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第1章
空中戦闘
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飛行体に鞭をからみつかせて掴まっているザニバルは、急な方向転換を繰り返す飛行体に激しく振り回されている。このままでは鞭が外れそうだ。
ザニバルは鞭をたぐって飛行体に近づいていく。
夜闇の中だが暗黒騎士は飛行体の姿をはっきり捉えることができた。
尖った頭に細長く滑らかな白い胴体、二枚の長い翼、前肢と後肢、長い尾を持っている。全長十メル級の中型飛龍種、サラマンダーだ。
サラマンダーは翼を持っているが羽ばたいて飛ぶのではない。翼の後縁から焔系魔法術式で高熱の噴流を発生させて巨体を推進している。その最高速度は音の速さをも超えるという。飛び去った後に音がついてくるのだ。
鞭をたぐっていったザニバルはサラマンダーの尾にまでたどりついた。サラマンダーは尾を振ってザニバルを叩き落とそうとする。ザニバルは両腕でがっしりと尾にしがみつく。
サラマンダーからは何の気持ちも感じ取れない。魔法召喚によって作り出された仮初の生命、仮身召喚体だからだ。サラマンダーたちは誰かの魔法によって生み出され、マルメロを盗みに来た。
仮身召喚体は召喚者による比較的単純な命令に基づいて行動する。 このサラマンダーは敵にとりつかれたらどんな命令を実行するのか?
その答えはすぐに分かった。
高速飛行するサラマンダーの周囲に同種のサラマンダーたちが複数接近してくる。
五体のサラマンダーが編隊を組んだ。彼らは共通の敵としてザニバルを認識する。中央のサラマンダーにとりついている暗黒騎士を倒さねばならない。
サラマンダーの尾にしがみついているザニバルへと、他のサラマンダーが前肢の爪で攻撃を仕掛けてくる。味方を傷つける可能性は気にしないようだ。
ザニバルは籠手の鋭い指先をサラマンダーの強固な鱗に突き刺して、尾から胴体へと這い上る。高速飛行での強風に加え、サラマンダーは絶え間なく急旋回を繰り返してザニバルを振り落とそうとしてくる。ザニバルの身体は右に左に振り回される。
サラマンダーは森の上空を超音速で飛ぶ。ジグザグに曲がりながらも山脈の方へと北上していく。帝国と王国の双方が要塞を築いてにらみ合っている国境線のガイレン山脈だ。
サラマンダーの背にしがみつきながらザニバルは下を見る。まさしく恐ろしい速度で景色が流れ去っていく。生身で落ちたら潰れるどころか全身細かくバラバラになってしまうだろう。
悪魔バランが恐怖を喰ってしまわねばザニバルはたちまち気を失ってしまうところだ。
<死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぅ!>
他のサラマンダーが体当たりを仕掛けてくる。
ザニバルは鞭を振り上げる。鞭は薄い金属が螺旋状に伸びた形状だ。その螺旋が猛速で回転している。
「ええい、死んじゃええええええっ!」
接近してくるサラマンダーの軌道へと鞭を振り下ろす。まっすぐ突っ込んできたサラマンダーを鞭が回転して削りながら切断していく。
両断されたサラマンダーは二つに分かれて落下。
新たなサラマンダーが後方から迫ってくる。サラマンダーは大きな顎を開いた。その中に赤い光が輝き始める。焔系魔法によるブレス攻撃だ。鉄をも融かす猛烈な火焔が噴射される。
ザニバルはサラマンダーの背から手を離した。強風によって一瞬で吹き飛ばされ、ブレス攻撃を突き抜けて後方へ。鞭を振るって後方のサラマンダーに掴まり直す。
前方のサラマンダーは火だるまになった。焔属性のサラマンダーといえどもこの火焔攻撃には耐えられないようだ。火に包まれて落ちていく。
二体を失って残り三体となったサラマンダー。
ザニバルが掴まっているサラマンダーは急角度の機動を止めて、まっすぐ山脈の方へと加速し始める。翼からは高熱の噴流が激しく生じている。
それ以外の二体は反転離脱した。
ザニバルは進んでいく先を見る。
山脈の尾根にそって薄くキラキラと輝く板のようなものが見える。
国境線に沿って設置されている防空魔法障壁だ。目視できるのは極めて強力な障壁が張られている証だ。あらゆる物体を通過させない強度だろう。ぶつかってきた物に対してはその力をそっくり返してくる。力で突破するのは不可能と言っていい。
ザニバルが以前にこの山脈で戦った時にはこうした障壁はなかった。強固な守りにはなれども攻め込むこともできなくなるからだ。平和ならではの光景だった。
その障壁へとサラマンダーは全速力で接近していく。
<ねえバラン、もしかしてこのサラマンダーぶつかるつもりかな>
<ばか、ザニバル、早く逃げるんだよ!>
サラマンダーは翼を鋭角にして速度を上げる。音速を突破した。衝撃波が発生してザニバルを打つ。
サラマンダーは翼から焔を引いて、さらに加速。
そのまま防空魔法障壁へと突入する。
超音速のエネルギーがサラマンダーへと跳ね返る。
瞬時にしてサラマンダーを構成する魔法が魔力に分解。無制御の魔力によって発生した焔と稲妻が障壁上を走り広がる。山脈の尾根を一瞬の輝きが照らす。粉々に砕けた黒い兜と鎧が闇の中へと散らばり落ちていく。
やがて障壁は落ち着きを取り戻し、ガイレン山脈は何事もなかったかのような姿に戻った。
ザニバルは鞭をたぐって飛行体に近づいていく。
夜闇の中だが暗黒騎士は飛行体の姿をはっきり捉えることができた。
尖った頭に細長く滑らかな白い胴体、二枚の長い翼、前肢と後肢、長い尾を持っている。全長十メル級の中型飛龍種、サラマンダーだ。
サラマンダーは翼を持っているが羽ばたいて飛ぶのではない。翼の後縁から焔系魔法術式で高熱の噴流を発生させて巨体を推進している。その最高速度は音の速さをも超えるという。飛び去った後に音がついてくるのだ。
鞭をたぐっていったザニバルはサラマンダーの尾にまでたどりついた。サラマンダーは尾を振ってザニバルを叩き落とそうとする。ザニバルは両腕でがっしりと尾にしがみつく。
サラマンダーからは何の気持ちも感じ取れない。魔法召喚によって作り出された仮初の生命、仮身召喚体だからだ。サラマンダーたちは誰かの魔法によって生み出され、マルメロを盗みに来た。
仮身召喚体は召喚者による比較的単純な命令に基づいて行動する。 このサラマンダーは敵にとりつかれたらどんな命令を実行するのか?
その答えはすぐに分かった。
高速飛行するサラマンダーの周囲に同種のサラマンダーたちが複数接近してくる。
五体のサラマンダーが編隊を組んだ。彼らは共通の敵としてザニバルを認識する。中央のサラマンダーにとりついている暗黒騎士を倒さねばならない。
サラマンダーの尾にしがみついているザニバルへと、他のサラマンダーが前肢の爪で攻撃を仕掛けてくる。味方を傷つける可能性は気にしないようだ。
ザニバルは籠手の鋭い指先をサラマンダーの強固な鱗に突き刺して、尾から胴体へと這い上る。高速飛行での強風に加え、サラマンダーは絶え間なく急旋回を繰り返してザニバルを振り落とそうとしてくる。ザニバルの身体は右に左に振り回される。
サラマンダーは森の上空を超音速で飛ぶ。ジグザグに曲がりながらも山脈の方へと北上していく。帝国と王国の双方が要塞を築いてにらみ合っている国境線のガイレン山脈だ。
サラマンダーの背にしがみつきながらザニバルは下を見る。まさしく恐ろしい速度で景色が流れ去っていく。生身で落ちたら潰れるどころか全身細かくバラバラになってしまうだろう。
悪魔バランが恐怖を喰ってしまわねばザニバルはたちまち気を失ってしまうところだ。
<死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぅ!>
他のサラマンダーが体当たりを仕掛けてくる。
ザニバルは鞭を振り上げる。鞭は薄い金属が螺旋状に伸びた形状だ。その螺旋が猛速で回転している。
「ええい、死んじゃええええええっ!」
接近してくるサラマンダーの軌道へと鞭を振り下ろす。まっすぐ突っ込んできたサラマンダーを鞭が回転して削りながら切断していく。
両断されたサラマンダーは二つに分かれて落下。
新たなサラマンダーが後方から迫ってくる。サラマンダーは大きな顎を開いた。その中に赤い光が輝き始める。焔系魔法によるブレス攻撃だ。鉄をも融かす猛烈な火焔が噴射される。
ザニバルはサラマンダーの背から手を離した。強風によって一瞬で吹き飛ばされ、ブレス攻撃を突き抜けて後方へ。鞭を振るって後方のサラマンダーに掴まり直す。
前方のサラマンダーは火だるまになった。焔属性のサラマンダーといえどもこの火焔攻撃には耐えられないようだ。火に包まれて落ちていく。
二体を失って残り三体となったサラマンダー。
ザニバルが掴まっているサラマンダーは急角度の機動を止めて、まっすぐ山脈の方へと加速し始める。翼からは高熱の噴流が激しく生じている。
それ以外の二体は反転離脱した。
ザニバルは進んでいく先を見る。
山脈の尾根にそって薄くキラキラと輝く板のようなものが見える。
国境線に沿って設置されている防空魔法障壁だ。目視できるのは極めて強力な障壁が張られている証だ。あらゆる物体を通過させない強度だろう。ぶつかってきた物に対してはその力をそっくり返してくる。力で突破するのは不可能と言っていい。
ザニバルが以前にこの山脈で戦った時にはこうした障壁はなかった。強固な守りにはなれども攻め込むこともできなくなるからだ。平和ならではの光景だった。
その障壁へとサラマンダーは全速力で接近していく。
<ねえバラン、もしかしてこのサラマンダーぶつかるつもりかな>
<ばか、ザニバル、早く逃げるんだよ!>
サラマンダーは翼を鋭角にして速度を上げる。音速を突破した。衝撃波が発生してザニバルを打つ。
サラマンダーは翼から焔を引いて、さらに加速。
そのまま防空魔法障壁へと突入する。
超音速のエネルギーがサラマンダーへと跳ね返る。
瞬時にしてサラマンダーを構成する魔法が魔力に分解。無制御の魔力によって発生した焔と稲妻が障壁上を走り広がる。山脈の尾根を一瞬の輝きが照らす。粉々に砕けた黒い兜と鎧が闇の中へと散らばり落ちていく。
やがて障壁は落ち着きを取り戻し、ガイレン山脈は何事もなかったかのような姿に戻った。
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