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第28話
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ノックするなり返事を待たずに霧島はドアを引き開けた。
するとそこに立っていたハーバートが諸手を挙げて見せる。奥側に蒼白となって口を引き結んだイヴがいた。
イヴは二人を目にすると、手にしていた果物ナイフを投げ捨てて霧島に駆け寄り、その胸に飛び込む。霧島は落ち着かせるために身を震わせるイヴの肩を何度か叩いた。薄笑いを浮かべたハーバートに霧島は眉間に不愉快を溜めて低い声を出した。
「ふん、そういうことか。ハーバート、言い訳できるか?」
「僕は何もしていない」
「単に未遂だったというだけではないのか?」
イヴにも不名誉になりかねない出来事である。なるべく声が洩れぬよう京哉はドアを後ろ手に閉めるとハーバートを睨んだ。霧島に宥められたイヴは震える手でブラウスの胸元のボウタイを結び直している。
バディに負けない不機嫌さを滲ませた京哉は、自分より僅かに上背のあるハーバートに詰め寄り、超至近距離で片言英語を放った。
「最っ低の男の犯罪だからな」
「犯罪だなんて大袈裟な。ちゃんと意思表示されれば尊重したさ」
「何だと、イヴのせいにする気か? それこそ最低だぞ!」
「その、キミの英語は酷いね。映画で使い古されたスラングを覚えたのかい?」
「使い古されて汚いのが嫌なら新品の弾丸でもどうだ?」
「だめだ、京哉! 落ち着け!」
目茶苦茶な単語の羅列でも意味は通じるもので、それ以上に京哉の本気度は霧島に通じたらしく抜き撃つ寸前に右腕を掴まれる。まさか京哉が本当に撃つ気だったとは知らないハーバードは暢気に諸手を挙げたまま突っ立っていた。
誤魔化そうにも誤魔化しきれない空気の中、ようやくハーバートは曖昧な薄笑いで裂けたドアから去ろうとし、拙いことにお茶を持ってきたメリッサと鉢合わせする。
足早に出て行ったハーバートを目で追い、ドアの裂け目を不思議そうに眺め、次に室内を見回したメリッサはことを悟ったらしく一人頷いたのち、ロウテーブルに三人分のお茶の支度をした。これで今日中にこの一件は皆に知れ渡ることになった訳だ。
メリッサが下がると白い顔のイヴは悔しそうに唇を噛む。一方で霧島と京哉は半信半疑だった超能力などというものを目の当たりにして溜息をつきながら頭を振った。
「でもハーバートを吹き飛ばさなくて良かったですよね」
「全くだ。だが京哉、お前も沸点が低すぎるぞ」
「力で勝るからと驕って他者を意のままにする、そんな行いを僕は許せません。それでも僕は命まで取る気はありませんでしたよ、己の愚かさを一生忘れずいて貰う程度で済ませるつもりでしたから。まあ、生きていられるかはランスロット先生の腕にも依りますが」
涼しく述べた相棒に霧島は冷や汗を拭いたくなる。
「お前まで勘弁してくれ。何れにせよあの男は命拾いをしたな。イヴ?」
「あんまり吃驚しすぎて……わたしが油断したのかも知れない」
「それはないですよ、あの手合いは何を言っても無駄なんですから。今度やったら本当に蜂の巣にしてやりますからね! てゆうか何で止めたんですか、忍さん!」
「お前が案外ジョークを言わないたちだと知っているからだ」
「なら余計に一発くらい撃たせてくれても――」
自分よりも憤っている京哉に、イヴはやっと僅かな笑みを見せる。
「またやっちゃったわ。ハーバートに悟られたかしら?」
「それどころではなかっただろうし、おそらく大丈夫ではないのか。何にせよ他人に吹聴できる話ではない上、我々という証人までいる。奴が何を言おうが水掛け論だ」
「そうね。でも貴方たちがいてくれて助かったわ」
