ヴァンパイアに転生したんですけどスローライフしたいです。

麗紫 水晶

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事が大きくなりそうな感が……。

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 ヴァンパイアに転生してハードな出来事が多すぎる“雅 煌太(みやび こうた)”ことリュードです。

 私の第二の人生……驚きの連続です。

 死に目に遭うわ、自身の持っていた宝石に驚かされるわで、何が何だか整理が出来ないでいます。唯一ハッキリしている事は、宝石商さんが宝石を買ってくれると言うことと、それで街の復興資金が出来るぞと言うことです。確実な事なので、お願いしようと思います。

 今私達はサリーナのお店の地下に居ます。かなり深い場所です、給気と換気はサリーナの魔法によって成され、倉庫と工房があり、茶の間と寝室と台所や浴室が1つになった部屋で結構広いんですが、そこで3人の女性に宝石の事を話しているときに突然現れた宝石商さんに買い取ると言われて、更に街ごと買える値打ちがあると言われて地下中に響くほどに全員で叫んでいたところです……。

 

「その話しは本当か?」

 

 女性騎士のルージェさんが、疑っていました。その場全員がそうでしょう、“街ごと”なんてどんだけのお金になるか!驚かない方がおかしいですよ!信じられません。だから彼女も確信を得るために、疑ったのだと思います。

 

「勿論です!それと、私から1つお願いがあります。私も貴方の僕としてお仕えしたいのですが、どうですか?」

 

 へっ!? ……今……なんと?

 

「…はい!?僕…って宝石商さんが……ですか?私の!?」

 

 私だけじゃなく他の3人も目を開いて驚いてました。何気に爆弾発言してます……。

 

「そうです。それを信用してもらう為にも、契約する事で嘘をつかないと断言できるでしょう。」

 

「でも、何故そこまで私に?」

 

 私は逆にそこまで言ってくれる事に、不思議に感じていました。私はそこまで頼りにされる様な器では無いと思いますけど………。

 

「いえ、アリシアを助けて頂いた恩もありますが……実は個人的に貴方の事が気に入ったのですよ。貴方とならこの後の人生が楽しそうだとね。」

 

 ………ええっ!マジで!いやぁ、楽しいかどうかは分からないですよ……まあ駄目ではないですけど、良いのかなホントに?

 

「良いんですか私なんかで?貴族でもないヴァンパイアですよ?後で滅茶苦茶後悔するかも知れませんよ。」

 

「構いません、後悔するぐらいなら忠誠を誓うとは決して口にしないでしょう。私の心は決まっています。」

 

 ……この人は真剣だ、真面目な顔で真っ直ぐにこちらを見つめてくる………。

 

「……分かりました、よろしくお願いします!」

 

「いえいえ、私は貴方の部下になるんです。頭を下げる必要はありません。」

 

 お辞儀をしていたことに宝石商さんも驚いた様子でしたが、私からすると力強い味方が1人増えると言うことで、有難い事です。

 

「話の間に割り込んで済まない、私からもお願いがある。」

 

「え、ルージェどうしたの?」

 

 突然の発言にサリーナも驚いていました。

 

「な、何かありましたか?」

 

「……私も貴殿の僕として契約をしたいんだが、駄目だろうか?」

 

「「「ええっ!」」」

 

 今度は私とアリシアとサリーナの3人で叫んでました。だって騎士さんですよ?落ち着いたら、一度国に戻ると思ってましたし。

 

「城に戻るのではないのですか?」

 

「いや、騎士団を辞める…と言うか抜ける。部下を一度に失くした腑甲斐無い私を国は向かい入れてはくれないだろう。失脚は目に見えている。騎士として、ケジメをつけたいとは思うがそこで絞首刑になっても後悔と無念が残るだけだ……そこから逃げていると思われても構わない!私は彼らの無念を背負って生きようと思う。そして、そこの御仁と同じく私も個人的に貴殿が気に入ったのだ。」

 

「ルージェ……。」

 

 サリーナも、真摯な思いと本音に同情の目を向けていました。ルージェさんからすると余程仲の良い部下達だったのでしょうね……。私も切なくて寂しいのは好きではありません。そして彼女がそこまで決意しているのですから、私も国から彼女を護らなくてはいけないと言うこと……責任重大です……よね?

