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第三章:プリンセス、迷宮に囚わる
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先手必勝!!
スライムだけど、この世界では油断しちゃいけない魔物ランキングのトップスリーに入る。
「『氷結の矢』!」
スライム退治の定番、凍らせて砕く。
未だVの字隊形を崩していないスライムに氷の矢が殺到する。遠慮は必要ないのでそれぞれに二十本ずつが殺到する。
スライムの動きじゃ避けられないだろうし、これで決まりねーー!?
そう思いかけた瞬間、先頭の赤のスライムーースライムレッドが大きく膜のように広がり全ての矢を受け止めた。
まさか仲間を庇うなんて思わなかったけれど、まずは一体ね。
「もう一度フリーズ……!?」
嘘でしょ? 凍結した赤い膜状のスライムがあっという間に元どおり、ジュウジュウと湯気をあげて氷の矢を全て飲み込み、元の雫型に戻った。
「熱で溶かしたの!?」
え!? スライムレッドってそういうスライムだっったの!? まさか他のスライムも一体ずつ異なる属性を持っている??
「これは少し……苦戦しそうね……『炎の障壁』! 『氷結の矢』!」
炎の壁でグルリと囲み、開けておいた上部から氷結の矢を射る。
やはり周囲の炎には青色、スライムブルーが対応した。上からの矢はレッドが先ほどと同様に全てを受け止め融かしてしまう。
そして周りの炎はブルーが包み込むように覆い被さり消火してしまう。
厄介ね……。
赤が炎。
青が水。
緑は……なんだろう、風? ゲームだとそういうイメージだけれど、そもそも風に色なんてないし……木とかかしら?
他にも黄色はなんだろう、消去法的に土かしら?
桃は……あまり考えたくないわね。ピンク……だものね……。あいつが一番注意ね。
「『刺シ貫ク光』」
光……属性? というかレーザーなんだけど、これならどう!?
ふーん……そこは黄色が対応するのね。黄色が光担当ね。それなら、これはどう?
「『侵食スル黒』!」
名前はアレだけどただの闇属性の穴……というか地面に広がる環状のダメージフィールド。光すら逃さない宇宙のそれとは違う。それに近いのは究極魔法虚空の方だ。最悪そのレベルを使うけれど、ダンジョンにも影響が出そうなので思い留まっている。他の魔法でなんとかなればいいけれど……どうかしらね。
ちなみにまたもや黄色が対処した。どうやら光というよりはその他全般担当なのかもしれない。
同時に放っていた『風の刃』は想定通り緑に吸収された。
残るは桃色。確かめるまでもなくアレよね……。
というわけで、確認作業はここまで。
ちょっと本気出しますよ~!
「『束縛の蔦』!」
スライムの周囲から伸びる蔦。
五体を包み込み逃さないようにする。
まぁ、スライムの素早さで逃げるとかないけれど……。
「『凍結地獄』!」
蔦ごと地獄の氷で包み込む。
仕上げはーー。
「『太陽の祭典』!」
出現座標は氷の中心。
あらゆるものを凍らせる地獄の氷と全てを焼き尽くす太陽の焔。その二つが一点で融合する。それぞれ単体でも究極魔法クラスなのだけれど、それらを合わせた合体魔法というまさにチート級。
ゲームと違って色々できるって素晴らしい!!
……しかし、その発想の元は圧力鍋……。いや、そこは触れずにいこう。せっかくだし……。
「ーー合体魔法、凍てつく太陽!!」
ノリで名付けたけどいいじゃない!!
いくら裏ボスチートキャラのスライムでもこれならひとたまりもないでしょう。だってゲームでは出来ない合わせ技なんだしね。とは言ってもこの世界でも出来る人は少ないでしょうけれど。
「……やったかしら?」
ギラギラと眩い輝きを放つ氷のドーム。まるでダイヤモンドのような輝きだけど中心には膨大な熱エネルギーが閉じ込められている。
これほど近くにいながらその熱を感じないのはさすが地獄の氷ね。
これで仕留められなかったらどうする……? ゲームならパーティーで対応できるけれど……今の私はソロだから……取れる手段も限られている。
斬鉄剣と高レベル剣士がいれば、武器特性でなんでもぶった斬れるのに……。
輝く氷のドームからゆっくりとその輝きが失われていく。内部の全てを焼き尽くし消失させたエネルギーが地獄の氷に凍てついて消える。
終いにはその氷も何事もなかったかのように消えていく。
なんだか夕陽に通じる切なさを感じる。
少しずつ露わになるドームの中には……五人の、五匹のスライムの姿はない。
「よかった……」
上手くいったみたい。逃げ場のないように氷結させたのが良かったのか、問答無用の高火力が幸いしたのか……。
前方に掲げていた手を降ろす。
あれだけ連続して魔法を放っても私に殆ど疲労はない。こうしている今この瞬間も消費した魔力が回復していっている。
我ながら凄い力だと感心する。それこそ条件さえ整えば世界を滅ぼせる程の力。
「怖いわね……」
無意識に握り締めていた手からゆっくりと力を抜いていく。
「アンーー」
振り返りアンに呼びかけーー!?
