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ずっと一緒に
しおりを挟む生まれたときから尻尾が生えていた。
犬のような毛の生えた尻尾
他の人にないだけで僕は普通の人間だ
病気じゃないから特に困ってない。
保育園のころ、おままごとで犬役
学校の劇で必然的に動物役になってしまう以外に特に不満もない。
この尻尾を個性だと思っている。
「普通に産んでやれなくてごめんね。」と母に何度か言われた。
だけど五体満足なはずの向かいの家のA吉より運動はできるし、隣のクラスのE子からはラブレターを貰ったこともある。
ラブレターを貰ったことはこの話に関係ないし自慢したいだけなんだけど。
先日、僕は小学校を卒業した。
背が伸びるだろうから制服は大きめのものを注文した。
「君のは特注品だよ。」
尻尾穴が必要だから尻尾の根の太さを測って貰った。
穴の部分はファスナーとマジックテープとボタンどれがいいかな?と聞かれたので食い込みも少なく外れにくいものがいいなと思ってボタンとマジックテープを合わせてもらうことにした。
制服、スクールバッグ、ローファー
どれもこれも今の僕にはしっくりこないけどこれからはじまる中学校生活のことを考えるだけで心が躍る。
「ちょっと尻尾がくすぐったいわー。」
振り返ると採寸してくれている、おばちゃんの頭にパタパタと尻尾が当たっていた。
僕の尻尾は犬の尻尾と同じだ。
嬉しい、楽しいときは勝手に振ってしまうし、悲しい、怖いときは垂れ下がってしまう。
「ごめんなさい。制服着れて嬉しくなっちゃって...。」
「それはいいことね。おばちゃん安心したわ。」
部活は何しよう?
バスケかテニスがいいなあ~。
クラスメイトはどんな人がいるのかな。
毎日そんなことを考えていた。
そして入学式の日になった。
月日は経ち、卒業式になった。
もう僕には尻尾はない。
個性を受け入れてもらうなんて
無理な話だった。
僕が僕らしく生きるために
尻尾はあると困るものだった。
あの日、「反抗」でみずから切り取った
尻尾は嫌いなあいつに投げつけた。
悲鳴をあげると同時に赤く染まってゆく制服のシャツ。
ただ、ずっと見ていた。
個性ってなんだろう。
自分ってなんだろう。
すっかり毒されて
忘れてしまった純粋な心を無くしたものと引き換えにこれから取り戻す。
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