もう一度君と…

海津渚

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1-1 井原悠太

相談

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 集中できない。 
「井原ー次の問い答えてー。井原ー」 

 佳奈がいる。この学校にいる。 

「悠太、先生が言っているよ。」 
 拓斗が助言をする。
「え、えっと答え2です。」 
「違う。答えは2000だ。しっかりしろ。基礎ができなかったら応用もできないぞー。」 
「すみません…。」 
  
「悠太、何か悩み事でもできたの?実行委員で集まったときからおかしい。」 
「そんなことないよ。気のせい、気のせい。」 
「いや、気のせいじゃない。ヒロトが言っていたもん、最近悠太おかしいって。親友が言うんだから確実だと。」 
 ヒロもおかしいって言っていたのか。 
「言いにくいようだったらいいんだけど、話聞くよ。1人で抱えるより、2人以上で抱えた方が楽なときもあるし。」 
「俺のこと嫌いになる気がする。」 
「嫌いにならない。」 

 拓斗は全てを知らない。知らないからこそ、彼には言ってもいいかなと思った。

「…って感じだよ。同じ学校だなんて思わないじゃん。」 
「すごい確率だな。だけどさ、謝れなかったって言っていたじゃん。神様は謝るチャンスをくれたんじゃないかな。」 
 拓斗は嫌がる様子はなく、むしろもっと話を聞きたそうだった。 
 そうなのだろうか…。
「今度球技大会が開かれるからさ。その時に話してみたら?俺もそばにいるからさ。」
「…わかった。」 
 ここまで真剣に考えてくれるとは思わなかったからうれしかった。こういう友達がずっと欲しかった。自分の気持ちを自然に話せる友達が。 
 

「俺もさ、相談しても良い?」
「ん?」
「やっぱり俺って変かな。」
 彼は自分がクラスで浮いていることを気にしているのだろうか。
 そう思う自分もクラスで浮いている。俺と拓斗だけ違う世界にいるような感覚なのだ。
 浮くことは慣れている。中学校では3年間そんな感じだったし。でも心の底では思うんだ、ほかの人とも仲良く…まではいかなくても同じクラスの仲間というくくりに入りたいと。
「変って言い出したらみんな変になるぞ。」
「うん、そうだな。」
「拓斗は拓斗のままでいいんじゃない?無理にキャラ作っても辛いだけだし。」
「ありがと、悠太。」
 彼の曇った表情が少し明るくなった気がした。
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