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第一章
17 無能でなくて無効
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アイレンの女学校入学を阻止するため、
彼女の入学書類を勝手に記入し
提出したカアラたち一家。
しかし偶然にも郵便局員が家に訪れていたため
”誰がいつ出したか”記録される文書で配達されてしまったのだ。
警察沙汰となり、いつ捕まってもおかしくない今、
カアラは毎日ビクビクして過ごしていた。
「まあ、警察が来たとて、
”知らぬ存ぜぬ”を通すだけだ」
父が事態を軽く見て言うが、心配性の母はそれを否定する。
「でも、筆跡鑑定をしたらバレてしまいますわ!
そのうえ”能力者”によって調べられてたら……」
そんな両親の会話をカアラはイライラしながら聞いていた。
”なんで私がこんな思いをしなくちゃいけないのよ。
それなのにアイレンは、最初から女学校に入るつもりはなかったなんて。
これで捕まったら、私の経歴に傷が付くだけじゃない!”
こうなったら、あの子を説得するしかない。
”魅了”で仲良くなって、大の仲良しになって。
そしてアイレン自身に私をかばってもらうのだ。
「あの手紙は、私が書いたんです!」
本人がそう言えば、あの面倒な執事も黙るしかなくなるだろう。
カアラは立ち上がり、さっそく行動を起こし始めた。
ーーーーーーーーーーーー
「あら! 偶然ね、ジュアン」
カアラはわざわざ、ジュアンの家の和菓子屋まで行き、
彼女の姿を見つけ出して叫んだ。
微妙な表情で、ジュアンがこちらに振り返る。
アイレンが今どこに住んでいるのか、
カアラは知らなかったので
とりあえずジュアンを使ってつきとめるしかなかったのだ。
「……何か御用かしら?」
答えるジュアンに、カアラは必死に
最大出力で”魅了”をかける。
「ねえ! 仲良くしましょう」
カアラがそう言って微笑むと、
ジュアンはぼおっとしたままうなずいた。
上手くいったことを確信したカアラは
ジュアンの手をにぎり、優しく尋ねる。
「ねえ、アイレンのおうちはどこ?
アイレンも一緒に遊びましょうよ」
頬を赤らめ、呆然としたままジュアンはうなずいた。
そしてゆっくりと歩き出す。
”さあ案内しなさい。
ウフフ、どの辺かしらね?
治安の悪いとこでないと良いけど。
まあどこにあっても、どうぜボロ家なんだろうけど”
バカにした笑みを浮かべて、カアラは歩いていく。
しかしだんだんと、自分たちが町一番の
高級住宅街に向かっていることに気付く。
「え、あの、ジュアンの家じゃなくて、
アイレンの家に行くのよ?」
「……うん、こっちよ」
とうとう両サイドに豪奢な家が立ち並んだ、
植樹も美しい大通りを歩きだす。
”嘘でしょ……あ、もしかして。
どこかの家の金持ちの、メイドにでもなったのかしら”
自分を無理やり納得させながら、カアラは進んだ。
「……ここ」
ジュアンが立ち止まったのは、
超高級アパートメントホテルの前だった。
「えええっ!? 嘘でしょ? お城みたいじゃない!」
カアラの大声に、ジュアンはハッ! と正気を取り戻す。
そしてカアラとつないだ自分の手をみてギョっとし
乱暴なしぐさで振り払って叫んだ。
「なんで、ここに? どうやって……あ!」
そして顔をゆがめ、カアラを睨みつけて言う。
「使ったのね、”能力”を」
ジュアンはカアラの能力が”魅了”だというのは知っていた。
でも今までそれは、男の子相手にしか
使っているところを見たことが無かったのに。
カアラは意地悪な笑みを浮かべて、建物を見上げた。
「ウフフ、自分で案内しといて、何を言っているの?
へえ、こんなとこに住んでいるんだ~
で、どの家の使用人なの?」
怒り狂ったジュアンが何か言う前に。
「あら、ジュアンとカアラ。
遊びに来てくれたの?」
いつものように呑気な調子で、アイレンが現れたのだ。
美しいワンピースを着て、髪を可愛く巻き上げている。
いかにも”華族令嬢のお出かけ帰り”といった姿だった。
あんぐりと口をあけて何もいえないカアラを押しのけ
ジュアンが口をとがらせて抗議する。
「ちょっと聞いてよアイレン!
カアラが”魅了”を使って無理やり案内させたのよ」
アイレンは驚いた顔をした後、ちょっと困った顔になり
カアラをたしなめるように言ったのだ。
「あら、己の利益のために能力を使うのはいけないことよ?」
「うるさいわね、仕方ないでしょ?
自分の要求に反応して、
勝手に発動してしまうことだってあるんだから。
あ、能力の無い貴女にはわからないでしょうけど」
それを聞き、なぜかアイレンは嬉しそうに笑って言う。
「そんなに私に会いたいと思ってくれたのね、ありがとう!」
「違う、そう言う意味じゃない!」
否定するカアラを気にも留めず、
アイレンは二人に対し、にこやかに言ったのだ。
「ちょうど焼き菓子をいただいたの。
三人で一緒にいただきましょう」
そうして、中にさっさと入っていったのだ。
ーーーーーーーーーーーー
「……嘘でしょ」
カアラはふかふかのソファーに座りながら、
首をぐるんぐるんと回し、室内を見渡していた。
豪奢でありながら洗練。
かつてのアイレンの家が、
そのままここに再現されていたのだ。
それだけではない。
メイドも、先ほどみかけたシェフも、
かつてアイレンの家で働いていた人たちばかりだった。
それを指摘すると、アイレンは嬉しそうにうなずいた。
「みんな、下の階に住んでくれているのよ」
カアラの父は”雇ってやる”と言ったのを断ったのは
ここでまた、天満院家に仕えるためだったのか。
”アパートメントホテルなんて、初めて知ったわ。
全然、貧乏になってなんかいないじゃない!
相変わらず綺麗な服をきて、素敵な家に住んで
美味しいものを食べて……無能のくせに!”
苛立ちを抑えて震えているカアラをよそに
ジュアンはアイレンに対し、
無断で住居を教えたことを詫びていた。
それをアイレンはカラっと笑いとばし
別にジュアンは何も悪くない、と言い切ったのだ。
そしてすぐに、学校の宿題について話しだす。
その様子から、アイレンがジュアンのことを
心の中から信頼しているのがよく伝わってきた。
”本当に仲が良いのね、この二人”
カアラは仏頂面のまま、紅茶を一口飲んだ。
香りも味わいも最高の茶葉だ。
あの屈託のない笑顔を、自分にも向けさせないと。
手紙を偽装した罪を押し隠すには、それしかないのだ。
しかし、どうしたものか。
アイレンとは性格がまるで合わないことや
成長するにつれ付き合いが少なくなっていったことは
もう覆せないほどの事実だ。
カアラはずっと、
無能のくせに能天気で恵まれているアイレンが大嫌いだったが
アイレンは自分のことを
嫌ってすらいないことを、前からひしひしと感じていた。
”志向や性格があわないから、
一緒にいないほうが互いのためだろう”
その程度に思っているのは間違いない。
それを変えるには。
やっぱり”魅了”しかないだろう。
”まさかアイレンにこの能力を使うなんてね。
こんな奴に好かれたいなんて思ったこと
今まで一度も無かったから”
ジュアンがお手洗いに、と席を立った時、
カアラはすかさずアイレンの隣に座った。
そしてアイレンの目をじっと見つめて言う。
”魅了”を最大限に使いながら。
「……ね、私と友だちになって」
アイレンはびっくり顔になった後、答えた。
「あら? 幼馴染の友だちだと思ってたわ」
カアラは慌てて言い直す。
「違うの、私を一番のお友だちにして!」
アイレンの手をにぎり、赤く目を光らせながら
カアラは必死に懇願した。
しかし。
「んー、よく分からないな。
一番って具体的にどういう基準かしら?」
アイレンの言葉に、カアラは困惑しながらも答える。
「一番大切な友だちってことよ。私がいつでも最優先なの」
アイレンは困った顔で、不思議そうに言う。
「一番って、長い時間一緒にいるとか?
