48 / 96
第48話
しおりを挟む
「本当に代弁者なら、ワクチン法案成立を邪魔したりしないんじゃない?」
「FCの売名行為に手を貸したりはしませんよ。そもそも本当に子供たちを助ける気があるのなら、ユーライ製薬からワクチンを直接買って子供たちに与えればいいじゃないですか。このリマライ王宮に財力があれば私ならそうします。何故FCはそうしないんですか!」
ふいに王が出した大声に周囲の皆が振り向いた。それでジャイルズ王は元の鷹揚な微笑みに戻り、何でもないという風に手を振った。皆は安堵して談笑に戻る。
「ジャイルズ、なら何で貴方はこんな所でワインを飲んでいるのかな?」
「FCに倣ってみたまでのことです。上流階級者に名を売れば分離主義者たちがくれるという議席にも座りやすくなる。まずは選挙戦で当選するのが第一歩ですからね」
そこでハイファもジャイルズ王に負けずシニカルな笑いを若草色の瞳に浮かべた。
「へえ。この王宮を叩き売ってでもワクチンを買って配布すればいいのに」
「それだけで済むような問題なら勿論そうしますよ。でもそれだけで終わってしまえば、FCがパン屑を投げ与えるのとさほど変わりはありません。困窮している鉱区民たちにずっと援助し続けるために、王宮は存続させなければならないんです」
「そうして送る援助物資はFCが投げ与えるパン屑と何処が違うのかな?」
「星系政府から与えられる僅かな予算から困窮する鉱区民に援助物資を送る王宮と、莫大なクレジットを唸らせているFCを一緒にしないで下さい」
本気で気分を害したらしくジャイルズ王は冷笑すら消してムッとしている。そんなジャイルズ王にハイファはまたもシニカルな口調で訊いた。
「ふうん。じゃあ、『はい、どうぞ』って与えられる議席に座るのは、投げられたパン屑に食いつくことと同じじゃないの?」
「同じじゃないでしょう、天下のテラ連邦議会で物申せるんですよ?」
「分離主義者たちから投げ与えられた議席に座ったままでリマライ星系を、テラ連邦を左右できるなんて本気で思ってるなら、相当な脳天気だよね。議席だの社長の椅子だのはね、座るモノじゃない、背負うモノなんだよ」
「背負ってみせますよ、このリマライで酷い暮らしをしている鉱山労働者のために」
ふっと声に出してハイファは笑い、そして呆れ声を出す。
「バカじゃないの、貴方は二人殺して三十七人を傷つけたんだよ。おまけに誘拐と強制性交教唆の共同正犯。それでテラ連邦議会の議席を背負えると思ってるの? それでワクチンを無料配布できる? 鉱区民の生活を変えてあげられる? 王が犯罪者になって、民衆が愛してきたリマライ王宮だってもう終わりじゃないのサ!」
その勢いにジャイルズ王はもう、衆目構わずハイファを睨みつけて言った。
「……終わり? 終わりになんかさせませんよ」
「FCと別室との癒着の証人である僕ら二人を捕らえたつもり? それでまた分離主義者たちの撒くパン屑に食いついて、自分はそのパン屑の更なる屑を鉱区民に撒くつもりな訳?」
ハイファにリモータ入力でジャイルズ王の言葉を伝え続けていたシドが口を挟む。
「鉱区民は降ってくるパンを待つだけでは幸せになれない」
「どうしてそんなことが言えるんです? パンは必要です」
「確かにな。だが幸せは与えられるパンだけでは決まらない。幸せを掴み取る気概が必要だ」
「それは皆が同じだけパンを腹一杯食べられることが前提でしょう」
「そいつも確かだ。けれどロキニの町では貧しくても皆が笑っていた。だがナレスでは宿屋の主が分離主義者に雇われたライマンファミリーに脅されて、俺たちを売ったんだ」
「貧しかろうが、お金持ちだろうが、胸を張って笑って生きていける方が幸せだよ。僕は色んな星系を巡って色んな人たちを見てきた。何処の人たちも自分たちの孫を飢えさせないように試行錯誤して生きてた。コソ泥して他人のパンを盗んで生きなくてもいいようにね!」
「……」
完全に論破されたジャイルズ王は言葉を失う。更にハイファが追い打ちを掛けた。
「そもそも分離主義者が集票マシンになってくれる保障なんて何処にあるのサ?」
「私も今回の件で分離主義者たちの弱みを握っていますよ」
「へえ、別室まで手を焼く分離主義者に貴方が敵うとでも思ってるの?」
「それは……」
再び黙ったジャイルズ王は、ここにきて分離主義者たちの甘言に乗せられてしまったことを初めて意識したようだった。頬に張り付かせた微笑みをこわばらせ、顔色が変わっている。それでも震える唇から言葉を押し出した。
