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第六章:プリンセス、絶望に挑む
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「……誰もおらぬようだ」
「真っ暗ね……」
「まだ夜なのね……あ、これじゃ目立ちすぎるわね、光量を落とすわ」
慌てて魔法の灯りの光を弱める。いくらお忍び魔法セットを発動していても光がチラチラと動いていたら不審に思われてしまうだろう。
「倉庫じゃないわね……」
「そうね……」
王宮一階の……客間? あ、お城だから応接室とかそういう感じ? マップからはどのような用途の部屋かまではわからなかったけれど何となく倉庫みたいな部屋だろうと思っていた。でもよく考えると少なくとも国王が共を連れて来てもおかしくない部屋じゃないといけないから倉庫は苦しい気がする。
そんなに広くはない部屋だけど、質素な感じではない。どことなくあの時通された部屋に似ていなくもない。
なるほど、マップと見比べて思い至る。複数の廊下が交錯するこの一角は来客用の応接室ゾーンなのだろう。縦と横の通路で碁盤の目のように区切られていて想像だけど来客同士が不必要に出会わないような設計になっている……のではないかと思う。ただしその分案内なしでは迷いそうだけど。
そしてこの場所はあの地下牢への入り口としても都合がいいのだろう、王様が度々訪れてもまぁどうにか許容範囲内かと思われる。
ついでに外から人を連れ込むのにも適して……いやないでしょ!? 王宮内の時点でかなり困難だろう。
そう考えると秘密の出入り口が他にもありそうだ。搬入専用経路として。それを逆に使うというのも一興かも知れない。
そういう事でその辺りは水に流そう。何故なら運び込みやすいという事は逆もまた真なのだから。
普通はね……。
だから扉へと向かう二人を呼び止める。
何故って私は普通じゃないから。
だからって自分が特別! って言う感じの厨二患者じゃないからね!!(笑)
「……コホン。そっちじゃないわ、こっちよ」
「む……そちらには扉はないが……」
「……もしかして?」
「そうよ、窓から出るわよ」
わざわざ人目につきそうな城内を行く必要はない。
こっちに大きくて立派な窓という出入口があるのだから。
あとはここからちょちょいと飛び出せばいいーー。
文字通りにね。
私にとっては外にさえ出られるのならそこが全部出口であり入り口なのよ!!
ふふん。
「なんていうかアレね……色々とセオリーを無視しちゃうのね」
「何を言ってるのよ? わざわざ面倒な事に向き合う必要はないでしょ。私たちは正義の味方でもなんでもないの。悪い人の思惑通りに行動する必要はないし、逃げ出すのに見つかる可能性の高いルートを通ってあげる必要もない。使えるものはなんでも使えばいいのよ」
「身も蓋もないな」
「でもそういうの嫌いじゃないかも……」
という訳でお忍び三点セットに『浮遊』の魔法を加えて窓から外へと脱出する。
一先ず王宮の建物からの脱出には成功した。ここから高度を上げて街へ……いや、一旦街の外まで出るべきだろうか。
いつもの飛行方法ならあっという間に離脱可能だけれど、アレは巻き起こす風が凄い。流石に隠密行動には向かないので浮遊魔法の歩くような速度で城壁を超えて行くしかない。
徐々に高度を上げつつ街の外を目指して城壁の方へ向かう。まるでのんびりと散歩でもしているかのような状況だ。空と地上の星の瞬きに思わず溜息が出てしまう。
「綺麗ね」
「そうですね」
無関心な若干一名を除き私と竜姫の見解が一致した。こう見えて二人とも立派な乙女なのだからたまにはそういう事もある。(笑)
「気を抜くでないぞ」
「わかってるわよ」
それでもこの世界ではまだ一般的ではない飛行物への警戒は緩い。
城壁に篝火が灯され見張りがいるけれど、その多くは下方向へと注意が向けられている。
率直に言って普通の魔法使い以上の高度を出すことが出来る私にとっては見張りなど無いも同然。
その上お忍び魔法三点セットを使っているわけだから発見される要素はゼロに等しい。
「………………」
いや待てよ? こういう自信満々の時こそフラグに注意よね。何か見落としていないかしら?
ガーデンライトが灯る庭園の上をふわふわと浮かびながら今一度気を引き締める。
細い三日月が浮かぶ空。地上の灯りが少ないからこそ際立つ夜空の星々。
ふととても遠くまで来たような気分になった。
「何事もなく行きそうだな」
「えぇ~そんなのつまんなーい」
つまらなくて結構。
だいたい漫画やアニメのような胸熱展開はリアルではそうそう起きない。
確かに拍子抜けしたという気持ちはあるけれど、何もないのが一番いい。特に自分が関わることなら尚更。
そりゃ私だってスパイ映画のような緊迫したアクションシーンを妄想したりもした。イケメン俳優と美人女優の手に汗握るサスペンスアクション!
巡回する警備兵を様々な手段で躱していきながら燃え上がる男と女のロマンス!
見つかりそうで見つからないスリリングな展開に二人は互いの愛を感じ合う!
そしてめくるめくラブシーンへ突入!!
きっと惹かれてはいけない設定とかがあるのに惹かれてしまう……そんな愛の物語!
若干そこでやっちゃう!? 外出てからやれよ!? とか思うこともしばしば。まぁああいうのはノリというか雰囲気というか……。極限状態だからこそ内に秘めた想いが溢れ出すーー的な? まぁあれって種族維持ほーー。
……無粋だわね。
というわけで、愛し合う美男美女には最後の強敵との熱いバトルが待ち受けているのよ!!
………………。
あくまで妄想です。妄想ならオッケーです。
でもリアルは結構です。私はそういうのはパスです。
それこそ前回のようなエ□展開は遠慮したいです。ある意味では漫画やアニメの胸熱ーーというか股間熱展開ですけども……。って何を言わせるのよ!?
………………。
落ち着け落ち着け。落ち着くのよ私。
……って私このパターン多いわね。昔からそうだったかしら? まぁいいわ。とにかくまだ終わってないから。最後まで気を抜かない!
姿を消して空中に浮かんでいるとはいってもまだ王宮内にいる訳だし、ここからもう一転物語が動く可能性だってある。まぁそんな漫画みたいな事はないでしょうけれど。
それでもあの城壁を超えて、街を超えて……。
あと少しで今世の一つの目標が達成される。
これであの未来への可能性がゼロに近づいたと思う。いいえ、竜王参戦がなければあの未来はありえない。
だからきっといつも通りに勇者がくる。ルクス様は強い。さすがは勇者だと思う。あとあの斬りたいものを斬る必殺技はズルい。加えて聖女様。お姉様はとても尊い。特にあのお胸は世界遺産を超えるだろう。あれだけでご飯は三杯はいけるに違いない!(笑)
更に勇者一向には剣聖がいる。ノインさんの剣技は驚異的だと思う。ハデス様には及ばなかったけれど、そもそも彼はインチキキャラだ。あの絶対領域がある限り彼を攻略出来る人は限られている。そんな彼と剣技で渡り合える時点で凄い。
そんな強力なメンバーを支えるメルさん。彼女が裏で様々なお膳立てをする事で彼ら勇者一行は最大のパフォーマンスを発揮する。
おそらく過去最高クラスのパーティーだろう。
武神王国の思惑は潰したけれど魔王討伐は確定イベントだ。形態を変えて必ず起きる。
でも……。勇者では魔王に勝てない。
それは長い歴史が証明している。
だとしたら次の私の目的は勇者しかない。
お姉様……ルクス様……。彼らなら私の話を聞いてくれると思う。たぶん……いいえ絶対大丈夫!
だから彼らを止めたその先を考えるべきだ!