たくさんお話するとか、そういうこと?」
イラついたカアラはかんしゃくを起こして叫ぶ。
「違うわよ! 私のお願いを何でも聞いて欲しいの!
それが友だちってことでしょ!」
その言葉に、アイレンは感心したような声で言った。
「まあ、それがカアラにとっての”友だち”なの。
私とは全然違うのね、面白いわ」
「はあ?! なんにも面白くなんてないでしょ!
私のこと、好きに……」
そこまで言って、カアラは目を見開いた。
気が付いたのだ。
アイレンに、自分の”魅了”がまったく効いていないことを。
平民や”能力”が低い華族なら、いつも問題なく使えていた。
しかし自分より優れた”能力者”が相手だと、
すぐに解除されたり、最初から全く効かなかった。
しかしアイレンは無能だ。
だから勝手に”平民と同じ”だ、と思っていたのに。
凍り付くカアラに、アイレンは諭すように言う。
「相手に何でも言うこと聞かせるのは友情でも愛情でもないわ。
お互いの心を理解しつつ、お互いに思いやりを持って……」
カアラはそれをさえぎって、かすれた声で尋ねた。
「ねえ、アイレン。あなた、もしかして」
「ええ、そうです」
首をかしげたアイレンの代わりに、
低い声が背後から聞こえてきた。
カアラが振り返ると、紳士的な佇まいをしながらも
凍り付くような冷たい目をした執事が、そこに立っていた。
思わず恐怖で身を縮めるカアラに、執事は答えた。
「その通り。アイレンお嬢様には全ての”能力”が無効です。
催眠も、自白強要も、状態異常も……もちろん”魅了”もです」
バレてる!
焦ったカアラの口からは、断片的な言葉しか出てこない。
「え、あの、でも、だから、その……」
執事はゆっくりとカアラに近づいてくる。
そして口調はあくまでも優し気に、”宣告”したのだ。
「ですから。
お嬢様を”無能”などと侮っている者たちは
一人残らず破滅することになるのです」
彼女の入学書類を勝手に記入し
提出したカアラたち一家。
しかし偶然にも郵便局員が家に訪れていたため
”誰がいつ出したか”記録される文書で配達されてしまったのだ。
警察沙汰となり、いつ捕まってもおかしくない今、
カアラは毎日ビクビクして過ごしていた。
「まあ、警察が来たとて、
”知らぬ存ぜぬ”を通すだけだ」
父が事態を軽く見て言うが、心配性の母はそれを否定する。
「でも、筆跡鑑定をしたらバレてしまいますわ!
そのうえ”能力者”によって調べられてたら……」
そんな両親の会話をカアラはイライラしながら聞いていた。
”なんで私がこんな思いをしなくちゃいけないのよ。
それなのにアイレンは、最初から女学校に入るつもりはなかったなんて。
これで捕まったら、私の経歴に傷が付くだけじゃない!”
こうなったら、あの子を説得するしかない。
”魅了”で仲良くなって、大の仲良しになって。
そしてアイレン自身に私をかばってもらうのだ。
「あの手紙は、私が書いたんです!」
本人がそう言えば、あの面倒な執事も黙るしかなくなるだろう。
カアラは立ち上がり、さっそく行動を起こし始めた。
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「あら! 偶然ね、ジュアン」
カアラはわざわざ、ジュアンの家の和菓子屋まで行き、
彼女の姿を見つけ出して叫んだ。
微妙な表情で、ジュアンがこちらに振り返る。
アイレンが今どこに住んでいるのか、
カアラは知らなかったので
とりあえずジュアンを使ってつきとめるしかなかったのだ。
「……何か御用かしら?」
答えるジュアンに、カアラは必死に
最大出力で”魅了”をかける。
「ねえ! 仲良くしましょう」
カアラがそう言って微笑むと、
ジュアンはぼおっとしたままうなずいた。
上手くいったことを確信したカアラは
ジュアンの手をにぎり、優しく尋ねる。
「ねえ、アイレンのおうちはどこ?
アイレンも一緒に遊びましょうよ」
頬を赤らめ、呆然としたままジュアンはうなずいた。
そしてゆっくりと歩き出す。
”さあ案内しなさい。
ウフフ、どの辺かしらね?
治安の悪いとこでないと良いけど。
まあどこにあっても、どうぜボロ家なんだろうけど”
バカにした笑みを浮かべて、カアラは歩いていく。
しかしだんだんと、自分たちが町一番の
高級住宅街に向かっていることに気付く。
「え、あの、ジュアンの家じゃなくて、
アイレンの家に行くのよ?」
「……うん、こっちよ」
とうとう両サイドに豪奢な家が立ち並んだ、
植樹も美しい大通りを歩きだす。
”嘘でしょ……あ、もしかして。
どこかの家の金持ちの、メイドにでもなったのかしら”
自分を無理やり納得させながら、カアラは進んだ。
「……ここ」
ジュアンが立ち止まったのは、
超高級アパートメントホテルの前だった。
「えええっ!? 嘘でしょ? お城みたいじゃない!」
カアラの大声に、ジュアンはハッ! と正気を取り戻す。
そしてカアラとつないだ自分の手をみてギョっとし
乱暴なしぐさで振り払って叫んだ。
「なんで、ここに? どうやって……あ!」
そして顔をゆがめ、カアラを睨みつけて言う。
「使ったのね、”能力”を」
ジュアンはカアラの能力が”魅了”だというのは知っていた。
でも今までそれは、男の子相手にしか
使っているところを見たことが無かったのに。
カアラは意地悪な笑みを浮かべて、建物を見上げた。
「ウフフ、自分で案内しといて、何を言っているの?
へえ、こんなとこに住んでいるんだ~
で、どの家の使用人なの?」
怒り狂ったジュアンが何か言う前に。
「あら、ジュアンとカアラ。
遊びに来てくれたの?」
いつものように呑気な調子で、アイレンが現れたのだ。
美しいワンピースを着て、髪を可愛く巻き上げている。
いかにも”華族令嬢のお出かけ帰り”といった姿だった。
あんぐりと口をあけて何もいえないカアラを押しのけ
ジュアンが口をとがらせて抗議する。
「ちょっと聞いてよアイレン!
カアラが”魅了”を使って無理やり案内させたのよ」
アイレンは驚いた顔をした後、ちょっと困った顔になり
カアラをたしなめるように言ったのだ。
「あら、己の利益のために能力を使うのはいけないことよ?」
「うるさいわね、仕方ないでしょ?
自分の要求に反応して、
勝手に発動してしまうことだってあるんだから。
あ、能力の無い貴女にはわからないでしょうけど」
それを聞き、なぜかアイレンは嬉しそうに笑って言う。
「そんなに私に会いたいと思ってくれたのね、ありがとう!」
「違う、そう言う意味じゃない!」
否定するカアラを気にも留めず、
アイレンは二人に対し、にこやかに言ったのだ。
「ちょうど焼き菓子をいただいたの。
三人で一緒にいただきましょう」
そうして、中にさっさと入っていったのだ。
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「……嘘でしょ」
カアラはふかふかのソファーに座りながら、
首をぐるんぐるんと回し、室内を見渡していた。
豪奢でありながら洗練。
かつてのアイレンの家が、
そのままここに再現されていたのだ。
それだけではない。
メイドも、先ほどみかけたシェフも、
かつてアイレンの家で働いていた人たちばかりだった。
それを指摘すると、アイレンは嬉しそうにうなずいた。
「みんな、下の階に住んでくれているのよ」
カアラの父は”雇ってやる”と言ったのを断ったのは
ここでまた、天満院家に仕えるためだったのか。
”アパートメントホテルなんて、初めて知ったわ。
全然、貧乏になってなんかいないじゃない!
相変わらず綺麗な服をきて、素敵な家に住んで
美味しいものを食べて……無能のくせに!”