やや顔色が戻ったイヴはゴドウィンに連絡してドアの修繕を命じたのち、少し淋しげに霧島と京哉を見つめた。
初めて入った部屋を京哉は見回し霧島は姿勢良くソファに座って前を向いている。そうして三者三様に薔薇の香りの紅茶を愉しんでいた時だった。
「うわあーっ!」
と、窓の外から男の絶叫が聞こえ三人は弾かれたように立ち上がってバルコニーに走り外を見る。芝生の地面に落下した大小幾つかの石の中に倒れているのはグリシャムだ。
上を見ると三階のカードルームと覚しき部屋のバルコニーが一部崩れている。
「チッ、あそこの石は緩んでいたんだ。京哉、ランスロットに連絡!」
「はいっ!」
「イヴ、あんたはここにいろ!」
駆け出しながら言ったがイヴは聞かず、霧島のあとを追ってきた。
何処にいたのか現着は霧島たちよりもランスロット医師の方が早かった。霧島の顔を見るなりランスロットは首を横に振る。霧島はイヴがそれ以上近寄らないよう押し留めた。
口を押さえたイヴが立ち竦んでいる間に、霧島は京哉と共にグリシャムの傍に寄ってみる。グリシャムは口の端から血を流し、茶色い目を見開いて絶命していた。
明らかに首の骨が折れている。後頭部には落下した時にできたのであろう陥没した傷があった。頸骨が折れなくても、この傷なら助からなかったに違いない。
だが霧島は石が緩んでいるのを警告しようと一度は思い、しかしフェイの一件で忘れていたのだ。悔やむに悔やみきれず歯軋りをする。そんな霧島の心の揺れを感じ取って京哉はより霧島に近づくと腕同士を触れ合わせた。
体温に宥められて霧島の気持ちがフラットさを取り戻してゆく。今は終わったことを悔やんでいる時ではない。
「忍さん、平気ですか?」
「大丈夫だ、問題ない。すまんな」
イヴが連絡したのだろう。数分もしないうちにゴドウィンの巨体が駆け付け、叫び声を聞いてのことか、メリッサやハーバート、エルバートにアーネスト老、黒猫のヴィンセントまでが集まってきた。皆、怖々と遠巻きに眺めている。
グリシャムに近づいたのは黒猫のヴィンセントだけだ。霧島の足に絡みついたヴィンセントは結局腕を登って肩に乗る。場違いにも肩に黒猫を乗せたまま、霧島はランスロット医師を見た。
「あんたはどう見る、事故か?」
「だろうな」
短く答えたランスロット医師は三階のバルコニーを振り仰いで言った。
「そうそう殺人なんかあって堪るか。だが、いったい何の時計が動き出したんだ?」
医師の呟きはここで百年一日の如き暮らしを続けてきた面々にとって、的確過ぎる言い回しだったに違いない。そんな彼らとハーバートを置いて黒猫のヴィンセントにも降りて頂き、霧島は京哉と共に城内に戻ると階段を駆け上がった。
三階のカードルームのドアを開ける。当然ながらバルコニーの窓は開いていた。
「忍さん、出ない方がいいですよ。床も崩れるかも」
「ああ、そうだな」
手すりと柵を形作った石組みが丁度人がすり抜けられるくらい崩れている。この隙間から落下したらしかった。斜めに凭れて体重を掛けたのだろうと思われた。
「あっ、ここ見て下さい、忍さん」
「何か見つけたか?」
崩れぬことを祈りつつ、そっとバルコニーに出て屈む。
SATの現役スナイパーで抜群に視力の良い京哉が見つけた、黒っぽい石の床に黒く付着した僅か数ミリの染みだった。霧島が指先で擦ると乾き切っていない染みは指に粘り気を感じる。指の腹に微かだが赤いものがついていた。
異様に嗅覚の敏感な京哉に指を差し出してみる。
「んー、鉄錆び臭いです」
「血、だな」
「ここで転んで勢いがついて落っこちた……なんてことに普通なりますかね?」
黙った霧島も器用すぎるシチュエーションを口にした京哉も同じ事を考えていた。
カードルームを出てライフルなどが飾ってあるホビールームに行ってみると手入れも途中のライフルがソファに立て掛けられていた。
