Shot~Barter.9~

志賀雅基

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第63話(最終話・前半BL特有シーンを含む)

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 それから三日間は何処にも外出せず二人は自宅籠城し続けた。
 まだ霧島は座っていられないのと時折暴発しそうになる苛立ちが完治せず、一方の京哉はそんな霧島の全てを受け入れて、立ち歩くことさえままならなかったからだ。

 だが今日こそは非常に良く眠れた気がして霧島はパチリと目を開いた。ベッドサイドのライティングチェスト上に置いた目覚まし時計を見ると九時半だった。さすがにこれ以上は眠れないことを悟って、本格的にガタガタの躰でそろそろと起き出す。

 だが気付かれない筈もなく、京哉が黒い瞳を鈍く覗かせた。

 その、あまりに無防備な表情がまたも霧島を行為に及ばせる。ベッドのヘッドボードからブレナムブーケを取って胸に一吹きすると、もどかしく京哉のパジャマのボタンを外して白い肌を露わにした。下衣を下着ごと引き剥がすように足を抜かせる。

 男の持ち物とは思えないほど華奢な鎖骨を舐め、甘噛みした。
 窓からの光が照らし出した白い躰は陰影を濃くして息を呑むほどに美しい。

「んっ、ん……忍さん、何ですか、いったい?」
「京哉、お前が欲しい。お前もこんなになっているぞ」
「それは起き抜けだからです。あのう、朝ご飯のあとじゃ、だめですか?」

 身を捩らせたが霧島は攻撃の手を緩めない。白い肌に舌を這わせ、至る処につけたばかりの赤い印を濃く刻み直した。そして左手指を口に含んで唾液で濡らす。

「飯はまだ我慢できるが、お前を我慢するのは無理だ」

 言いつつ既に細い脚に割って入っていた。左手の指が京哉の敏感な処を捉える。

「忍さん、だめ……いや、あ……そこは、はぅん」
「いいだろう、京哉……ここを、頼むから私にくれ――」

 低く甘い声が自分を呼ぶのを聞き、京哉は己の覚悟を思い出して躰の力を抜いた。

 嬲られ僅かに身を固くした京哉だったが、もう細い腰は悶えて揺らめいていた。何度もなぞられた処は、勝手に霧島の指を咥え込もうとしてしまう。

「傷つけたくないから、あまり動くな」
「ああん、だって、忍さん……あっふ……はうっ!」

 体内に侵入されするすると奥まで届かされて高い声が洩れる。次には芯まで届いた指先に優しく掻かれて息を呑んだ。今朝方まで激しく嬲り尽くされたそこはまだ柔らかく開かれて霧島の長い指を易々と呑み込んでゆく。数指で攻められ奔放に乱れた。

 更にはここ数日間の激しい行為の連続で充血しきった粘膜は敏感すぎ、これだけで達してしまいそうな感覚が付き上がってくる。身がうねり悶えるのを抑えきれない。

「んんぅ……あっ、はぁん……そこ、いい――」

 霧島の熱い吐息が内腿にかかり、つぶさに見られている羞恥がより快感を煽った。

 指を抜いた霧島がパジャマと下着を脱ぎ全てを晒す。差し込む陽の中で堂々たる躰は少し痩せてしまっていたが、それが却って不思議な色気を立ち上らせていた。

「入っていいか、京哉?」

 もう言葉もなく京哉は頷く。自ら愛し人を迎え入れる体勢を取った。熱い霧島があてがわれ、ほぐされたそこに蜜を塗り込められる。先端が京哉に食い込んだ。
 どれだけ馴らされても、いつも霧島を受け入れる時は苦しい。この熱い楔が今から体内を荒れ狂うのだ。繰り返されてきた容赦のない攻めに身構える。

 だがゆっくりと腰を進めて京哉を貫いた霧島は、意外に穏やかな律動で華奢な躰を優しく揺らし始めた。そして投げ出されていた京哉の手に自分の手を重ね、指を絡める。

 京哉が見上げると霧島は灰色の目に慈しむような色を浮かべていた。

◇◇◇◇ 

 ブランチというには遅い十一時半、京哉はやっと起き出すことが可能となり足腰を庇いつつ黒いエプロンを身に着けた。
 冷蔵庫の腹の中身を確かめ霧島になるべく栄養を摂らせようとチャーハンと具だくさんの味噌汁を十五分でこしらえる。

「忍さん、食べられそうですか?」
「ああ、食う。腹が減って堪らん」
「でしょうね。じゃあ食ベましょう」
「おっ、旨そうだな。頂きます」
「頂きまーす」

 椅子に向かい合って手を合わせてから食事を始めた。そうしてから京哉は気付く。帰ってきてからずっと霧島は立ったまま食べ散らかし、また室内徘徊をするのが常だったのだが、今日は落ち着いて京哉とペースを合わせつつ食べているのだ。

 じっと見つめると霧島は食事の手を止めず何気ない風に言った。

「つらい思いをさせておいて何だが、治った躰で真っ先にお前を抱きたかったんだ」
「治ったって……もしかして、本当に?」

 押し殺したような声で訊きながらも我が身で知った京哉は疑っていなかった。

「このあと違う症状が出るかも知れん。だが離脱症状のピークは完全に越えた」
「そうですか。やっと……忍さん、頑張りましたね」
「いや、私の頑張りではない、お前のお蔭だ。お前が私に逃げ場所をくれたからだ」
「僕は逃げ場所になったつもりはないですよ。貴方と一緒に戦いたかっただけです」

 輝くばかりに美しい微笑みに霧島はゆっくりと首を横に振る。

「それでもこの六日間お前が一緒に戦ってくれた、私の行状に耐え抜いてくれたお蔭で事件も起こさず元通り警察官でいられる。本当に元に戻れたんだ。それに今更だが私が精神的に折られず誇りを持っていられたのもお前のお蔭だ。有難うな」

 京哉もそっと首を横に振り、静かに二人で食事を愉しんだ。

 食後は霧島がインスタントコーヒーを淹れて京哉が後片付けをする。まったりとリビングでコーヒー&煙草タイムだ。TVを鑑賞しつつこれも静かに座って味わう。

「じゃあ心配しているでしょうから、一ノ瀬本部長にメールで知らせますか?」
「メールより本部に出たい。行きがけにデジカメを買って詰め所にも顔を出そう」
「確か今日の上番は竹内班長の一班ですし、そうですね、そうしましょう」

 コーヒーを飲み干すと交代でシャワーを浴び、スーツに着替えて銃も吊った。

 準備を終えるとソフトキスを交わして部屋を出る。月極駐車場までゆっくりと歩いた。白いセダンの運転席側に立った京哉を留めてキィを霧島が取り上げる。

「私に運転させてくれ」
「だって忍さん、まだ手首は治ってないでしょう」
「小骨のヒビなど、もう治った。私よりもお前の足腰の方が痛んでいる筈だぞ」

 見抜かれ赤くなった京哉は素直に助手席側に収まる。己の手首を魚の骨の如く評した男はスムーズに愛車を出した。不安要素の見当たらない運転で京哉は安心する。

 やがて街道からバイパスに乗り、道の両側に建つ郊外一軒型の家電量販店の中でも一番大きな店舗の駐車場に霧島は白いセダンを滑り込ませた。

 入店して色々と物色したみた二人はデジタルカメラの上位機種を奮発した。店員に頼んで商品を出して貰うとレジに並ぶ。そこで目にしたものに驚いて京哉が叫んだ。

「忍さん、あれ見て下さい!」
「急に何だ、いったい?」

 指差された方に霧島が目を向けると、そこには大型TVが並べられたコーナーがあり、その大画面に映ったニュースでは今年の国際最優秀ドキュメンタリー賞候補に河合フィルムの『戦争を食い物にする男たち』がノミネートされたことを報じていた。

 それだけではない。画面には河合フィルム社長の河合泰造と一緒にレジナG2を提げた間宮孝司が映り、背後にはコージの撮ったベストショットとしてバレットXM500を構えた京哉と傍に寄り添う霧島の横顔がしっかり映し出されていたのである。

「うわあ、今度は全世界ネットで……どうしよう?」
「他人のそら似で構わん。半分はシルエットだ、分かりはしない」
「たびたび週刊誌を賑わせている忍さんが、それは甘いと思いますけど……」

 そして県警本部に重役出勤して一ノ瀬本部長に挨拶し、竹内警部補にデジカメを渡すため機捜の詰め所に顔を出すと、遅い昼飯休憩で戻ってきていた一班の隊員と機捜本部の指令台に就いていた竹内がTVと二人を見比べて何度も首を捻ったのだった。
     

                              了

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