楽しい時間は唐突に…

雪咲 彩

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8話 幸せの裏側

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 私の記憶の中に凛ちゃんがいた。 

 死んだときの記憶… 

 私は凛ちゃんと一緒に飛び降り自殺をした。 

  

 私と凛ちゃんが知り合ったのは小学生の頃だった。 

 私は心と体が違う。今でいう、性別違和というもの。 

 体は男、心は女。 

 私の見た目は中性で女性のような見た目だった。 

 そのせいもあって小学校高学年になると、みんな物心がついている歳になっている。 

 興味半分なのか、みんなは私のことをからかってくる。 

 

 「はるって名前、女みたいな名前してるし、見た目も女みたいだな」 

  

 「お前、男なのになんでそんな恰好してるの、キモイんだけど」 

 

 男子からはそんな声が飛び交ってくる。 

 そんな毎日を私は言われながらも学校に行っていた。 

 その様子をずっと見ていた女子がいた。それが凛ちゃんだった。 

 凛ちゃんはそんな私をみて、からかってくる男子たちに激怒した。 

 

 「ねえ、今の時代に男も女も関係なんてないでしょ!一番いじめてるお前たちが、一番気持ち悪いわ!」 

 

 「おい!勝手に入ってくるなよ!お嬢様!いつも偉そうにしてる奴が!」 

 

 凛ちゃんの性格は気が大きく、いつも態度が大きい人だった。 

 それは一緒のクラスになってから、みて目立つくらいに。 

 ただ、他の女子からはあまり良いようには思われてなかった。 

 それでも、他の女子たちは凛ちゃんに対して手を出すようなことはしなかった。 

 なぜなら、他の子も一緒にいるからだった。 

 男子の言い合いに、凛ちゃんのグループの子たちがやってきた。 

 

 「あのさあ、人をいじめてる奴が何言ってんの?それこそ、一番酷いんじゃない?」 

  

 「凛ちゃんの言ってることが正しいし、どっか行きなよ、いじめっ子の男子だち」 

 

 他の子たちも男子に言った。 

 最後に凛ちゃんは男子に言った。 

 

「聞きなさい!今後、はるに手を出したりしたら、私が許さないんだからね!」 

 

 言い寄られた男子たちは、その場を去っていった。 

 その後に凛ちゃんは私に言った。 

 

 「はるって言ってたっけ?私たちの方に来なよ。私たちと遊ぼ。そうしたら、もういじめられるようなことはないでしょ」 

 

 そんな私を凛ちゃんは救ってくれた。 

 そう言い放ったあと、私は凛ちゃんのグループに入れてもらった。 

 凛ちゃんのグループは凛ちゃんを入れて三人グループ。 

 そのグループに入った私は凛ちゃんたちと仲良く話をしたり遊んだりした。 

 それからというと、男子たちからは何も言われることはなかった。 

 言われることはなかったけど、陰口は聞こえてくる。 

 ただ間接的に言ってくることはなかった。 

 

 私たちは、中学校に上がった。 

 家族は私の事情を知っている。否定もしなかった。 

 唯一良かったのは、私のことを認めてくれたことだ。 

 私は嬉しかった。女の子として過ごせることが。 

  

 学校を通うにあたり、私を含める親と一緒に学校に事情を話した。 

 学校は私を女子生徒として了承してくれた。 

 私は晴れて、中学校からは女子生徒として過ごし、制服も女子生徒のものを着て登校できるようになった。 

 

 入学式の時、私はクラスのみんなにカミングアウトした。 

 最初はみんな驚いた様子だった。 

 だけど、その後は何事もなく私は女子たちと一緒にいることが当たり前だった。 

 男女に分かれるときも、私は女子として扱われていた。 

 周りのみんなも気を使うことなく私を接してくれた。 

 ただ、一部の人は陰で悪口を言っているようだ。 

 凛ちゃんとはずっと、中学校でも一緒に遊んでいた。 

 

