66 / 82
第三章
66 吉祥天探し
しおりを挟む
丞相の悪事が落ち着いた後、
世の中は”吉祥天探し”で盛り上がった。
”吉祥天様がご降臨されたのは本当だった。
しかし、それが誰かはわからない”
宮廷内での犯罪よりも、
そちらのほうが人々の強い関心を引いたのだ。
みな顔を合わせると、
”自分は違う”、”あの子はどうだ”、と
推測し盛り上がっていた。
”吉祥天の条件”に当てはめながら。
吉祥天様は決して、人にも鬼にも攻撃はしない。
そしてどのような悪鬼も、吉祥天様を襲わない。
全てに対して平等であり万能の吉祥天は
特出した”能力”を有してはいない。
”能力”の件があるため、
平民たちは目を輝かせて身内を詮索し
妖魔に襲われないかどうか試すため
子どもを危ない目に合わせる親が増えてしまった。
そのため急遽、帝都のいろいろな場所に
”安全に試せる場”が用意されたのだ。
それは籠に入れられた”豆鬼”の前に立つ、というものだ。
妖魔のうち最弱といわれる”豆鬼”は
とても臆病であるため、
少しでも人が近づくと小石を投げてくるのだ。
たくさんの人々が”我こそは!”という顔で試した。
そして我が子を試す親もたくさんいたのだが。
ポンポン。
ポン…ポンポン。
誰が立っても、赤子をそっと前に置いても
”豆鬼”は小石を籠から投げつけてきたのだ。
しかし、ある日。とある下町で。
「おい! 見てみろ!
”豆鬼”が投げないぞ!」
目の前に立った少女に、”豆鬼”はじっと動かないのだ。
やがて少女は、悲し気に笑い、
手に下げた鞄から小さく奇妙な生き物を取り出した。
毒々しい緑や紫が混ざり合った色に
頭部に何本かトゲが生えている。
「なんだありゃ? ……妖魔か?!」
安全のために配置されていた武官が近づこうとすると。
片手で制しながら、少女がそれを止めたのだ。
「来てはなりません!
この子を怒らせてしまいます!
私は……大丈夫ですから」
そして彼女は、大きな瞳を潤ませて皆に語り出した。
「私は幼い頃から、妖魔に襲われたことはありません。
それどころか、とても懐かれてしまうのです」
手のひらの妖魔を撫でながら、少女は語った。
離れた場所に立っていた彼女の母親もうなずいて言う。
「この子は生まれつき、
本当に不思議な子だったのでございます。
容姿に優れており、人々に愛されたため
”魅了”の力を持っていると言われてきましたが……」
少女は切ない顔で、涙をこぼしながら言う。
「私っ、一度も”魅了”? っていうのを
使ったことがないんですっ!
ただ、皆さんが勝手に好きになってくださって……」
たしかに少女は、なかなか可愛い顔をしていた。
明るい茶色の巻き毛に、つんと突き出た赤い唇。
フリルのついた洋装をまとう姿は
”男に好かれる”という話に十分な説得力を持っていた。
少女は怯えたような、どこか甘えた声で言う。
「妖魔になつかれるとバレたら、
”お前は妖魔の仲間か”って、
みんなに嫌われちゃうと思って、今まで言えなくて」
人々はざわざわと話し始めた。
まさか……もしかすると……
見守っていた武官がカアラに尋ねる。
「上官に報告したいのですが。
お名前をお聞かせ願えますか?」
少女はとびっきりの笑顔で答えた。
「カアラと申します」
ーーーーーーーーーーーー
「では、後日あらためてお話を伺います」
そう言って武官は戻っていった。
彼はすっかりカアラの”魅了”にあてられ、
「いやあ! 君で間違いないよ!
本物の吉祥天は君だったんだ!」
と公衆の面前で騒いでくれたのだ。
カアラは母親と顔を見合わせ、ほくそ笑む。
手のひらに乗せていた”妖魔”は
突起のついた紙細工を付け、
塗料を塗りたくったネズミだ。
”豆鬼”が襲ってこなかったのは、
僧家で育ったカアラの母が教えてくれたのだ。
”豆鬼”は本当に弱いため、実は”魅了”が通じる、と。
あの幽鬼に好かれてもメリットがないことから
知っていても役に立たない知識であるため、
一般的には知られていないトリビアだった。
”とりあえず、上手くいったわ”
彼女は絶対に、吉祥天にならなくてはいけないのだ。
このままではあと数カ月で、
中年の脂ぎった親父に嫁くことになってしまう。
毎日気が狂うような焦りを感じていたカアラは
吉祥天の騒ぎを知った時、
これだ! と思いついたのだ。
”吉祥天と認められれば、結婚せずに済むわ!
人々から崇拝されて、特別扱いされて。
間違いなく権力者の妃として選ばれる!”
彼女の頭の中にはレイオウが浮かんでいた。
北王門家の嫡男には、あんな地味な女より
吉祥天のほうがはるかにふさわしいではないか。
冷たくフラれただけでなく、
二度と関わるなとまで言われたのに
カアラはどうしても彼を諦めることが出来ずにいたのだ。
その日から、カアラの日常は一転した。
義父であるホフマン氏はかなり疑っていたが
”義理の娘が吉祥天かもしれない”という噂は
彼の商売に多大な利益をもたらした。
そのため、急に協力的になり、
ピーターとの話はいったん保留にしてくれた上に
いかにも彼女が吉祥天であるかのような
エピソードまで捏造してくれたのだ。
使用人や家庭教師には金を握らせて口止めし、
「いやあ、あの子が声を荒げたことなど無くてな。
もちろん人の悪口などとんでもない!」
実際には大規模な駆除作業をした後だが
「前から不思議だったんですよ。
あの子がうちに来てから、妖魔の被害がなくなって」
もちろん、””悪鬼や妖魔に襲われない姿が見たい”という
たくさんのリクエストも受けたが、
カアラは苦笑いしながら拒否したのだ。
「襲われないってわかっていても
やっぱり妖魔って怖くって……虫と一緒です。
害がない種類の昆虫でも、女の子って
見たくないし触れたくないものでしょう?」
そしてカアラは目的を達成すべく、
義父は商売のための宣伝として、
”本物の吉祥天”としての噂を
急速に広めていったのだ。
もちろん、きちんと調べられたらすぐにバレるだろう。
でもそんなことは、義父にとってはたいした問題ではないのだ。
いま稼げるぶんだけ、稼げられたら良いのだから。
後は”自分もだまされた”と言って
後妻と義理の娘を切り捨てれば良い。
しかしカアラは違った。
いつもの悪い癖が出たのだ。
それは”息を吐くように嘘をついている”うちに
それが本当のことのように自分でも思えてくる、というものだ。
”私は吉祥天よ。
魅了でモテてたわけじゃない、
誰よりも可愛いから愛されていたのよ”
さらに都合よく事実を捻じ曲げて考える。
”実際、妖魔に襲われたことなんてないもの。
そりゃあ昔、山で遊んでいた時に
妖魔が飛び掛かってきたけど……
あれはきっとアイレンを襲ったんだわ」
本当はアイレンは最後尾にいたため、
妖魔の姿すら見ていなかったのだが。
そしてカアラは、ウットリと思い出す。
”あの時、レイオウがすぐに倒してくれたんだっけ。
すばやく切り倒して、振り返って……
大丈夫か? って聞いたのよ”
正確には”大丈夫か? アイレン”だったのだが、
カアラの記憶は改ざんされている。
カアラは、追い詰められるあまり
今まで以上に現実が見えなくなっていた。
好みの対極にあるような、太って脂ぎった中年の婚約者。
大嫌いな地味女を溺愛する、地位も名誉も金もある美男子。
”そんなの、あり得ないじゃない!”
夢想に逃げるカアラの元へ、
ある日宮廷から”招待状”が届いたのだ。
「見なさい、カアラ! お呼びだしだわ!」
「おお! これはすごいぞ。
すぐに取引先に広めねば」
カアラの母と義父は大喜びしているが、
当の本人は招待状を目に浮かない顔をしている。
「どうしたの? カアラ」
母の問いかけに、カアラは不機嫌そうにつぶやいた。
「……吉祥天の条件って、もう一つあったんですって。
それを示していただきたい、って……」
義父は顔をしかめてつぶやく。
「なんだ? それは?
聞いた事がないぞ?」
「吉祥天の……証……?」
しかしカアラの母は、心当たりがあった。
彼女は幼い頃、妖魔の被害で両親を失ったが、
アイレンの母の実家である瑠璃寺家に引き取られ
一緒に育てられたのだ。
カアラの母は思い出す。
”あの大嫌いで退屈な勉強の時間……確かに教わったわ。
吉祥天にまつわる様々な事を”
「……”吉祥天は宝玉を有す”」
ぽつんとカアラの母がつぶやいた。
「宝玉? どんな玉なのだ?
