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第2話・設定説明チックな発砲回
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そもそも太陽系では私服司法警察員に通常時の銃携帯を許可していない。二人の同僚たちも持っている武器と云えばリモータ搭載の麻痺レーザーくらいだ。それすら殆ど使用することはないというのに、イヴェントストライカが日々を生き抜くにはスタンなどでは事足りない。
銃はもはや生活必需品で、捜査戦術コンも必要性を認めている。
シドの愛銃はレールガンだった。
セントラルエリア統括本部長命令で製造・特別貸与されているこれは武器開発課が作った奇跡と呼ばれる2丁のうちの1丁で、もう1丁はそれこそサイキ持ちと殺り合って壊されたので、今はこのたった1丁しか現存しない。
針状通電弾体・フレシェット弾を三桁もの連射が可能な巨大なシロモノで、マックスパワーなら五百メートルもの有効射程を誇る危険物である。右腰のヒップホルスタから下げてなお突き出した長い銃身をホルスタ付属のバンドで大腿部に留めて保持していた。
ハイファもイヴェントストライカのバディを務める以上、銃は欠かせない。
ソフトスーツの懐、ドレスシャツの左脇にショルダーホルスタでいつも吊っているのは火薬カートリッジ式の旧式銃だった。薬室一発ダブルカラムマガジン十七発、合計十八連発の大型セミ・オートマチック・ピストルは名銃テミスM89のコピー品である。
撃ち出す弾は認可された硬化プラではなくフルメタルジャケット九ミリパラベラムで、異種人類の集う最高立法機関である汎銀河条約機構のルール・オブ・エンゲージメント、いわゆる交戦規定に違反していた。パワーコントロール不能の銃本体も違反品である。
元より私物を『ある筋』から手を回し、特権的に登録し使用しているのだ。
咄嗟にシドは親指でセレクタレバーを弾き上げてマックスパワーにセット、降り落ちてくる数百キロあるオートドリンカそのものに二秒と掛からず五発をぶち込む。オートドリンカは腹に大穴を空けて真っ二つとなり、シドとハイファの目前に轟音を立てて落下した。
その間、ハイファも黙って見てはいない。容赦できない相手に対し発砲している。レールガン独特の「ガシュッ!」という発射音に旧式銃の「ガォン!」という撃発音が重なった。
シドの肩越し、ダブルガン状態でハイファが放ったダブルタップはサイキ持ちの両肩を貫通し、男は躰を回転させるようにして倒れた。シドが駆け寄りベルトに着けたリングから捕縛用の樹脂製結束バンドを抜いて男を後ろ手に捕縛する。両肩からは血が流れていたが異能の相手に容赦はできない。
そうしておいてハイファが男のリモータを操作する。
「パトリス=カレール、テラ標準歴二百二歳。ID特性は間違いなくPKだよ」
「ふん。かなりのサイキだが、歳の割にえらく些末な犯罪だな」
外見は三十歳前後の男だが、サイキ持ちは汎銀河条約機構内でもテラ系と双璧を成す長命系星人との血の交わりが過去にあった者だけに出現することが知られていた。
瞬間移動するテレポーターや人の心を読み精神会話するテレパス、触れずにモノに干渉するPK使いに電子の流れを自在に操るEシンパスなど、サイキにも様々な種類や強弱があるが、共通項として長命系の血を先祖返りの如く濃く持つ以上、見かけで歳は量れず、殆どの者が非常に容姿に恵まれているという点が挙げられる。
だが美麗な顔のままでいるサイキ持ちは少ない。約千年前から出現し始めたとされるサイキ持ちは、かつてその能力と恵まれた容貌・長命を妬まれ羨まれて白眼視され、差別を受けていた時代も長かった。
今でこそあからさまに差別する人間は減ったが、それでも研究対象としてしか見ない科学者や、暗殺者に仕立てようとする闇組織、サイキ自体を忌み嫌って抹殺せんとする狂信者たちなどに追われることもあるという。
そのサイキが有用で強いほど生きづらいという訳だ。おまけに法はサイキ持ちに厳しく、サイキによる殺人は汎銀河法で死刑とされていた。
そんな社会で生き抜くために、サイキ持ちは自ら軍その他の組織入りして利用される代わりに庇護して貰う道を選び、また簡易整形などをして平凡に見せかけることが多いのである。
このPK使いも顔立ちは悪くないが美麗に整ってもいない。整形しているのだろう。
「ハイファ、あんまり近寄るな」
「気絶した上にこれだけの出血だし、もうサイキを使える体力はないんじゃないかな」
「飲料泥棒の罪はともかくとして、『お前んところ』で欲しい人材じゃねぇのかよ?」
揶揄するシドの口調にハイファは溜息交じりに言った。
「幾ら人材不足のテラ連邦軍・中央情報局第二部別室だって、オートドリンカと喧嘩する人は要りません」
そう、ハイファは刑事でありながら元々テラ連邦軍人である。その存在を知る僅かな者が単に『別室』と呼ぶそこは『巨大テラ連邦の利のために』を合言葉にテラ連邦議会を陰で支えるためなら非合法な手段も辞さないスパイ組織である。
そんな部署と惑星警察を掛け持ちしてハイファが二重職籍となったのは、七年越しのアタックに「女の子大好きストレートど真ん中」のシドが二年近く前にとうとう陥落してしまったからだ。
それまでのハイファはノンバイナリー寄りのメンタルに美麗なミテクレとバイである身をフルに利用し、スパイ活動に従事していた。だがシドと結ばれた途端に他の誰をも受け付けなくなり、丁度そのころ別室戦術コンが「恒常的警察力の必要性」なるモノを説いたためにクビを免れ惑星警察に出向となったのだった。
ただ、ハイファが軍人で別室員なのは署では課長とシドしか知らない軍機、軍事機密となっている。
「あ、応援が来たみたいだよ」
「ふん、この距離でBELなんか飛ばさずに走って来いってんだ」
「早朝集団マラソンも結構、人目を惹いて課長は嫌がると思うけどね。救急機も来たみたい」
イヴェントストライカと課長の、もはや水面下ですらなくなった日々の攻防を見守るハイファはそう言って、別室入りする前にはスナイパーをしていたほどの視力で青空に飛び交うBEL群の中の一点を見つめた。
銃はもはや生活必需品で、捜査戦術コンも必要性を認めている。
シドの愛銃はレールガンだった。
セントラルエリア統括本部長命令で製造・特別貸与されているこれは武器開発課が作った奇跡と呼ばれる2丁のうちの1丁で、もう1丁はそれこそサイキ持ちと殺り合って壊されたので、今はこのたった1丁しか現存しない。
針状通電弾体・フレシェット弾を三桁もの連射が可能な巨大なシロモノで、マックスパワーなら五百メートルもの有効射程を誇る危険物である。右腰のヒップホルスタから下げてなお突き出した長い銃身をホルスタ付属のバンドで大腿部に留めて保持していた。
ハイファもイヴェントストライカのバディを務める以上、銃は欠かせない。
ソフトスーツの懐、ドレスシャツの左脇にショルダーホルスタでいつも吊っているのは火薬カートリッジ式の旧式銃だった。薬室一発ダブルカラムマガジン十七発、合計十八連発の大型セミ・オートマチック・ピストルは名銃テミスM89のコピー品である。
撃ち出す弾は認可された硬化プラではなくフルメタルジャケット九ミリパラベラムで、異種人類の集う最高立法機関である汎銀河条約機構のルール・オブ・エンゲージメント、いわゆる交戦規定に違反していた。パワーコントロール不能の銃本体も違反品である。
元より私物を『ある筋』から手を回し、特権的に登録し使用しているのだ。
咄嗟にシドは親指でセレクタレバーを弾き上げてマックスパワーにセット、降り落ちてくる数百キロあるオートドリンカそのものに二秒と掛からず五発をぶち込む。オートドリンカは腹に大穴を空けて真っ二つとなり、シドとハイファの目前に轟音を立てて落下した。
その間、ハイファも黙って見てはいない。容赦できない相手に対し発砲している。レールガン独特の「ガシュッ!」という発射音に旧式銃の「ガォン!」という撃発音が重なった。
シドの肩越し、ダブルガン状態でハイファが放ったダブルタップはサイキ持ちの両肩を貫通し、男は躰を回転させるようにして倒れた。シドが駆け寄りベルトに着けたリングから捕縛用の樹脂製結束バンドを抜いて男を後ろ手に捕縛する。両肩からは血が流れていたが異能の相手に容赦はできない。
そうしておいてハイファが男のリモータを操作する。
「パトリス=カレール、テラ標準歴二百二歳。ID特性は間違いなくPKだよ」
「ふん。かなりのサイキだが、歳の割にえらく些末な犯罪だな」
外見は三十歳前後の男だが、サイキ持ちは汎銀河条約機構内でもテラ系と双璧を成す長命系星人との血の交わりが過去にあった者だけに出現することが知られていた。
瞬間移動するテレポーターや人の心を読み精神会話するテレパス、触れずにモノに干渉するPK使いに電子の流れを自在に操るEシンパスなど、サイキにも様々な種類や強弱があるが、共通項として長命系の血を先祖返りの如く濃く持つ以上、見かけで歳は量れず、殆どの者が非常に容姿に恵まれているという点が挙げられる。
だが美麗な顔のままでいるサイキ持ちは少ない。約千年前から出現し始めたとされるサイキ持ちは、かつてその能力と恵まれた容貌・長命を妬まれ羨まれて白眼視され、差別を受けていた時代も長かった。
今でこそあからさまに差別する人間は減ったが、それでも研究対象としてしか見ない科学者や、暗殺者に仕立てようとする闇組織、サイキ自体を忌み嫌って抹殺せんとする狂信者たちなどに追われることもあるという。
そのサイキが有用で強いほど生きづらいという訳だ。おまけに法はサイキ持ちに厳しく、サイキによる殺人は汎銀河法で死刑とされていた。
そんな社会で生き抜くために、サイキ持ちは自ら軍その他の組織入りして利用される代わりに庇護して貰う道を選び、また簡易整形などをして平凡に見せかけることが多いのである。
このPK使いも顔立ちは悪くないが美麗に整ってもいない。整形しているのだろう。
「ハイファ、あんまり近寄るな」
「気絶した上にこれだけの出血だし、もうサイキを使える体力はないんじゃないかな」
「飲料泥棒の罪はともかくとして、『お前んところ』で欲しい人材じゃねぇのかよ?」
揶揄するシドの口調にハイファは溜息交じりに言った。
「幾ら人材不足のテラ連邦軍・中央情報局第二部別室だって、オートドリンカと喧嘩する人は要りません」
そう、ハイファは刑事でありながら元々テラ連邦軍人である。その存在を知る僅かな者が単に『別室』と呼ぶそこは『巨大テラ連邦の利のために』を合言葉にテラ連邦議会を陰で支えるためなら非合法な手段も辞さないスパイ組織である。
そんな部署と惑星警察を掛け持ちしてハイファが二重職籍となったのは、七年越しのアタックに「女の子大好きストレートど真ん中」のシドが二年近く前にとうとう陥落してしまったからだ。
それまでのハイファはノンバイナリー寄りのメンタルに美麗なミテクレとバイである身をフルに利用し、スパイ活動に従事していた。だがシドと結ばれた途端に他の誰をも受け付けなくなり、丁度そのころ別室戦術コンが「恒常的警察力の必要性」なるモノを説いたためにクビを免れ惑星警察に出向となったのだった。
ただ、ハイファが軍人で別室員なのは署では課長とシドしか知らない軍機、軍事機密となっている。
「あ、応援が来たみたいだよ」
「ふん、この距離でBELなんか飛ばさずに走って来いってんだ」
「早朝集団マラソンも結構、人目を惹いて課長は嫌がると思うけどね。救急機も来たみたい」
イヴェントストライカと課長の、もはや水面下ですらなくなった日々の攻防を見守るハイファはそう言って、別室入りする前にはスナイパーをしていたほどの視力で青空に飛び交うBEL群の中の一点を見つめた。
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