食堂で見覚えたグリシャムが持ち出した得物に間違いなかった。手入れの途中で想定外の事態に直面したのだろう。
「あのう、言った方がいいんでしょうか?」
「グリシャムが殴り殺されて突き落とされたという事実をか?」
するとそこに立っていたハーバートが諸手を挙げて見せる。奥側に蒼白となって口を引き結んだイヴがいた。
イヴは二人を目にすると、手にしていた果物ナイフを投げ捨てて霧島に駆け寄り、その胸に飛び込む。霧島は落ち着かせるために身を震わせるイヴの肩を何度か叩いた。薄笑いを浮かべたハーバートに霧島は眉間に不愉快を溜めて低い声を出した。
「ふん、そういうことか。ハーバート、言い訳できるか?」
「僕は何もしていない」
「単に未遂だったというだけではないのか?」
イヴにも不名誉になりかねない出来事である。なるべく声が洩れぬよう京哉はドアを後ろ手に閉めるとハーバートを睨んだ。霧島に宥められたイヴは震える手でブラウスの胸元のボウタイを結び直している。
バディに負けない不機嫌さを滲ませた京哉は、自分より僅かに上背のあるハーバートに詰め寄り、超至近距離で片言英語を放った。
「最っ低の男の犯罪だからな」
「犯罪だなんて大袈裟な。ちゃんと意思表示されれば尊重したさ」
「何だと、イヴのせいにする気か? それこそ最低だぞ!」
「その、キミの英語は酷いね。映画で使い古されたスラングを覚えたのかい?」
「使い古されて汚いのが嫌なら新品の弾丸でもどうだ?」
「だめだ、京哉! 落ち着け!」
目茶苦茶な単語の羅列でも意味は通じるもので、それ以上に京哉の本気度は霧島に通じたらしく抜き撃つ寸前に右腕を掴まれる。まさか京哉が本当に撃つ気だったとは知らないハーバードは暢気に諸手を挙げたまま突っ立っていた。
誤魔化そうにも誤魔化しきれない空気の中、ようやくハーバートは曖昧な薄笑いで裂けたドアから去ろうとし、拙いことにお茶を持ってきたメリッサと鉢合わせする。
足早に出て行ったハーバートを目で追い、ドアの裂け目を不思議そうに眺め、次に室内を見回したメリッサはことを悟ったらしく一人頷いたのち、ロウテーブルに三人分のお茶の支度をした。これで今日中にこの一件は皆に知れ渡ることになった訳だ。
メリッサが下がると白い顔のイヴは悔しそうに唇を噛む。一方で霧島と京哉は半信半疑だった超能力などというものを目の当たりにして溜息をつきながら頭を振った。
「でもハーバートを吹き飛ばさなくて良かったですよね」
「全くだ。だが京哉、お前も沸点が低すぎるぞ」
「力で勝るからと驕って他者を意のままにする、そんな行いを僕は許せません。それでも僕は命まで取る気はありませんでしたよ、己の愚かさを一生忘れずいて貰う程度で済ませるつもりでしたから。まあ、生きていられるかはランスロット先生の腕にも依りますが」
涼しく述べた相棒に霧島は冷や汗を拭いたくなる。
「お前まで勘弁してくれ。何れにせよあの男は命拾いをしたな。イヴ?」
「あんまり吃驚しすぎて……わたしが油断したのかも知れない」
「それはないですよ、あの手合いは何を言っても無駄なんですから。今度やったら本当に蜂の巣にしてやりますからね! てゆうか何で止めたんですか、忍さん!」
「お前が案外ジョークを言わないたちだと知っているからだ」
「なら余計に一発くらい撃たせてくれても――」
自分よりも憤っている京哉に、イヴはやっと僅かな笑みを見せる。
「またやっちゃったわ。ハーバートに悟られたかしら?」
「それどころではなかっただろうし、おそらく大丈夫ではないのか。何にせよ他人に吹聴できる話ではない上、我々という証人までいる。奴が何を言おうが水掛け論だ」
「そうね。でも貴方たちがいてくれて助かったわ」
やや顔色が戻ったイヴはゴドウィンに連絡してドアの修繕を命じたのち、少し淋しげに霧島と京哉を見つめた。
初めて入った部屋を京哉は見回し霧島は姿勢良くソファに座って前を向いている。そうして三者三様に薔薇の香りの紅茶を愉しんでいた時だった。
「うわあーっ!」
と、窓の外から男の絶叫が聞こえ三人は弾かれたように立ち上がってバルコニーに走り外を見る。芝生の地面に落下した大小幾つかの石の中に倒れているのはグリシャムだ。
上を見ると三階のカードルームと覚しき部屋のバルコニーが一部崩れている。
「チッ、あそこの石は緩んでいたんだ。京哉、ランスロットに連絡!」
「はいっ!」
「イヴ、あんたはここにいろ!」
駆け出しながら言ったがイヴは聞かず、霧島のあとを追ってきた。
何処にいたのか現着は霧島たちよりもランスロット医師の方が早かった。霧島の顔を見るなりランスロットは首を横に振る。霧島はイヴがそれ以上近寄らないよう押し留めた。
口を押さえたイヴが立ち竦んでいる間に、霧島は京哉と共にグリシャムの傍に寄ってみる。グリシャムは口の端から血を流し、茶色い目を見開いて絶命していた。
明らかに首の骨が折れている。後頭部には落下した時にできたのであろう陥没した傷があった。頸骨が折れなくても、この傷なら助からなかったに違いない。
だが霧島は石が緩んでいるのを警告しようと一度は思い、しかしフェイの一件で忘れていたのだ。悔やむに悔やみきれず歯軋りをする。そんな霧島の心の揺れを感じ取って京哉はより霧島に近づくと腕同士を触れ合わせた。
体温に宥められて霧島の気持ちがフラットさを取り戻してゆく。今は終わったことを悔やんでいる時ではない。
「忍さん、平気ですか?」
「大丈夫だ、問題ない。すまんな」
イヴが連絡したのだろう。数分もしないうちにゴドウィンの巨体が駆け付け、叫び声を聞いてのことか、メリッサやハーバート、エルバートにアーネスト老、黒猫のヴィンセントまでが集まってきた。皆、怖々と遠巻きに眺めている。
グリシャムに近づいたのは黒猫のヴィンセントだけだ。霧島の足に絡みついたヴィンセントは結局腕を登って肩に乗る。場違いにも肩に黒猫を乗せたまま、霧島はランスロット医師を見た。
「あんたはどう見る、事故か?」
「だろうな」
短く答えたランスロット医師は三階のバルコニーを振り仰いで言った。
「そうそう殺人なんかあって堪るか。だが、いったい何の時計が動き出したんだ?」
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三階のカードルームのドアを開ける。当然ながらバルコニーの窓は開いていた。
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「ああ、そうだな」
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「あっ、ここ見て下さい、忍さん」
「何か見つけたか?」
崩れぬことを祈りつつ、そっとバルコニーに出て屈む。
SATの現役スナイパーで抜群に視力の良い京哉が見つけた、黒っぽい石の床に黒く付着した僅か数ミリの染みだった。霧島が指先で擦ると乾き切っていない染みは指に粘り気を感じる。指の腹に微かだが赤いものがついていた。
異様に嗅覚の敏感な京哉に指を差し出してみる。
「んー、鉄錆び臭いです」
「血、だな」
「ここで転んで勢いがついて落っこちた……なんてことに普通なりますかね?」
黙った霧島も器用すぎるシチュエーションを口にした京哉も同じ事を考えていた。
カードルームを出てライフルなどが飾ってあるホビールームに行ってみると手入れも途中のライフルがソファに立て掛けられていた。
食堂で見覚えたグリシャムが持ち出した得物に間違いなかった。手入れの途中で想定外の事態に直面したのだろう。
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