 ただ、最後の私を気に入った……あの……照れます……さっきも言った通り、味方が増えると言うことは私にとっては凄く有難い事ではあります。

 でも、ここまで偶然の様な奇跡的な事があるんでしょうか?こんな何のメリットもないぽっちのヴァンパイアですよ、どうして……?

 

「い、良いんですか?因みに念を押しますけど、私はこう見えてヴァンパイアです。貴女の血を吸いに襲ってしまうかも知れませんよ?」

 

 すると、困惑した顔ではなく顔を紅くしてうつ向き加減で、両手で両肘を押さえてました。

 

「か……構わない……貴殿が望むなら……♪」

 

 ………ま、マジですか?……その照れた顔と仕草がマジ可愛い!

 

「リュードさま…………

。」

 

 ギクッ!!背後から、物凄く低音なドスの利いた声が………。

 

「あ、あははっ!じょ、冗談!冗談だよ!彼女が本気かどうかを確かめたかったんだ!べ、別に深い意味は……。」

 

「ふうっ!でしたらいいです。」

 

 ヨ、ヨカッタ……、私一応主ですけどね?怖い……。

 

「ですが、今日は一緒に添い寝してください!」

 

「ちょっ!……アリシア!」

 

 サリーナも驚いてばかりです……私も苦笑いしか出来ませんでした、女性達……逞しいです……。 

 

「じゃあ、お二人とも僕の契約をしますが良いですね?」

 

「勿論です。」

 

「私もだ。」

 

 2人の真剣な眼差しに、頷き返してまずは宝石商さんを。

 

「そう言えば、名前をお聞きしてなかったですね?」

 

「そうでしたね、失礼致しました。私はバルジオと申します、これからよろしくお願いいたしますご主人様。」

 

「私はリュードです。力を貸してください。」

 

「御意に御座います。」

 

 私が彼に手をかざすとアリシアやサリーナの時と同じく、胸に魔方陣が浮かび消えていきました。これで彼との契約は成立です。

 

「さて、今度はルージェさんです。」

 

「よろしく頼む……ご、ご主人様……♪」

 

 思わず唾を呑みこみそうになるのを堪えながら、私は手をかざしていました。

 

「貴女の名前は?」

 

「ルージェです。」

 

「私はリュードです。これからよろしく、ルージェ。」

 

「はい、よろしくお願いします。リュード様。」

 

 彼女にも同じく胸に魔方陣が浮かび消えていきました。これで2人との契約は成立しました。

 

「何か昔に戻ったみたいねw」

 

「そうだな、懐かしいな。これからよろしく。」

 

「こちらこそ。」

 

 サリーナとルージェは懐かしみながら話をしているのでした。

 

「さて、リュード様。私は宝石を換金する事を任せて頂くとして、街を復興させる手筈はどのようにされますか?」

 

 バルジオの問いかけに他の4人も私を注目していました。その事については、私も思っている事がありました。

 丁度良かった………。

 

「実は、みんなにその事で相談がある。」

 

「それはどういう………?」

 

 他の4人も不思議そうに私を見つめます………いや、照れますがっ!言っといてなんですが、目の前でこんなに見つめられるなんて恥ずかしいっ!!しゃ、喋りにくくなるっ!

 必死に堪えながら、私はある事を提案しました。

 

「街の人々を説得して、別の場所に街を作りたいと思うんだ。」

 

「えっ!?」

 

「は!?」

 

「なんと!!」

 

「そ、それは一体どうゆう……?」

 

 4人が一瞬呆けていました。夢のような構想論だ、何を言っているんだ?と言う顔をしてます。私だってそう思わなくはない。しかし、街ごと買えるほどの資金が……と言う時点で夢のような話なんです!なら、どうせなら別の土地を見つけそこを開拓して街の基盤を創る………ダメですかね?