魔王討伐の総指揮を執るのは五大国の盟主、聖王国グロウディア。竜王参戦を阻止した以上それは確定的だろう。だとしたら私がすべきは……聖王を止める事? ……途方もない目標ね。
どこからどう手をつければいいのか想像も出来ないわ。でも……それでもどうにかするしかない。止めないといつかは私たちと勇者たちがぶつかってしまう。
そうなったら私は……。
よそう。今はまだその未来を考えたくない。
そうならないように全力を尽くす時だと思う。
「どうした? 随分と思いつめた表情だが?」
「そう? ちょっと考え事をしていただけよ。目的達成かなって……」
「そうか。貴様の目的も達せられたのであれば僥倖だ。我も姫を救出でき一安心だ。もし姫が囚われたままであったなら竜族にとって由々しき事態となったであろう。改めてキラリ、貴様には感謝する。ありがとう」
「いいわよ。私の目的でもあったから。私にとってもお姫様が囚われたままだと都合が悪かったのよ。だから気にしないで。そんなにかしこまられると逆に恥ずかしいから」
「……そうか。だが我はこの恩を忘れぬ。もし我の力が必要になったのなら喜んで力を貸そう。覚えておくがよい」
「あなたの力が必要になる、そんな事態が起きない事を願うわ。竜族の英雄ガラードラの力が必要な事態だったらそれこそ世界の存亡の危機とかでしょ?」(笑)
「馬鹿者それは言い過ぎだ」
「そう? そうかもしれないわね、うふふ」
実際に彼の力を借りれば聖王国と戦争して勝つことができる。もういっそそうしてしまおうか……。なんて思ってしまう。先の事を考えるとあまりにも取っ掛かりがなさすぎて……。
ちょっと色々と考えなくちゃいけない。
「……やっぱりいい雰囲気よね。これ私って相当お邪魔よね……。嫌だわ、今までに味わったことのない疎外感……ホントリア充タヒね! 爆ぜろ!! とか思う気持ちがわかるわ……。あーあ、私も恋したいなぁ……」
「ちょっと後ろでボソボソ愚痴らないでよ」
「………………」
「何よリア充のくせに」
「あのね……あなただって日常に戻れば十分リア充でしょ? だいたい女の子にホイホイついて行った結果がこれでしょ? 少しは反省したら?」
「うるさいわね。私は省みない主義なのよ。常に素敵な出会いを求めて羽ばたくのよ!!」
「勝手にしてちょうだい」
「もちろんよ!」
「はいはい。さ、そろそろ城壁が近づいてきたわ。このまま街の外まで移動してどこか人気のない場所で別れましょう」
「えっ? なんで?」
「いや何でってお互いに目的があるでしょ? 私はこの街でやる事は達成出来たと思うから次に進むわ。あなた達だって竜の……里? に戻るでしょ?」
「ん……そうね、一度は戻らないといけないわよね?」
「無論その方がよいだろうが……」
若干呆れたようなガラードラの口調に私も若干嫌な予感がしてしまう。
「んふふ。二人ともわかってるみたいね」
「………………」
「気のせいよ。私は忙しいのでどこぞの恋多き方とはご一緒致しかねます」
「あら? まだ何も言っていないのに一緒に行く可能性を考えてくれたの? 嬉しいわ。少しは私の事を意識してくれていたって事よね?」
「違います。自分に都合よく解釈しすぎです」
「あらそう? でも念の為キラリちゃんの体にも聞いてみないと……」
「なっ!? やめなさい! ちょっと!? 触らないで! だめっ! あなたのスキルとは相性が悪いのよ!! ちょっと!? あ、こら! どこ触ってるのよ!?」
「ほらそんなに暴れちゃダメよ。ここはまだ敵地よ?」
お前が言うなーー!!
叫びそうになって叫んじゃいけないって気が付いてでも静寂の魔法をかけているから叫んでも平気だと気付く。ああっもうっ!! こんがらがって訳がわかんなくなっちゃったじゃない!!
