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第5話
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どう考えても俺から言い出さなきゃならない。
彼女はシャイだ。
だけどここでは拙い、こんな臭い拘置所で言い出すことじゃない。それに俺はこう見えて結構ロマンチストだ。オーディエンスが囃し立てるのが分かっていてこんな所では言い出せない。
早くここから出て、夕日の見える砂漠に誘って、片膝をついて花を一輪差し出す。あの美しい青い瞳を見つめて俺は言うんだ。
『ユーリン、きみは俺の女神だ。どうかきみの一生を俺にくれないか?』
プロポーズは成功するに決まっている。彼女はいつも俺だけにあの最高の笑顔をくれ、ロキ酒を皆の倍も置いて行ってくれるのだから。
間違いなく彼女は言うだろう。
『ええ、わたし、貴方のその言葉をずっと待っていたのよ』
(ええと、それからだな――)
「キャラハン。キャラハン!」
振り向くと、染みだらけの臭い寝台に腰掛けたアメディオが見つめていた。
「何だよ、アメディオ。邪魔するな」
「気持ち悪いぞ、兄弟。独りでニタニタ笑ったり、へらへら呟いたり」
「へらへらとは何だよ。今、俺は深遠なる悩みを解決すべくだな」
「頼むから同室で拘禁症状の挙げ句に、オツムをそれ以上おかしくしてくれるなよ」
「オツムをって……酷い野郎だな。俺の人生が掛かってるんだぜ」
「皆、同じ。明日死刑か解放か、だあれも分からない運命よ」
気が付くと俺に差し入れられたロキ酒をアメディオが飲んでいる。ただのロキ酒じゃない、彼女が俺に差し入れてくれた貴重なロキ酒だ。慌てて立ち上がると、ペットボトルをひったくった。見れば腹の立つことに既に半分くらいまで減っている。
「このギター野郎、俺のロキ酒を!」
「……キャラハン。何度言えば分かるんだ、これは俺たちのだ。お前のじゃない」
「そう思ってるのはお前だけ、こいつは俺のものだ」
「二人しかいない檻の中で喧嘩は止したいが、その言葉、そっくりお前に返すよ」
ぐだぐだと続くアメディオの与太を聞きながら飲まれる前に飲む。アメディオはこっちを向いて嘆息し、首を横に振った。やれやれとでも言いたげである。
自分だけが大人になったような顔をして何て野郎だと思った。更に大人になって、俺は文句を言うのを止めると半分分けてやった残りを黙って飲み干した。
もう一本は抱いて寝ることに決める。
彼女はシャイだ。
だけどここでは拙い、こんな臭い拘置所で言い出すことじゃない。それに俺はこう見えて結構ロマンチストだ。オーディエンスが囃し立てるのが分かっていてこんな所では言い出せない。
早くここから出て、夕日の見える砂漠に誘って、片膝をついて花を一輪差し出す。あの美しい青い瞳を見つめて俺は言うんだ。
『ユーリン、きみは俺の女神だ。どうかきみの一生を俺にくれないか?』
プロポーズは成功するに決まっている。彼女はいつも俺だけにあの最高の笑顔をくれ、ロキ酒を皆の倍も置いて行ってくれるのだから。
間違いなく彼女は言うだろう。
『ええ、わたし、貴方のその言葉をずっと待っていたのよ』
(ええと、それからだな――)
「キャラハン。キャラハン!」
振り向くと、染みだらけの臭い寝台に腰掛けたアメディオが見つめていた。
「何だよ、アメディオ。邪魔するな」
「気持ち悪いぞ、兄弟。独りでニタニタ笑ったり、へらへら呟いたり」
「へらへらとは何だよ。今、俺は深遠なる悩みを解決すべくだな」
「頼むから同室で拘禁症状の挙げ句に、オツムをそれ以上おかしくしてくれるなよ」
「オツムをって……酷い野郎だな。俺の人生が掛かってるんだぜ」
「皆、同じ。明日死刑か解放か、だあれも分からない運命よ」
気が付くと俺に差し入れられたロキ酒をアメディオが飲んでいる。ただのロキ酒じゃない、彼女が俺に差し入れてくれた貴重なロキ酒だ。慌てて立ち上がると、ペットボトルをひったくった。見れば腹の立つことに既に半分くらいまで減っている。
「このギター野郎、俺のロキ酒を!」
「……キャラハン。何度言えば分かるんだ、これは俺たちのだ。お前のじゃない」
「そう思ってるのはお前だけ、こいつは俺のものだ」
「二人しかいない檻の中で喧嘩は止したいが、その言葉、そっくりお前に返すよ」
ぐだぐだと続くアメディオの与太を聞きながら飲まれる前に飲む。アメディオはこっちを向いて嘆息し、首を横に振った。やれやれとでも言いたげである。
自分だけが大人になったような顔をして何て野郎だと思った。更に大人になって、俺は文句を言うのを止めると半分分けてやった残りを黙って飲み干した。
もう一本は抱いて寝ることに決める。
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