「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。
――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※AIイラスト使用
※「なろう」にも重複投稿しています。
完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く
禅
恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。
だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。
しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。
こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは……
※完結まで毎日投稿します
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる