最弱職な彼にも栄光あれ!

夜ヶ崎 雪

文字の大きさ
6 / 7
第2章

初授業

しおりを挟む
「はよー」

 俺がドアを開けて入った瞬間、肩をビクッと震わす二人の少女が。やはり、母さんの言う通りやり過ぎだったろうか。
 しかし、別に何も考え無しにやった訳ではない。あの二人がちょっとイラっとしたからとかではない。違うったら違う。

 自分の職業を最弱職である冒険者であることを明かせば、バカにされることは分かっていた。銀狼族は総じて誇りが高く、好戦的だからな。いずれ学級崩壊に繋がることも容易に予想できた。だから、早めに手を打ったのだ。本来なら、アリスにやるつもりではあったが。

 周りを見渡せば、クラス全員何となく怯えているような感じが見て取れた。おそらく、親から昨日の事について聞いたのだろう。俺のあのスキルはこの里じゃ、有名だしな。

「よし、じゃあ授業を始めようか。担任とは言っても、俺が全部の授業を担当する訳じゃない。俺が担当するのは、今日行う魔法学と明日以降に行う魔道具作製だ。養殖の授業は先生全員でやることになってる。……よし、じゃあ教科書出せー」

 俺の言葉にクラス全員が一斉にガサガサと教科書を出し始める。……が、一人だけ青ざめた顔のまま動かない生徒がいる。
 テミスだ。
 一番前の席で教科書忘れるとは……隣のサーシャは机をくっつけようか迷っているみたいだ。
 まぁ、最初の授業だから誰か一人くらい忘れるだろうとは予想していたけれども。

 ……しょうがない。今日は最初の授業だしなるべく教科書を使わない授業にするか。

 明日以降なら、容赦しないが。

 ーーーーーー
 ーーーー
 ーー

 どことなく懐かしい感じのする鐘の音が授業の終わりを告げる。
 その音と共に、テミスの顔が先程までのが嘘のようにぱあっと笑顔になる。
 教科書を一度も使わなかったからだろう。事実、授業中彼女の視線はずっと教壇の上の教科書に向けられていた。
 ちゃんと授業聞いてたんだろうな。
 明日当ててやろ。


 授業が終わって職員室へ戻るために廊下を歩いていると、後ろからぱたぱたと駆けてくる音が。

「先生!」
「どうした、サーシャ」

 振り向くと、そこには授業前は俺に対して怯えを見せていたいたはずのサーシャが。しかし、今はそんな様子が全く見えない。それどころか、既に俺に心を開いているようにも見える。

「今日はありがとうございました。教科書使わなかったのって、やっぱり教科書忘れたテミスに気を使ったからですよね?」
「……まあな。今日は初回の授業だったから、特別に罰は無しだ。よく言っとけよ、明日以降は容赦しないって」
「はい!」

 サーシャが教室に戻っていくのを確認した後、俺は職員室へと再び歩を進める。

 あれ? さっきの俺ってば、すごく先生っぽくなかったか? それこそ、王都にいる変な名前の勇者候補が持ち込んだという物語に出てくるような先生みたいな。

 それにしてもサーシャってばちょっとチョロくない? チョロいんって呼ばれてもおかしくないレベルだよ、あれ。
 もうちょっと、こう……警戒心とか持った方がいいと思うんだが……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...