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第四章:プリンセス、聖都に舞う
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不十分な状態でもある程度形を成そうとするその姿勢は良しですが、そもそもそれでどうこうできるのならそれは不十分な状態ではないのではないかと思ったりします。
だったら最初からその量で事足りるのではないか、そういう事です。
実際目の前のゴーレムはよくやっています。というのもどういう制御なのか、ある量のオリハルコンの塊ーーブロックで鎧の騎士のような形態に変貌しつつあるのですから。
もともとブロックはどれもが適当な破片のような状態でしたから、おそらくは魔法的な何かで変形合体するのでしょう……とは想像していました。見事にその想像が当たった訳ですね。
この事からブロックが何らかの事情により減少したとしても残った分でボディを形成し戦い続ける仕様のようです。
つまり何が言いたいのかといえば当初の予定通りコアを狙うしかないということですね。
「……キラリちゃん結構まずくないかしら?」
「……まずいですね」
ミストさんの震える声に同意します。主力のドーソンんさんはともかく、他の二人は殆どダメージを出せていないようです。そして肝心のドーソンさんですらオリハルコンの硬度に辟易している様子。
それはそうでしょう。だって武器の相性が悪すぎますから。本来ならハンマーなどの打撃系統の武器が欲しいところですが、このパーティーでは誰も使う人がいません。このままではこちらの体力的な消耗が先に継戦限界を突破してしまいます。
「ナナン! 危ない!!」
現に今もナナンさんの攻撃が弾かれてあわやゴーレムブロウを食うところでした。
私の予想ではあれを食らうと一撃必殺だと思います。打ち所がよければとは思いますが、おそらく体は原型をとどめていないと思うのでかなりマズイことになります。女の子にしていい所業ではありませんね。
正直ここまでキツイとは思いませんでしたーーっと、いい加減この解説口調は疲れるわね。いつもの思考に戻しましょう。
このままではまずい事になりそうな予感。出来れば彼らだけでどうにかしたかったけれどそれは叶いそうにない。最初の組み上がる前に決着をつけられればよかったのだけれど、残念ながらコアを判別する事ができなかった。他とは違う色とか形を期待していたのだけれど、そういうわかりやすさとは無縁だったのよね。
誤算だけれど仕方がないわ。
さて、さすがにそろそろ普通の魔法使いの私にできる援護をしましょうか……。
「『巨石の尖杭』!!」
私の周囲に岩石から作り出された円錐の杭が十ほど浮かぶ。魔法の名前の通り刺し貫くモノ。見た目が妙に漫画ドリルチックなのはどうしてなのかしらね、俺くん……。ホント彼の世界って凄いわね。
兎にも角にも魔法耐性あんど物理耐性も高いあいつにどこまで通用するか。
行ってみましょうか!!
「援護します!!」
「「「ーー!?」」」
前衛の三人にしっかり聞こえるように大きな声で宣言する。皆がこちらを確認した事を確かめた上で狙いを定めて尖杭を打ち出した。
ゴーレムのサイズはドーソンさんの倍くらい。一部をアースウォールで隔離していてこの大きさ。全く物語の勇者様は凄いわ。普通に考えたらそんなサイズ差の相手に挑もうだなんて思わないわ。私だったら出会う前に噂の段階で逃げるわね。
銀色に煌めく鎧の巨人に岩石の杭が轟音を立てて衝突する。距離がそこまでないので加速途中にぶつかる形だけれど……うわー硬いわぁ……あんなに大きくて硬いだなんて……その上尖ってるから。
「……ひでぇ……」
「ーー!?」
何度目になるかわからない聴き慣れ始めた呻くようなおっさんの声がすぐ側からして少し驚いた。
いつの間にそばまで来てたのか、あまりの光景に見惚れていて気がつかなかったわ。
「キラリちゃんホントにあなた一体何者なの……」
その隣でファムさん、ナナンさんも唖然としている。
そうよね、私も一緒だもの。高物理耐性どこいった!? 何で岩石に負けてるんだ!? お前は最高の硬度を誇る魔法金属オリハルコンだろっ!!!
私は目の前ーーといってもソコソコの距離はあるのだけれどもーーでボコボコにひしゃげていくゴーレムにそう叫びたくなった。
想定外ーー私が甘いのか!? いや、そんなことはないはずだ。ちゃんと遠慮してレベル4魔法を選択した。それなのに何故……?
