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第二章:プリンセス、岐路に立つ
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魔法レベル100の蔦の牢獄、超えられるものなら超えて見なさい!!
ガァーーォォオ……。
吼えた……というか欠伸みたいな気がするんだけど……。
もしかしたら温厚な魔物で戦わなくていいとか……。
「ーーほえ!?」
間抜けな声をあげてしまった。
なんで!?
「なんで!?」
張り巡らせた蔦がまるで招き入れるかのように道を開いた。
「あ……『大地の防壁』!!」
大地が隆起して壁が生まれる。
グァーーーォォオ。
また欠伸のような声がして……。
「嘘でしょ!?」
門のように変形して白帝を通してしまう!?
魔法無効化……じゃないわね、なんて言えばいいのかしら……魔法……干渉?
しかも、私の魔法に干渉って……冗談よね……私スキルレベル100よ!?
「ーーっ!?」
いけない! 動揺してる場合じゃない。でもどうすればいいの……。
魔法が通用しない? いえ、まだ攻撃魔法は何も使っていないわ。でも同じように干渉できるかもしれない。だったらいっそ剣で切りつけてみる? 当てれば麻痺の魔法が……でもそれすらへも干渉できるかもしれない……。
どうすればいいの……。
「ーー姫様!!」
「あっーー」
軽く飛んだ白帝が私の目の前に! 金の瞳が私を見つめている。
息が届きそうな距離。
動けない。
ゆっくりと近付く白帝の顔。間近で見ても真っ白でまるで雪のよう。こんな状況なのにその毛皮に触れてみたくなってしまう。それくらい魅力的だ。
クンクン……。
「あっ……」
頭から順に胸元、腰、脚と匂いを嗅がれていく。それはゆっくりと私の周りを回りながら繰り返される。脇やお尻もクンクンされて恥ずかしさが込み上げてくる。
何これ、もしかして私食べられるの!?
待って、私は美味しくないわよ!?
「ひやぁ!」
ざらりとした感触が首筋を撫でた。見ると白帝の顔がすぐ側にあった。頰を舐められた。
いよいよダメかもしれない。
逃げる……? どうやって? 恐らくステータスは魔法の効果があっても及ばない。一番高い素早さですら負けていると思う。
どうすればいいの……。
ふわぁ……ちょっと……待って……あ……。
「ぃゃ……」
何でそんな所を嗅ぐの?
だめ……舐めないで……。
太腿を伝うざらりとした刺激がこそばゆい。それと……ジワリとお腹の奥が疼く。
何がしたいの……? 白帝は私に体を擦り付けながら匂いを嗅いだり舐めたり……。
まるで猫に戯れつかれているみたい。
もしも敵意がないのなら……逃げることができるかも……。
「アン……彼らの様子は?」
「これだけ離れればおそらくは大丈夫かと」
「ありがとう。アン、貴女も逃げなさい……」
私の腕を甘噛みする白帝。
「それは……」
「貴女まで食べられることはないわ。私なら多分少しくらい齧られても大丈夫だと思うの……」
お尻に擦り寄る白帝。
この巨体に本気で攻撃されたらいくら私でもダメージを受けるかもしれないけれど……。
「ですが……」
「アン……」
「何か方法が……」
脚を舐める白帝。
頼みの綱の魔法がダメな以上私にできることは……。
「姫様……魔狼招来を試してみては?」
「魔狼……招来……?」
ガルム様の加護により得たスキル。俺くんも知らないスキル。何が起こるかわからない。字面からすると魔狼を呼び出せる召喚魔法のように思えるけれど……。もしもガルム様を呼び出せるのなら、この状況を覆せる。でもレベル1で呼べる可能性は……多分ゼロだ。呼べるとしても普通の魔狼だと思う。それだと今よりも状況が悪化するかもしれない……。
「姫様……囮にするようで心が痛みますが招来してみては?」
またお腹の辺りの匂いを嗅がれた。脚に擦り寄られるとちょっとこそばゆい。
戯れてるわよねこれ? 撫でてあげた方がいいのかしら……。
恐る恐る手を伸ばして白い雪のような毛並みを撫でる。
柔らかくて少ししっとりしている。何だかシルクのような手触り。
そう言えば、現れた時の威圧感が嘘みたいに消えている。
ひょっとすると温厚なの魔物なのかもしれない。私の希望が多分に含まれているけれど……。そうだったらいいな……本気でそう思う。
「姫様、戦いになる前に決断を!」
いつもよりも強いアンの声。アンはきっと自分だけ逃げたりしない。……出来ない。だから必死で打開策を考えてくれている。
試して……みる……。魔狼には悪いけれど、戦わなくていいから、白帝の気を引いてあとは逃げて……。
「魔狼招来……」
魔力を込めて力ある言葉、ルーンを紡ぎ出す。結構な魔力を消費した感覚がある。何が起きるの……!?
