怪演!ゴーストレストラン

日向コタ

文字の大きさ
3 / 25
第1章 不思議な出会い

3.零との出会い

しおりを挟む
 「今日は色々なことがありすぎたなあ…。」光太は夕日が沈みかけた通学路を、一人歩きながら考えていた。初めて同級生に大声で反論したこと、女の子に慰められて涙しそうになったこと。同級生に対して当たり障りない付き合いをしてきた光太にとって、この日の出来事はショックが大きい。現実逃避したくなった光太は、直接家には帰らず、寄り道して帰ることにした。

 まず、デパートに寄り道した。この日はパーっと遊びたい気分だった。普段はほとんど立ち寄ることがないゲームセンターで、久々に遊んだ。1ヶ月5000円のお小遣いで暮らす光太は、持ち金の半分以上を使った。UFOキャッチャーで大きな熊のぬいぐるみを狙ったが、2000円使っても取れなかった。あとはルールがよくわかっていないスロットゲームをやった。たまに当たると気分がよかったが、お金がなくなっていくのも早かった。気づいた頃には残金が1200円になっていた。
  そして、その残金で夕飯を食べるため、光太は「喫茶ミツイ」に向かった。ここはたまに家族でご飯を食べに来る場所で、光太は決まってナポリタンを頼んでいた。「ここのナポリタンは昔ながらで美味い!」って父さんが言うのがなんとなくわかる。この日もナポリタンを一口すすると、とても懐かしく、奥深いケチャップの味わいが口一杯に広がった。

 光太は、喫茶ミツイで閉店間際まで過ごした。もう午後十時になる頃、お店にお客さんは一人もいなかった。その時、マスターに話しかけられた。
 「おにいちゃん、珍しく今日は一人だね。」

 「少し一人になりたかったんです。」
 光太は食事代千円を支払い、店を後にした。とことん一人を満喫した光太は、以前より気持ちが軽くなっていた。

 すでに夜は更け、町の明かりも徐々に消えていた。明かりがついているのはおそらく居酒屋か、怪しい風俗店くらいだろう。
 光太は思う存分一人を満喫したことで、気持ちがスッキリしていた。今まの自分ではやらないような無駄遣いもした。どこか一皮むけたような感覚を携え、光太は帰りに向かった。

 しばらく歩くと、光太は頬に生ぬるい空気を感じた。
 「気のせいだよな…」
 そう信じこみ、歩みを早めた。しかし、一向に頬にだけ感じる生ぬるさが消えない。ましてや午後十一時前である。光太は背筋が凍るような恐怖を感じた。
 「誰かいるの?!」
 しぼりだしたような声で、誰もいないはずの空間に話しかけた。
 「やっと気づいてくれたか」
 はっきりとした声で返事が返ってきた。そして光太は気を失った。おそらく数分間は経っただろう。しばらくして目が覚めると、そこには映画でしか見たことがないような、体が半透明になった男性が立っていた。
 夢だと思った。むしろそうであって欲しいと思った。光太は必死に後退りした。

 「近づかないで!!」
 精一杯叫んだが、恐怖で声に力が入らない。
 
 「まあそう怖がらないでよ。俺は君と仲良くしたいだけだよ。」
 幽霊は襲いかかりませんと言わんばかりに、その場にあぐらをかいてしゃがみこんだ。
 
 「え…ていうか、あなたはどこから来たんですか?」
 光太は恐る恐る尋ねた。
 
 「どこからって、俺は一回死んでるからね。あの世からだよ。」
 
 「そんな…なんで僕について来たんですか?」
 
 「君、さっき喫茶店でナポリタン食べてたでしょ。俺も生前あの喫茶店でよく珈琲をいただいててね、死んだ今でもたまに行くんだよ。居心地が良くてね。」
 
 「あの店から…。でもなんで?早く帰ってくださいよ!」
 光太は何をしてくるかわからない幽霊に、これ以上付き合うのは御免だと思った。
 
 「さっき君、喫茶店で寝言言ってたよね。覚えてる?」
 たしかに光太は喫茶店で少し寝落ちしてた時間がある、しかし自分の寝言を覚えている訳がない。
 
 「君レストランやりたいって、はっきり言ってたんだよ。それ聞いてね、俺が生きてた時と同じだっ!て思ったんだ。」
 
 「たしかに将来の夢はレストランで料理作ることですけど、、てかあなたは何歳の時に亡くなったんですか?」
 
 「俺は19歳の時に交通事故でだな。突然だったよ。まだ若かったし、未練もあるからこうやってこの世に戻ってきたんだ。」
 
 「だいぶ若いんですね…。料理が好きだったんですか?」
 
 「当時、調理師学校に通ってたんだ。そのまま行けば調理師免許取って、洋食レストランに就職するつもりだった。まあ今では無理なんだけどな。」
 幽霊は少し寂しそうな表情を見せた。
 
 「それはお気の毒ですね。でも僕に付きまとうのはやめてください!まだ料理人とか、なれるとしても先の話ですし。」
 
 「そうとも限らないよ。よかったら俺と一緒にレストランやってみないか?高校生でもできる方法知ってるんだ。」
 
 「そんな話、信じられないですよ!怪しすぎる。」
 
 「そう言われると思った。でも話だけでも聞いてほしいんだ。今"ゴーストレストラン"と呼ばれる店を構えないスタイルの飲食店が流行っていてな。それなら、お前が高校が終わってからの時間でできるし、俺だって営業に関する準備とか力になれる。明日またこの場所で会えるか?その時に返事を聞かせてほしい。」
 そう言い終えると、幽霊はゆっくりと細い路地の方へと進んでいった。しかし、一瞬立ち止まりこちらを向いた。

 「そうだ、いい忘れたけど俺の名前は零。君は?」
 
 「こ、光太です。」
 
 「そうか、じゃあ光太、明日午後十時に待ってるからね!」
 零はそのまま細い路地に消えていった。光太は夢か現実か確かめるため、目を擦った。現実だー。
 どうなっているんだ。幽霊と遭遇しただけでも信じられないことなのに、一緒にレストランをやろうと誘われた。幽霊とゴーストレストランをやるなんて、そもそもややこしすぎる。そんなことを考えながら自宅に着いた時には、午前0時を回っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...