ダイヤモンドか? 水晶か?」
義父がすぐさま反応する。
この分だと用意してくれそうだ、と思ったカアラは
すぐさま母親に言ったのだ。
「もちろんダイヤモンドでしょう?」
しかし母親は首を横に振ったのだ。
「宝石の類いでは無かったわ。
……ちゃんと古文書で調べましょう」
目論見が外れ、カアラはムッとしたが、
宮廷でバレては元も子もない。
本物の”吉祥天の宝玉”がどのようなものか調べて、
用意することにしよう。
もちろん。
「真っ白なドレスも必要よね、お義父様。
蓮の花のかんざしとか……ネックレスも」
美しいドレスをまとい、手に宝玉を持って。
レイオウの前にたたずめば、きっと彼は気付くだろう。
自分にふさわしいのは誰かを。
本当の美しさというものを。
そして素敵なアイディアを思いつく。
アイレンには代わりに、ピーターと結婚してもらおう。
婚約者を取り上げてしまうお詫びに、
あの脂ぎって醜い、20も年上の男を。
”私の横にはレイオウが立ち、
アイレンはあの毛むくじゃらの腕に抱かれるのね”
カアラはニタァ~と笑っていた。
母親と義父がそれに気づいてゾッとする。
まるで、邪鬼のような笑顔を見て。
世の中は”吉祥天探し”で盛り上がった。
”吉祥天様がご降臨されたのは本当だった。
しかし、それが誰かはわからない”
宮廷内での犯罪よりも、
そちらのほうが人々の強い関心を引いたのだ。
みな顔を合わせると、
”自分は違う”、”あの子はどうだ”、と
推測し盛り上がっていた。
”吉祥天の条件”に当てはめながら。
吉祥天様は決して、人にも鬼にも攻撃はしない。
そしてどのような悪鬼も、吉祥天様を襲わない。
全てに対して平等であり万能の吉祥天は
特出した”能力”を有してはいない。
”能力”の件があるため、
平民たちは目を輝かせて身内を詮索し
妖魔に襲われないかどうか試すため
子どもを危ない目に合わせる親が増えてしまった。
そのため急遽、帝都のいろいろな場所に
”安全に試せる場”が用意されたのだ。
それは籠に入れられた”豆鬼”の前に立つ、というものだ。
妖魔のうち最弱といわれる”豆鬼”は
とても臆病であるため、
少しでも人が近づくと小石を投げてくるのだ。
たくさんの人々が”我こそは!”という顔で試した。
そして我が子を試す親もたくさんいたのだが。
ポンポン。
ポン…ポンポン。
誰が立っても、赤子をそっと前に置いても
”豆鬼”は小石を籠から投げつけてきたのだ。
しかし、ある日。とある下町で。
「おい! 見てみろ!
”豆鬼”が投げないぞ!」
目の前に立った少女に、”豆鬼”はじっと動かないのだ。
やがて少女は、悲し気に笑い、
手に下げた鞄から小さく奇妙な生き物を取り出した。
毒々しい緑や紫が混ざり合った色に
頭部に何本かトゲが生えている。
「なんだありゃ? ……妖魔か?!」
安全のために配置されていた武官が近づこうとすると。
片手で制しながら、少女がそれを止めたのだ。
「来てはなりません!
この子を怒らせてしまいます!
私は……大丈夫ですから」
そして彼女は、大きな瞳を潤ませて皆に語り出した。
「私は幼い頃から、妖魔に襲われたことはありません。
それどころか、とても懐かれてしまうのです」
手のひらの妖魔を撫でながら、少女は語った。
離れた場所に立っていた彼女の母親もうなずいて言う。
「この子は生まれつき、
本当に不思議な子だったのでございます。
容姿に優れており、人々に愛されたため
”魅了”の力を持っていると言われてきましたが……」
少女は切ない顔で、涙をこぼしながら言う。
「私っ、一度も”魅了”? っていうのを
使ったことがないんですっ!
ただ、皆さんが勝手に好きになってくださって……」
たしかに少女は、なかなか可愛い顔をしていた。
明るい茶色の巻き毛に、つんと突き出た赤い唇。
フリルのついた洋装をまとう姿は
”男に好かれる”という話に十分な説得力を持っていた。
少女は怯えたような、どこか甘えた声で言う。
「妖魔になつかれるとバレたら、
”お前は妖魔の仲間か”って、
みんなに嫌われちゃうと思って、今まで言えなくて」
人々はざわざわと話し始めた。
まさか……もしかすると……
見守っていた武官がカアラに尋ねる。
「上官に報告したいのですが。
お名前をお聞かせ願えますか?」
少女はとびっきりの笑顔で答えた。
「カアラと申します」
ーーーーーーーーーーーー
「では、後日あらためてお話を伺います」
そう言って武官は戻っていった。
彼はすっかりカアラの”魅了”にあてられ、
「いやあ! 君で間違いないよ!
本物の吉祥天は君だったんだ!」
と公衆の面前で騒いでくれたのだ。
カアラは母親と顔を見合わせ、ほくそ笑む。
手のひらに乗せていた”妖魔”は
突起のついた紙細工を付け、
塗料を塗りたくったネズミだ。
”豆鬼”が襲ってこなかったのは、
僧家で育ったカアラの母が教えてくれたのだ。
”豆鬼”は本当に弱いため、実は”魅了”が通じる、と。
あの幽鬼に好かれてもメリットがないことから
知っていても役に立たない知識であるため、
一般的には知られていないトリビアだった。
”とりあえず、上手くいったわ”
彼女は絶対に、吉祥天にならなくてはいけないのだ。
このままではあと数カ月で、
中年の脂ぎった親父に嫁くことになってしまう。
毎日気が狂うような焦りを感じていたカアラは
吉祥天の騒ぎを知った時、
これだ! と思いついたのだ。
”吉祥天と認められれば、結婚せずに済むわ!
人々から崇拝されて、特別扱いされて。
間違いなく権力者の妃として選ばれる!”
彼女の頭の中にはレイオウが浮かんでいた。
北王門家の嫡男には、あんな地味な女より
吉祥天のほうがはるかにふさわしいではないか。
冷たくフラれただけでなく、
二度と関わるなとまで言われたのに
カアラはどうしても彼を諦めることが出来ずにいたのだ。
その日から、カアラの日常は一転した。
義父であるホフマン氏はかなり疑っていたが
”義理の娘が吉祥天かもしれない”という噂は
彼の商売に多大な利益をもたらした。
そのため、急に協力的になり、
ピーターとの話はいったん保留にしてくれた上に
いかにも彼女が吉祥天であるかのような
エピソードまで捏造してくれたのだ。
使用人や家庭教師には金を握らせて口止めし、
「いやあ、あの子が声を荒げたことなど無くてな。
もちろん人の悪口などとんでもない!」
実際には大規模な駆除作業をした後だが
「前から不思議だったんですよ。
あの子がうちに来てから、妖魔の被害がなくなって」
もちろん、””悪鬼や妖魔に襲われない姿が見たい”という
たくさんのリクエストも受けたが、
カアラは苦笑いしながら拒否したのだ。
「襲われないってわかっていても
やっぱり妖魔って怖くって……虫と一緒です。
害がない種類の昆虫でも、女の子って
見たくないし触れたくないものでしょう?」
そしてカアラは目的を達成すべく、
義父は商売のための宣伝として、
”本物の吉祥天”としての噂を
急速に広めていったのだ。
もちろん、きちんと調べられたらすぐにバレるだろう。
でもそんなことは、義父にとってはたいした問題ではないのだ。
いま稼げるぶんだけ、稼げられたら良いのだから。
後は”自分もだまされた”と言って
後妻と義理の娘を切り捨てれば良い。
しかしカアラは違った。
いつもの悪い癖が出たのだ。
それは”息を吐くように嘘をついている”うちに
それが本当のことのように自分でも思えてくる、というものだ。
”私は吉祥天よ。
魅了でモテてたわけじゃない、
誰よりも可愛いから愛されていたのよ”
さらに都合よく事実を捻じ曲げて考える。
”実際、妖魔に襲われたことなんてないもの。
そりゃあ昔、山で遊んでいた時に
妖魔が飛び掛かってきたけど……
あれはきっとアイレンを襲ったんだわ」
本当はアイレンは最後尾にいたため、
妖魔の姿すら見ていなかったのだが。
そしてカアラは、ウットリと思い出す。
”あの時、レイオウがすぐに倒してくれたんだっけ。
すばやく切り倒して、振り返って……
大丈夫か? って聞いたのよ”
正確には”大丈夫か? アイレン”だったのだが、
カアラの記憶は改ざんされている。
カアラは、追い詰められるあまり
今まで以上に現実が見えなくなっていた。
好みの対極にあるような、太って脂ぎった中年の婚約者。
大嫌いな地味女を溺愛する、地位も名誉も金もある美男子。
”そんなの、あり得ないじゃない!”
夢想に逃げるカアラの元へ、
ある日宮廷から”招待状”が届いたのだ。
「見なさい、カアラ! お呼びだしだわ!」
「おお! これはすごいぞ。
すぐに取引先に広めねば」
カアラの母と義父は大喜びしているが、
当の本人は招待状を目に浮かない顔をしている。
「どうしたの? カアラ」
母の問いかけに、カアラは不機嫌そうにつぶやいた。
「……吉祥天の条件って、もう一つあったんですって。
それを示していただきたい、って……」
義父は顔をしかめてつぶやく。
「なんだ? それは?
聞いた事がないぞ?」
「吉祥天の……証……?」
しかしカアラの母は、心当たりがあった。
彼女は幼い頃、妖魔の被害で両親を失ったが、
アイレンの母の実家である瑠璃寺家に引き取られ
一緒に育てられたのだ。
カアラの母は思い出す。
”あの大嫌いで退屈な勉強の時間……確かに教わったわ。
吉祥天にまつわる様々な事を”
「……”吉祥天は宝玉を有す”」
ぽつんとカアラの母がつぶやいた。
「宝玉? どんな玉なのだ?
ダイヤモンドか? 水晶か?」
義父がすぐさま反応する。
この分だと用意してくれそうだ、と思ったカアラは
すぐさま母親に言ったのだ。
「もちろんダイヤモンドでしょう?」
しかし母親は首を横に振ったのだ。
「宝石の類いでは無かったわ。
……ちゃんと古文書で調べましょう」
目論見が外れ、カアラはムッとしたが、
宮廷でバレては元も子もない。
本物の”吉祥天の宝玉”がどのようなものか調べて、
用意することにしよう。
もちろん。
「真っ白なドレスも必要よね、お義父様。
蓮の花のかんざしとか……ネックレスも」
美しいドレスをまとい、手に宝玉を持って。
レイオウの前にたたずめば、きっと彼は気付くだろう。
自分にふさわしいのは誰かを。
本当の美しさというものを。
そして素敵なアイディアを思いつく。
アイレンには代わりに、ピーターと結婚してもらおう。
婚約者を取り上げてしまうお詫びに、
あの脂ぎって醜い、20も年上の男を。
”私の横にはレイオウが立ち、
アイレンはあの毛むくじゃらの腕に抱かれるのね”
カアラはニタァ~と笑っていた。
母親と義父がそれに気づいてゾッとする。
まるで、邪鬼のような笑顔を見て。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~
しゃぼてん
ファンタジー
すぐに精霊と仲良しになれる孤児のイーアは、召喚術の才能を最強の召喚士に認められ、帝国の名門魔術学校グランドールに入学した。召喚術だけはすごいけどほかはだめ、そんなイーアは、万能天才少年な幼なじみや、いいところも悪いところもある同級生たちといっしょに学園生活を楽しんでいた。だけど、なぜかいつもイーアのことを見守る黄金色の霊獣がいる。
実はイーアは帝国の魔導士に滅ぼされた精霊とともに生きる民の生き残りだった。記憶がもどったイーアは、故郷を滅ぼした白装束の魔導士たちの正体、そして、学校の地下にかくされた秘密を追う。その結果、自分が世界を大きく変えることになるとは知らずに。
(ゆっくり成長。召喚獣は多いけど、バトルは少なめ、10万字に1回くらい戦闘しますが、主人公が強くなるのはだいぶ後です)
小説家になろう、カクヨムにも投稿しました。
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました
よどら文鳥
恋愛
エウレス皇国のラファエル皇太子から突然婚約破棄を告げられた。
どうやら魔道士のマーヤと婚約をしたいそうだ。
この国では王族も貴族も皆、私=リリアの聖女としての力を信用していない。
元々砂漠だったエウレス皇国全域に水の加護を与えて人が住める場所を作ってきたのだが、誰も信じてくれない。
だからこそ、私のことは不要だと思っているらしく、隣の砂漠の国カサラス王国へ追放される。
なんでも、カサラス王国のカルム王子が国の三分の一もの財宝と引き換えに迎え入れたいと打診があったそうだ。
国家の持つ財宝の三分の一も失えば国は確実に傾く。
カルム王子は何故そこまでして私を迎え入れようとしてくれているのだろうか。
カサラス王国へ行ってからは私の人生が劇的に変化していったのである。
だが、まだ砂漠の国で水など殆どない。
私は出会った人たちや国のためにも、なんとしてでもこの国に水の加護を与えていき住み良い国に変えていきたいと誓った。
ちなみに、国を去ったエウレス皇国には距離が離れているので、水の加護はもう反映されないけれど大丈夫なのだろうか。
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる