雨を待つ

宇土為名

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 昼休みになると雨は本格的に降り出していた。
 教室の窓から見えるどんよりと重い雲から雨は落ちてくる。
 俺は弁当をかき込むと、席を立った。
 廊下を歩いて、階段を降り、右に折れてまた廊下を進む。
 廊下の行き止まりの手前にある扉をノックすると、どうぞ、と声が返ってきた。
「失礼しまーす」
「はいいらっしゃい」
 保健医の先生──ここは男子高なのでもちろん男の先生だった──が、戸棚から何か取り出しながらにこりと笑う。そして俺を見ると、首を傾けて、視線をベッドの方に向けた。
「そこね」
「ども」
 天井から下がる白いカーテンをそっと引く。
 ベッドの中にはクラスメイトが眠っていた。
 こちらに背中を向けている。薄く影になった顔を覗き込むと、目を固く閉じて、眠っていた。深くゆっくりとした呼吸。
 柔らかそうな髪が白い枕に散らばっている。
 触りたい。
 でも。
「……」
 なんとか堪えて、俺はまたそっとカーテンを閉めた。
「昨日また眠れなかったって」
 先生は振り返った俺にそう言うと、よいしょ、と椅子から立ち上がった。んん、と大きく伸びをする。
「ちょっとここ頼める? 職員室行ってくるから」
「はい」
 頷くと、先生はひらりと手を振って保健室を出て行った。
 俺は先生が座っていた椅子に座った。
 手を伸ばして窓を開ける。雨はまだやみそうになかった。
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