グゥルゥルゥ……。
白帝が喉を鳴らした。
私の体がぼんやりと光り出す!?
何が起こるのーー!?
「ん……」
頭とお尻が何だかムズムズしてきた。
光は一瞬強くなると波が引くように消えた。
「えっと……魔狼は?」
「ひ、姫様!」
酷く慌てたアンの声に不安が大きくなる。
「アン!?」
グァーーーォォオ!
「ひゃっ!?」
白帝の鳴き声に驚いて前のめりに倒れこんでしまう。
グルゥゥ……。
「ーーぅっっく!」
白帝にのしかかられた。お、重い……。魔狼を呼び損なうし、押さえつけられてしまうし……。これはいよいよ白帝の夕食になる覚悟をしなきゃいけないのかしら……。
「アンーー」
逃げなさい。……と言う前にアンの慌てた声に遮られた。衝撃的な言葉で!
「姫様!? 耳が、耳が……頭に耳が生えてます!!」
はぁ!? 咄嗟に頭に伸ばした手にはあり得ない感触があった。
「ネコミミーーーーー!?」
ガァーーォォオ……。
吼えた……というか欠伸みたいな気がするんだけど……。
もしかしたら温厚な魔物で戦わなくていいとか……。
「ーーほえ!?」
間抜けな声をあげてしまった。
なんで!?
「なんで!?」
張り巡らせた蔦がまるで招き入れるかのように道を開いた。
「あ……『大地の防壁』!!」
大地が隆起して壁が生まれる。
グァーーーォォオ。
また欠伸のような声がして……。
「嘘でしょ!?」
門のように変形して白帝を通してしまう!?
魔法無効化……じゃないわね、なんて言えばいいのかしら……魔法……干渉?
しかも、私の魔法に干渉って……冗談よね……私スキルレベル100よ!?
「ーーっ!?」
いけない! 動揺してる場合じゃない。でもどうすればいいの……。
魔法が通用しない? いえ、まだ攻撃魔法は何も使っていないわ。でも同じように干渉できるかもしれない。だったらいっそ剣で切りつけてみる? 当てれば麻痺の魔法が……でもそれすらへも干渉できるかもしれない……。
どうすればいいの……。
「ーー姫様!!」
「あっーー」
軽く飛んだ白帝が私の目の前に! 金の瞳が私を見つめている。
息が届きそうな距離。
動けない。
ゆっくりと近付く白帝の顔。間近で見ても真っ白でまるで雪のよう。こんな状況なのにその毛皮に触れてみたくなってしまう。それくらい魅力的だ。
クンクン……。
「あっ……」
頭から順に胸元、腰、脚と匂いを嗅がれていく。それはゆっくりと私の周りを回りながら繰り返される。脇やお尻もクンクンされて恥ずかしさが込み上げてくる。
何これ、もしかして私食べられるの!?
待って、私は美味しくないわよ!?
