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2.時雨とあめ_。
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数日たった。なのに未だに会えない。
「くぅちゃんほんとに友だちいるの?」
いや。くぅちゃんに限ってウソはつかないと思……わなくもないかな。くぅちゃんだし。
「桜歌が休み時間とか会いにくればいるよ」
「うっ。だって他のクラス」
「あいかわらず人見知りだなぁ」
紅葉の友だちはスポーツ推薦で入った為、入学初日から部活の方に顔をだしてた。
なんでもうちの陸上部は全国大会常連校らしく、オフもあんましない。なので放課後に遊ぶなんてできないのである。
「そういえば桜歌は部活入るの?」
「うん。入りたいけど何にしようか悩む」
「そっか。」
「くぅちゃんは美術部でしょ」
「あたり。桜歌もどう?」
「いや……僕が描いたらヤバイ」
「芸術的な意味で?」
トイレから帰ってきた翔馬が話に割り込んできた。紅葉と桜歌は顔を見合わせ、
『破壊力的な意味で?』
「それはそれは」
昼休みにふつうに6組に出入りする紅葉はすごい。最初、桜歌と同じ顔の子が現れて戸惑っていたクラスメイトが顔見知りになるぐらいは来てる。ほんとすごいよ。
「翔馬くんは何部はいるの?」
「んー。俺は適当に…そうだ。桜歌放課後部活巡りしねぇ?」
翔馬の誘いに桜歌は嬉しそうだった。
「そろそろ時雨が帰ってきそうだから教室帰るね。」
紅葉は6組を後にした。
「みさき。」
教室にはちょっと強気な顔つきで、でも面倒見の良い感じの女子生徒が待っていた。
「時雨早いね。」
「別に部活ノート置きに行くだけだし」
紅葉は時雨の隣に座った。時雨はパパッとお菓子をだす。
「太るよ」
「放課後部活だからいいの。紅葉は食べる?」
「誰かさん1人だけ太るとかかわいそうだし?」
時雨はふはっと笑った。
「毎度隣のクラス行くの面倒じゃない?」
紅葉は時雨のチョコをひとかけらつまんだ。
「弟はいいよー。可愛いもん」
「まぁ、みさきに似てたら可愛いと思うけどさ」
そういうもんかな?
その日は空模様が憂鬱で、予感が当たり雨がきた。中練で終わり、いつもより俄然早い時間に部活が終わった。が、
「傘忘れた…」
最悪だ。なんで忘れた?
「雨すごいねー。」
昇降口にいる自分の隣に2人組の生徒がきた。
「部活巡りしてたから遅くなっちまったな」
「でも、楽しかったね」
ああ、今ぼっちなんだから隣でそんな楽しそうに居座らないでよ。
「翔馬くんは傘持ってきた?」
「予報は晴れだった。」
そうだよ。晴れだった!朝方はカンカンの晴れで、天気予報は晴れって、言ってたのに!
「貸してあげるよ」
パンッと男物の大きめな傘を開いて、桜歌は居心地悪そうに隣をみた。
(ずっとここにいるよね。この子)
傘忘れたのかな?正直話しかけたくない。でも―――
「あのぉ、」
勇気を振り絞って声をかける。時雨は振り向いて、
「え?みさき?!」
「え、はい。岬です」
勢いで返事した。翔馬が状況を素早く観察する。
「いや多分お前じゃなくて姉の方だと思うぞ」
「あ、くぅちゃん」
「あ、弟の方」
2人して納得する。
「くぅちゃんのえっと、友だち?」
「え、はい。たぶん」
なんだろう。めっちゃ友だちと同じ顔なのにめっちゃ他人と喋ってる感満載。
「そっかぁ。ほんとにいたんだぁ」
そんな認識?!みさき弟にどう見られてんのよ!
「傘忘れたの?僕折りたたみ傘持ってるよ。」
(女子力!)
「翔馬くんは僕と同じ傘でも大丈夫?」
「おう。」(嫌どころかかなり嬉しいんだけど、相合傘。)
そんな翔馬の下心なんかわかるはずもなく、桜歌はカバンをあさる。
「はい。」といい傘を貸してくれた。
「ありがとう。明日返すね」
「いつでもいいよ」
にこっと笑う。かわいいもんだ。
紅葉が自慢してくるのもわかる。あいつ多分ブラコンだし。
「名前教えて貰っていいかな」
「岬 桜歌だよ。桜歌って呼んでよ」
「桜歌くん。私、時雨 奈津子。」
桜歌くんから借りた傘は青と水色の水玉模様であしらわれた可愛らしく、でも男の人が使っても違和感のないデザインだった。
傘にあたってははねる雨がリズミカルな音をたてて、そんなことで気分が良くなる自分がいて。
さっきまで最悪だ。なんだと言っていた心がなんだかふわふわと軽い。
黒いアスファルトを踏みしめて、時雨は青く透き通る傘の先を見つめた。今日初めて話した男の子。友だちと同じ顔をした男の子。弱々しくて、守って上げたくなるようなかわいい男の子。
「そんな男の子に出会えただけで今日1日ハッピーで終わった」
そう思った時、ふと傘を傾けたら雨がやんでいた。灰色の雲の間から光が差し込み、大きな虹がかかってる。
時雨は大きく伸びをした。
うん。やっぱり今日1日ハッピーだった。
「くぅちゃんほんとに友だちいるの?」
いや。くぅちゃんに限ってウソはつかないと思……わなくもないかな。くぅちゃんだし。
「桜歌が休み時間とか会いにくればいるよ」
「うっ。だって他のクラス」
「あいかわらず人見知りだなぁ」
紅葉の友だちはスポーツ推薦で入った為、入学初日から部活の方に顔をだしてた。
なんでもうちの陸上部は全国大会常連校らしく、オフもあんましない。なので放課後に遊ぶなんてできないのである。
「そういえば桜歌は部活入るの?」
「うん。入りたいけど何にしようか悩む」
「そっか。」
「くぅちゃんは美術部でしょ」
「あたり。桜歌もどう?」
「いや……僕が描いたらヤバイ」
「芸術的な意味で?」
トイレから帰ってきた翔馬が話に割り込んできた。紅葉と桜歌は顔を見合わせ、
『破壊力的な意味で?』
「それはそれは」
昼休みにふつうに6組に出入りする紅葉はすごい。最初、桜歌と同じ顔の子が現れて戸惑っていたクラスメイトが顔見知りになるぐらいは来てる。ほんとすごいよ。
「翔馬くんは何部はいるの?」
「んー。俺は適当に…そうだ。桜歌放課後部活巡りしねぇ?」
翔馬の誘いに桜歌は嬉しそうだった。
「そろそろ時雨が帰ってきそうだから教室帰るね。」
紅葉は6組を後にした。
「みさき。」
教室にはちょっと強気な顔つきで、でも面倒見の良い感じの女子生徒が待っていた。
「時雨早いね。」
「別に部活ノート置きに行くだけだし」
紅葉は時雨の隣に座った。時雨はパパッとお菓子をだす。
「太るよ」
「放課後部活だからいいの。紅葉は食べる?」
「誰かさん1人だけ太るとかかわいそうだし?」
時雨はふはっと笑った。
「毎度隣のクラス行くの面倒じゃない?」
紅葉は時雨のチョコをひとかけらつまんだ。
「弟はいいよー。可愛いもん」
「まぁ、みさきに似てたら可愛いと思うけどさ」
そういうもんかな?
その日は空模様が憂鬱で、予感が当たり雨がきた。中練で終わり、いつもより俄然早い時間に部活が終わった。が、
「傘忘れた…」
最悪だ。なんで忘れた?
「雨すごいねー。」
昇降口にいる自分の隣に2人組の生徒がきた。
「部活巡りしてたから遅くなっちまったな」
「でも、楽しかったね」
ああ、今ぼっちなんだから隣でそんな楽しそうに居座らないでよ。
「翔馬くんは傘持ってきた?」
「予報は晴れだった。」
そうだよ。晴れだった!朝方はカンカンの晴れで、天気予報は晴れって、言ってたのに!
「貸してあげるよ」
パンッと男物の大きめな傘を開いて、桜歌は居心地悪そうに隣をみた。
(ずっとここにいるよね。この子)
傘忘れたのかな?正直話しかけたくない。でも―――
「あのぉ、」
勇気を振り絞って声をかける。時雨は振り向いて、
「え?みさき?!」
「え、はい。岬です」
勢いで返事した。翔馬が状況を素早く観察する。
「いや多分お前じゃなくて姉の方だと思うぞ」
「あ、くぅちゃん」
「あ、弟の方」
2人して納得する。
「くぅちゃんのえっと、友だち?」
「え、はい。たぶん」
なんだろう。めっちゃ友だちと同じ顔なのにめっちゃ他人と喋ってる感満載。
「そっかぁ。ほんとにいたんだぁ」
そんな認識?!みさき弟にどう見られてんのよ!
「傘忘れたの?僕折りたたみ傘持ってるよ。」
(女子力!)
「翔馬くんは僕と同じ傘でも大丈夫?」
「おう。」(嫌どころかかなり嬉しいんだけど、相合傘。)
そんな翔馬の下心なんかわかるはずもなく、桜歌はカバンをあさる。
「はい。」といい傘を貸してくれた。
「ありがとう。明日返すね」
「いつでもいいよ」
にこっと笑う。かわいいもんだ。
紅葉が自慢してくるのもわかる。あいつ多分ブラコンだし。
「名前教えて貰っていいかな」
「岬 桜歌だよ。桜歌って呼んでよ」
「桜歌くん。私、時雨 奈津子。」
桜歌くんから借りた傘は青と水色の水玉模様であしらわれた可愛らしく、でも男の人が使っても違和感のないデザインだった。
傘にあたってははねる雨がリズミカルな音をたてて、そんなことで気分が良くなる自分がいて。
さっきまで最悪だ。なんだと言っていた心がなんだかふわふわと軽い。
黒いアスファルトを踏みしめて、時雨は青く透き通る傘の先を見つめた。今日初めて話した男の子。友だちと同じ顔をした男の子。弱々しくて、守って上げたくなるようなかわいい男の子。
「そんな男の子に出会えただけで今日1日ハッピーで終わった」
そう思った時、ふと傘を傾けたら雨がやんでいた。灰色の雲の間から光が差し込み、大きな虹がかかってる。
時雨は大きく伸びをした。
うん。やっぱり今日1日ハッピーだった。
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