苛立ちを抑えて震えているカアラをよそに
ジュアンはアイレンに対し、
無断で住居を教えたことを詫びていた。
それをアイレンはカラっと笑いとばし
別にジュアンは何も悪くない、と言い切ったのだ。
そしてすぐに、学校の宿題について話しだす。
その様子から、アイレンがジュアンのことを
心の中から信頼しているのがよく伝わってきた。
”本当に仲が良いのね、この二人”
カアラは仏頂面のまま、紅茶を一口飲んだ。
香りも味わいも最高の茶葉だ。
あの屈託のない笑顔を、自分にも向けさせないと。
手紙を偽装した罪を押し隠すには、それしかないのだ。
しかし、どうしたものか。
アイレンとは性格がまるで合わないことや
成長するにつれ付き合いが少なくなっていったことは
もう覆せないほどの事実だ。
カアラはずっと、
無能のくせに能天気で恵まれているアイレンが大嫌いだったが
アイレンは自分のことを
嫌ってすらいないことを、前からひしひしと感じていた。
”志向や性格があわないから、
一緒にいないほうが互いのためだろう”
その程度に思っているのは間違いない。
それを変えるには。
やっぱり”魅了”しかないだろう。
”まさかアイレンにこの能力を使うなんてね。
こんな奴に好かれたいなんて思ったこと
今まで一度も無かったから”
ジュアンがお手洗いに、と席を立った時、
カアラはすかさずアイレンの隣に座った。
そしてアイレンの目をじっと見つめて言う。
”魅了”を最大限に使いながら。
「……ね、私と友だちになって」
アイレンはびっくり顔になった後、答えた。
「あら? 幼馴染の友だちだと思ってたわ」
カアラは慌てて言い直す。
「違うの、私を一番のお友だちにして!」
アイレンの手をにぎり、赤く目を光らせながら
カアラは必死に懇願した。
しかし。
「んー、よく分からないな。
一番って具体的にどういう基準かしら?」
アイレンの言葉に、カアラは困惑しながらも答える。
「一番大切な友だちってことよ。私がいつでも最優先なの」
アイレンは困った顔で、不思議そうに言う。
「一番って、長い時間一緒にいるとか?
たくさんお話するとか、そういうこと?」
イラついたカアラはかんしゃくを起こして叫ぶ。
「違うわよ! 私のお願いを何でも聞いて欲しいの!
それが友だちってことでしょ!」
その言葉に、アイレンは感心したような声で言った。
「まあ、それがカアラにとっての”友だち”なの。
私とは全然違うのね、面白いわ」
「はあ?! なんにも面白くなんてないでしょ!
私のこと、好きに……」
そこまで言って、カアラは目を見開いた。
気が付いたのだ。
アイレンに、自分の”魅了”がまったく効いていないことを。
平民や”能力”が低い華族なら、いつも問題なく使えていた。
しかし自分より優れた”能力者”が相手だと、
すぐに解除されたり、最初から全く効かなかった。
しかしアイレンは無能だ。
だから勝手に”平民と同じ”だ、と思っていたのに。
凍り付くカアラに、アイレンは諭すように言う。
「相手に何でも言うこと聞かせるのは友情でも愛情でもないわ。
お互いの心を理解しつつ、お互いに思いやりを持って……」
カアラはそれをさえぎって、かすれた声で尋ねた。
「ねえ、アイレン。あなた、もしかして」
「ええ、そうです」
首をかしげたアイレンの代わりに、
低い声が背後から聞こえてきた。
カアラが振り返ると、紳士的な佇まいをしながらも
凍り付くような冷たい目をした執事が、そこに立っていた。
思わず恐怖で身を縮めるカアラに、執事は答えた。
「その通り。アイレンお嬢様には全ての”能力”が無効です。
催眠も、自白強要も、状態異常も……もちろん”魅了”もです」
バレてる!
焦ったカアラの口からは、断片的な言葉しか出てこない。
「え、あの、でも、だから、その……」
執事はゆっくりとカアラに近づいてくる。
そして口調はあくまでも優し気に、”宣告”したのだ。
「ですから。
お嬢様を”無能”などと侮っている者たちは
一人残らず破滅することになるのです」
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