 

「今の街の状態を復興させる事も出来るだろうけど、それだとまた街が狙われる可能性が高い。別の場所でも……と思うかもしれないけど、すぐに被害に遭うとは思わない。領主の館や国が近いのもいい事もあるがよくない部分もある。まして、ヴァンパイア貴族にも場所を知られているし…ならいっそ、別の場所を見つけて開拓し新たに街を創り上げた方が良いんじゃないかな?と思ってさ。」

 

「確かに………。」

 

「それはそうですが………。」

 

「う~む………。」

 

「い、今の街の外壁や上空を強化したらどうだろうか?」

 

「いや、今の街だと復興は出来ても強化するまでの資金は足りないんじゃないかと思うんだ。」

 

 私の答えにバルジオも頷いてきました。

 

「確かに、街ごとが買えるほどの資金は手に入るでしょう。しかし、リュード様の言う通り外壁や上空を強化するほどの予算は立たないでしょう。成程、確かに復興は出来ても街の危険度は変わらなくなると言う事ですか………。」

 

「そうなんだ。ただ、街の人々の思い出がある………場所を見つけることも大変だけど、街の人を説得するのも大変だ。でも、これ以上嫌な思い出ばかりを繰り返したくない。私もこの惨状を2度も見たくない、そう思って思いついたのが別の場所に………だった。突拍子もない発想だけど、理に叶いそうな気がして……ダメだろうか?」

 

 私の問いかけに4人は黙ってしまいました。それはね……確かにね……誰も想像なんてしないでしょうしね……。

 

「あたしはリュード様に従います。だって、その方が楽しそうですし。」

 

「ア、アリシア………。」

 

 最初に賛同してくれたのはやはりというかアリシアでした。目元の涙を堪えるのに必死です!

 

「ええ、そうですね。新しい街ですものね、楽しみです。」

 

 サリーナも………。

 

「私も賛成です。確かに同じ場所で店を開けたとしても、勿論思い入れはありますが……また、襲われる可能性がある。そうなったら、資金は2度もありません。壊滅の一途をたどるでしょう……私もそれはご免です。」

 

 バルジオ………。

 

「そうだな、この広さじゃ次に襲われた時には街を守り切れないだろうな。」

 

 ルージェ………。

 

「みんな………ありがとう。」

 

 私はそれぞれの顔を見つめます。いい笑顔です、私にこんないい仲間が出来るとは……大事にしたい………。

 

「まずはどうされますか?具体的にはどう動きましょうか?」

 

 バルジオが早速取り掛かりたいと話してきました。私も同意見です、気持ちが一致したなら動かなければ。

 

「まず、バルジオとサリーナで資金を作って来てほしい。宝石が高価値なら狙われる可能性も大だ、いざとなったらサリーナの移動術でサポートが必要かもしれない。」

 

「そうですな、サリーナのサポートが得られるなら心強い。」

 

「分かりました、バルジオのサポートにまわります。それで、リュード様達は?」

 

 サリーナがちょっと残念そうな顔をしつつ、残った者はどうするのか聞いてきました。

 

「うん、私とアリシアとルージェで開拓出来そうな土地を探しに行く。」

 

「二手に……と言う事ですな?」

 

「そうだね、バルジオ達に資金を集めてもらっている間に私たちは場所を見つける。そして街を作るにあたって人手が居る……街の人達を説得する事も必要になってくる。」

 

 私がそう話すとバルジオがもう一つ気になって話しかけてきました。

 

「場所もさることながら、街の人々はどのように説得するのですか?ただ街頭でやみくもに演説したところでほとんどが応じてはくれないでしょう。」

 

「そうなんだ、まずは場所と資金を用意して、それからその準備があると示しながら話そうとは思ってはいるけど………。」

 

「賛同者は少ない………。」

 

「そうなんだ、何か方法はないかな?」

 

 私も、そう言いつつバルジオと2人して顎を掴みながら考え込んでました。1人、2人ではなく大勢の人を納得させる為には………。

 

「成程!ならば、この街の領主になってしまえば宜しいのでは?」

 

 ちょっ!あのっ!バルジオさん!相変わらず私には突拍子もないといった顔をするくせに、とんでもない事をサラッと言いましたね!

