『兄弟観察はじめました』〜末っ子長女の万丈な日常〜

もちのすけ

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わらわの城

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おひいさま爆誕から2週間後__
母上と七瀬は、退院に向けて準備をしていた。

(うむ、この病院、設備も食事も完璧なのじゃが...
夜分の赤子の夜泣きはうるそうて敵わんかったの。
まあ、あやつらの仕事は泣くことゆえ、仕方がないかのう。)

かく言う七瀬も生後14日の赤子である。


「母さん、忘れ物はない?」

「ええ。大丈夫よ~。」


迎えに来た蓮兄上の車に乗り込み、一同は青葉病院を後にした。

(さらばじゃ、青葉病院。
わらわ誕生の地という名誉、後世まで語り継ぐがよい。)

車が走り出してからしばらく。
窓の外には、高からず低からずの建物が並び、その合間に小さな畑や小ぢんまりとした神社が姿を見せている。

(うむ……この町、城下町か?城は見えぬのじゃが……)
(商いの匂いと、のどかな空気が同居しておる。不思議な地じゃのう。)

道沿いのパン屋からは焼き立てのパンが香り、そのすぐ先には、お年寄りが談笑する縁台が見える。

(……都会の喧騒も、田舎の寂しさもない。まことに、丁度よい按配の良い町じゃの。)

信号待ちでふと見上げれば、
小さな図書館とスーパー銭湯が仲良く並んでいる。
その先に広がる風景も、のどかで、心落ち着く場所であった。

(よいぞ、風見市! わらわが育ち成長してゆく場所として最高の町じゃ!)

七瀬は心地よい振動に揺られ、ひと時のうたた寝に身を任せた。

―――――――――――――――――――――

しばらくして__

「七瀬、お家に着いたよ~。」

七瀬は心地よい微睡みから引き戻された。再び落ちそうな瞼をこすり、車から優雅に降りる。(※実際は蓮兄上に車からそっと抱き上げられた。なお七瀬は半分眠っていた様子。)

「さあ、今日からここが七瀬の家だ。」

ようやく少し目を覚まし、七瀬はわが家を見上げる。
その家は、小高い丘の中腹にあった。

赤い三角屋根が目立つ、まるでおとぎ話に出てくるような、ゆったりとした洋風の館。

入り口には蔦の這う白いアーチゲートが静かに佇み、その向こうには、手入れの行き届いた花壇とレンガ敷きの小道が優しく出迎えてくれる。
クリーム色のレンガ造りの壁に、バルコニー付きの大きな窓にはレースのカーテンが揺れており、穏やかな陽射しが差し込んでいた。
小さな煙突がアクセントを添え、季節の花々があちこちで風に揺られている。

(ここが、わらわの館。
 ...うむ、大変よい。実に素晴らしい家である!)

蓮は右腕に七瀬を抱き、左手にたくさんの荷物を持ちながら門扉を開けた。
七瀬は興奮のあまりずっとハフハフしている。
庭先の小道を進み、玄関前に立った。
木製の白いドアには、英文字でnanahashiと刻まれており、ポストやベルまでクラシカルな意匠で統一されている。
「あれ?ちょっと待ってね。鍵が...」
これだけ腕に抱えているのだから当たり前、蓮は家の鍵をポケットから取り出すのに苦労している。
その時__

ガチャッ__

急に内側から扉が開き、中から誰かが顔を出した。
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