三日月のキング

遠藤

文字の大きさ
1 / 1

エピローグ

しおりを挟む
コラプスと呼ばれるこの国は、笑顔の絶えない場所である。
小さな子供、お年寄り、火を吹くドラゴン、様々な者たちが平和を謳歌しながら過ごすこの国は、ちょっぴり変わっている。
まずこの国には、時間という概念が存在しない。そして、国の中心には、大きすぎる程の城がそびえ立ち、その周りを囲む様に家々が並んでいるのである。派手な外装の城の周りに配置された沢山の兵たち。その中に何があるのか、誰が居るのか、それを知る者はいない。



この国にはとある伝説がある。
500年前、この世界には魔物がいた。そしてこの国は、その魔物たちによって滅ぼされようとしていた。その時ある1人の勇者が立ち上がった。
この国のかつての王に仕える勇者だった。その勇者は剣を持たなかったのだが、誰よりも強く、誰よりも優しく、人々からとても好かれている人間だった。
彼は戦った。人々を脅かす魔物に兵たちと共に立ち向かった。
そして勇者達は魔物を倒し、人々に無事平和が訪れた

かと思われた。
魔物を討伐した後に現れたのは、「魔王」と名乗る人物だった。
体格は勇者と同じくらいだったものの、その溢れ出る禍々しいオーラがその体を大きく見せた。その男が振るう拳は、一振りで何十もの兵を吹き飛ばす威力だった。
それでも勇者は怯まなかった。
強く握った拳で魔王と戦った。
何発殴られても耐えて、すぐに自分も殴り返した。本気を超えたその攻撃は、確かに魔王に効いていた。そして勇者はその拳で、魔王を打ち破った。
だが、伝説はこれで終わりではない。
魔王を倒したその瞬間、魔王が光を放った。自爆しようとしたのだ。
だが勇者はそれにいち早く気付き、魔王に飛びかかり、残された全ての力を使い殴った。大きな爆発音と共に、2つの衝撃波がぶつかり合った。
大きな音とは裏腹に、その爆発は小さなものだった。
勇者が止めた。
皆がそう思った。だが、爆発による煙が消えたそこには、勇者はいなかった。
人々は、死して尚破壊を続けようとした魔王を「災厄」と呼び、命を賭けて国と人々を守った勇者を「英雄」と呼んだ。

これが、この国に伝わる伝説である。
今でも、年に一度、その勇者を讃える祭りが開かれている。
そして今夜は、その祭りが開かれるのである。人々は城の目の前の広場に集まり、食べ物やショーを楽しみ、勇者へのお供物を城の前に置く。誰もが喧嘩をやめ、互いに認め合い、笑い合う。そんな楽しい祭りになる


はずだった。



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

《完結》悪役聖女

ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……

聖女じゃない私の奇跡

あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。 だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。 「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

処理中です...