二人姉妹の恋愛事情〜騎士とおくる恋の物語〜

みぃ

文字の大きさ
49 / 64

第46話

しおりを挟む
~小竜が城に来て十数日後~



【まんぷく亭】の昼営業後、カランカランとドアベルをならし力なくドアを開けたのはライムンド第二王子だった。



「いらっしゃいませー、あれ?ライ兄様どうしたの?」



「あぁ…レティ、ソフィア姉様いるか?」



「うん、ちょっと待っててー、お姉ちゃんライ兄様が来たよー」



レティの呼ぶ声でソフィアが厨房から出て来てライムンドの元へパタパタと小走りで走って行く。



「あらあら、ライ君どうしたの?一人で来るなんて初めてね、疲れてるみたいだけど大丈夫? レティ、ライ君にお茶とケーキ出してあげて」



「はーい」



ソフィアはライムンドを四人がけのテーブル席へ座るよう案内した。



「ライ君お昼ごはん食べた?」



「大丈夫、食べてきたから。それよりソフィア姉様話があるんだ」



「レティがお茶持って来るからちょっと待ってて、話はレティが来てからでもいい?」



「ああ、じゃあ待ってる」



ソフィアはレティシアが来るのを待ってライムンドの前に二人で座り、今日店に来た理由を聞いた。



「ライ君、深刻な顔してどうしたの?お城で何かあった?」



ライムンドが突然席を立ったかと思いきや、テーブルに手を付き頭を下げた。王族が頭を軽々しく下げてはいけないと教育されてる筈なのに、頭を下げるとはきっと深い意味があるのだろうとソフィアは心して次の言葉を待った。



「お願いしますソフィア姉様、あの小竜と従魔契約してもらえませんか」



「えっ?契約って…どういう事なの?」



「実は、あれから小竜はグラシア第三騎士団長とアンデの言うことを最初の数日は大抵聞いておとなしくしてたんです。

ですが最近は訓練中留守番してるように言っても、ほんの少し待ってるだけで直ぐに追いかけてしまうし、勝手に森へ行って大型魔物を狩ってきてアンデに食べさせようとするし、飼育員の言うことは一切聞かないし……ets…。

特に竜騎士団の訓練が出来ないのが一番困っていまして、ソフィア姉様が従魔契約してくださったら、ちゃんと言う事を聞いてくれるのではないかと思うんです」



話を聞いたソフィアとレティシアは、だからライムンドはこんなにも、やつれていたんだと納得した。



「でもねぇ、ライ君。私竜騎士にはなれないわよ…」



「それは問題ありません。竜騎士の竜は、幼体の頃から人間に慣れさせ訓練と調教されている竜です。それに比べて今回の竜は野生で、尚且つ成体なので竜騎士の竜になれるかどうかも分からない状態ですので、今はまず人間と良い関係を築くのが先なのです。

なのであの竜が言う事を聞いてくれるようになってくれるだけで助かります」



「ライ兄様、竜との従魔契約ってお姉ちゃんに害はないの?」



魔物は人間と従魔契約すると、食料を食べずに主の魔力を糧に生きていく事が出来る。

なので大食漢な魔物と従魔契約しても食費を気にしなくても良いのだ。

だが、沢山の魔物と契約したり、余りにも強力な魔物を従魔にしてしまうと、供給する魔力が足りなくなり人間の命が危険にさらされる。



竜のランクはSランクである為消費する魔力も膨大だろう。

そんな竜と従魔契約してソフィアの命に危険はないのかとレティシアは心配したのだ。



「大丈夫だよ、主の魔力を糧にする代わりに竜には食料から魔力を得てもらうから。竜を影にさえ入れなかったら魔力を吸われる事もないしね。

ただ、その代わり沢山の食料が必要になるわけだけどね……。

まぁ…竜騎士の竜達も、従魔契約している訳じゃないから、沢山の食料が必要になるが…1体増えたくらいで問題は……少ししかないし」



食べ物から魔力を得るのは勿論可能で、城に来る以前の野生の竜が食べていた量を与えれれば、主から魔力供給は必要なくなる。



「あぁ…なるほど、食べ物から魔力を得る方法ね。確かにその手があったね……なら大丈夫かな。ねっ!お姉ちゃん」



「そうね、問題がないならやってみようかしら。でも小竜ちゃん私と契約してくれるかしら?」



「「絶対大丈夫!」」



ライムンドはソフィアが提案を受け入れてくれたおかげで、肩の荷が下り「やっとゆっくり寝れる…」と小さく呟いた。



「じゃあソフィア姉様、今度のお店の休みに来てもらえるかな?」



「明後日休みだから、その日で良いかしら?」



「了解、明後日の10時に迎えに来るよ。レティも一緒に来るか?」



「もちろん行くよ!お姉ちゃんが心配だもん」



「ははっ、あいかわらずだな。じゃあ明後日な」



来た時とは違い軽い足取りで城へ帰って行ったライムンドだった。









二日後、ライムンドとソフィアとレティシアはアンデと小竜がいる厩舎に来ていた。

先に来ていたルイスは、ソフィアが来るのをそわそわしながら待っていた。



「ソフィア、大丈夫か?」



「心配してくれてありがとうございます、大丈夫ですよ。ルイスさんもお世話大変だったみたいですね。とりあえず小竜ちゃんに話かけてみますね」



ソフィアが厩舎の冊の前まで行くと、すぐにソフィアの気配を感じたのか匂いで分かったのか小竜が近くまでやって来た。



「ギャウ、キュゥー」



会いたかったと言ってるようにも聞こえる鳴き声で、小竜はソフィアに甘えた仕草をとりだした。



「久しぶりね、元気にしてた?今日は貴女にお願いがあって来たの、あのね私と従魔契約してほしいのだけれど、どうかしら?」



「ギャウ、ギャウ」



小竜が「いいよ」と言ってるのか、首を大きく縦に振ったあとソフィアの顔ギリギリに額を近づけてきた。



「ありがとう。我、汝と契約する者なり…汝の名は…ベリー」



そう言ってソフィアはベリーの額にキスをする、するとベリーが金色の光に包まれた。その光が消えるとベリーの額に小さく光るソフィアの瞳と同じ色の石が付いていた。無事に従魔契約が出来たようだ。



だが、その様子を見ていたライムンドとルイスは、ベリーの額に現れた石にギョッとした。



((なんか、普通の従魔契約と違くないか!?))



そんな驚く二人を横目にレティシアは頭の中で、やべぇと思っていた。



(お姉ちゃんに本当の従魔契約の仕方伝えるの忘れてた)



本当の従魔契約にキスは必要ないのに、ソフィアは知らずにキューちゃんと従魔契約したときにも行っており、キューちゃんの額にもソフィアと同じ色の石が額にあわられている。



(まぁ…お父さんは特に問題は無いって言ってたから良いか)



3人の考えている事など露知らず、ソフィアはベリーの鼻面を撫でていた。



「ふふっ、よろしくねベリーちゃん」



「ギャウー」



ソフィアに撫でられ嬉しそうにベリーは鳴いた。



色々、ツッコミを入れたいが、なんとか無事にソフィアとベリーが従魔契約が出来たことにライムンドもルイスも喜び安堵した。



「お姉ちゃん、無事に契約出来て良かったー。小竜の名前、ベリーちゃんにしたんだね。とっても可愛いくて似合ってるね」



「でしょ、今回はすっごく頑張って考えたのよ」



「うん、ベリーちゃんも喜んでたね」



「喜んでくれて良かったわ

ねぇライ君、この前お店で聞いたことをベリーちゃんに聞いてみるわね」



そう言ってソフィアはベリーの鼻頭を撫でながらベリーと目を合わせ会話をしだした。



「ベリーちゃん、この前の私との約束覚えてる?」



ライムンドから聞いたことをベリーに聞いてみた。



〚覚えてるよ、でもね留守番できなくなったのは、アンデもルイスもいないし、ソフィアはまた来るねって言ったのに会いに来てくれないから、最初は我慢してたけど、寂しくて寂しくてだんだん我慢が出来なくなって追っちゃったの〛



「そうだったのね。ごめんなさいね、寂しい思いさせてしまって」



〚それに、ソフィアがルイスとアンデの言う事を聞いてって言ったからベリーはちゃんと聞いたよ、でも飼育員って何?なんで他の人のこと聞かなきゃいけないの?〛



「そ…そうね、私の言い方が悪かったわね、ベリーは間違ってないわ」



〚でしょ、勝手に城から出て餌を狩ってきたのは悪かったけど、だって愛するアンデにあんな粗末な餌…アンデにはもっと美味しくて栄養あるもの食べて欲しかったから〛



「粗末な…ベリーちゃんは今までどんな物を食べてたの?」



〚あのね…ベリーは甘い果物が好きなの、お肉はブラッディービーフやブラッディサーペントが好き、大型の魔物はどれも美味しいよ!

ここの餌は下級の魔物ばっかり、果物も野菜も新鮮じゃないから自分で狩ってきた方が良い〛



「あらあら、そうだったのね。美味しい食事は大事よね、それに言葉が足りなかった私がいけなかったわ、寂しい思いをさせてごめんねベリーちゃん」



〚うん……〛



ソフィアはみんなにベリーがとった行動の説明をする。

理由は…まず、留守番できなくなったのは、アンデもルイスもいないし、ソフィアは会いに来てくれない、最初は我慢してたけど寂しくて我慢が出来なくなって追いかけてしまったらしい。

飼育員の話を聞かないのは、ソフィアに「ルイスとアンデの言う事を聞いて」と言われたから。

魔物を狩ってきてアンデに食べさせようとしたのは、愛するアンデに美味しくて、もっと栄養を補って欲しかったから、だそうだ。



「「「成る程」」」



「もう私と従魔契約して、心が繋がってるから寂しくないって。ちゃんと留守番するし飼育員の言う事も聞くって、あとはライ君、食事の事はお願いね」



「はい…改善します…」

(やはり帝国式の餌じゃ野生だったベリーには合わなかったのか、野生の竜は舌が肥えてるな、今後どうするか父上と兄上に相談しなければ)



「ルイスさん、ベリーちゃんのお世話減ると思うので、ゆっくりご飯食べに来て下さいね」



「ありがとう、ソフィアのお陰で助かったよ。また旅行の打ち合わせもしたいから、近日中に顔を出すよ」



「はい、待ってます。じゃあルイスさん、ライ君今日はこれで帰るわね。ベリーちゃんのことお願いね」



帰る前にソフィアはもう一度ベリーに声を掛けた。



「ベリーちゃん、今日は帰るけど、また会いに行くわ」



〚本当に?〛



「もちろんよ、約束ね」



〚うん、約束。良い子にして待ってる〛



「バイバイ、またねベリーちゃん」



〚バイバーイ〛



もうこれで大丈夫だと思い、ソフィアとレティシアは家路についた。





一方、厩舎に残ったライムンドとルイスは今後の話をしていた。



「ライムンド殿下、ベリーの餌どうされますか?」



「うっ…早急に検討して善処する…」



「お金かかりそうですね…」



「しばらくは父上の私財でなんとかするか…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

処理中です...