「ひやぁ!」
ざらりとした感触が首筋を撫でた。見ると白帝の顔がすぐ側にあった。頰を舐められた。
いよいよダメかもしれない。
逃げる……? どうやって? 恐らくステータスは魔法の効果があっても及ばない。一番高い素早さですら負けていると思う。
どうすればいいの……。
ふわぁ……ちょっと……待って……あ……。
「ぃゃ……」
何でそんな所を嗅ぐの?
だめ……舐めないで……。
太腿を伝うざらりとした刺激がこそばゆい。それと……ジワリとお腹の奥が疼く。
何がしたいの……? 白帝は私に体を擦り付けながら匂いを嗅いだり舐めたり……。
まるで猫に戯れつかれているみたい。
もしも敵意がないのなら……逃げることができるかも……。
「アン……彼らの様子は?」
「これだけ離れればおそらくは大丈夫かと」
「ありがとう。アン、貴女も逃げなさい……」
私の腕を甘噛みする白帝。
「それは……」
「貴女まで食べられることはないわ。私なら多分少しくらい齧られても大丈夫だと思うの……」
お尻に擦り寄る白帝。
この巨体に本気で攻撃されたらいくら私でもダメージを受けるかもしれないけれど……。
「ですが……」
「アン……」
「何か方法が……」
脚を舐める白帝。
頼みの綱の魔法がダメな以上私にできることは……。
「姫様……魔狼招来を試してみては?」
「魔狼……招来……?」
ガルム様の加護により得たスキル。俺くんも知らないスキル。何が起こるかわからない。字面からすると魔狼を呼び出せる召喚魔法のように思えるけれど……。もしもガルム様を呼び出せるのなら、この状況を覆せる。でもレベル1で呼べる可能性は……多分ゼロだ。呼べるとしても普通の魔狼だと思う。それだと今よりも状況が悪化するかもしれない……。
「姫様……囮にするようで心が痛みますが招来してみては?」
またお腹の辺りの匂いを嗅がれた。脚に擦り寄られるとちょっとこそばゆい。
戯れてるわよねこれ? 撫でてあげた方がいいのかしら……。
恐る恐る手を伸ばして白い雪のような毛並みを撫でる。
柔らかくて少ししっとりしている。何だかシルクのような手触り。
そう言えば、現れた時の威圧感が嘘みたいに消えている。
ひょっとすると温厚なの魔物なのかもしれない。私の希望が多分に含まれているけれど……。そうだったらいいな……本気でそう思う。
「姫様、戦いになる前に決断を!」
いつもよりも強いアンの声。アンはきっと自分だけ逃げたりしない。……出来ない。だから必死で打開策を考えてくれている。
試して……みる……。魔狼には悪いけれど、戦わなくていいから、白帝の気を引いてあとは逃げて……。
「魔狼招来……」
魔力を込めて力ある言葉、ルーンを紡ぎ出す。結構な魔力を消費した感覚がある。何が起きるの……!?
グゥルゥルゥ……。
白帝が喉を鳴らした。
私の体がぼんやりと光り出す!?
何が起こるのーー!?
「ん……」
頭とお尻が何だかムズムズしてきた。
光は一瞬強くなると波が引くように消えた。
「えっと……魔狼は?」
「ひ、姫様!」
酷く慌てたアンの声に不安が大きくなる。
「アン!?」
グァーーーォォオ!
「ひゃっ!?」
白帝の鳴き声に驚いて前のめりに倒れこんでしまう。
グルゥゥ……。
「ーーぅっっく!」
白帝にのしかかられた。お、重い……。魔狼を呼び損なうし、押さえつけられてしまうし……。これはいよいよ白帝の夕食になる覚悟をしなきゃいけないのかしら……。
「アンーー」
逃げなさい。……と言う前にアンの慌てた声に遮られた。衝撃的な言葉で!
「姫様!? 耳が、耳が……頭に耳が生えてます!!」
はぁ!? 咄嗟に頭に伸ばした手にはあり得ない感触があった。
「ネコミミーーーーー!?」
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