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第41話
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建国祭の次の日
建国祭の前日から3日間【まんぷく亭】は休業日となっている、それはお祭りで客が屋台へ行って客足が減ってしまうのが一番の理由だが、最後の日は別の理由があった。
ソフィアは明日の営業のためにメニューを考えていた。
「うーん…何にしようかしら?お肉はオークが沢山あるのよね」
メニューを決めかねていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「あっ!そろそろ来る時間だったわね」
パタパタと小走りでドアまで向かい開けると。
「やぁ!ソフィアちゃん、ただいま」
「ただいま、ソフィアちゃん」
「おかえりなさい!お父さん、お母さん」
ドアを開けるとそこには父のアルセニオと、母のヴァレンティナの姿があった。
そう、【まんぷく亭】が建国祭が終わって次の日も休業している理由は、父と母が帰ってくるからである。
「ソフィアちゃん昨日ぶりね、レティちゃんは居るの?」
「うん、二階の部屋に居るわ」
「いっぱいお土産持ってきたのよ!皆でお茶しながらお土産開けてみましょ」
「ありがとう!楽しみ」
後ろでアルセニオは妻と娘の会話を楽しそうに見ているが(ソフィアちゃんも今年で22歳か…早いものだな、まだ子供だと思っていたら、いつの間にか彼氏ができただなんて父さん寂しいよ…)と心の中で呟いていた。
ソフィアは父と母と二階のリビングへ行き、二人にお茶を出す。
「今、レティを呼んでくるわね」
パタパタと軽い足取りでソフィアはリビングから出ていった。
レティシアの部屋をノックしドアを開け声をかけた。
「レティ、お父さんとお母さん帰ってきたわ」
「はーい」
遠くからバタバタと走って来る音が聞こえドアがバーンと勢いよく開いた。
「お父さん!お母さん!おかえりなさい、久しぶりだね会いたかった!」
父と母は元気いっぱいのレティシアを見て、17歳になっても変わらないまだまだ子供な姿にちょっとホッとした。
「レティちゃん元気そうね、お土産沢山買ってきたのよ、さぁ皆で開けましょ」
ヴァレンティナはインベントリの中から次から次へとお土産を出し始めた。
レティシアは受け取り積み上げていくとあっという間にお土産のやまが出来上がった。
一方、ソフィアと父はお茶を飲みながら母とレティシアのやりとりを微笑ましくながめていた。
しばらくして、ソフィアの隣に座ってる父が気まずそうに口を開いた。
「あのさ…ソフィアちゃん、昨日会ったグラシア伯爵とは付き合いは長いのかい?」
「いいえ、まだお付き合いを始めて数ヶ月なの。もともとお店によく来てくれるお客さんだったのだけど、色々あってお付き合いすることになったの」
ソフィアは頬を染め照れくさそうに話した。
「グラシア伯爵はソフィアちゃんのこと大切にしてくれてる?」
「ええ、とても優しくて、頼もしくて、側にいるとほっとする方よ」
「そうか、良い人に巡り会えたね」
「はい!」
そんな話をしている父とソフィアへレティシアが声をかける。
「お父さんもお姉ちゃんもお土産開けるの手伝って! いっぱいあって大変なんだから」
「あらあら、ごめんね。今手伝うわ」
「ごめん、ごめん」
四人でわきあいあいとお土産を次から次へと開けていった。
するとヴァレンティナが思い出したかのようにインベントリから白いモコモコした大きな毛皮を沢山出し始めた。
「これは北の極寒地で捕れる大白兎の毛皮よ、私とソフィアちゃんとレティちゃんとお揃いでコート作ろうと思って狩ってきたの!すごいでしょ!」
自慢げに話す妻を見て、アルセニオは苦虫を噛み潰したような顔をして
「大変だったんだよ。突然さ、コート三人分狩るまで帰らないって言い出して、寒いのに俺必死になって探したんだよ、俺寒いの苦手なのに…」
と遠い目をする父であった。
姉妹は思った、あぁ…また母の思いつきの暴走に父はまた巻き込まれたのね…。
「お父さんお母さんありがとう!お父さん寒いの苦手なのに大変だったね。今度お姉ちゃんと仕立て屋さんに行ってくるね、お母さん冬には帰ってきてね」
「ええ、もちろんよ、お揃いのコート着て三人で出かけましょ」
ルンルンなヴァレンティナに対して、仲間外れのアルセニオは焦った。
「え?俺は?俺も皆と買い物に行きたいよ」
するとヴァレンティナはいじわるそうに笑った。
「あら、あなたも私達とお揃いのコート着て出かけたいの?」
「い…いや、お揃いのコートはさすがに遠慮したいかな…。でも四人で買い物は行きたい!」
「ふふっ、しょうがないわねぇアルセニオも連れてってあげるわ」
また父は母の手のひらで転がされ遊ばれていると、姉妹は苦笑いした。
両親がその後も○○産の布地だの、✕✕産の果物だのとお土産を開けながら説明していく中、ヴァレンティナが小さな長方形の箱の中からティアドロップ型の石の付いたペンダントと小さな丸い石の付いたピンキーリングを取り出しソフィアに渡した。
「これはね、ソフィアちゃんが魔物に襲われたって聞いたから、二度と襲われないように絶対防御を魔法付与してる魔石で作ってきた物なの」
「きれいな真っ赤な石…」
ルイスの瞳を思わせる石の色にソフィアはうっとりと見つめる。
まるで紹介する前からルイスとのことを知ってたかのような色の選択にソフィアは、リオおじ様が父と母に話したのだろうと心の中で思った。
だがリオおじ様がバラしたお陰?でずっと好きな人の色を身に付けれる事が嬉しかった。
「俺が着けてあげるよ」
アルセニオはソフィアからペンダントを受け取り、後ろに周ってペンダントを着けた。
「いつも手放さずに、必ず身に着けていてくれ。ペンダントが無理なときはピンキーリングを」
アルセニオはソフィアに決して手放さないようにと念を入れた。
ソフィアは、オークキングに襲われたことで父と母に心配をかけてしまい申し訳ないと思う気持ちと、離れていてもいつも自分達のことを想ってくれている父と母の気持ちが嬉しかった。
三人のやりとりを見ていたレティシアは、ちょっと姉がうらやましくて甘えた声で父と母に声をかけた。
「ねぇねぇ、お父さんお母さん、私には?」
「もちろんレティちゃんにもあるわよ! 絶対防御の魔法付与したピアスとブレスレットよ、ブレスレットはアンクレットにもなるから魔物を狩りに行くときに手首に付けているのが邪魔だったら足首に着けるといいわ」
「お母さんありがとう!!」
レティシアは嬉しくてヴァレンティナに抱きついた。
さっそく、少し太めのシルバーの鎖に長方形の青い石が付いているブレスレットを左手に着け、キラキラしている石をずっと眺めていた。
レティシアは、ふとブレスレットの着いた手を見て、昨日ロベルトと手を繋いで祭りを見て周った事を思い出した。(昨日のお祭り、ロベルトさんと見て周れて楽しかったな)
「あれ?でもお姉ちゃんと同じ魔石じゃないんだね」
姉が着けている魔石は赤色なのに、自分の魔石は青色だったことに少し不思議に思った。
「あぁ…それはね、両方ともダンジョン産の魔石なのだけど、同じ色がドロップしなかったのよ」
ダンジョン産の魔石とは、ダンジョンで倒した魔物から極稀にドロップする魔石のことである。
「そうなんだ、因みに何の魔物の魔石なの?」
長方形の青い魔石は透き通っていてとても綺麗だった。
レティシアが普段狩っている魔物からは、ここまで綺麗な色の魔石は出た事がなかった。
これ程までに美しい見た目をしている魔石は、人工魔石でしか見たことがなかったレティシアはいったいどんな魔物から採れたのだろうと気になった。
「ふふっ、それはね」
「うん」
「な・い・しょ!」
お茶目にウィンクした母にレティシアは頬を膨らました。
「え~!教えてよ」
「だ~め」
「むぅ…」
ヴァレンティナが何の魔物か教えてくれなくて項垂れていたレティシアに、アルセニオが気を逸らす様に話しかける。
「ほらほら、レティちゃんにはこれも買ってきたんだ! 帝国の魔導具で自動泡立て器だよ、レティちゃんはお菓子を作るから、これがあれば楽になるかと思ってね」
「わーい!お父さんありがとう!ずっと欲しかったんだ、卵白や生クリーム泡立てるの大変なんだもん」
「喜んでもらえて良かったよ。レティちゃんの作ったお菓子はどれも美味しいから、また作って欲しいな」
「うん!お父さんの好きなケーキがインベントリに入ってるから夕飯のあと皆で食べよう!」
「それは楽しみだ」
たくさんのお土産を前に両親の今までの冒険談を聞き、楽しい時間が過ぎていく。
「あ!いっけない、明日の食堂の準備なにもしてないわ」
突然思い出しソフィアが叫んだ。
「あらあら、じゃあお昼ごはん食べたら私も手伝うわね」
「えっいいの?うれしい!お母さんと一緒に料理するなんて久しぶり」
「ソフィアちゃんの方が料理上手になっちゃったけど、手伝うくらいならまだまだ大丈夫よ」
ソフィアは母と料理ができることがとても嬉しく心が弾んだ。
「ソフィアちゃん、お昼ごはんも一緒に作りましょ」
「うん!」
アルセニオはたくさんのお土産を片付けているレティシアに声をかけた。
「レティちゃん、お昼ごはん食べたらお父さんと森へ狩りに行かないか?あまり深くは行けないがレティちゃんがどれくらい上達したいかみたいな」
父の発言にレティシアはパァーっと満身の笑みをうかべ
「うん!行く行く!! お姉ちゃん、お父さんと狩りに行くからお昼ごはん早く食べたい!私も手伝うから早く作ろー」
レティシアは久しぶり父と狩りに行けることが嬉しくてしかたがない。
ソフィアはレティシアのはしゃぎっぷりにすこし呆れる。
「まったくもう、レティたら」
「えへへっ」
その後、ソフィアはネギとチャーシューを細かく切りレティシアが玉子を割っただけで、結局、手伝うどころか母がパパッと手際よくチャーハンを作ってしまった。そして一言
「チャーハンは火力とスピードが命よ、どお?わたしもまだまだ捨てたもんじゃないでしょ」
とドヤ顔をした。
そんな母のドヤ顔を見た姉妹は、昔から変わらない大好きな母の姿に笑った。
四人で久しぶりの母の手作りチャーハンに舌鼓し、食後のお茶を飲もうとしたのだがレティシアが席を立ち上がり父の元へ行くと、父の腕をガシッと掴み早く狩りに行こうと急かす。
「お父さん、ほら早く立って! ほら行くよ!早く早く!!」
「えっ?もう?」
「そうだよー、早く行こう」
「わかったわかった、レティちゃんは元気だなー」
レティシアに腕を引っぱられ、あっという間に二人は家を飛び出していった。
「レティちゃんたら、お昼ごはん食べたばかりなのに忙しないわね」
そんな二人を見て呆れたようにヴァレンティナはため息をついた。
「お父さんと狩りなんて久しぶりだもの、よほど嬉しかったのね。夕飯のおかず楽しみだわ」
そんなレティシアの姿を見たソフィアは、ふと思った。
小さい頃から両親が留守がちで、レティシアが寂しくない様にまわりの人達も気にかけてくれていたが、口には出さないがレティシアはやはり寂しかったのだろう、両親に見せるソフィアに見せる笑顔とは違う笑顔、子供に戻ったような甘える仕草がすべてを物語っていた。
ドアを見ながら少し寂しそうなソフィアに、ヴァレンティナは茶目っ気たっぷりに話しかけた。
「さて、二人が出かけたことだし、食後のお茶しながらソフィアちゃんの恋バナじーっくり聞きたいわ」
「へっ?お…お母さん、こ…恋バナって?」
「昨日あいさつに来てくれたルイスさんとのなれそめとかぁ~い・ろ・い・ろ・よ」
「えっ…えーっ!」
恥ずかしくて真っ赤になった顔を手で覆いかくしソフィアはうつむいてしまった。
「恥ずかしがらなくても大丈夫よ!ソフィちゃんもそんなお年頃になったのね、お母さん嬉しいわ」
ヴァレンティナは心配していたのだ。
ずっと前から依頼の為とはいえ、ソフィアに家の事とレティシアの世話をまかせていた、そして今では食堂を営んでいる。
そのせいか男性との関わりが少なく恋には縁遠く、このままでは恋愛などしないのでわないかと思っていたのだ。
なので、昨日の夜会でソフィアが男性を連れてあいさつに来てくれた時はとても驚いたし、嬉しかった。
本当はその場で色々聞きたかったが、周りの目もあり聞けなかったので今がチャンスとばかりにソフィアに迫った。
「えっと…あのねルイスさんとはね…」
恥ずかしながらも母へルイスとのなれそめを話して聞かせた。
「ソフィアちゃん、ルイスさんに愛されて幸せそうで良かったわ。ルイスさんと幸せにね」
「うん、(他の人にとられないように)がんばります!」
ヴァレンティナはソフィアが恋に前向きなことに安心し、ずっと幸せでいますようにと心の中で祈った。
その後も二人で恋バナや料理の話などをしていたら
あっという間に夕方になり、アルセニオとレティシアが森から帰ってきた。
「ただいまー、ブラッディビーフ2体とオーク5体狩ってきたー」
「レティちゃんは前よりずいぶん強くなっているな、俺の出番が全然なかったよ」
アルセニオは残念がりフルフルとあたまを横に振った。
「解体してもらってきたから直ぐに食べれるよ、夕飯はブラッディビーフのステーキがいいな~」
「そうね、ステーキたくさん焼いてたくさん食べましょ!この暑い夏を乗りきらなきゃ」
ヴァレンティナは袖をめくりやる気満々に、夕飯の準備を始めていく。
レティシアは付け合せのサラダと、ニンニクは薄くスライスして油で揚げてステーキの上にのせるニンニクチップを作った。
「お父さんはイチボ肉でお母さんはヒレ肉が好きだったよね?」
ソフィアは両親の好きな部位を準備していく。
「良く覚えているな、ソフィアちゃんはヴァレンティナと同じヒレ肉が好きで、レティちゃんはサーロイン肉が好きだったよな」
「うん、お父さんもよく私達の好きな部位覚えているね」
「かわいい娘たちのことならなんでも覚えているさ」
そう言ってアルセニオは胸を張り、拳でドンと胸を叩いた。
そんな父の仕草を見て、三人はくすくすと笑いあった。
久しぶりの家族全員揃った夕飯はいつもより時間をかけ、楽しい時間は過ぎていった。
夕飯後、レティシアの手作りケーキを堪能したアルセニオはリビングの床に寝転んだ。
「ふーっ、食べ過ぎたーどれも美味しくてついついたくさん食べちゃったよ」
大きく膨らんだお腹を擦りながら三人に見せた。
「やだー、お父さん食べ過ぎだよー」
レティシアがけらけらと笑った。
「美丈夫で通ってるのに…お父さんその姿他の人に見せちゃダメよ」
ソフィアは笑いながらも釘を差した。
「やだもぅアルセニオったら…調子に乗りすぎよ!百年の恋も冷めるわねー」
「えっ?そんな!?ヴァレンティナぁ捨てないでぇー」
アルセニオの慌てっぷりにヴァレンティナは大笑いした。
「ふふっ冗談よっ、アルセニオって私のこと愛しすぎだわ」
「あたりまえだろ、ヴァレンティナ愛してる」
アルセニオとヴァレンティナは見つめあい二人の世界に入った。そんな両親を見てこれは長くなるやつだと察し、姉妹は早々とリビングから逃げ出そうと両親に小さな声で声をかけた。。
「「お父さんお母さんごゆっくり~、おやすみなさーい」」
そーっとドアを開け、ソフィアとレティシアはリビングから出ていった。
「レティおやすみー」
「お姉ちゃんおやすみー」
家族で楽しく過ごした一日が終わり、眠りについた。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
翌朝
ソフィアとレティシアは両親が次の依頼先へ出発する為、西門に見送りに来ていた
「「お父さんお母さん、気をつけてね」」
「冬前には帰ってくるわ」
約束ねと、ヴァレンティナはソフィア、レティシアと順番に指切りをした。
「レティちゃん、お姉ちゃんの言う事聞いて、無茶するんじゃないよ」
「もう!子供じゃないんだから! お父さんいっつも言う事一緒ねっ」
ぷんぷんと怒るレティシア、そんなレティシアの頭をアルセニオは優しく撫でた。
「ははっ、そうだなレティちゃんも来年成人だもんな。じゃあ行ってくるな、
ソフィアちゃん今度帰って来た時はルイス君呼んで一緒に食事しよう」
「はい!お父さんお母さんいってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
ソフィアは片手でレティシアは両手で大きく手を振って両親を見送った。
「レティ、急いで帰って昼からの営業の準備しなくちゃ。今日もがんばりましょうね」
「はーい」
朝から暑い日差しの中、二人は急いで【まんぷく亭】へ帰って行った。
建国祭の前日から3日間【まんぷく亭】は休業日となっている、それはお祭りで客が屋台へ行って客足が減ってしまうのが一番の理由だが、最後の日は別の理由があった。
ソフィアは明日の営業のためにメニューを考えていた。
「うーん…何にしようかしら?お肉はオークが沢山あるのよね」
メニューを決めかねていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「あっ!そろそろ来る時間だったわね」
パタパタと小走りでドアまで向かい開けると。
「やぁ!ソフィアちゃん、ただいま」
「ただいま、ソフィアちゃん」
「おかえりなさい!お父さん、お母さん」
ドアを開けるとそこには父のアルセニオと、母のヴァレンティナの姿があった。
そう、【まんぷく亭】が建国祭が終わって次の日も休業している理由は、父と母が帰ってくるからである。
「ソフィアちゃん昨日ぶりね、レティちゃんは居るの?」
「うん、二階の部屋に居るわ」
「いっぱいお土産持ってきたのよ!皆でお茶しながらお土産開けてみましょ」
「ありがとう!楽しみ」
後ろでアルセニオは妻と娘の会話を楽しそうに見ているが(ソフィアちゃんも今年で22歳か…早いものだな、まだ子供だと思っていたら、いつの間にか彼氏ができただなんて父さん寂しいよ…)と心の中で呟いていた。
ソフィアは父と母と二階のリビングへ行き、二人にお茶を出す。
「今、レティを呼んでくるわね」
パタパタと軽い足取りでソフィアはリビングから出ていった。
レティシアの部屋をノックしドアを開け声をかけた。
「レティ、お父さんとお母さん帰ってきたわ」
「はーい」
遠くからバタバタと走って来る音が聞こえドアがバーンと勢いよく開いた。
「お父さん!お母さん!おかえりなさい、久しぶりだね会いたかった!」
父と母は元気いっぱいのレティシアを見て、17歳になっても変わらないまだまだ子供な姿にちょっとホッとした。
「レティちゃん元気そうね、お土産沢山買ってきたのよ、さぁ皆で開けましょ」
ヴァレンティナはインベントリの中から次から次へとお土産を出し始めた。
レティシアは受け取り積み上げていくとあっという間にお土産のやまが出来上がった。
一方、ソフィアと父はお茶を飲みながら母とレティシアのやりとりを微笑ましくながめていた。
しばらくして、ソフィアの隣に座ってる父が気まずそうに口を開いた。
「あのさ…ソフィアちゃん、昨日会ったグラシア伯爵とは付き合いは長いのかい?」
「いいえ、まだお付き合いを始めて数ヶ月なの。もともとお店によく来てくれるお客さんだったのだけど、色々あってお付き合いすることになったの」
ソフィアは頬を染め照れくさそうに話した。
「グラシア伯爵はソフィアちゃんのこと大切にしてくれてる?」
「ええ、とても優しくて、頼もしくて、側にいるとほっとする方よ」
「そうか、良い人に巡り会えたね」
「はい!」
そんな話をしている父とソフィアへレティシアが声をかける。
「お父さんもお姉ちゃんもお土産開けるの手伝って! いっぱいあって大変なんだから」
「あらあら、ごめんね。今手伝うわ」
「ごめん、ごめん」
四人でわきあいあいとお土産を次から次へと開けていった。
するとヴァレンティナが思い出したかのようにインベントリから白いモコモコした大きな毛皮を沢山出し始めた。
「これは北の極寒地で捕れる大白兎の毛皮よ、私とソフィアちゃんとレティちゃんとお揃いでコート作ろうと思って狩ってきたの!すごいでしょ!」
自慢げに話す妻を見て、アルセニオは苦虫を噛み潰したような顔をして
「大変だったんだよ。突然さ、コート三人分狩るまで帰らないって言い出して、寒いのに俺必死になって探したんだよ、俺寒いの苦手なのに…」
と遠い目をする父であった。
姉妹は思った、あぁ…また母の思いつきの暴走に父はまた巻き込まれたのね…。
「お父さんお母さんありがとう!お父さん寒いの苦手なのに大変だったね。今度お姉ちゃんと仕立て屋さんに行ってくるね、お母さん冬には帰ってきてね」
「ええ、もちろんよ、お揃いのコート着て三人で出かけましょ」
