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53話 イメージと侵食
しおりを挟む「よし!ソフィアちゃん、材料はこれで全部だ。
材料はたんまりある、ファテナの花以外の材料はすぐに手に入るものだから心配しなくていい。
何度失敗してもかまわないから【錬成】を頼む」
そういってジャイルさんが私に材料を差し出してくれた。
本の記述では、エルフの王族はここにある材料を【錬成】してエリクサーを作ったと書いてある。
でもやり方は錬成するとしか書いてないからあとは私が頑張るしかない。
複数のものを組み合わせるのは初めて。
--でも。
頑張らなきゃ。作れるのは私だけだもの。
お願いルヴァイス様を助けたいの、だから出来上がって。
私はなるべく、元気になるようにイメージする。
瘴気なんて吹き飛ばしちゃう強いイメージ。
私は心の中で呪文をとなえた。
どうか、ルヴァイス様を治すために完成しますように――。
◆◆◆
「お加減はどうですか竜王陛下」
男の声でルヴァイスは目が覚めた。
ルヴァイスの寝室で、訪ねてきたのは大司教だった。
いつからいたのかわからないが天蓋の中になぜか大司教がにこにこと笑ってベッドの隣に立っているのだ。
(部屋には誰も入れるなと指示したはずなのになぜこの男がここに?)
ルヴァイスが朦朧とする意識の中、大司教に視線を向ける。
なぜか普段なら控えているはずの護衛も、主治医も侍女の姿もない。
「……大司教か。
見ての通りだそなたたちの薬のおかげでな」
ルヴァイスは皮肉めいた笑みを浮かべるが、すでにベッドから起き上がることすらできず、ただ視線を向けるのが精いっぱいだった。
体の中を荒れ狂う何かに催す吐き気と、倦怠感、そして襲ってくるめまいと痛みに体がいうことをきいてくれない。指を動かそうにもうごかせない。
「私が様子をみましょう」
「断る。ここに入っていいと許可したおぼ……」
ルヴァイスが言おうとした途端、大司教に首を片手で軽く絞められる。
(なっ!!)
ベッド首を絞められ組み敷かれ、抵抗することができない。
「そろそろキュイをお渡しになられたらどうです?
さすればもっと効くお薬を処方できますが」
そう言いながら大司教が首を絞める手の力を強めた。
「……下がれ」
「この状態でまだ意地を張るおつもりですか?」
ルヴァイスが組みしかれながらも視線を扉に向ける。
「ああ、護衛の方などあてにしない方がいいですよ。ここに来るはずがありません」
大司教はそのルヴァイスの様子に面白そうに笑いながら首を絞める力をより一層つよめ顔を近づけた。
「ここは精神の世界なのですから」
「き、さま……このようなことをして何が狙いだ」
「わたくしは貴方を楽にしてさしあげたいだけですよ。
ご安心ください。すべて終われば、痛みも何も感じなくなります」
射貫くような眼差しで見つめられルヴァイスは声すらだせなくなる。
「さぁ、おとなしくその体を渡しなさい。私が有効活用してさしあげますよ」
耳元でささやかされ、視界がかすむ。
何かが自分の中に入ってくるのがわかった。
(まさか精神支配か!?)
ルヴァイスはこの不可解な状況に気づき抗おうとするが、気持ちとは裏腹に体は大司教の思うがまま支配されていく。
ダメだ。このような弱った状態で心を支配されてしまえばもう二度と自我をとりもどせなくなる。
頭ではわかっているのに、意識はどんどん何かに侵食されるかのように何も考えられなくなる。
大司教の甘くささやく「身を任せれば楽になるという」言葉にどんどん侵食されていく。
父と誓った約束。
自らを信じてついてきてくれた研究所の職員たち。
そしてソフィア。
彼らのために自分はこんなところで自我を失い操り人形になるわけにはいかない。
手を伸ばそうとするが、その手も大司教に押さえつけられ、首を絞められ意識が遠のく。
―― ソフィア すまない……約束をはたせそうにない ――
最後に浮かんだのは、なぜかソフィアの笑顔だった。
◆◆◆
――ソフィア様、この力で一番大事な事は強い想いとイメージです――
【錬成】をしていたらどこからか、レイゼルさんの声が聞こえた。
なぜか昔の景色が頭に浮かぶ。
そうこれは、まだリザイア家にいたころ。
レイゼルさんとひっそりと暮らしていた小屋だ。
私はなぜかリザイア家にいたころの小さな小屋でレイゼルさんと植物をつくっていた。
その時私はレイゼルさんに【錬成】のやり方を教わっていた。
『思いとイメージ?』
――はい、強く念じれば念じるほど最適解が導かれます――だから自分を信じて――
レイゼルさんが教えてくれた。
一番大事なのはイメージと想い
私はルヴァイス様を治したい。
ルヴァイス様の笑顔が見たい。
また大好きっていってもらって、頭をなでてもらって、キスをしてもらって。
いい子だっていってもらえて。
愛をいっぱいくれた人だから。
私に大事なことを教えてくれた人だから。
私のことを守ってくれて、私の願いをかなえようとしてくれて――。
どうか――お願い。
ルヴァイス様の呪いを打ち払う――聖薬エリクサー できてっ!!!
願った途端、なぜかレイゼルさんのくれたネックレスがものすごい光を放った。
==え!?==
途端何かに吸い込まれる。
観えるのは一度も行ったことのない景色。
あふれるほど咲いている花々と美しくそびえたつ大きな銅像。
浮いた島々が無数に空に存在しに虹かまるで橋のようにかかっている。
そして誰かが手を振っていた。
きれいな金の髪の男性で王子様のようなきれいな白い衣装を身にまとっている。
『レイゼルさんっ!?』
私が駆け寄ろうとするとレイゼルさんが手をいっぱい広げてくれる。
私は嬉しくてその胸に飛び込んだ。
生きてた!!レイゼルさん生きててくれた!!
私がうれしくて、私を抱いてくれたレイゼルさんの顔を見上げると、レイゼルさんは少し悲しそうに微笑んだ。
――ソフィア様、あなたの大切な人がいま危機にあります――
『えっ!?』
――どうか、貴方の力で彼を――
レイゼルさんがそう言って指をさした方向に視線を向けると、そこにいたのは私よりもう小さい男の子が黒い蔦のように絡まれようとしていた。
面影がどこかルヴァイス様に似てる。
もしかしてルヴァイス様!??
「あーーー!!」
私はレイゼルさんから飛び降りて慌てて駆け出した。
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