「……ありえないですわ……どうやればこれほどの威力を出せるんですの!?」
デスヨネー。私も不思議なんですよミストさん。でも想像はできます。というか、そもそも原因なんて一つしかない。私のスキルレベルと魔力……あら二つかしら? 魔法の威力や効率はその二つに影響を受ける。
つまりは今回の様な魔法の場合は威力=硬度×速度と言えなくもない。だから私のチートな能力は単純計算で世界最高の魔法使いが放つ同魔法の100倍の効果を発揮した。そうまるでオリハルコンゴーレムが泥人形のように感じられる程に……。
「あは、あははは……」
笑って誤魔化せるものならいくらでも笑うわ……でもね、世の中そんなに甘いわけがない。
みんなの顔を見るのが怖いわ。一体どんな顔で見ればいいのかしら? これはいっそ開き直るべきかしら? そうよね、それがいいわ。名案ねそうしましょう!
「くくくく……我が魔法の前にあのような鉄屑などガラクタに等しいわっ!!」
「「「「………………」」」」
「ふむ。そこの者たちも驚いて声も出ないようだな。クックック……ハァーッハッハァ!!」
「どうした急に……気でも振れたか?」
おい……。
「キラリちゃんまさか!? 魔力の急激な消耗で頭に影響が!?」
何でよ、雀の涙よ?
「私の魔法では癒せませんわ……」
そんな目で見ないで!?
「これでその大きなものを捥いでも問題なくなったーー」
「あるわっ! どうしてナナンさんはそうなんですか!? 捥ぐなら一番大きな人の胸にしてください!! 私のなんてアレに比べたら可愛いものです!!!」
「一番はミストね」
胸を庇いながら早々にミストさんを生贄に差し出すファムさん……。仲間って何だろうか? そう何かに問いかけたくなる。
「それは一先ず置いておきましょうね。それであなたは大丈夫そうですわね。……どうせ異常な魔法から目を逸らせようとでも考えたのでしょうけれど、無駄ですわよ? その程度でうやむやに出来るレベルではありませんわよ?」
「うっ……そこを何とか?」
「何ともなりませんわ。諦めなさいな」
恥ずかしい思いをしたのにとんだ迷案だったわね。ダメで元々、悔しくなんてないわ。それよりもーー。
「ーー冗談はこれくらいにして決着をつけましょう! ゴーレムはまだ稼働停止していません!!」
ひしゃげて一部が砕けたり崩れたりして形を維持できていないけれど再生しようとしている。コアにダメージを与えられていない?
「ーーコアか!!」
「見た目で判別できないわ! どうするの!?」
「頭か心臓! 定番だけれどそこを狙いましょう!!」
フェイクでなければどちらかにコアがある。偶然私の魔法が当たらなかったんじゃ無いと思う。多分庇ったんだと思う。
「ファム! ナナン! お前らで心臓をやれ!! 頭は俺が砕く!!!」
「「了解!!」」
満身創痍ーーゴーレムだから壊れかけた鎧にしか見えないけれど、十分な行動が取れないのは明らか。
ドーソンさんの指示を受けて即座に疾走する二人の美女。対するゴーレムもまだ行動不能ではないがすでに最初の頃の様な脅威はない。僅かな足掻きを見せたゴーレムの腕を掻い潜り二人は胸部に剣を突き立てる!!
「「クリティカル・スラストォォッ!!」」
二人の声が唱和する。繰り出したのは剣系統基本スキル。初級スキルながら実は熟練度を上げ続ければ驚異的な威力と低魔力消費で使用できる超が付くほどの便利スキルに化ける。
さすがにこの二人がその域まで磨いているとは思わないけれど、相応の修練を積んできただろうことはゴーレムの砕けた胸部が証明している。まぁ先ほどの私のインチキな攻撃で相当ダメージが入っていたとは思うけれど。
「良くやった!! 後は任せろ!!」
即座にゴーレムから離脱する二人の後を戦斧を担いだ山賊ーードーソンさんが引き継ぐ。
ゴーレムはまだ健在。つまりーー心臓はコアではなかった!?
迫る第二陣にゴーレムも必死の抵抗を見せる。しかし蓄積したダメージの所為で正常な迎撃行動は取れない様子。ただ単に腕を振り回して殴る……というよりも当たるを幸いとも言えそうな振り回し攻撃。
しかしそんな苦し紛れの悪足掻きが通用する様な相手ではない。山賊ーードーソンさんはああ見えて歴戦の勇士……みたいだから!! ……ああ見えて。
「舐めんな!!」
ドーソンが吠えてゴーレムの腕にカウンター気味に戦斧を振り下ろした。そのまま両手に持った獲物を回転しながら連続して叩き込んでいく。
「うぉぉおおおおおおっっっ!! インフィニティ・スラッシャァァァッッ!!!」
リアル大回転斬り!!