ルンルンなヴァレンティナに対して、仲間外れのアルセニオは焦った。
「え?俺は?俺も皆と買い物に行きたいよ」
するとヴァレンティナはいじわるそうに笑った。
「あら、あなたも私達とお揃いのコート着て出かけたいの?」
「い…いや、お揃いのコートはさすがに遠慮したいかな…。でも四人で買い物は行きたい!」
「ふふっ、しょうがないわねぇアルセニオも連れてってあげるわ」
また父は母の手のひらで転がされ遊ばれていると、姉妹は苦笑いした。
両親がその後も○○産の布地だの、✕✕産の果物だのとお土産を開けながら説明していく中、ヴァレンティナが小さな長方形の箱の中からティアドロップ型の石の付いたペンダントと小さな丸い石の付いたピンキーリングを取り出しソフィアに渡した。
「これはね、ソフィアちゃんが魔物に襲われたって聞いたから、二度と襲われないように絶対防御を魔法付与してる魔石で作ってきた物なの」
「きれいな真っ赤な石…」
ルイスの瞳を思わせる石の色にソフィアはうっとりと見つめる。
まるで紹介する前からルイスとのことを知ってたかのような色の選択にソフィアは、リオおじ様が父と母に話したのだろうと心の中で思った。
だがリオおじ様がバラしたお陰?でずっと好きな人の色を身に付けれる事が嬉しかった。
「俺が着けてあげるよ」
アルセニオはソフィアからペンダントを受け取り、後ろに周ってペンダントを着けた。
「いつも手放さずに、必ず身に着けていてくれ。ペンダントが無理なときはピンキーリングを」
アルセニオはソフィアに決して手放さないようにと念を入れた。
ソフィアは、オークキングに襲われたことで父と母に心配をかけてしまい申し訳ないと思う気持ちと、離れていてもいつも自分達のことを想ってくれている父と母の気持ちが嬉しかった。
三人のやりとりを見ていたレティシアは、ちょっと姉がうらやましくて甘えた声で父と母に声をかけた。
「ねぇねぇ、お父さんお母さん、私には?」
「もちろんレティちゃんにもあるわよ! 絶対防御の魔法付与したピアスとブレスレットよ、ブレスレットはアンクレットにもなるから魔物を狩りに行くときに手首に付けているのが邪魔だったら足首に着けるといいわ」
「お母さんありがとう!!」
レティシアは嬉しくてヴァレンティナに抱きついた。
さっそく、少し太めのシルバーの鎖に長方形の青い石が付いているブレスレットを左手に着け、キラキラしている石をずっと眺めていた。
レティシアは、ふとブレスレットの着いた手を見て、昨日ロベルトと手を繋いで祭りを見て周った事を思い出した。(昨日のお祭り、ロベルトさんと見て周れて楽しかったな)
「あれ?でもお姉ちゃんと同じ魔石じゃないんだね」
姉が着けている魔石は赤色なのに、自分の魔石は青色だったことに少し不思議に思った。
「あぁ…それはね、両方ともダンジョン産の魔石なのだけど、同じ色がドロップしなかったのよ」
ダンジョン産の魔石とは、ダンジョンで倒した魔物から極稀にドロップする魔石のことである。
「そうなんだ、因みに何の魔物の魔石なの?」
長方形の青い魔石は透き通っていてとても綺麗だった。
レティシアが普段狩っている魔物からは、ここまで綺麗な色の魔石は出た事がなかった。
これ程までに美しい見た目をしている魔石は、人工魔石でしか見たことがなかったレティシアはいったいどんな魔物から採れたのだろうと気になった。
「ふふっ、それはね」
「うん」
「な・い・しょ!」
お茶目にウィンクした母にレティシアは頬を膨らました。
「え~!教えてよ」
「だ~め」
「むぅ…」
ヴァレンティナが何の魔物か教えてくれなくて項垂れていたレティシアに、アルセニオが気を逸らす様に話しかける。
「ほらほら、レティちゃんにはこれも買ってきたんだ! 帝国の魔導具で自動泡立て器だよ、レティちゃんはお菓子を作るから、これがあれば楽になるかと思ってね」
「わーい!お父さんありがとう!ずっと欲しかったんだ、卵白や生クリーム泡立てるの大変なんだもん」
「喜んでもらえて良かったよ。レティちゃんの作ったお菓子はどれも美味しいから、また作って欲しいな」
「うん!お父さんの好きなケーキがインベントリに入ってるから夕飯のあと皆で食べよう!」
「それは楽しみだ」
たくさんのお土産を前に両親の今までの冒険談を聞き、楽しい時間が過ぎていく。
「あ!いっけない、明日の食堂の準備なにもしてないわ」
突然思い出しソフィアが叫んだ。
「あらあら、じゃあお昼ごはん食べたら私も手伝うわね」
「えっいいの?うれしい!お母さんと一緒に料理するなんて久しぶり」
「ソフィアちゃんの方が料理上手になっちゃったけど、手伝うくらいならまだまだ大丈夫よ」
ソフィアは母と料理ができることがとても嬉しく心が弾んだ。
「ソフィアちゃん、お昼ごはんも一緒に作りましょ」
「うん!」
アルセニオはたくさんのお土産を片付けているレティシアに声をかけた。
「レティちゃん、お昼ごはん食べたらお父さんと森へ狩りに行かないか?あまり深くは行けないがレティちゃんがどれくらい上達したいかみたいな」
父の発言にレティシアはパァーっと満身の笑みをうかべ
「うん!行く行く!! お姉ちゃん、お父さんと狩りに行くからお昼ごはん早く食べたい!私も手伝うから早く作ろー」
レティシアは久しぶり父と狩りに行けることが嬉しくてしかたがない。
ソフィアはレティシアのはしゃぎっぷりにすこし呆れる。
「まったくもう、レティたら」
「えへへっ」
その後、ソフィアはネギとチャーシューを細かく切りレティシアが玉子を割っただけで、結局、手伝うどころか母がパパッと手際よくチャーハンを作ってしまった。そして一言
「チャーハンは火力とスピードが命よ、どお?わたしもまだまだ捨てたもんじゃないでしょ」
とドヤ顔をした。
そんな母のドヤ顔を見た姉妹は、昔から変わらない大好きな母の姿に笑った。
四人で久しぶりの母の手作りチャーハンに舌鼓し、食後のお茶を飲もうとしたのだがレティシアが席を立ち上がり父の元へ行くと、父の腕をガシッと掴み早く狩りに行こうと急かす。
「お父さん、ほら早く立って! ほら行くよ!早く早く!!」
「えっ?もう?」
「そうだよー、早く行こう」
「わかったわかった、レティちゃんは元気だなー」
レティシアに腕を引っぱられ、あっという間に二人は家を飛び出していった。
「レティちゃんたら、お昼ごはん食べたばかりなのに忙しないわね」
そんな二人を見て呆れたようにヴァレンティナはため息をついた。
「お父さんと狩りなんて久しぶりだもの、よほど嬉しかったのね。夕飯のおかず楽しみだわ」
そんなレティシアの姿を見たソフィアは、ふと思った。
小さい頃から両親が留守がちで、レティシアが寂しくない様にまわりの人達も気にかけてくれていたが、口には出さないがレティシアはやはり寂しかったのだろう、両親に見せるソフィアに見せる笑顔とは違う笑顔、子供に戻ったような甘える仕草がすべてを物語っていた。
ドアを見ながら少し寂しそうなソフィアに、ヴァレンティナは茶目っ気たっぷりに話しかけた。
「さて、二人が出かけたことだし、食後のお茶しながらソフィアちゃんの恋バナじーっくり聞きたいわ」
「へっ?お…お母さん、こ…恋バナって?」
「昨日あいさつに来てくれたルイスさんとのなれそめとかぁ~い・ろ・い・ろ・よ」
「えっ…えーっ!」
恥ずかしくて真っ赤になった顔を手で覆いかくしソフィアはうつむいてしまった。
「恥ずかしがらなくても大丈夫よ!ソフィちゃんもそんなお年頃になったのね、お母さん嬉しいわ」
ヴァレンティナは心配していたのだ。
ずっと前から依頼の為とはいえ、ソフィアに家の事とレティシアの世話をまかせていた、そして今では食堂を営んでいる。
そのせいか男性との関わりが少なく恋には縁遠く、このままでは恋愛などしないのでわないかと思っていたのだ。
なので、昨日の夜会でソフィアが男性を連れてあいさつに来てくれた時はとても驚いたし、嬉しかった。
本当はその場で色々聞きたかったが、周りの目もあり聞けなかったので今がチャンスとばかりにソフィアに迫った。
「えっと…あのねルイスさんとはね…」
恥ずかしながらも母へルイスとのなれそめを話して聞かせた。
「ソフィアちゃん、ルイスさんに愛されて幸せそうで良かったわ。ルイスさんと幸せにね」
「うん、(他の人にとられないように)がんばります!」
ヴァレンティナはソフィアが恋に前向きなことに安心し、ずっと幸せでいますようにと心の中で祈った。
その後も二人で恋バナや料理の話などをしていたら
あっという間に夕方になり、アルセニオとレティシアが森から帰ってきた。
「ただいまー、ブラッディビーフ2体とオーク5体狩ってきたー」
「レティちゃんは前よりずいぶん強くなっているな、俺の出番が全然なかったよ」
アルセニオは残念がりフルフルとあたまを横に振った。
「解体してもらってきたから直ぐに食べれるよ、夕飯はブラッディビーフのステーキがいいな~」
「そうね、ステーキたくさん焼いてたくさん食べましょ!この暑い夏を乗りきらなきゃ」
ヴァレンティナは袖をめくりやる気満々に、夕飯の準備を始めていく。
レティシアは付け合せのサラダと、ニンニクは薄くスライスして油で揚げてステーキの上にのせるニンニクチップを作った。
「お父さんはイチボ肉でお母さんはヒレ肉が好きだったよね?」
ソフィアは両親の好きな部位を準備していく。
「良く覚えているな、ソフィアちゃんはヴァレンティナと同じヒレ肉が好きで、レティちゃんはサーロイン肉が好きだったよな」
「うん、お父さんもよく私達の好きな部位覚えているね」
「かわいい娘たちのことならなんでも覚えているさ」
そう言ってアルセニオは胸を張り、拳でドンと胸を叩いた。
そんな父の仕草を見て、三人はくすくすと笑いあった。
久しぶりの家族全員揃った夕飯はいつもより時間をかけ、楽しい時間は過ぎていった。
夕飯後、レティシアの手作りケーキを堪能したアルセニオはリビングの床に寝転んだ。
「ふーっ、食べ過ぎたーどれも美味しくてついついたくさん食べちゃったよ」
大きく膨らんだお腹を擦りながら三人に見せた。
「やだー、お父さん食べ過ぎだよー」
レティシアがけらけらと笑った。
「美丈夫で通ってるのに…お父さんその姿他の人に見せちゃダメよ」
ソフィアは笑いながらも釘を差した。
「やだもぅアルセニオったら…調子に乗りすぎよ!百年の恋も冷めるわねー」
「えっ?そんな!?ヴァレンティナぁ捨てないでぇー」
アルセニオの慌てっぷりにヴァレンティナは大笑いした。
「ふふっ冗談よっ、アルセニオって私のこと愛しすぎだわ」
「あたりまえだろ、ヴァレンティナ愛してる」
アルセニオとヴァレンティナは見つめあい二人の世界に入った。そんな両親を見てこれは長くなるやつだと察し、姉妹は早々とリビングから逃げ出そうと両親に小さな声で声をかけた。。
「「お父さんお母さんごゆっくり~、おやすみなさーい」」
そーっとドアを開け、ソフィアとレティシアはリビングから出ていった。
「レティおやすみー」
「お姉ちゃんおやすみー」
家族で楽しく過ごした一日が終わり、眠りについた。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
翌朝
ソフィアとレティシアは両親が次の依頼先へ出発する為、西門に見送りに来ていた
「「お父さんお母さん、気をつけてね」」
「冬前には帰ってくるわ」
約束ねと、ヴァレンティナはソフィア、レティシアと順番に指切りをした。
「レティちゃん、お姉ちゃんの言う事聞いて、無茶するんじゃないよ」
「もう!子供じゃないんだから! お父さんいっつも言う事一緒ねっ」
ぷんぷんと怒るレティシア、そんなレティシアの頭をアルセニオは優しく撫でた。
「ははっ、そうだなレティちゃんも来年成人だもんな。じゃあ行ってくるな、
ソフィアちゃん今度帰って来た時はルイス君呼んで一緒に食事しよう」
「はい!お父さんお母さんいってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
ソフィアは片手でレティシアは両手で大きく手を振って両親を見送った。
「レティ、急いで帰って昼からの営業の準備しなくちゃ。今日もがんばりましょうね」
「はーい」
朝から暑い日差しの中、二人は急いで【まんぷく亭】へ帰って行った。
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