「シドにハイファス、貴方がたはここから出て行けるとでも思っているんですか?」
「まだ頑張っちゃう訳? FCを恨んで僕を恨んで……逆恨みする自分に酔って僕を苦しめようとした、僕をさっさと拉致しなかったジャイルズ、貴方の負けだよ。いい加減に諦めて誰かに王位を譲ったらいいのに。それしかリマライ王宮を存続させる手はないよ?」
「そんなことはありません。貴方がた二人はここにいるのですからね」
「ふん、変に腹を括りやがって。取り敢えず煙草でも吸ってから、血路を開かせて貰うさ」
そう言ってシドはハイファの自走車椅子を押し、大ホールの隣にあるスモーキングルームへと足を向ける。二人掛けソファに腰掛け、煙草を咥えてオイルライターで火を点けた。
「ふあーあ。結局、メチャメチャつまらなかったな」
「つまらなくて結構だよ。イヴェントストライカが面白いようなことに……あっ!」
「お前ハイファ、嫌な予感がしてくるからそいつを言うなって、何度言えば――」
唐突にシドはハイファが身を固くしたのを察知し、その視線を辿った。するとスモーキングルームに桁違いの大男が入ってくるのが目に入る。身長はゆうに二メートルを超えているだろう。人々より頭ふたつ分も飛び出していて非常に目立った。
「もしかしてダーレス、お前を襲った奴か?」
「……」
何も聞こえないだけでなく、あの激痛を思い出してしまったハイファは緊張し頷くこともできない。あのときの痛み、屈辱、恐怖と……我が身が壊れてゆく音――。
自走車椅子に座っていながらハイファは本当に気を失いそうになっていた。突き上がる吐き気に口を押さえる。何故ライマンファミリーの誘拐ビジネス部隊であるダーレスがここにいるのか。何人たりとも招待状なくして入れない筈なのに、どうして?
変調を知ってシドは左手でハイファの左手を掴んだ。利き手は塞がない。本当は抱き締めてやりたかったが、それどころではなかった。
ジャイルズ=ライトはマフィアと直接的に手を結んだのだ。
逆恨んでハイファを傷つけ苦しめるために、最初からマフィアと繋がっていたのかも知れない。だがシドとハイファに対抗するための苦肉の策か、王宮にまで招き寄せてしまったのだ。
民衆が愛する王宮は、とうとうそこまで堕ちた――。
「FCの売名行為に手を貸したりはしませんよ。そもそも本当に子供たちを助ける気があるのなら、ユーライ製薬からワクチンを直接買って子供たちに与えればいいじゃないですか。このリマライ王宮に財力があれば私ならそうします。何故FCはそうしないんですか!」
ふいに王が出した大声に周囲の皆が振り向いた。それでジャイルズ王は元の鷹揚な微笑みに戻り、何でもないという風に手を振った。皆は安堵して談笑に戻る。
「ジャイルズ、なら何で貴方はこんな所でワインを飲んでいるのかな?」
「FCに倣ってみたまでのことです。上流階級者に名を売れば分離主義者たちがくれるという議席にも座りやすくなる。まずは選挙戦で当選するのが第一歩ですからね」
そこでハイファもジャイルズ王に負けずシニカルな笑いを若草色の瞳に浮かべた。
「へえ。この王宮を叩き売ってでもワクチンを買って配布すればいいのに」
「それだけで済むような問題なら勿論そうしますよ。でもそれだけで終わってしまえば、FCがパン屑を投げ与えるのとさほど変わりはありません。困窮している鉱区民たちにずっと援助し続けるために、王宮は存続させなければならないんです」
「そうして送る援助物資はFCが投げ与えるパン屑と何処が違うのかな?」
「星系政府から与えられる僅かな予算から困窮する鉱区民に援助物資を送る王宮と、莫大なクレジットを唸らせているFCを一緒にしないで下さい」
本気で気分を害したらしくジャイルズ王は冷笑すら消してムッとしている。そんなジャイルズ王にハイファはまたもシニカルな口調で訊いた。
「ふうん。じゃあ、『はい、どうぞ』って与えられる議席に座るのは、投げられたパン屑に食いつくことと同じじゃないの?」
「同じじゃないでしょう、天下のテラ連邦議会で物申せるんですよ?」
「分離主義者たちから投げ与えられた議席に座ったままでリマライ星系を、テラ連邦を左右できるなんて本気で思ってるなら、相当な脳天気だよね。議席だの社長の椅子だのはね、座るモノじゃない、背負うモノなんだよ」
「背負ってみせますよ、このリマライで酷い暮らしをしている鉱山労働者のために」
ふっと声に出してハイファは笑い、そして呆れ声を出す。
「バカじゃないの、貴方は二人殺して三十七人を傷つけたんだよ。おまけに誘拐と強制性交教唆の共同正犯。それでテラ連邦議会の議席を背負えると思ってるの? それでワクチンを無料配布できる? 鉱区民の生活を変えてあげられる? 王が犯罪者になって、民衆が愛してきたリマライ王宮だってもう終わりじゃないのサ!」
その勢いにジャイルズ王はもう、衆目構わずハイファを睨みつけて言った。
「……終わり? 終わりになんかさせませんよ」
「FCと別室との癒着の証人である僕ら二人を捕らえたつもり? それでまた分離主義者たちの撒くパン屑に食いついて、自分はそのパン屑の更なる屑を鉱区民に撒くつもりな訳?」
ハイファにリモータ入力でジャイルズ王の言葉を伝え続けていたシドが口を挟む。
「鉱区民は降ってくるパンを待つだけでは幸せになれない」
「どうしてそんなことが言えるんです? パンは必要です」
「確かにな。だが幸せは与えられるパンだけでは決まらない。幸せを掴み取る気概が必要だ」
「それは皆が同じだけパンを腹一杯食べられることが前提でしょう」
「そいつも確かだ。けれどロキニの町では貧しくても皆が笑っていた。だがナレスでは宿屋の主が分離主義者に雇われたライマンファミリーに脅されて、俺たちを売ったんだ」
「貧しかろうが、お金持ちだろうが、胸を張って笑って生きていける方が幸せだよ。僕は色んな星系を巡って色んな人たちを見てきた。何処の人たちも自分たちの孫を飢えさせないように試行錯誤して生きてた。コソ泥して他人のパンを盗んで生きなくてもいいようにね!」
「……」
完全に論破されたジャイルズ王は言葉を失う。更にハイファが追い打ちを掛けた。
「そもそも分離主義者が集票マシンになってくれる保障なんて何処にあるのサ?」
「私も今回の件で分離主義者たちの弱みを握っていますよ」
「へえ、別室まで手を焼く分離主義者に貴方が敵うとでも思ってるの?」
「それは……」
再び黙ったジャイルズ王は、ここにきて分離主義者たちの甘言に乗せられてしまったことを初めて意識したようだった。頬に張り付かせた微笑みをこわばらせ、顔色が変わっている。それでも震える唇から言葉を押し出した。
「シドにハイファス、貴方がたはここから出て行けるとでも思っているんですか?」
「まだ頑張っちゃう訳? FCを恨んで僕を恨んで……逆恨みする自分に酔って僕を苦しめようとした、僕をさっさと拉致しなかったジャイルズ、貴方の負けだよ。いい加減に諦めて誰かに王位を譲ったらいいのに。それしかリマライ王宮を存続させる手はないよ?」
「そんなことはありません。貴方がた二人はここにいるのですからね」
「ふん、変に腹を括りやがって。取り敢えず煙草でも吸ってから、血路を開かせて貰うさ」
そう言ってシドはハイファの自走車椅子を押し、大ホールの隣にあるスモーキングルームへと足を向ける。二人掛けソファに腰掛け、煙草を咥えてオイルライターで火を点けた。
「ふあーあ。結局、メチャメチャつまらなかったな」
「つまらなくて結構だよ。イヴェントストライカが面白いようなことに……あっ!」
「お前ハイファ、嫌な予感がしてくるからそいつを言うなって、何度言えば――」
唐突にシドはハイファが身を固くしたのを察知し、その視線を辿った。するとスモーキングルームに桁違いの大男が入ってくるのが目に入る。身長はゆうに二メートルを超えているだろう。人々より頭ふたつ分も飛び出していて非常に目立った。
「もしかしてダーレス、お前を襲った奴か?」
「……」
何も聞こえないだけでなく、あの激痛を思い出してしまったハイファは緊張し頷くこともできない。あのときの痛み、屈辱、恐怖と……我が身が壊れてゆく音――。
自走車椅子に座っていながらハイファは本当に気を失いそうになっていた。突き上がる吐き気に口を押さえる。何故ライマンファミリーの誘拐ビジネス部隊であるダーレスがここにいるのか。何人たりとも招待状なくして入れない筈なのに、どうして?
変調を知ってシドは左手でハイファの左手を掴んだ。利き手は塞がない。本当は抱き締めてやりたかったが、それどころではなかった。
ジャイルズ=ライトはマフィアと直接的に手を結んだのだ。
逆恨んでハイファを傷つけ苦しめるために、最初からマフィアと繋がっていたのかも知れない。だがシドとハイファに対抗するための苦肉の策か、王宮にまで招き寄せてしまったのだ。
民衆が愛する王宮は、とうとうそこまで堕ちた――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる