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第三章 四つの創家
記録番-②
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いくら士官学校からの付き合いだとはいえ、もうシアーラにただ無条件で信用できる人間はいない。ニールは動揺を見せずに、どこか呆れた様子で続けた。
「俺にだけ話せってか? まあいいけど……親父は儀典官だからな。本来当主交代の儀式で引き継ぎが行われるべき内容を把握しておく必要があって、その事前準備で集められた際に陛下から直接話を聞くことができたらしい」
「父君に、このことを話したのか」
「最低限な。協力者なしに情報は得られない。お前からだとはちゃんと隠してあるんだし、許せよ」
ニールの声色に誠実さは感じる。確かに誰にも話すなとは言っていないし、そこは仕方がない。シアーラは話を促すように首を傾けた。
「陛下もずいぶん堪えておられる。貴族と他家との板挟みだけでも頭が痛いのに、そこに予想もしない愛娘の暴走だからな。直近の王女との対面では人目も憚らず声を上げて、王女の頬を張り飛ばされたらしい」
「なんだと」
暴走、という言葉に眉を寄せたシアーラは、起きている事態を知って下唇を噛み締めた。自分を愛し保護してくれていた父王からの激しい怒りを直接受け、ファイネッテはどれほど心細く絶望感に打ちひしがれていることだろう。自分が種を蒔いたのだという事実が心臓をきりきりと締めつける。こんな時に、自分がそばにいて差し上げられないとは。
「まあ、そういう事態もあって、ローゼンタール当主の役割がちゃんと引き継げるのかと混乱も大きくてな。本来当主間のみでやりとりされる情報の預け先もなくて、陛下も弱ってらっしゃったんだろう」
「……で、そこから当の記録番へよく繋げられたな」
「そこは親父の信頼の高さのおかげだな。真面目一筋で、今まで従順に過ごしてきたからさ」
「その情報をさっさと息子に洩らしているが」
「こんな状勢だろ。使えそうな情報は親子で共有して家を守らないと……って、シアーラ。気持ちは分かるがここまで疑われると協力する気も失せるぞ」
「……すまない」
ここでやっぱりやめたと言われても困る。シアーラは目を伏せて謝罪した。
「俺にだけ話せってか? まあいいけど……親父は儀典官だからな。本来当主交代の儀式で引き継ぎが行われるべき内容を把握しておく必要があって、その事前準備で集められた際に陛下から直接話を聞くことができたらしい」
「父君に、このことを話したのか」
「最低限な。協力者なしに情報は得られない。お前からだとはちゃんと隠してあるんだし、許せよ」
ニールの声色に誠実さは感じる。確かに誰にも話すなとは言っていないし、そこは仕方がない。シアーラは話を促すように首を傾けた。
「陛下もずいぶん堪えておられる。貴族と他家との板挟みだけでも頭が痛いのに、そこに予想もしない愛娘の暴走だからな。直近の王女との対面では人目も憚らず声を上げて、王女の頬を張り飛ばされたらしい」
「なんだと」
暴走、という言葉に眉を寄せたシアーラは、起きている事態を知って下唇を噛み締めた。自分を愛し保護してくれていた父王からの激しい怒りを直接受け、ファイネッテはどれほど心細く絶望感に打ちひしがれていることだろう。自分が種を蒔いたのだという事実が心臓をきりきりと締めつける。こんな時に、自分がそばにいて差し上げられないとは。
「まあ、そういう事態もあって、ローゼンタール当主の役割がちゃんと引き継げるのかと混乱も大きくてな。本来当主間のみでやりとりされる情報の預け先もなくて、陛下も弱ってらっしゃったんだろう」
「……で、そこから当の記録番へよく繋げられたな」
「そこは親父の信頼の高さのおかげだな。真面目一筋で、今まで従順に過ごしてきたからさ」
「その情報をさっさと息子に洩らしているが」
「こんな状勢だろ。使えそうな情報は親子で共有して家を守らないと……って、シアーラ。気持ちは分かるがここまで疑われると協力する気も失せるぞ」
「……すまない」
ここでやっぱりやめたと言われても困る。シアーラは目を伏せて謝罪した。
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