本来のスキルなら無限の斬撃の名の通り相当数の斬り攻撃を叩き込むのだけれど……戦斧を軽々と使いこなすドーソンさんのそれは剣技ではありえない衝撃力となってゴーレムの体を斬りーーいいえ魔法の戦斧の特殊能力を発揮して超重量による粉砕攻撃と化している。
腕が弾き飛び仰け反った処にさらに連続して叩き込まれてしまうとゴーレムの判断能力では対処しきれない。
瞬く間に脚部を粉砕されたゴーレムはまるで傅く様に頭部をドーソンさんに下げた。
遂に射程圏内に入った!!
「砕け散れぇぇっっ!!!!」
横回転だった戦斧の振り回し攻撃を体を倒して勢いをそのままに縦回転に!!
渾身の一撃が狙い違わずゴーレムの頭部を打ち砕いたーー。
………………。
ゆっくりと崩れ落ちるオリハルコンゴーレム。
まるで機械がショートしたかの様に電流が走りあちこちで小さくスパークしている。
「……やったか?」
あ、それフラグ(笑)
思わず空気を読めないセリフを言いかけて堪える。
もう! やめてよね俺くんってば……。
「ーーやったわねドーソン!」
嬉しそうなファムさんたちが駆け寄る。
「さすがですわ」
「そう。私たちの事も褒めていい。夜のご褒美期待してる……」
「………………」
私はその輪に入っていけず少し離れたところで見つめる。
少し……やっぱり少しだけ仲間っていいな……そう思った。
例えばガルム様とシーラくんとハデス様と一緒とか……うふふ。でもそれじゃまるっきりハーレムね。私の体がもつかしら? うふふ。
「………………」
あーあ。つまんないなー。
別に羨ましくなんてないんだからねっ!
………………。
……虚しい。
「……はぁ。ゴーレムの破片でも持って帰ろーー!? ……えっ!? あ、ちょっと! だめっ!! ダメぇぇっっ!!!」
「「「ーー!?」」」
私の悲鳴のような叫びと同時に閃光と爆音が轟き、辺りは爆風に呑みこまれた。
だったら最初からその量で事足りるのではないか、そういう事です。
実際目の前のゴーレムはよくやっています。というのもどういう制御なのか、ある量のオリハルコンの塊ーーブロックで鎧の騎士のような形態に変貌しつつあるのですから。
もともとブロックはどれもが適当な破片のような状態でしたから、おそらくは魔法的な何かで変形合体するのでしょう……とは想像していました。見事にその想像が当たった訳ですね。
この事からブロックが何らかの事情により減少したとしても残った分でボディを形成し戦い続ける仕様のようです。
つまり何が言いたいのかといえば当初の予定通りコアを狙うしかないということですね。
「……キラリちゃん結構まずくないかしら?」
「……まずいですね」
ミストさんの震える声に同意します。主力のドーソンんさんはともかく、他の二人は殆どダメージを出せていないようです。そして肝心のドーソンさんですらオリハルコンの硬度に辟易している様子。
それはそうでしょう。だって武器の相性が悪すぎますから。本来ならハンマーなどの打撃系統の武器が欲しいところですが、このパーティーでは誰も使う人がいません。このままではこちらの体力的な消耗が先に継戦限界を突破してしまいます。
「ナナン! 危ない!!」
現に今もナナンさんの攻撃が弾かれてあわやゴーレムブロウを食うところでした。
私の予想ではあれを食らうと一撃必殺だと思います。打ち所がよければとは思いますが、おそらく体は原型をとどめていないと思うのでかなりマズイことになります。女の子にしていい所業ではありませんね。
正直ここまでキツイとは思いませんでしたーーっと、いい加減この解説口調は疲れるわね。いつもの思考に戻しましょう。
このままではまずい事になりそうな予感。出来れば彼らだけでどうにかしたかったけれどそれは叶いそうにない。最初の組み上がる前に決着をつけられればよかったのだけれど、残念ながらコアを判別する事ができなかった。他とは違う色とか形を期待していたのだけれど、そういうわかりやすさとは無縁だったのよね。
誤算だけれど仕方がないわ。
さて、さすがにそろそろ普通の魔法使いの私にできる援護をしましょうか……。
「『巨石の尖杭』!!」
私の周囲に岩石から作り出された円錐の杭が十ほど浮かぶ。魔法の名前の通り刺し貫くモノ。見た目が妙に漫画ドリルチックなのはどうしてなのかしらね、俺くん……。ホント彼の世界って凄いわね。
兎にも角にも魔法耐性あんど物理耐性も高いあいつにどこまで通用するか。
行ってみましょうか!!
「援護します!!」
「「「ーー!?」」」
前衛の三人にしっかり聞こえるように大きな声で宣言する。皆がこちらを確認した事を確かめた上で狙いを定めて尖杭を打ち出した。
ゴーレムのサイズはドーソンさんの倍くらい。一部をアースウォールで隔離していてこの大きさ。全く物語の勇者様は凄いわ。普通に考えたらそんなサイズ差の相手に挑もうだなんて思わないわ。私だったら出会う前に噂の段階で逃げるわね。
銀色に煌めく鎧の巨人に岩石の杭が轟音を立てて衝突する。距離がそこまでないので加速途中にぶつかる形だけれど……うわー硬いわぁ……あんなに大きくて硬いだなんて……その上尖ってるから。
「……ひでぇ……」
「ーー!?」
何度目になるかわからない聴き慣れ始めた呻くようなおっさんの声がすぐ側からして少し驚いた。
いつの間にそばまで来てたのか、あまりの光景に見惚れていて気がつかなかったわ。
「キラリちゃんホントにあなた一体何者なの……」
その隣でファムさん、ナナンさんも唖然としている。
そうよね、私も一緒だもの。高物理耐性どこいった!? 何で岩石に負けてるんだ!? お前は最高の硬度を誇る魔法金属オリハルコンだろっ!!!
私は目の前ーーといってもソコソコの距離はあるのだけれどもーーでボコボコにひしゃげていくゴーレムにそう叫びたくなった。
想定外ーー私が甘いのか!? いや、そんなことはないはずだ。ちゃんと遠慮してレベル4魔法を選択した。それなのに何故……?
「……ありえないですわ……どうやればこれほどの威力を出せるんですの!?」
デスヨネー。私も不思議なんですよミストさん。でも想像はできます。というか、そもそも原因なんて一つしかない。私のスキルレベルと魔力……あら二つかしら? 魔法の威力や効率はその二つに影響を受ける。
つまりは今回の様な魔法の場合は威力=硬度×速度と言えなくもない。だから私のチートな能力は単純計算で世界最高の魔法使いが放つ同魔法の100倍の効果を発揮した。そうまるでオリハルコンゴーレムが泥人形のように感じられる程に……。
「あは、あははは……」
笑って誤魔化せるものならいくらでも笑うわ……でもね、世の中そんなに甘いわけがない。
みんなの顔を見るのが怖いわ。一体どんな顔で見ればいいのかしら? これはいっそ開き直るべきかしら? そうよね、それがいいわ。名案ねそうしましょう!
「くくくく……我が魔法の前にあのような鉄屑などガラクタに等しいわっ!!」
「「「「………………」」」」
「ふむ。そこの者たちも驚いて声も出ないようだな。クックック……ハァーッハッハァ!!」
「どうした急に……気でも振れたか?」
おい……。
「キラリちゃんまさか!? 魔力の急激な消耗で頭に影響が!?」
何でよ、雀の涙よ?
「私の魔法では癒せませんわ……」
そんな目で見ないで!?
「これでその大きなものを捥いでも問題なくなったーー」
「あるわっ! どうしてナナンさんはそうなんですか!? 捥ぐなら一番大きな人の胸にしてください!! 私のなんてアレに比べたら可愛いものです!!!」
「一番はミストね」
胸を庇いながら早々にミストさんを生贄に差し出すファムさん……。仲間って何だろうか? そう何かに問いかけたくなる。
「それは一先ず置いておきましょうね。それであなたは大丈夫そうですわね。……どうせ異常な魔法から目を逸らせようとでも考えたのでしょうけれど、無駄ですわよ? その程度でうやむやに出来るレベルではありませんわよ?」
「うっ……そこを何とか?」
「何ともなりませんわ。諦めなさいな」
恥ずかしい思いをしたのにとんだ迷案だったわね。ダメで元々、悔しくなんてないわ。それよりもーー。
「ーー冗談はこれくらいにして決着をつけましょう! ゴーレムはまだ稼働停止していません!!」
ひしゃげて一部が砕けたり崩れたりして形を維持できていないけれど再生しようとしている。コアにダメージを与えられていない?
