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しおりを挟むさわやかな朝を迎えました。
一部騎士は悶々としていたようですが。
家の中の声は聞こえてこなかった、はずだ。多分。
自分は寝ましたよ?えぇしっかりと。
羨ましいとか、思って無いんだからな!(血涙)
朝食も、ツバキ殿は提供してくれた。
野菜と野兎肉で作った、トマト味のスープ。
滋味に溢れていて、腹の底から元気が湧いてきそうだった。
そんな彼女はちょっとだけ気怠い雰囲気で、騎士達からしたら目の毒のようで。
うん。
あのね、首筋のね、服で隠れるか隠れないかの位置に、虫刺されできてるよ?
計算され尽くした位置に刺す虫も居たもんだね!
なーんて。
その虫刺されを作ったであろう張本人は、乗ってきた黒馬の手入れをしていた。
何か肌艶よさそうで、元気そうで、何よりです。
辺境伯の愛馬は頭が良いのだろう。
昨日のあの騒動の最中に、勝手に馬房に行って休んでたよ。
主人も主人なら、馬も馬。
勝手知ったる、とは、このことかなぁ?
そうこうしているうちに、辺境伯が手配してくれた迎えの馬車や護衛が到着し、出発する事になった。
自分と、宰相補佐は馬車に乗り込む。
女性だし、ツバキ殿もこちらなのかな?と思ったら、問答無用で黒馬に乗せられてました。
ツバキ殿は、とても不本意、という顔をしていたけれど。
辺境伯直属の護衛騎士達の様子を見る限り、どうやら通常運転っぽいな、と、察した。
余計な事は言わないでおこう。
*
辺境伯領の領都である、ディライトまでは、早馬で3時間。
ゆっくり目の馬車で休みなく行って4時間ばかり。
怪我したり、馬が逃げたりした護衛騎士達を荷馬車に収納した行軍のため、さらに時間はかかることとなる。
その間に、狼系の魔獣が小規模な群れで出てくるが、辺境伯直属の護衛騎士達が即座に倒してくれた。
うん、鍛え方半端ない。
行程の半分ほど進み、馬の休憩や入れ替えのため、中規模の街へ入ろうとした時。
門の辺りで人集りが出来ていた。
「あ、領主様!」
ディートリッヒ辺境伯の姿を確認した、門番の責任者らしき者が、此方に駆け寄ってくる。
「どうした?」
「冒険者からの報告で、街近くの森の中・・・此処から2キロ程先の林道から入った脇道の先に、魔素溜まりを発見したとの事でして。浄化を頼むにしても、今、この街の神官や巫女が出払っていたものですから。冒険者の中で浄化が使える者に頼むか相談していた所でありました。」
胸に手を当て、直立不動で敬礼の姿勢を取る門番。
その回答に辺境伯は頷くと、門番に指示を出す。
「分かった。魔素溜まりへは、私が向かおう。門兵達は、魔素溜まりから派生した魔獣が街を襲わないよう警戒しろ。怪我人が出たら速やかに治療院へ搬送。治療には備蓄ポーションを使用して構わない。」
馬上から降りた辺境伯は、周囲にテキパキと指示を出していきながら、我々の乗る馬車へと近づいてきた。
「カイル殿下、ゴルドー宰相補佐殿、申し訳ございません。私めは魔素溜まりの浄化に向かいます。
領都に向かう道上では無いようなので、良ければ護衛騎士達とツバキと共に、先に領都へと向かっていただけますか?」
「うむ、貴殿を待っても良いかとも思うが、我々が居る事で、街の警備が疎かになってもいかんしの。先に向かった方が良いだろうな。」
辺境伯と宰相補佐が、馬車の窓越しに話を進めているのを眺めていたら、視界に入っていたツバキ殿が、不意に黒馬から降りて、此方に近づいてきた。
「どうした?ツバキ。」
「・・・ディートリッヒ辺境伯様、少し宜しいでしょうか?」
「あぁ。構わないが・・・」
ちらり、と辺境伯はこちらを見る。
宰相補佐も自分も、構わない、と軽く頷いた。
「その魔素溜まりの浄化ですが・・・私にやらせていただけませんか?」
「ちっ、ツバキ、お前・・・」
「ツバキ殿、貴女は聖魔法を扱えるのですか?」
辺境伯は眉を顰め、ツバキ殿の発言を止めようとしたが、自分は即座に食いつく。
すると彼女は、自分の方を見て、にこりと微笑んだ。
「えぇ、一応。それで、昨日のお話の件も踏まえて、ちょっと試してみたい事があるんです。その為に・・・不躾ですがカイル殿下、ご協力願えませんか?」
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