【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

てんてんどんどん

文字の大きさ
103 / 187
2章 人間領へ行くことになりました

21. 神々の真意

しおりを挟む
 映像はあまりにも断片的だった。
 まるで写真を物凄いスピードで次から次へと見せられている。
 そんな感じなのだ。
 ただ、一つ言える事は……本来の歴史のエルフの末路が物凄く悲惨だったということ。
 十字架のようなモノにくくりつけられ、まるで見せしめのように死体が野ざらしにされている光景。
 首をきられた状態で吊るされた光景。

 いちいち全部語るには酷すぎて語りたくない光景が広がっている。

 ゲーム化する前の世界は……今とは比べ物にならないほどの残酷な世界だった。

 今よりずっと歳をとったリュートの首だけを大事そうに抱え込んで、蹲っているコロネの姿。

 子供達や奥さんの死体を前に剣を振り回して怒り狂うグラッドさんの姿。

 今では想像もできないような酷い光景がそこにはあったのだ。
 あまりにもめまぐるしく状況が変わってしまうため、全部は理解できない。

 ただ、わかるのは人間たちにエルフが無残にも虐殺されていく未来。

 そんな光景を通りすぎると――真っ暗な空間にたどり着く。

 そしてそこには――誰かがいた。
 眠るような状態で。

 姿は認識できない。

 それでも確実に誰かがいる。

 それだけはわかった。
 コロネが無意識に手を伸ばそうとし――


 目を覚ましたそれに弾かれた。


 まるで来るなと拒まれるかのように。
 それはコロネを弾いたのだ。

 そこで――私たちは目を覚ました。

 念話で意識を共有していたせいで、ほぼコロネの意志と同調してしまっていたらしい。

 ボロボロと涙が溢れてとまらない状態で……私は意識を元の世界へと戻したのだ。
 リリも悲しいのか泣き崩れ、コロネも呆然と突っ立っている。

 ただ、ショタコロネだけは、ピーピーという機械音を鳴らし

<<マスター認識・攻撃解除・スリープモード移行>>

 という、機械音を発し……停止するのだった。


 ▲△▲


「一体何がどうなってるんだ……?」

 私が呆然と停止したショタコロネを見ながら呟けば

「……わかりません。一度魂がまるで吸い込まれるような感覚がありました。
 そのあとは……あまりにも情報量がおおくて理解がおいつきませんでした」

 言ってコロネが口をつぐむ。
 コロネも私たちが一緒に意識を共有していたことは理解しているのだろう、それ以上は何も言わずに俯いた。

「人間酷い。
 人間嫌い。
 だいだいだいだいっ大嫌いっ!!!!」

 子供のせいか、リリはモロに映像の影響を受けてしまったのだろう。えんえんと泣き始めてしまう。
 
「リリ、あれはすごい昔の映像だから、な?
 今の人間がやったわけじゃないから」

 私が言えばリリはいまだにえんえんと泣きながら私にしがみついてくる。

「……やはりあれはオリジナルの記憶でしょうか?」

 コロネが大きくため息をつきながらショタコロネの方を見ながら言う。

「だろうな。それ以外説明がつかない」

「……猫様。
 私はずっとゲーム化前の過去を覚えていると勘違いしていました。
 ……ですが、私が覚えていたと思っていた過去も、改変されています。
 ……一体何がどうなっているのでしょうか……」

 うつむくコロネの顔は……今までにないくらい真っ青だった。

 ▲△▲

 結局。私たちは聖水をもってそのまま帰路についた。
 あれ以上の探索はリリやコロネの様子からしても無理と判断したからだ。
 ショタコロネは……なぜかあれから鑑定ができるようになり、 コロネ・ファンバード・ダミーと表示され、ロボ扱いだった。
 レベルは300。戦った時は物凄く強そうだったのに何故かレベルが低い。
 とりあえず石化が効いたため、そのまま石化してアイテムボックスにしまい込んできた。

「何かあったのでしょうか?」

 すっかり泣きつかれて憔悴してして寝てしまったリリと顔を真っ青にして無口になったコロネを見てアルファーが私にこっそりと聞いてきた。

「うん。そりゃもういろいろ。リリを通して記憶を見せるのはあれだから、ちゃんと後で説明するよ」
 
 言いながら、私はリリを寝室へと連れていく。
 コロネも出迎えてくれたマルクとそれなりに会話を交わし聖水を渡すとそのままヨロヨロと寝室に向かってしまう。
 
 念話を通じて見た私たちよりもコロネの方がダメージがでかいのかもしれない。


 ▲△▲

「なるほど……そういう事が………」

 アルファーが私の説明を聞いて頷いて、そこで会話が止まる。

 私とアルファーの間に流れる沈黙。
 うん、流石に脳筋宣言しただけあってそこから会話を広げるつもりはないらしい。
 つい、コロネのように何か感想を言ってくれるのかと待ち構えてしまったがとくに返事はないようだ。

「うん。そういうことだから、コロネはあの状態だし、アルファーはもうしばらくマルクさんの護衛を頼む。
 天使連れなら他の人もマルクさんの言うことは聞くはずだし」

「はい。わかりました」

 アルファーは真面目な顔で頷くのだった。

 ▲△▲

 にしても……。
 リリが眠るベットで一緒に横になりつつ、私はため息をついた。
 一体全体何がどうなっているのだろう?

 いままでは純粋に神々が、滅んだ世界を哀れんでゲームの身体に元いた人間の記憶を写しこんでそのまま復活させたと思っていた。
 ゲーム化にともない多少歴史を改変したくらいは別に何も不思議じゃない。
 むしろゲーム化に都合よく歴史を改変したのはうなずける事なのだ。

 だが問題は、何故コロネだけには過去のゲーム化前の記憶を残したのだろう。しかも嘘の記憶だ。
 以前アルファーとの会話でもでたが……神々はこうしてゲームにプレイヤーが召喚されることを考慮して全てを進めていたのだとしたら。
 ゲーム化もひとつの通過点にしかすぎず、今現在の状況こそが神々が望んだ状況ということなのか?

 もんもんと考えては見るが……結局結論はでない。
 というか断片的に見た記憶が生々しすぎて吐きそうになる。

 この世界は思っているよりずっと複雑な状況なのかもしれないと、私はため息をつくのだった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...