「ーーコアか!!」
「見た目で判別できないわ! どうするの!?」
「頭か心臓! 定番だけれどそこを狙いましょう!!」
フェイクでなければどちらかにコアがある。偶然私の魔法が当たらなかったんじゃ無いと思う。多分庇ったんだと思う。
「ファム! ナナン! お前らで心臓をやれ!! 頭は俺が砕く!!!」
「「了解!!」」
満身創痍ーーゴーレムだから壊れかけた鎧にしか見えないけれど、十分な行動が取れないのは明らか。
ドーソンさんの指示を受けて即座に疾走する二人の美女。対するゴーレムもまだ行動不能ではないがすでに最初の頃の様な脅威はない。僅かな足掻きを見せたゴーレムの腕を掻い潜り二人は胸部に剣を突き立てる!!
「「クリティカル・スラストォォッ!!」」
二人の声が唱和する。繰り出したのは剣系統基本スキル。初級スキルながら実は熟練度を上げ続ければ驚異的な威力と低魔力消費で使用できる超が付くほどの便利スキルに化ける。
さすがにこの二人がその域まで磨いているとは思わないけれど、相応の修練を積んできただろうことはゴーレムの砕けた胸部が証明している。まぁ先ほどの私のインチキな攻撃で相当ダメージが入っていたとは思うけれど。
「良くやった!! 後は任せろ!!」
即座にゴーレムから離脱する二人の後を戦斧を担いだ山賊ーードーソンさんが引き継ぐ。
ゴーレムはまだ健在。つまりーー心臓はコアではなかった!?
迫る第二陣にゴーレムも必死の抵抗を見せる。しかし蓄積したダメージの所為で正常な迎撃行動は取れない様子。ただ単に腕を振り回して殴る……というよりも当たるを幸いとも言えそうな振り回し攻撃。
しかしそんな苦し紛れの悪足掻きが通用する様な相手ではない。山賊ーードーソンさんはああ見えて歴戦の勇士……みたいだから!! ……ああ見えて。
「舐めんな!!」
ドーソンが吠えてゴーレムの腕にカウンター気味に戦斧を振り下ろした。そのまま両手に持った獲物を回転しながら連続して叩き込んでいく。
「うぉぉおおおおおおっっっ!! インフィニティ・スラッシャァァァッッ!!!」
リアル大回転斬り!!
本来のスキルなら無限の斬撃の名の通り相当数の斬り攻撃を叩き込むのだけれど……戦斧を軽々と使いこなすドーソンさんのそれは剣技ではありえない衝撃力となってゴーレムの体を斬りーーいいえ魔法の戦斧の特殊能力を発揮して超重量による粉砕攻撃と化している。
腕が弾き飛び仰け反った処にさらに連続して叩き込まれてしまうとゴーレムの判断能力では対処しきれない。
瞬く間に脚部を粉砕されたゴーレムはまるで傅く様に頭部をドーソンさんに下げた。
遂に射程圏内に入った!!
「砕け散れぇぇっっ!!!!」
横回転だった戦斧の振り回し攻撃を体を倒して勢いをそのままに縦回転に!!
渾身の一撃が狙い違わずゴーレムの頭部を打ち砕いたーー。
………………。
ゆっくりと崩れ落ちるオリハルコンゴーレム。
まるで機械がショートしたかの様に電流が走りあちこちで小さくスパークしている。
「……やったか?」
あ、それフラグ(笑)
思わず空気を読めないセリフを言いかけて堪える。
もう! やめてよね俺くんってば……。
「ーーやったわねドーソン!」
嬉しそうなファムさんたちが駆け寄る。
「さすがですわ」
「そう。私たちの事も褒めていい。夜のご褒美期待してる……」
「………………」
私はその輪に入っていけず少し離れたところで見つめる。
少し……やっぱり少しだけ仲間っていいな……そう思った。
例えばガルム様とシーラくんとハデス様と一緒とか……うふふ。でもそれじゃまるっきりハーレムね。私の体がもつかしら? うふふ。
「………………」
あーあ。つまんないなー。
別に羨ましくなんてないんだからねっ!
………………。
……虚しい。
「……はぁ。ゴーレムの破片でも持って帰ろーー!? ……えっ!? あ、ちょっと! だめっ!! ダメぇぇっっ!!!」
「「「ーー!?」」」
私の悲鳴のような叫びと同時に閃光と爆音が轟き、辺りは爆風に呑みこまれた。
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