深海の喧騒

つかち るきた

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深海の喧騒

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それからの日々は、ビビオテクにとり、まったく予想不可能な激動の日々であった。
「ビビオテク、これを読め。次はこれだ」
精一杯に手を伸ばし、背の高い棚に並ぶ数多の書物を指さし、キリアストが大きな声で笑う。
「読めない文字があったら、ビビオテクが教えてくれるんだろう?」
楽しみだ。
不遜に笑う少年を見下ろし、ビビオテクも負けじと唇の端を持ち上げ、大量の書物を両手に抱える。
この場所は、誰でも訪れていい場所だ。もちろん無料で。
しかしながら、恐ろしいほどに静寂に満ち溢れ、書物ばかりが増える、人の気配など一切感じない
沈黙と畏怖に満ち、これから先の未来も誰にも相手にされないであろう古びた無人の建物の中を、
私が造りました。どうですか、素敵でしょう?といわんばかりの得意げで生意気な口調と表情をし、
我が物顔で図書館を支配する幼い少年の相手をする非現実な日常が増えていくたび、ビビオテクは
負けるか、と無表情に浮べた笑顔の下で手を握り己に誓い、空高くそびえる書物の山に心を誓う。
もっと面白く難解で複雑で貴様の手に負えなく、無様に降参の旗を揚げる特別な書物を大量に持ってくるから
その時は、覚悟しておけなと。
ビビオテクは無表情の笑顔でひたすら要求に応じた本に手を伸ばす習慣が、不服ながら愛しいと想える
ずっと続くであろう『毎日』になっていた。
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