「ーー!?」
何!? 何なのこれは!?
「何よコレ!!」
私が見たのは透き通るように薄いピンクの水晶柱。そしてその中にある人影……。
背中から羽根の生えた金色の髪の可愛い女の子……。ガルム様に貰ったお揃いの洋服を着た少女……。
「ーーアン!!」
彼女は今意識を失っているのか生気のない表情で目を閉じている。
こんなものはなかった。
私がスライムと戦っているうちに……。
具現化していない彼女をどうやって……?
ーースライムの能力ーー
そうだった……。こいつらは姿を消して、この世界に具現化していないはずの妖精すら捕食する。正しく最悪の存在……。
どうする……。
どうすればいい……。
今私に何ができる……?
ーー考えて!
私のスキルで何ができる、魔法で、実力行使で?
捕食された状態からどうやって解放する?
何をすればいいの?
水晶を砕く? それで中身は無事なの?
魔法改変……?
いえ、捕食は魔法じゃない……。
捕食……?
スライムの捕食……本当に?
待って、私あんな結晶化見たことない……!?
「アンーー!!」
俺くんの記憶にすらない謎の結晶化。
でもこれは彼らの能力である捕食じゃない。何か別の能力。何が起こるかわからないけど……やるしかないーー!!
「ーー今助けるから!!」
駆け寄って水晶に触れる。
私だってあんた達の力の一端は扱えるのよ!! 私はどうなってもいい、アンは助けてみせる!!
ーー吸収!!
スライムだけど、この世界では油断しちゃいけない魔物ランキングのトップスリーに入る。
「『氷結の矢』!」
スライム退治の定番、凍らせて砕く。
未だVの字隊形を崩していないスライムに氷の矢が殺到する。遠慮は必要ないのでそれぞれに二十本ずつが殺到する。
スライムの動きじゃ避けられないだろうし、これで決まりねーー!?
そう思いかけた瞬間、先頭の赤のスライムーースライムレッドが大きく膜のように広がり全ての矢を受け止めた。
まさか仲間を庇うなんて思わなかったけれど、まずは一体ね。
「もう一度フリーズ……!?」
嘘でしょ? 凍結した赤い膜状のスライムがあっという間に元どおり、ジュウジュウと湯気をあげて氷の矢を全て飲み込み、元の雫型に戻った。
「熱で溶かしたの!?」
え!? スライムレッドってそういうスライムだっったの!? まさか他のスライムも一体ずつ異なる属性を持っている??
「これは少し……苦戦しそうね……『炎の障壁』! 『氷結の矢』!」
炎の壁でグルリと囲み、開けておいた上部から氷結の矢を射る。
やはり周囲の炎には青色、スライムブルーが対応した。上からの矢はレッドが先ほどと同様に全てを受け止め融かしてしまう。
そして周りの炎はブルーが包み込むように覆い被さり消火してしまう。
厄介ね……。
赤が炎。
青が水。
緑は……なんだろう、風? ゲームだとそういうイメージだけれど、そもそも風に色なんてないし……木とかかしら?
他にも黄色はなんだろう、消去法的に土かしら?
桃は……あまり考えたくないわね。ピンク……だものね……。あいつが一番注意ね。
「『刺シ貫ク光』」
光……属性? というかレーザーなんだけど、これならどう!?
ふーん……そこは黄色が対応するのね。黄色が光担当ね。それなら、これはどう?
「『侵食スル黒』!」
名前はアレだけどただの闇属性の穴……というか地面に広がる環状のダメージフィールド。光すら逃さない宇宙のそれとは違う。それに近いのは究極魔法虚空の方だ。最悪そのレベルを使うけれど、ダンジョンにも影響が出そうなので思い留まっている。他の魔法でなんとかなればいいけれど……どうかしらね。
ちなみにまたもや黄色が対処した。どうやら光というよりはその他全般担当なのかもしれない。
同時に放っていた『風の刃』は想定通り緑に吸収された。
残るは桃色。確かめるまでもなくアレよね……。
というわけで、確認作業はここまで。
ちょっと本気出しますよ~!
「『束縛の蔦』!」
スライムの周囲から伸びる蔦。
五体を包み込み逃さないようにする。
まぁ、スライムの素早さで逃げるとかないけれど……。
「『凍結地獄』!」
蔦ごと地獄の氷で包み込む。
仕上げはーー。
「『太陽の祭典』!」
出現座標は氷の中心。
あらゆるものを凍らせる地獄の氷と全てを焼き尽くす太陽の焔。その二つが一点で融合する。それぞれ単体でも究極魔法クラスなのだけれど、それらを合わせた合体魔法というまさにチート級。
ゲームと違って色々できるって素晴らしい!!
……しかし、その発想の元は圧力鍋……。いや、そこは触れずにいこう。せっかくだし……。
「ーー合体魔法、凍てつく太陽!!」
ノリで名付けたけどいいじゃない!!
いくら裏ボスチートキャラのスライムでもこれならひとたまりもないでしょう。だってゲームでは出来ない合わせ技なんだしね。とは言ってもこの世界でも出来る人は少ないでしょうけれど。
「……やったかしら?」
ギラギラと眩い輝きを放つ氷のドーム。まるでダイヤモンドのような輝きだけど中心には膨大な熱エネルギーが閉じ込められている。
これほど近くにいながらその熱を感じないのはさすが地獄の氷ね。
これで仕留められなかったらどうする……? ゲームならパーティーで対応できるけれど……今の私はソロだから……取れる手段も限られている。
斬鉄剣と高レベル剣士がいれば、武器特性でなんでもぶった斬れるのに……。
輝く氷のドームからゆっくりとその輝きが失われていく。内部の全てを焼き尽くし消失させたエネルギーが地獄の氷に凍てついて消える。
終いにはその氷も何事もなかったかのように消えていく。
なんだか夕陽に通じる切なさを感じる。
少しずつ露わになるドームの中には……五人の、五匹のスライムの姿はない。
「よかった……」
上手くいったみたい。逃げ場のないように氷結させたのが良かったのか、問答無用の高火力が幸いしたのか……。
前方に掲げていた手を降ろす。
あれだけ連続して魔法を放っても私に殆ど疲労はない。こうしている今この瞬間も消費した魔力が回復していっている。
我ながら凄い力だと感心する。それこそ条件さえ整えば世界を滅ぼせる程の力。
「怖いわね……」
無意識に握り締めていた手からゆっくりと力を抜いていく。
「アンーー」
振り返りアンに呼びかけーー!?
「ーー!?」
何!? 何なのこれは!?
「何よコレ!!」
私が見たのは透き通るように薄いピンクの水晶柱。そしてその中にある人影……。
背中から羽根の生えた金色の髪の可愛い女の子……。ガルム様に貰ったお揃いの洋服を着た少女……。
「ーーアン!!」
彼女は今意識を失っているのか生気のない表情で目を閉じている。
こんなものはなかった。
私がスライムと戦っているうちに……。
具現化していない彼女をどうやって……?
ーースライムの能力ーー
そうだった……。こいつらは姿を消して、この世界に具現化していないはずの妖精すら捕食する。正しく最悪の存在……。
どうする……。
どうすればいい……。
今私に何ができる……?
ーー考えて!
私のスキルで何ができる、魔法で、実力行使で?
捕食された状態からどうやって解放する?
何をすればいいの?
水晶を砕く? それで中身は無事なの?
魔法改変……?
いえ、捕食は魔法じゃない……。
捕食……?
スライムの捕食……本当に?
待って、私あんな結晶化見たことない……!?
「アンーー!!」
俺くんの記憶にすらない謎の結晶化。
でもこれは彼らの能力である捕食じゃない。何か別の能力。何が起こるかわからないけど……やるしかないーー!!
「ーー今助けるから!!」
駆け寄って水晶に触れる。
私だってあんた達の力の一端は扱えるのよ!! 私はどうなってもいい、アンは助けてみせる!!
ーー吸収!!
応援ありがとうございます!
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