 私は、中学校に入ってから専門の病院へか通うことにした。 

 その理由は男性ホルモンを抑える薬を飲んで、第二成長期の進行を防ぐためだ。 

 そのメリットとして、男性のように骨格や声変りになる前にそれを抑えるメリットがある。 

 デメリットとして、男性になっていかないこと。体にあらゆる不調が現れること。 

 精神不安が現れる、体の倦怠感、生殖機能が失われたり、ホルモンの分泌がなくなるなど、いろんな症状が現れることだ。 

 それでも、私は女だ。体は男で生まれてきた。 

 私が望んだものではなかった。それは、神がそうしてこの世に誕生させた。 

 私は神が嫌いだった。 

 それでも、私は男になっていく自分が嫌いだった。 

 そんな自分が嫌だから、迷わず私は薬を飲むことを決断した。 

 その結果、周りは少しずつ男のようになっていくが、私はそうはならなかった。 

 私の体は変わろうとはしなかった。それは私にとって嬉しい出来事だった。 

 

 中学校三年生になると、進路の話が出てくる。 

 進路は高校に進学することにした。ただ進学をするだけではなかった。 

 高校が私のように理解してくれる学校に行く必要があった。 

 高校の説明会や中学校の先生を通じてどの学校に通えるかを探した。 

 私の学力と学校を照らし合わせた結果、通える学校が見つかった。 

 そのことを凛ちゃんたちに話した。 

 凛ちゃんの友達たちは違う学校をそれぞれバラバラになって通うことになった。 

 少し寂しいけど、それぞれの道を歩むことになった。 

 

 「はるちゃん、高校は違うけど、何かあったら連絡するんだよ。私たちはさ、はるちゃんを心配しているんだよ。なんか、目を離せないっていう存在かな」 

 

 「わかるそれ。目を離せないよね、なんか。それでも、そのかわいい性格なら高校でも上手くやっていけるよ」 

 

 友達はそう言ってくれた。 

  

 「ところでさ、凛ちゃんはどうするの?進路」 

 

 凛ちゃんは即答した。 

 

 「私は、はるについていくよ。同じ学校に通うことにする。はるを守ると決めたから。 

 

 凛ちゃんは私と一緒に進学をすることになった。 

  

 そして、卒業式。 

 私たちは最後集まって記念写真を撮った。 

 

 「これから私たちはさ、別々になるけどグループチャットで話できるからいつも一緒だよ」 

 

 「そうだよね。高校に行ったとしても、休みの日は会って遊ぶこともできるし、私たちはいつも一緒だよ」 

 

 友達は言った。 

 そうさ。高校は違えどいつものように連絡を取り合ったり、遊ぶこともできる。 

 

 「凛ちゃん、後はさ、はるちゃんのことよろしく頼むよ」 

  

 「お願いね。凛ちゃん。後は任せたよ。困ったら連絡ね」 

 

 「わかってるわよ。そんなこと言われなくても…」 

 

 凛ちゃんは友達と離れることが寂しいみたい。 

 私も寂しい。私を受け入れてくれて、一緒に中学校生活を送ってくれた。 

 だから、凛ちゃんの気持ちわかる… 

 

 「私、みんなと会えて良かった。ありがとう。こんな私を受け入れてくれて」 

 

 「何言ってるのさ、最初は凛ちゃんが手を差し伸べた。私たちは何もすることをしなかった。私たちは、はるちゃんに謝らないといけない。ごめんね、はるちゃん」 

  

 「そうだね。私は凛ちゃんが助けなかったら、このようにはなってなかった。見て見ぬふりをしていた。それについてはごめんなさいね」 

 

 友達は私に謝ってきた。 

  

 「そんなことはないよ。仲良くしてくれただけで、私は嬉しかった。ありがとう!」 

 

 友達に感謝した。 

  

 「凛ちゃん、高校一緒だけど、これからもよろしくね」 

 

 「これからも、私ははるを守るから」 

 

 「それじゃあ、みんなまた会おう!」 

  

 「そうだね、いつかまた!」 

 

 『せーの!ばいきゅー!』 

 

 これが私たちの別れるときの挨拶。 

 それから、私と凛ちゃんは一緒に帰ることになった。 

 これからは、二人だけでの高校生活が始まろうとしていた。 

 

 私と凛ちゃんは同じ高校に通うことになった。 

 高校へ進学した私たちは、中学校とは違う自由があった。 

 高校も女子として通うことが出来た。中学校と同じように。 

 入学式の時に、カミングアウトをした。 

 理解のある学校ということもあって、小学校、中学校とは違った。 

 みんな受け入れてくれた。 

 これから、過ごしやすい高校生活が送れると思っていた。 

 

 

 マラソン大会が失敗し、記憶が私に変わった。 

 大まかな話を私は仲間のみんなに話した。 

 

 「はる!なんではるの記憶に私がいるのよ!どういうことなの!」 

 

 「凛、落ち着きなさい。今は冷静でいられる立場ではないかもしれないけど、とにかく落ち着きなさい」 

 

 雫は凛に落ち着くように言った。 

 

 「そういえばさ、あの時、はると凛が一緒にこの世界に来たよな」 

 

 海がそういった。 

 

 「あの時は、なんで二人だったのかわからなかったけど、その理由がそこに隠されているってことだよな」 

 

 「そういえばそうだったわね。不思議には思っていたけど。だって、私が来た時には雫ちゃんと海くん、そして七ちゃんが先にいたのよね。その後、久吉くんが来て、凛ちゃんとはるちゃんが一緒にこの世界に来たんだよね」 

 

 「確かにそうでしたね。いつもなら一人だったのに、あの時は二人同時にこの世界に来た時は驚きましたが」 

 

 「つまり、考えられることは一つ。はる、もしかして記憶の中に凛ちゃんと一緒に死んだ記憶があるんじゃないの?」 

 

 「はい。私は凛ちゃんと一緒に自殺しました。記憶にあります」 

 

 はると凛が一緒に死んだ?それは一体なんだ? 

 二人で一緒にこの世界に来ることも、あり得るのか。 

 実際、そうなったのだからあり得るのか。 

  

 「そういえば、私が来た時に知らない人が隣にいたわ。それがはるだったの。でも、その理由がここに結び付くなんて…」 

 

 「私も凛ちゃんが最初にいたとき、知らない人が隣にいて、この世界も知らなかった状態で…」 

 

 はると凛がここで繋がるとは思わなかった。 

 実際、記憶を取り戻す前に二人はいつも一緒に居てた。 

 それも何かの縁だったりするのかな… 

 

 「私が見た記憶の続き話すね」 

 

 「別に無理して言わなくてもいいのよ。はるちゃん」 

  

 優奈がはるに言った。 

  

 「いいの。話すよ。すべてね」 

 

 

 高校入学後も私は病院に通い続けていた。 

 今回はホルモンを逆転させる薬を飲む。 

 要は男性ホルモンが分泌されているが、女性ホルモンを飲むことによって女性に近づけて女性にするということだ。 

 もともとは、男性ホルモンを分泌されているため、女性ホルモンを入れると体はそれに抗おうとする。抗って男性ホルモンの方へ戻そうとするのだ。 

 定期的に継続して飲むことによって、女性にするという荒療法。 

 これにも、デメリットが発生する。 

 生殖機能が消失。骨密度の低下。血が詰まりやすい。肝臓への負担。精神への負担など、数多くのものが体に負荷をかける。 

 メリットとして、女体化。男性ホルモンを抑える。体毛が薄くなるなど、女性になるメリットだ。 

 その薬を高校入学から始めることにした。 

 ためらいなどはなかった。男というものを捨てたかった。その一心により、迷いは全くなかった。 

 命にかかわってくることがあったとしても、私は女だ。 

 女になるためには、これしかなった。 

 だから、私は高校を入学してから、女性ホルモンを始めた。 

 最初は精神的な負担がすごかった。 

 情緒の乱れや、体調不良が起きた。それでも、私はやめなかった。 

 辞めてしまえば、男性になってしまう。 

 それは嫌だ。私は続けた。 

 そして、三か月が経った今、目にみえて効果が表れた。 

 前よりも男性の面影が無くなっていた。それに胸も少し変わりつつあった。肌の質感も変わっていった。 

 それに気づいた私は嬉しかった。 

 

 凛ちゃんとは入学しても同じクラスでいられた。 

 高校に入ってから、病院の事や薬の事を凛ちゃんに話した。 

 最初は心配していた。でも、応援してくれた。 

 応援というには変な言い方かもしれない。辛い時でも、凛ちゃんは支えてくれた。 

 その間も、一緒に過ごし、一緒に遊んだ。 

 三か月も経つと、凛ちゃんも私の変化に気づいたようだ。 

 一緒にいて気づきにくいかも知れなかったけど、少しずつ変わっていく私の変化に凛ちゃんは気づいていた。 

  

 「はる、こんな言い方はおかしいけど、女の子っぽくなったね!一段と可愛くなったんじゃない?」 

 

 「そうかな?私も少し変わったと思っていたけど、やっぱりそうだったんだね。でも可愛いは言いすぎだよ。凛ちゃんの方が可愛いよ」 

 

 「そんなことはないわ!私と一緒に居るのがもったいないくらい。それよりも、何かわからないことがあったら言いなさいよ。特に最初だと胸かしら。一緒に下着を見に行って買いに行きましょう。ついでに服も見て周りましょうよ」 

 

 「そんなの恥ずかしいよ…」 

 

 「恥ずかしいも何も、普通の事よ」 

 

 恥ずかしい。でもなんか嬉しかった。 

 体が変わってきていることに。 

  

 「そうだ!今度、中学まで一緒だった友達と一緒に見に行きましょうよ!」 

 

 「うん、いいねそれ!」 

 

 私は友達にも話をした。薬の話や今のことを。 

 そして休みの日にみんなで会った。 

 久しぶりに会った友達も、可愛くなっていた。 

 

 「凛ちゃん、はるちゃん久しぶりだね!ん?はるちゃん変わったね!可愛くなっているじゃん!」 

 

 「確かにそうね!見ないうちに可愛くなって、羨ましいよ」 

 

 「あのさ!私はどうなのよ!」 

 

 「言われなくても凛ちゃんも可愛いよ。そんなに怒らないの」 

 

 みんな笑いながら話をした。 

 その後、私たちは下着売り場に行った。 

 

 「まず、はるちゃんが始めるのは、よくあるのがスポブラかしら。胸元もしっかり支えられるしここから始めてもいいわね。サイズもこのサイズでいいけど、最近は可愛い柄とかもあるから、ここから選んでもいいかもね」 

 

 友達が何個か持ってきてもらった。 

 どれも可愛い。どれにするか迷うけど、複数買わないといけないからいいか。 

 試着するため試着室に入ろうとしたところ、凛ちゃんも入ってきた。 

 

 「私、はるにきかた着方とか教えるから一緒にはいっていくわ」 

 

 そういって、凛ちゃんは私と一緒に試着室に入ってきた。 

 

 「凛ちゃん恥ずかしいよ」 

 

 「何言ってるのよ。同じ女子じゃない。気にしないの」 

 

 そういって何個かサイズを確かめたり、着方などを選んだ。 

 その後、何個か選んだ結果、購入することにした。 

 

 「みんな、ありがとう。恥ずかしいけど、何とか変えた」 

 

 「恥ずかしいって。可愛いわね」 

 

 初めてだから恥ずかしいものは恥ずかしい。 

 その後、みんなで服を見て周った。 

 久しぶりに友達と会えて楽しかった。 

 一緒に遊ぶことも出来たし、また遊びたいな。 

 時間は過ぎていき、それぞれ解散した。 

  

 時は半年になると外見は女性にしか見えなくなっていた。 

 嬉しかった。前の面影が無くなっていた。 

 夏休みが始まり、休みの時間は過ぎていき二学期が始まろうとしていた。 

  

 二学期が始まると周りがいつもと違っていた。 

 凛ちゃんが他の女子と揉めていた。 

  

 「凛ちゃん何かあったの?他の子と揉めていたみたいだけど」 

 

 「何でもないわ。大したことはないよ」 

 

 「そう…何かあったら言ってよね」 

 

 凛ちゃんは何事もなかったようにその後過ごしていた。 

 日に日に凛ちゃんの様子が変わっていった。 

 目に見えるように、凛ちゃんへのあたりがきつくなっていた。 

  

 「はる、あなたは私が守るわ。でもこれ以上、私と関わらない方が良いよ」 

 

 突然凛ちゃんが言ってきた。 

 

 「どういうことなの?教えてよ、凛ちゃん」 

 

 「何でもないわよ!」 

 

 「そんなことない!私にはわかる!ずっと一緒にいたから」 

 

 少しの沈黙の後、凛ちゃんは言った。 

 

 「はる、一部の女子から、はるに対して陰口を言っていたのよ。それで、たまたま私が聞いたの。それを聞いた私は陰口に言った女子に言い返したのよ。それからは、私に対して日に日にいじめが酷くなっていったわ」 

 

 凛ちゃんがそう言いだした。 

  

 「もともと私は態度が大きかったから、標的にされていたのよ。はるの陰口を止めたため、それが火種になって私が本格的に標的にされたってわけよ。これ以上、私と一緒に居ると、はるはいじめられるわ。これからは別々にいたほうがいいわ」 

 

 「そんなの嫌だよ!私のせいで凛ちゃんがいじめられてるなんておかしいよ。私も一緒に言い返してやる」 

 

 「ダメよ!絶対にそんなことしたら余計にいじめられるわ。はるがね」 

 

 それからというと、私と凛ちゃんは別行動をとるようになった。 

 日に日に、悪化していって凛ちゃんのメンタルも限界になっていた。 

 久しぶりに凛ちゃんと一緒になる時が出来た。 

 

 「凛ちゃん…ごめんね。私のせいで…」 

 

 「はる、何謝ってるのよ…はるは悪くないでしょ。悪いのはあいつらよ…」 

 

 凛ちゃんは弱気きっていた。 

  

 「私、はるのこと好きだよ。ライクじゃなくてラブの方ね…突然だよね、こんなの。おかしいよね…」 

 

 「おかしくなんかないよ!私も凛ちゃんの事、大好きだよ!小学校のあの時からずっと!」 

 

 「そう…それは嬉しいわ」 

 

 凛ちゃんは心がボロボロで、正常でいられなくなっている。 

  

 「私、はるには申し訳ないけど、もう死のうと思うの。はるを守ると言っておいておいていくなんて最低だよね…」 

 

 「死ぬなんて言わないでよ!私の為に生きてよ!」 

 

 「それは無理だよ…私が死んだら、あいつらは、罰を受ける。この世界から居られなくしてやるのよ。そうしたら、はるは自由に生きていけるわ」 

 

 「私は凛ちゃんなしでは生きていけないよ!凛ちゃんが死ぬなら私も一緒に死んでやる。そうしたら、私もあの子たちに罰を与えることができる」 

 

 「はるが死ぬことなんてないのよ。一緒なんて…」 

 

 「私は凛ちゃんが好きなの!大好きなの!ずっと一緒に居たいの!だから、私を置いていくなら私も連れて行って!」 

 

 「私が何を言っても無駄みたいね…私もはるのことが好きだよ」 

 

 そういって、私たちは遺書を残した。 

 明日の朝、学校の屋上から飛び降りる。あいつらに見せつける。 

 そして、明日の朝私たちは一緒に学校の屋上へ昇った。 

 

 「はるまで死ぬことはないのよ。今なら引き返すことが出来るのよ」 

 

 「私はいつも凛ちゃんと一緒にいるって決めてるよ。それに、大好きだもん、凛ちゃんの事」 

 

 「そう、わかったわ」 

 

 そういった後、遺言書を屋上に残し、飛び降りる前に凛ちゃんが言った。 

 

 「はる、大好きだよ!だから、死ぬ前に…ね」 

 

 そういった後、凛ちゃんは私の手を握りながら私の唇にキスをした。 

 私は一瞬何が起きたのかわからなかった。けど、その唇からいろんな感情が入り込んできた。 

 悲しみ、怒り、愛、何もかもすべてが。 

  

 「嫌だった?」 

 

 「嫌じゃないよ。嬉しい!凛ちゃん!ずっと一緒だよ!」 

 

 私がそういった後、地上では大騒ぎになっていた。 

 凛ちゃんをいじめていた人もいた。 

 見てみると、驚きというより、笑っていた。 

 私は許せなかった。だから、行動で示してやる! 

 そう、私は思った。 

 

 「はる、大好き!」 

 

 「私も、大好き!」 

 

 そういった後、手を繋ぎ私たちは屋上から飛び降りて死んだ。 

 

 

 「そういうことだったのね…はる、ごめんなさい。あなたを巻き込んでしまって…」 

 

 「いいんだよ。こうしてまた、凛ちゃんと一緒に居られるんだから」 

 

 「許せない!そんな奴がいるなんて!」 

 

 僕は珍しく腹立たしく声に出ていた。 

 

 「珍しいわね、利木くんがそんな感情的になるなんて」 

 

 雫は驚いた様子だった。 

 

 「当り前だよ!二人は何も悪くないのに!ここまで追い込んだあいつらが許せない!」 

 

 「落ち着きなさい!利木。あなたの問題じゃない。私たちの問題なんだから、そこまで熱くならなくてもいいのよ…」 

 

 「でも!」 

 

 「いいの…記憶を取り戻せば、私のこともいずれわかることだから」 

 

 僕は熱くなりすぎた。 

 許せない!凛たちがこんな目に合っていいわけがない! 

 どうすることも出来ない。 

 歯がゆい。 

 

 「はる、辛い出来事だったと思うわ。聞いていて。私がその場に居たら、助けてあげたかったわ」 

 

 雫も少し怒りを感じさせる言い方だった。 

 

 「とにかく今日は解散しましょう。はると凛は一緒に居たいはず。私たちは先に戻っているわ」 

 

 そう言い残して、僕たちは先に生徒会室へ戻った。 

 

 「まさか、二人がこの世界に現れてきた理由がここに繋がるとはね」 

 

 「まあ、正直にいうと謎だったものが解けた」 

 

 海と雫が会話を交わしている。 

  

 「利木くんも不思議な人だよね。なんというか、この世界に来たことに何か理由はあるんだろうけど、記憶が戻れば何かわかったりするかもね」 

 

 雫が僕に話をしてきた。 

 記憶が戻ればすべてわかる。 

 それまでは、仲間のサポートをしてあげないと。 

  

 「利木くん、そんなに気を落とさないこと。僕たちは今まで通り、いてあげることが一番」 

 

 陣が僕に言ってきた後、久吉も頷いた。 

  

 「今日はとにかく疲れたわ…」 

 

 「まあ、あの坂を攻略できるのは雫しかいないですからね」 

  

 確かに今日は疲れた。 

 七の言う通りあの坂は雫の経験と元からある体力があるからこそ、攻略できたといってもおかしくない。 

 今日はゆっくり寝よう。 

 今は、はると凛でだけにしておいた方がいいかもな。 

 

 

 「はる、なんかごめん…」 

 

 「いいんだよ。記憶を取り戻して、わかったことは凛ちゃんのことが好きだったってこと。今の凛ちゃんには、そんな感情はないと思うけどね」 

 

 「あってもなくても、はると一緒に過ごし続けたことが、何かの伏線になっていたのかもしれないね」 

 

 私だけが記憶を取り戻したけど、今の凛ちゃんはマラソン大会と記憶で負荷がすごいことになっていると思う。 

 とりあえず、一つずつ話していこう。 

 

 「記憶の無かったことの私でも、凛ちゃんとずっと一緒っていうのも何かの縁だったのかもね。この世界に来た時もそうだったけど」 

 

 「あれはびっくりしたわ。知らない人が前に居たし、知らない世界だったから驚きだらけだったわ」 

 

 凛ちゃんは少し笑っていた。 

 驚いた時の凛ちゃんは、なんか可愛かった。 

 

 「その後は、二人で歩いて今の生徒会に入ったんだよね。なんか懐かしいわ」 

 

 「それからは、凛ちゃんとずっと一緒だったから、毎日が楽しかったよ」 

 

 そう。その後、私たちはずっと一緒だった。 

 何をするにも一緒。 

 記憶の中の世界でも、ずっと一緒。 

  

 「私は記憶がないけど、はるに対しての感情は正直、恋に近いものもあるわ。一緒にいてて、心地よかったし」 

 

 「私も凛ちゃんと居てて同じように思ってた。記憶を取り戻した時、凛ちゃんがつらい思いをしていたのに、何もしてあげられなかったのが悔しくて…」 

 

 「ごめんね、はる。私が知らない記憶がはるに負担をかけるようなことになってしまって…」 

 

 「それは別にいいの。ただ、凛ちゃんが記憶を取り戻した時に、辛い思いをしないかなって思って」 

 

 それだけが心配だった。 

 今は記憶がないから、何とか精神を維持できているのもある。 

 記憶を取り戻した後、凛ちゃんがどこまで耐えられるのか、それが心配だった。 

 

 「はるの中に私の記憶があるんだよね?私ってどんな人だったの?」 

 

 「ん…私のお姫様って感じかな。なんか言葉にすると恥ずかしい…」 

  

 「お姫様って何よ。しかも自分から言っておいて恥ずかしいって」 

 

 凛ちゃんが笑った。 

 カラ元気なのかもしれないけど、それでも今笑ってくれた。 

 やっぱり、凛ちゃんは可愛い。私を助けてくれた人で、私の恋人。 

 

 「私を助けてくれたもん。あの時、助けてくれなかったらずっと一人だった。だから私のお姫様。それに、私の大好きな恋人。お姉ちゃんのように、いつも前を導いてくれる」 

 

 「ふうん…なるほどね。私ってそんな感じだったのか。はるからみた私だから、そうなのかもしれないけど、実の私は私しか知らないからね」 

 

 「毎日が楽しかったよ。今もそうだけど」 

 

 「私も楽しかった。今も。はるにとって私はヒーローって感じなのかな。なんか凄くない!?」 

 

 「それ自分で行ってしまうの?」 

 

 そういった後、私と凛ちゃんは笑い続けた。 

 それからは、ずっと二人で話をし続けた。 

 それは、楽しい時間だった。 

 気が付けば日は暮れようとしていた。 

 

 「凛ちゃん、そろそろ戻ろうか。いけそう?」 

 

 「うん、大丈夫。はるがいるからね」 

 

 私は凛ちゃんと手を繋いで生徒会室へ戻ることにした。 

 

 「うん?あらお帰り」 

 

 仲間の人たちは、お茶をしながらくつろいでいた。 

 久吉は倒れこんでいた。 

 それを見た凛ちゃんは、いつもの凛ちゃんに戻って久吉と絡み合っていた。 

 

 「どうだった?気分の方は」 

 

 「今は大丈夫。私も凛ちゃんも、たぶん大丈夫。ありがとう、雫ちゃん」 

 

 「私は何もしてないからお礼を言われる筋合いはないわ。いつものように、戻ってくれたのは、はるのおかげかもね」 

 

 「私は凛ちゃんと話していただけ。何もしてないですよ」 

 

 本当に何もしてない。 

 今までと変わりのない会話をしただけだった。 

 

 「なあ、はる。なんか熱くなってしまってごめん」 

 

 僕は熱くなりすぎた。 

 生徒会に戻ってから、頭を冷やした。 

 

 「気にしなくていいよ。もう終わったことなんだし」 

 

 「そうか。ありがとう」 

 

 はるは自分の席に戻り、優奈がお茶とお菓子を用意してくれた。 

 それを、飲んで食べてゆっくりしていた。 

 

 「二人とも帰ってきて悪いんだけど、これからどうするのか、凛あなたが決めなさい」 

 

 久吉と絡んでいたのをやめて、問われたことを答えた。 

 

 「今はやめておくわ。やっていてもいいけど、ゆっくりしたい気分」 

 

 「そう、わかったわ。またするときは、事前に言っておいてね。みんなにも言わないといけないから」 

 

 雫が言った後、凛は再び久吉に絡んでいった。 

 いつもと変わりのない光景へと戻っていった。 

 記憶の無い人は僕を含め、凛、雫、優奈、海、久吉、陣の七人だ。 

 この先に何が待ち受けているんだろうか。 

 僕の存在も気になる。 
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