 

「い、い、い、いや、領主って………!?」

 

「そうですね……その方が、住民が納得してくれそうですし。」

 

 いや、サリーナまで!?

 

「ちょっと待って、この街には領主や長と言った人は居ないのか?」

 

 私はここまで大きな街なので、リーダー的な人ぐらいは居るんじゃないかと思ってました。最悪、その人を説得して住民に説明してもらおうと思ってたぐらいで………。

 

「確かに居ましたが、先のヴァンパイアに襲撃を受けたときに真っ先に荷物をまとめて逃げ出していました……屋敷の中はものけの殻です。」

 

「はぁっ!!住民を置いて逃げ出したのか!?」

 

 あらま!街の人を助けるんじゃなく、見捨てたっていうのか……領主って、そんなでも主になれるんだな………。

 

「ですから、今は言わば無法地帯です。リュード様のような統率する者が必要でしょう。」

 

 私は片手と顔を勢いよく左右に振ってました!居ないから私がって言われても……とんでもない!

 

「いずれにせよ、その事は資金と場所を確保してからの話ですからな。ですが、リュード様が領主になれば住民は納得しやすいと思われます。」

 

「いや、バルジオの言う通り準備が出来てから話そうか、まずは出来ることから始めて行こう。」

 

 お互いに見合って頷きました。我ながら凄い味方が出来たものです、ぽっちの頃とは違います……少人数でも仲間がいる、相談できる……助け合える……こんなに心強いことはない………。

 

「それで、サリーナにもう一つお願いがある。」

 

 サリーナが私にそう言われて歓喜の笑みを浮かべました。何か違った事を期待してるんじゃ………。

 

「なんでしょう、リュード様♪」

 

「うん、アリシアとルージェの武具を作ってほしいんだ。」

 

「えっ!?」

 

「あ、そう言われれば……確かに。」

 

 私がサリーナに頼んだ事で、初めて2人とも装備がない事に気づきます。そうです、場所を探す為にはそれなりの装備をしていかないと全滅もあり得る事……それは避けたいし、そうなりたくはありません。なので、持ち物は勿論ですが装備もそれなりに準備をしないと。

 

「分かりました。腕によりをかけて作りますわ!」

 

「頼むよ、それと魔法か何かで連絡を取る事って出来るかな?」

 

「通信……と言う事ですか?」

 

「そう、そうすればお互いに連絡も取れるしいざという時に相談も出来る……何か方法はないかな?」

 

 サリーナが何か考え込んでました。天井を見ながら思いついたようで………。

 

「リュード様、それは心配には及びませんわ。」

 

 え!?どゆこと?

 

「どうして?」

 

「私たちはリュード様の僕の契約をしております。心の中で名前を呼んで頂ければ会話する事が可能です。」

 

 はいっ!?マジですか!そ……そんな事が出来るの?よ、よし早速やってみよう。

 

(ア、アリシア?)

 

「あっ!」

 

 彼女が驚いて私の方を見てきます。私が頷くと、彼女も分かったようで直接心の中から返事を返してきました。

 

(聞こえています、リュード様。)

 

 おおおおっ!!聞こえる!聞こえるぞ!こんな事が出来るなんて………。

 

(じゃ、じゃあサリーナ・バルジオ・ルージェ?)

 

(聞こえますわリュード様。)

 

(ほう、これはいい。)

 

(は、初めてだな。)

 

 やった、全員とも会話ができると言う事か……なんてチートな……いや、ラッキーです。この方が安否確認ができる………。

 

「良かった、ありがとうサリーナ。頼りにしてるよ。」

 

「いえ、リュード様の為ならば当然の事。」

 

「よし、じゃあ早速動こう。みんなよろしく!!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 それぞれが、私の指示した通りに動き出します。街を作る……い、いや、領主になるかは心の準備が……でも、夢のような構想を実現させるためにも、この街の人々を守るためにもやるだけやってみます!僕……というより仲間と共に………………………。
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