15 / 63
第15話
しおりを挟む
皆が着席するとパイロットはターボシャフトエンジンを始動させた。大型輸送ヘリ二機は夜空に次々とテイクオフ。騒音に負けじと京哉は大声を出して霧島に訊く。
「それで、このヘリはリンド島の何処に着くんですかね?」
京哉の問いを霧島が通訳するとパイロットたちだけでなく向かいに座った兵士たちも笑った。笑いながらまだ十代だろう幼顔をしたロッドという兵士が答えてくれる。
「ブレナン基地、つまり南軍の本拠地ですよ」
「ブレナン家、選挙で勝ったスチュアート=ブレナンか」
「ええ、そうです。南軍の本拠地はブレナン家から取ってブレナン基地、北軍の本拠地はアーキン家から取ってアーキン基地と呼ばれています。我々四名は整備兵でブレナン基地で不足している整備兵を補うために仮配属されるんですよ」
「そんなことも知らないで、あんたらは大丈夫なのかい?」
聞けば大尉というコ・パイロットが揶揄して、突然の飛び入り参加者が何者か知らない整備兵らがまた笑った。笑われながら霧島がパイロットは少佐との情報も得る。
「でもまあ仕方ねぇか。俺たちも昨日から急に運び屋稼業を命じられたんだからな」
話し好きらしいコ・パイロット、ジャックなる男がそう言って振り向いた。
「民間航空便が欠航したのとやはり関係あるのか?」
京哉に通訳してやりながら霧島が繰り出した質問にジャックが頷く。
「国連は南軍に肩入れするんだろう? だからアーキン基地及び北軍領地への民間人だの物資だのの流入を一旦止めて、国連平和維持軍サマに『はい、叩いて下さい』って訳だ。それまでは俺たちラチェン第一から第三までの基地が交代で南に物資を運ぶんだとさ」
「なるほど。だがすぐにはPKFもやっては来ないぞ?」
「その前に北軍を干上がらせようって策じゃないのかい?」
「でもそれなら何でここの政府はその戦法で最初から叩かなかったんですか?」
真顔になったジャックは京哉に首を傾げてみせた。
「あんたらはカワイ・フィルムの『戦争を食い物にする男たち』を見てないのか?」
「一応知ってはいますが、それが何か?」
「戦争に群がる虫があれだけいたんだ。実際物資の完全封鎖なんかできるもんかい」
「はあ、確かにそうかも知れませんね」
だが『群がる虫』のいる海外から派遣されてきた二人であっても、乗員たちは疎外することなく、よく喋りよく笑った。
流行りのギャグドラマの話などで盛り上がったりして、約一時間を愉しく過ごした二人は時差ぼけ対策にまた眠ることを宣言し目を瞑った。
◇◇◇◇
酷い騒音にも負けずしっかり眠った二人は到着十五分前に声を掛けられ目を覚ました。
まだポリカーボネートの窓外は薄暗い空で星が瞬いている。
目を擦りながら現在時を腕時計で確かめた。四時四十五分、予定通りの順調なフライトだったらしい。
「よく寝たな。このまま起きていれば時差ぼけも解消か」
「でもそうなるとかなり昼間が長いですよね。覚悟しなきゃ」
「それより腹が減ったんだが、ブレナン基地で何か食わせて貰えるんだろうな?」
言い終わらぬうちに霧島の腹が豪快に鳴る。赤くなった京哉が言い訳に走った。
「ちゃんと食べさせてますから!」
目茶苦茶な英単語の羅列でも意味は通じたらしく皆が大笑いする。
「国連からのお客人を飢えさせたりしねぇさ。食料は積んできた。厨房の食料庫が空になるまで食ってくれていい。それとここの食事は基本的に七時、十二時、十九時でプラス夜食。だが今の時間でも俺たち相手に食堂は開いてる筈だ、安心してくれ」
その他に十時と十五時にお茶の時間を取ることが多いだの、ブレナン基地では第二食堂の方が厨房長の腕が良いだのといった情報も仕入れると、もうランディングだ。
大型輸送ヘリは二機連なって無事着陸し、皆と一緒に二人も降機した。
降りてみるとそこはコンクリートで整地されたヘリ専用の駐機場のようだった。ここも強力なライトで照らされた中、迷彩塗装された小型偵察機から中型汎用ヘリに大型の輸送ヘリ、更に二十ミリバルカン砲とミサイルポッドを抱いた攻撃ヘリまでがノーズを揃えて綺麗に並んでいる。
目の前には巨大なカマボコ型の格納庫が三棟も建っていた。
「かなりの大規模基地らしいな」
「そうですね。それに緯度はラチェンと変わらないけど、こっちはもっと暑いかも」
「この時間でこの暑さだ、昼間が思いやられるな」
喋りながら辺りを見回していると陽気な声が掛かる。
「ヘイ、こっちだ。メシを食いに行くぞ!」
大声を出したのはジャックで整備兵たちも一緒にいた。寡黙なパイロットは他に用でもあるのか、オープン型車両に乗って何処かに運ばれて行くところだった。
二人はブロックの間から草が生えだした小径を歩きながら周囲を観察した。
ここが最初から戦場になることを想定していたのかどうかは定かではないが、ラチェン第一基地のようなドでかいビルといった無茶な建物は見当たらない。
見える限りでは背の低い、せいぜい三階建てくらいの建物が並んでいるばかりだ。それも殆どがカネの掛からないプレハブ建築を少し頑丈にしたようなものが多かった。
それらの間を輸入物かライセンス生産か知らないが、ドイツのヘッケラー&コッホ社製サブマシンガンMP5の旧いモデルをスリングで提げた兵士が行きつ戻りつしている。一定時間で交代する歩哨というヤツだろう。
MP5の使用弾は二人も所持するシグ・ザウエルP226と同じ九ミリパラだが、銃は通常なら銃身が長くなると燃焼ガス圧が高くなり初速が速くなって射程距離も伸びるため、MP5の有効射程は約二百メートルだ。
そのような殺傷兵器がこの基地内でいったい何を警戒対象にしているのか京哉には分からない。ジャックたちと同行しているので迷彩服の彼らに誰何されなかったが、私服で異国人の目立つ自分たちは不審そうな目で追われてやや歩調が早くなる。
砲塔を付けた戦車や高射砲、他にもあったヘリのエプロンなどを見物しつつ、普通だったら車両移動する距離を十五分近くもかけて歩き、第二食堂に辿り着いた。
食堂は士官と下士官以下に分かれていたが、整備兵らに合わせてジャックは下士官以下の方へとためらいなく入った。ここは京哉と霧島も倣って下士官以下の方だ。
中はトレイを持って並ぶとカウンター内からプレート類が差し出されて受け取る方式だった。警察内の食堂にもありがちなパターンである。京哉たちも何ら戸惑うことなく料理の載ったトレイを手にテーブルに着いた。
私服の外国人二人は相変わらず人目を惹いているようだったが、食欲を満たす目的を前にしては何事も意に介さず食事にありつく。
「あ、このお魚のムニエルは美味しいかも」
「こっちのワンタン風スープもレシピを知りたいところだな」
あれこれとメニューを評しながら染みついたサツカンの早食いで瞬く間に食し終えた。トレイを片付けると京哉は喫煙所を探して食堂を出る。
勿論初めての海外で霧島は京哉を独りにしない。寄り添って一緒に出るとすぐに兵士ら数名が囲んでいる大きな空き缶を見つけた。
そこで霧島も京哉から一本貰う。元々大学時代まで吸っていたのだ。ここでは異国人で私服のよそ者に警戒する地元兵士らに同じ喫煙者として連帯感を植え付ける策だった。
一本目を吸っている間にジャックもやってきて仲間に加わる。
ジャックと京哉のお粗末な片言英語の会話を暫し聞いてから、霧島は京哉に双方向通訳しつつ情報収集を始めた。
「それで、このヘリはリンド島の何処に着くんですかね?」
京哉の問いを霧島が通訳するとパイロットたちだけでなく向かいに座った兵士たちも笑った。笑いながらまだ十代だろう幼顔をしたロッドという兵士が答えてくれる。
「ブレナン基地、つまり南軍の本拠地ですよ」
「ブレナン家、選挙で勝ったスチュアート=ブレナンか」
「ええ、そうです。南軍の本拠地はブレナン家から取ってブレナン基地、北軍の本拠地はアーキン家から取ってアーキン基地と呼ばれています。我々四名は整備兵でブレナン基地で不足している整備兵を補うために仮配属されるんですよ」
「そんなことも知らないで、あんたらは大丈夫なのかい?」
聞けば大尉というコ・パイロットが揶揄して、突然の飛び入り参加者が何者か知らない整備兵らがまた笑った。笑われながら霧島がパイロットは少佐との情報も得る。
「でもまあ仕方ねぇか。俺たちも昨日から急に運び屋稼業を命じられたんだからな」
話し好きらしいコ・パイロット、ジャックなる男がそう言って振り向いた。
「民間航空便が欠航したのとやはり関係あるのか?」
京哉に通訳してやりながら霧島が繰り出した質問にジャックが頷く。
「国連は南軍に肩入れするんだろう? だからアーキン基地及び北軍領地への民間人だの物資だのの流入を一旦止めて、国連平和維持軍サマに『はい、叩いて下さい』って訳だ。それまでは俺たちラチェン第一から第三までの基地が交代で南に物資を運ぶんだとさ」
「なるほど。だがすぐにはPKFもやっては来ないぞ?」
「その前に北軍を干上がらせようって策じゃないのかい?」
「でもそれなら何でここの政府はその戦法で最初から叩かなかったんですか?」
真顔になったジャックは京哉に首を傾げてみせた。
「あんたらはカワイ・フィルムの『戦争を食い物にする男たち』を見てないのか?」
「一応知ってはいますが、それが何か?」
「戦争に群がる虫があれだけいたんだ。実際物資の完全封鎖なんかできるもんかい」
「はあ、確かにそうかも知れませんね」
だが『群がる虫』のいる海外から派遣されてきた二人であっても、乗員たちは疎外することなく、よく喋りよく笑った。
流行りのギャグドラマの話などで盛り上がったりして、約一時間を愉しく過ごした二人は時差ぼけ対策にまた眠ることを宣言し目を瞑った。
◇◇◇◇
酷い騒音にも負けずしっかり眠った二人は到着十五分前に声を掛けられ目を覚ました。
まだポリカーボネートの窓外は薄暗い空で星が瞬いている。
目を擦りながら現在時を腕時計で確かめた。四時四十五分、予定通りの順調なフライトだったらしい。
「よく寝たな。このまま起きていれば時差ぼけも解消か」
「でもそうなるとかなり昼間が長いですよね。覚悟しなきゃ」
「それより腹が減ったんだが、ブレナン基地で何か食わせて貰えるんだろうな?」
言い終わらぬうちに霧島の腹が豪快に鳴る。赤くなった京哉が言い訳に走った。
「ちゃんと食べさせてますから!」
目茶苦茶な英単語の羅列でも意味は通じたらしく皆が大笑いする。
「国連からのお客人を飢えさせたりしねぇさ。食料は積んできた。厨房の食料庫が空になるまで食ってくれていい。それとここの食事は基本的に七時、十二時、十九時でプラス夜食。だが今の時間でも俺たち相手に食堂は開いてる筈だ、安心してくれ」
その他に十時と十五時にお茶の時間を取ることが多いだの、ブレナン基地では第二食堂の方が厨房長の腕が良いだのといった情報も仕入れると、もうランディングだ。
大型輸送ヘリは二機連なって無事着陸し、皆と一緒に二人も降機した。
降りてみるとそこはコンクリートで整地されたヘリ専用の駐機場のようだった。ここも強力なライトで照らされた中、迷彩塗装された小型偵察機から中型汎用ヘリに大型の輸送ヘリ、更に二十ミリバルカン砲とミサイルポッドを抱いた攻撃ヘリまでがノーズを揃えて綺麗に並んでいる。
目の前には巨大なカマボコ型の格納庫が三棟も建っていた。
「かなりの大規模基地らしいな」
「そうですね。それに緯度はラチェンと変わらないけど、こっちはもっと暑いかも」
「この時間でこの暑さだ、昼間が思いやられるな」
喋りながら辺りを見回していると陽気な声が掛かる。
「ヘイ、こっちだ。メシを食いに行くぞ!」
大声を出したのはジャックで整備兵たちも一緒にいた。寡黙なパイロットは他に用でもあるのか、オープン型車両に乗って何処かに運ばれて行くところだった。
二人はブロックの間から草が生えだした小径を歩きながら周囲を観察した。
ここが最初から戦場になることを想定していたのかどうかは定かではないが、ラチェン第一基地のようなドでかいビルといった無茶な建物は見当たらない。
見える限りでは背の低い、せいぜい三階建てくらいの建物が並んでいるばかりだ。それも殆どがカネの掛からないプレハブ建築を少し頑丈にしたようなものが多かった。
それらの間を輸入物かライセンス生産か知らないが、ドイツのヘッケラー&コッホ社製サブマシンガンMP5の旧いモデルをスリングで提げた兵士が行きつ戻りつしている。一定時間で交代する歩哨というヤツだろう。
MP5の使用弾は二人も所持するシグ・ザウエルP226と同じ九ミリパラだが、銃は通常なら銃身が長くなると燃焼ガス圧が高くなり初速が速くなって射程距離も伸びるため、MP5の有効射程は約二百メートルだ。
そのような殺傷兵器がこの基地内でいったい何を警戒対象にしているのか京哉には分からない。ジャックたちと同行しているので迷彩服の彼らに誰何されなかったが、私服で異国人の目立つ自分たちは不審そうな目で追われてやや歩調が早くなる。
砲塔を付けた戦車や高射砲、他にもあったヘリのエプロンなどを見物しつつ、普通だったら車両移動する距離を十五分近くもかけて歩き、第二食堂に辿り着いた。
食堂は士官と下士官以下に分かれていたが、整備兵らに合わせてジャックは下士官以下の方へとためらいなく入った。ここは京哉と霧島も倣って下士官以下の方だ。
中はトレイを持って並ぶとカウンター内からプレート類が差し出されて受け取る方式だった。警察内の食堂にもありがちなパターンである。京哉たちも何ら戸惑うことなく料理の載ったトレイを手にテーブルに着いた。
私服の外国人二人は相変わらず人目を惹いているようだったが、食欲を満たす目的を前にしては何事も意に介さず食事にありつく。
「あ、このお魚のムニエルは美味しいかも」
「こっちのワンタン風スープもレシピを知りたいところだな」
あれこれとメニューを評しながら染みついたサツカンの早食いで瞬く間に食し終えた。トレイを片付けると京哉は喫煙所を探して食堂を出る。
勿論初めての海外で霧島は京哉を独りにしない。寄り添って一緒に出るとすぐに兵士ら数名が囲んでいる大きな空き缶を見つけた。
そこで霧島も京哉から一本貰う。元々大学時代まで吸っていたのだ。ここでは異国人で私服のよそ者に警戒する地元兵士らに同じ喫煙者として連帯感を植え付ける策だった。
一本目を吸っている間にジャックもやってきて仲間に加わる。
ジャックと京哉のお粗末な片言英語の会話を暫し聞いてから、霧島は京哉に双方向通訳しつつ情報収集を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる