高貴なる義務の果て~楽園19~

志賀雅基

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第14話

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 そのときTVでアナウンサーが少々慌てた風に新たな事実を告げ始めた。

《ええー、たった今入ったニュースです。この事件で爆破されたコイルにはドライバーとテラ連邦議会議員のグレアム=モーリス氏が乗っていたという情報が――》

 三人は顔を見合わせた。

「へえ、グレアム=モーリス議員が乗ってたんだ……」
「何だ、ハイファス。お前さんは知ってるのかい?」
「ん、まあ、FC関係でちょっとね」

 やっぱりという二人の表情にハイファは珍しく不機嫌そうな声を出す。

「グレアム=モーリスはね、次の選挙でFCが推そうとしてた議員なんだよ」
「月に一度、書類決裁するだけのパートタイマー専務が、よく知ってるな」
「まあね。顔は合わせたこともないけど、モーリス議員はこの官舎に住んでたし」
「何だってテラ連邦議会議員サマがこんなトコに住んでんだよ?」

 勿論公務員である以上、議員もこの官舎に住める。住めるが郊外にでも屋敷を構えているのが普通だ。テラ連邦議会の議席はたった七百、彼らは名士中の名士である。

「元々婿養子だったんだけど奥さんが半年前に事故死して、それから後援していた奥さんの実家である製薬会社との関係が上手く行かなくてモメてたんだよ」
「ふうん、それで侘びしい官舎住まいか」

「そう。これでは来期の選挙が危うい。でも惜しい人材だっていうんでFCが目を付けてた」
「しかし木っ端微塵にされるたあ気の毒だが、恨み買うような人物だったのかい?」
「さあ、そこまでは僕も……」

 首を捻るハイファを前にシドはじっとTVを眺めていた。

「にしてもチクショウ、爆殺事件だ。明日イチで帳場が立つかも知れねぇな」
「貴方『三日くらい寝てろ』って言われたじゃない」
「バカ、本気で寝てられるか」
「グレン警部がまた血圧上げるよ」
「知ったことか……くそう」

 目前で起こった殺人事件、シドの切れ長の目が怒りと光を湛えて煌めく。ハイファは自分好みの刑事の表情にぞくりとしつつ、端正な顔に見入った。
 暫し眺めて機嫌を直すとハイファはリモータ操作に励み出す。

「モーリス議員について他に何か出たか?」
「んー、奥さんの実家のユーライ製薬との絡みで現在『リマライ星系におけるワクチン無料接種法案』を提唱してて、でも議員本人がそれを引っ込める方向で動いてた」

「嫁さんの実家とモメて益がなくなったから、法案を引っ込める気だったってことか」
「端的に言えばそういうことなんじゃないかな」

 自動でアップデートされる別室基礎資料を一瞥し、ハイファはシドを見返した。

「もしかしてユーライ製薬とモメたから、グレアム=モーリス議員は消されたと思ってる?」
「可能性はあるだろ、世話になったのに後足で砂をかけるも同然なんだからさ」
「そっか……でも、それって逆じゃない?」
「逆って何だよ?」

 そこでチェーンスモークしながら聞いていたマルチェロ医師が口を挟む。

「ユーライ製薬が法案を推し進めたかったら、モーリス議員を宥めすかしてでも法案を通す方を選ぶ。消すのはマイナスってことだろうが」
「なるほど、確かにそうだな」

「何れにせよ、揉め事の渦中にあったんだろうがな」
「だよな。けど爆破は殺人目的として、あの銃撃の意味は何なんだ?」

 それこそ三人で首を捻ったが何も出てはこなかった。だがそこでずっと黙って配給煙草を味わっていたジャイルズが挙手し、発言権を得た。

「銃撃はロニアマフィアが依頼されてのことですよね?」
「おそらくな。だが何に対する脅しかが分からん」
「タイミングの良すぎる本気と脅し……例えばですね、モノを盗むときに引き出しは下から順に開けるんですよ。閉める手間を省いて全てをチェックできますから」

「それくらいは知ってるさ。それがどうした?」
「もしかして脅しの方の銃撃は一番上の引き出しだったんじゃないかと思いまして」
「……意味が分からねぇんだがな」

「貴重品は一番上の引き出しに入っていることが多いんです。開けている時間は一番短いその一番上から貴金属類が出てくることが多くてですね」
「もしかして銃撃の方が本命、爆破が脅しだって言いてぇのか?」

 理解して貰えたのが嬉しかったのか、ジャイルズは水色の瞳に笑みを浮かべる。

「ふ……ん、そういう考え方もあるのか。なるほどな」
「それ、信じちゃうの?」
「可能性は捨てられねぇだろ。で、ユーライはモーリス議員を手放して、後釜はいねぇのか?」

「んー、ちょっと待って……あ、後釜にはハダル=キャドバリー太陽系星系政府議会議員を推すつもりらしいよ」
「それならそのキャドバリー議員にナントカ法案を出させればいいってことだな」
「うーん、そうとも言えるけど……」

 無精髭を一本引き抜きながらマルチェロ医師は笑う。

「まだテラ連邦議会議員でもねぇそいつを待つのは随分と気の長い話じゃねぇかい」
「そうだよね、幾ら推しても絶対当選するとは限らないんだし」

 どうやらこの場でのホシ候補探しはドン詰まりのようだった。
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