あっ!? こら!? さきっぽはダメだって!!
「真っ暗ね……」
「まだ夜なのね……あ、これじゃ目立ちすぎるわね、光量を落とすわ」
慌てて魔法の灯りの光を弱める。いくらお忍び魔法セットを発動していても光がチラチラと動いていたら不審に思われてしまうだろう。
「倉庫じゃないわね……」
「そうね……」
王宮一階の……客間? あ、お城だから応接室とかそういう感じ? マップからはどのような用途の部屋かまではわからなかったけれど何となく倉庫みたいな部屋だろうと思っていた。でもよく考えると少なくとも国王が共を連れて来てもおかしくない部屋じゃないといけないから倉庫は苦しい気がする。
そんなに広くはない部屋だけど、質素な感じではない。どことなくあの時通された部屋に似ていなくもない。
なるほど、マップと見比べて思い至る。複数の廊下が交錯するこの一角は来客用の応接室ゾーンなのだろう。縦と横の通路で碁盤の目のように区切られていて想像だけど来客同士が不必要に出会わないような設計になっている……のではないかと思う。ただしその分案内なしでは迷いそうだけど。
そしてこの場所はあの地下牢への入り口としても都合がいいのだろう、王様が度々訪れてもまぁどうにか許容範囲内かと思われる。
ついでに外から人を連れ込むのにも適して……いやないでしょ!? 王宮内の時点でかなり困難だろう。
そう考えると秘密の出入り口が他にもありそうだ。搬入専用経路として。それを逆に使うというのも一興かも知れない。
そういう事でその辺りは水に流そう。何故なら運び込みやすいという事は逆もまた真なのだから。
普通はね……。
だから扉へと向かう二人を呼び止める。
何故って私は普通じゃないから。
だからって自分が特別! って言う感じの厨二患者じゃないからね!!(笑)
「……コホン。そっちじゃないわ、こっちよ」
「む……そちらには扉はないが……」
「……もしかして?」
「そうよ、窓から出るわよ」
わざわざ人目につきそうな城内を行く必要はない。
こっちに大きくて立派な窓という出入口があるのだから。
あとはここからちょちょいと飛び出せばいいーー。
文字通りにね。
私にとっては外にさえ出られるのならそこが全部出口であり入り口なのよ!!
ふふん。
「なんていうかアレね……色々とセオリーを無視しちゃうのね」
「何を言ってるのよ? わざわざ面倒な事に向き合う必要はないでしょ。私たちは正義の味方でもなんでもないの。悪い人の思惑通りに行動する必要はないし、逃げ出すのに見つかる可能性の高いルートを通ってあげる必要もない。使えるものはなんでも使えばいいのよ」
「身も蓋もないな」
「でもそういうの嫌いじゃないかも……」
という訳でお忍び三点セットに『浮遊』の魔法を加えて窓から外へと脱出する。
一先ず王宮の建物からの脱出には成功した。ここから高度を上げて街へ……いや、一旦街の外まで出るべきだろうか。
いつもの飛行方法ならあっという間に離脱可能だけれど、アレは巻き起こす風が凄い。流石に隠密行動には向かないので浮遊魔法の歩くような速度で城壁を超えて行くしかない。
徐々に高度を上げつつ街の外を目指して城壁の方へ向かう。まるでのんびりと散歩でもしているかのような状況だ。空と地上の星の瞬きに思わず溜息が出てしまう。
「綺麗ね」
「そうですね」
無関心な若干一名を除き私と竜姫の見解が一致した。こう見えて二人とも立派な乙女なのだからたまにはそういう事もある。(笑)
「気を抜くでないぞ」
「わかってるわよ」
それでもこの世界ではまだ一般的ではない飛行物への警戒は緩い。
城壁に篝火が灯され見張りがいるけれど、その多くは下方向へと注意が向けられている。
率直に言って普通の魔法使い以上の高度を出すことが出来る私にとっては見張りなど無いも同然。
その上お忍び魔法三点セットを使っているわけだから発見される要素はゼロに等しい。
「………………」
いや待てよ? こういう自信満々の時こそフラグに注意よね。何か見落としていないかしら?
ガーデンライトが灯る庭園の上をふわふわと浮かびながら今一度気を引き締める。
細い三日月が浮かぶ空。地上の灯りが少ないからこそ際立つ夜空の星々。
ふととても遠くまで来たような気分になった。
「何事もなく行きそうだな」
「えぇ~そんなのつまんなーい」
つまらなくて結構。
だいたい漫画やアニメのような胸熱展開はリアルではそうそう起きない。
確かに拍子抜けしたという気持ちはあるけれど、何もないのが一番いい。特に自分が関わることなら尚更。
そりゃ私だってスパイ映画のような緊迫したアクションシーンを妄想したりもした。イケメン俳優と美人女優の手に汗握るサスペンスアクション!
巡回する警備兵を様々な手段で躱していきながら燃え上がる男と女のロマンス!
見つかりそうで見つからないスリリングな展開に二人は互いの愛を感じ合う!
そしてめくるめくラブシーンへ突入!!
きっと惹かれてはいけない設定とかがあるのに惹かれてしまう……そんな愛の物語!
若干そこでやっちゃう!? 外出てからやれよ!? とか思うこともしばしば。まぁああいうのはノリというか雰囲気というか……。極限状態だからこそ内に秘めた想いが溢れ出すーー的な? まぁあれって種族維持ほーー。
……無粋だわね。
というわけで、愛し合う美男美女には最後の強敵との熱いバトルが待ち受けているのよ!!
………………。
あくまで妄想です。妄想ならオッケーです。
でもリアルは結構です。私はそういうのはパスです。
それこそ前回のようなエ□展開は遠慮したいです。ある意味では漫画やアニメの胸熱ーーというか股間熱展開ですけども……。って何を言わせるのよ!?
………………。
落ち着け落ち着け。落ち着くのよ私。
……って私このパターン多いわね。昔からそうだったかしら? まぁいいわ。とにかくまだ終わってないから。最後まで気を抜かない!
姿を消して空中に浮かんでいるとはいってもまだ王宮内にいる訳だし、ここからもう一転物語が動く可能性だってある。まぁそんな漫画みたいな事はないでしょうけれど。
それでもあの城壁を超えて、街を超えて……。
あと少しで今世の一つの目標が達成される。
これであの未来への可能性がゼロに近づいたと思う。いいえ、竜王参戦がなければあの未来はありえない。
だからきっといつも通りに勇者がくる。ルクス様は強い。さすがは勇者だと思う。あとあの斬りたいものを斬る必殺技はズルい。加えて聖女様。お姉様はとても尊い。特にあのお胸は世界遺産を超えるだろう。あれだけでご飯は三杯はいけるに違いない!(笑)
更に勇者一向には剣聖がいる。ノインさんの剣技は驚異的だと思う。ハデス様には及ばなかったけれど、そもそも彼はインチキキャラだ。あの絶対領域がある限り彼を攻略出来る人は限られている。そんな彼と剣技で渡り合える時点で凄い。
そんな強力なメンバーを支えるメルさん。彼女が裏で様々なお膳立てをする事で彼ら勇者一行は最大のパフォーマンスを発揮する。
おそらく過去最高クラスのパーティーだろう。
武神王国の思惑は潰したけれど魔王討伐は確定イベントだ。形態を変えて必ず起きる。
でも……。勇者では魔王に勝てない。
それは長い歴史が証明している。
だとしたら次の私の目的は勇者しかない。
お姉様……ルクス様……。彼らなら私の話を聞いてくれると思う。たぶん……いいえ絶対大丈夫!
だから彼らを止めたその先を考えるべきだ!
魔王討伐の総指揮を執るのは五大国の盟主、聖王国グロウディア。竜王参戦を阻止した以上それは確定的だろう。だとしたら私がすべきは……聖王を止める事? ……途方もない目標ね。
どこからどう手をつければいいのか想像も出来ないわ。でも……それでもどうにかするしかない。止めないといつかは私たちと勇者たちがぶつかってしまう。
そうなったら私は……。
よそう。今はまだその未来を考えたくない。
そうならないように全力を尽くす時だと思う。
「どうした? 随分と思いつめた表情だが?」
「そう? ちょっと考え事をしていただけよ。目的達成かなって……」
「そうか。貴様の目的も達せられたのであれば僥倖だ。我も姫を救出でき一安心だ。もし姫が囚われたままであったなら竜族にとって由々しき事態となったであろう。改めてキラリ、貴様には感謝する。ありがとう」
「いいわよ。私の目的でもあったから。私にとってもお姫様が囚われたままだと都合が悪かったのよ。だから気にしないで。そんなにかしこまられると逆に恥ずかしいから」
「……そうか。だが我はこの恩を忘れぬ。もし我の力が必要になったのなら喜んで力を貸そう。覚えておくがよい」
「あなたの力が必要になる、そんな事態が起きない事を願うわ。竜族の英雄ガラードラの力が必要な事態だったらそれこそ世界の存亡の危機とかでしょ?」(笑)
「馬鹿者それは言い過ぎだ」
「そう? そうかもしれないわね、うふふ」
実際に彼の力を借りれば聖王国と戦争して勝つことができる。もういっそそうしてしまおうか……。なんて思ってしまう。先の事を考えるとあまりにも取っ掛かりがなさすぎて……。
ちょっと色々と考えなくちゃいけない。
「……やっぱりいい雰囲気よね。これ私って相当お邪魔よね……。嫌だわ、今までに味わったことのない疎外感……ホントリア充タヒね! 爆ぜろ!! とか思う気持ちがわかるわ……。あーあ、私も恋したいなぁ……」
「ちょっと後ろでボソボソ愚痴らないでよ」
「………………」
「何よリア充のくせに」
「あのね……あなただって日常に戻れば十分リア充でしょ? だいたい女の子にホイホイついて行った結果がこれでしょ? 少しは反省したら?」
「うるさいわね。私は省みない主義なのよ。常に素敵な出会いを求めて羽ばたくのよ!!」
「勝手にしてちょうだい」
「もちろんよ!」
「はいはい。さ、そろそろ城壁が近づいてきたわ。このまま街の外まで移動してどこか人気のない場所で別れましょう」
「えっ? なんで?」
「いや何でってお互いに目的があるでしょ? 私はこの街でやる事は達成出来たと思うから次に進むわ。あなた達だって竜の……里? に戻るでしょ?」
「ん……そうね、一度は戻らないといけないわよね?」
「無論その方がよいだろうが……」
若干呆れたようなガラードラの口調に私も若干嫌な予感がしてしまう。
「んふふ。二人ともわかってるみたいね」
「………………」
「気のせいよ。私は忙しいのでどこぞの恋多き方とはご一緒致しかねます」
「あら? まだ何も言っていないのに一緒に行く可能性を考えてくれたの? 嬉しいわ。少しは私の事を意識してくれていたって事よね?」
「違います。自分に都合よく解釈しすぎです」
「あらそう? でも念の為キラリちゃんの体にも聞いてみないと……」
「なっ!? やめなさい! ちょっと!? 触らないで! だめっ! あなたのスキルとは相性が悪いのよ!! ちょっと!? あ、こら! どこ触ってるのよ!?」
「ほらそんなに暴れちゃダメよ。ここはまだ敵地よ?」
お前が言うなーー!!
叫びそうになって叫んじゃいけないって気が付いてでも静寂の魔法をかけているから叫んでも平気だと気付く。ああっもうっ!! こんがらがって訳がわかんなくなっちゃったじゃない!!
あっ!? こら!? さきっぽはダメだって!!
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